迂回する知性 podcast artwork

PODCAST · society

迂回する知性

生物学、工学、経済学。畑違いの領域から比喩を借りてきて、身の回りの当たり前をまわり道して考える番組です。

Publisher-supplied feed metadata · PodParley refreshed Sep 18, 2026 · Source feed

  1. 12

    #010 渋滞は先頭にいない

    高速道路の渋滞情報に「先頭まで十二キロ」と出ている。三十分かけてようやくたどり着いた先頭にあったのは、事故でも工事でもない、ただの緩やかな坂でした。 NEXCO東日本の調査では、高速道路の渋滞の73%は事故でも工事でもない「交通集中」によるもので、そのうち63%は勾配の変化にすら気づかない「サグ部」という上り坂で起きています。犯人がいないなら、この足止めには意味がない気がしていました。 2008年の円形コース実験と、2019年のアリの橋渡り実験を手がかりに、「先頭に何もない渋滞」がどうやって生まれるのかを、物理学と生物学から遠回りして考えました。 ■ 今回の道順 ・坂という名の容疑者 ― NEXCO東日本の渋滞原因統計とサグ部 ・氷になる速度 ― 円形コース実験と「相転移」としての渋滞 ・先頭を探さない生き物 ― アリの交通流に見る、渋滞しない群れ ■ 参考 ・NEXCO東日本 渋滞原因統計(webCARTOP) ・trafficnews.jp「サグ部」解説 ・DRIVE PLAZA「渋滞の原因」 ・2008年円形コース実験 原論文(New Journal of Physics) ・実験解説(note) ・ScienceDaily「渋滞の相転移」解説 ・Scientific American「アリと交通流」 ・2019年アリの橋渡り実験(eLife) ■ こちらでも配信中 ・YouTube:https://www.youtube.com/@ukai_chisei ※本エピソードは、紹介した研究や概念をもとにした考察です。用いた比喩は独自の枠組みであり、特定の生き方や個人を否定・断罪する意図はありません。 

  2. 11

    #009 シルバー民主主義は、人口のせいなのか

    深夜の開票速報。「高齢者の数が多いのだから、政治が高齢者向けになるのは当然です」。コメンテーターの一言に、誰も異を唱えませんでした。 総務省のデータでは、今年2月の衆院選で20代の投票率は39.01%、全世代平均56.26%を大きく下回っています。一方で65歳以上の人口は日本人全体の29.79%。人口の偏りは確かにありますが、それだけで政治の重みは説明できるのでしょうか。 ゲーム理論の「加重投票ゲーム」と「バンザフ指数」を手がかりに、一人一票の建前と、実際の影響力の中身を測り直してみました。 ■ 今回の道順 ・割れた一票の重さ ― 年代別投票率と人口構成の実データ ・加重のゲーム ― 加重投票ゲーム・バンザフ指数から見た「一人一票」の中身 ・動かない分母 ― 人口比が動かなくても変えられるもの ■ 参考 ・総務省「国政選挙の年代別投票率の推移について」 ・総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数(令和8年1月1日現在)」 ・ニッセイ基礎研究所「シルバー民主主義と若者世代」 ・バンザフ指数の計算方法に関する解説(経営工学ドットコム) ・Wikipedia「投票理論」 ■ こちらでも配信中 ・YouTube:https://www.youtube.com/@ukai_chisei ※本エピソードは、紹介した研究や概念をもとにした考察です。用いた比喩は独自の枠組みであり、特定の生き方や個人を否定・断罪する意図はありません。 

  3. 10

    #008 声はもう本人の証明にならない

    深夜、スマートフォンに「母」から着信。震え声で「今すぐお金が要るの」。抑揚も、鼻にかかる感じも、何百回と聞いてきたその声でした。 2025年の特殊詐欺被害額は1,423億円で過去最悪、AIが関わるフィッシングの割合はわずか1か月で4%から56%へ急増しています。3秒の録音があれば声を複製できる技術と、「声イコール本人」という思い込みの間に、いつの間にか大きな隙間が生まれていました。 暗号理論の「ゼロ知識証明」を手がかりに、声という認証がなぜ最初から穴の空いた金庫だったのかを測り直してみました。 ■ 今回の道順 ・割れ始めた金庫 ― 特殊詐欺被害の急増と、AIボイスクローンの浸透速度 ・三秒で複製される鍵 ― 声紋認証の仕組みと、暗号理論から見た構造的な脆さ ・追いつけない速度 ― 検知技術との終わらない競争と、声に頼らない認証への回帰 ■ 参考 ・nippon.com「JAPAN DATA」― 警察庁まとめ・2025年特殊詐欺統計 ・財経新聞(2026年7月)― AI悪用フィッシングの急増データ ・ロケットボーイズ セキュリティ対策ラボ ― AIボイスクローンによるなりすまし詐欺の解説 ・日経クロステック ― ゼロ知識証明・音声クローン技術の解説 ・Trend Micro ― 香港Arup社なりすまし詐欺事件の分析 ■ こちらでも配信中 ・YouTube:https://www.youtube.com/@ukai_chisei ※本エピソードは、紹介した研究や概念をもとにした考察です。用いた比喩は独自の枠組みであり、特定の生き方や個人を否定・断罪する意図はありません。 

  4. 9

    #007 優秀さが値下がりするとき

    履歴書に「生成AIスキルあり」と書き足した夜、確かに年収は上がるはずでした。三か月後、その一行はもう「全員の前提条件」になっていました。 英オックスフォード大学の調査では、生成AIスキルを持つ候補者への給与提示は平均23%高く、学歴による賃金の上乗せを上回るといいます。一方で、AIの影響を強く受ける職種では2023年以降、実質賃金が下がり始めているというデータもあります。 同じ「AIに強い」という一行が、なぜ片方では給料を押し上げ、もう片方では押し下げるのか。製薬業界の「特許の崖」を手がかりに、その理由を測り直してみました。■ 今回の道順 ・値札の高い夜 ― AIスキルへの賃金プレミアムと、学歴を超える価値 ・崩れていく足場 ― AI影響の強い職種で進む、実質賃金の下落 ・特許の切れる日 ― 「特許の崖」に学ぶ、複製されるものとされないもの ■ 参考 ・World Economic Forum「3つのグラフが示す、雇用に対するAIスキルの影響」(Fabian Stephany, 2026年2月) ・Business Insider Japan「AIが奪うのは『仕事』ではなく『給料』?」(Apollo Global Managementの調査報告書、2026年8月) ・「パテントクリフ(特許の崖)とは何か」/井上国際特許商標事務所 ・後発医薬品の薬価制度/首相官邸 知的財産戦略本部 資料 ※本エピソードは、紹介した研究や概念をもとにした考察です。用いた比喩は独自の枠組みであり、特定の生き方や個人を否定・断罪する意図はありません。

  5. 8

    #006 アダルト市場に学ぶ「差別化」の嘘

    「差別化しましょう」よく聞くこの言葉は、なぜかいつも反証されない。売れれば差別化の成功、売れなければ差別化不足。どちらにでも言える言葉は、実はあまり意味を持たない。 年間2億人以上が訪れるアダルト同人市場、そしてファンから直接お金を受け取るOnlyFansの決算データを糸口に、進化生物学・心理学・経済学のものさしで「差別化」を測り直してみました。 ■ 今回の道順 ・反証されない呪文 ― 「差別化」という言葉の便利さと危うさ ・毒たちの制服 ― 毒チョウの擬態、単純接触効果、注意という希少資源、そしてFANZA同人2億人市場のデータ ・降りられぬ制服 ― 見分けやすさは、そこから自由に降りる権利と引き換えになる。OnlyFansの決算が示す「比較の単位」の移動 ■ 参考 ・ミューラー型擬態(Fritz Müller, 1878)/Wikipedia ・Warning signals are under positive frequency-dependent selection in nature/PNAS ・Mere Exposure Effect(Zajonc, 1968)/Simply Psychology ・Designing Organizations for an Information-Rich World(Herbert Simon, 1971) ・FANZA同人REPORT 2025年版 ・OnlyFans/Fenix International 決算データ(2023-2024年度) ※本エピソードは、紹介した研究や概念をもとにした考察です。用いた比喩は独自の枠組みであり、特定の生き方や個人を否定・断罪する意図はありません。

  6. 7

    #005 思い出の9割は捨てられている

    二週間の旅から帰ってきた友人が覚えていたのは、たった一日のトラブルだけでした。十三日分の快晴は、記憶にほとんど残っていない。心理学者ダニエル・カーネマンの実験によれば、私たちの記憶は、体験の総量ではなく「もっとも感情が動いた瞬間」と「終わり方」の二点だけで、全体の印象を決めてしまうといいます。これは脳の欠陥なのか、それとも合理的な処理なのか。心理学と情報工学のものさしで測り直してみました。■ 今回の道順・冷水実験と内視鏡検査の実験 ― 記憶は体験の長さを覚えていない・非可逆圧縮という技術 ― 記憶は「劣化」ではなく「最適化」・エンドを選び直す ― 私たちにできる、数少ない裁量権■ 参考・ピーク・エンドの法則、冷水実験・内視鏡検査実験・騒音実験(ダニエル・カーネマン)/STUDY HACKER・非可逆圧縮の定義とJPEGの仕組み/Wikipedia「非可逆圧縮」・画像圧縮(可逆圧縮・非可逆圧縮)の解説/BREEZE※本エピソードは、紹介した研究や概念をもとにした考察です。用いた比喩は独自の枠組みであり、特定の生き方や個人を否定・断罪する意図はありません。

  7. 6

    #004 家が22年で無価値になる国

    築二十五年の戸建て。内見の帰り際、担当者はこう言った。「建物のほうは、もう値段が付いていません」。二千万円かけて建てたものが、帳簿の上ではゼロになる。同じ年数を経たイギリスやアメリカの家は、今も値段を持っている。物としての傷み方が、国境で変わるはずもないのに。一体なぜ、日本の家だけが二十二年で無価値になるのか。税制とゲーム理論のものさしで測り直してみました。■ 今回の道順・二十二年という数字 ― もとは税務処理のための期間で、物理的寿命ではない・取り付け騒ぎ ― 健全な銀行でも、全員が同時に信じれば潰れる・九百万戸の空き家 ― 「無価値になる」という信念が、自分で自分を証明する■ 参考・木造住宅の法定耐用年数22年(減価償却資産の耐用年数表)/国税庁・2023年住宅・土地統計調査:空き家900万戸・空き家率13.8%/総務省統計局・既存住宅流通シェアの国際比較/土地総合研究所・スムストック※本エピソードは、紹介した研究や概念をもとにした考察です。用いた比喩は独自の枠組みであり、特定の生き方や個人を否定・断罪する意図はありません。

  8. 5

    #001 東京に住むのはバカなのか

    家賃は高く、部屋は狭く、通勤は長く、出生率は全国最低。数字の上で、東京はほとんど負けています。それなのに、29年連続で人が流れ込み続けている。生き物は、大きくなるほど代謝が落ちて、ゆっくりになります。ゾウはネズミより長く生きる。これは数億年、地球上のすべての生命が従ってきた法則です。ところが都市だけが、この法則を逆走している。東京に住むという選択を、生物学と都市工学のものさしで測り直してみました。■ 今回の道順・クライバーの法則 ― 大きくなるほど、生き物は遅くなる・超線形スケーリング ― 大きくなるほど、都市は速くなる・その加速に、誰がいくら払っているのか■ 参考・東京都の合計特殊出生率0.96(2024年)/日本経済新聞・住民基本台帳人口移動報告 2024年結果/総務省統計局・通勤・通学時間の都道府県別データ/総務省統計局・ジョフリー・ウェスト『スケール:生命、都市、経済をめぐる普遍的法則』※本エピソードは、紹介した研究や概念をもとにした考察です。用いた比喩は独自の枠組みであり、特定の生き方や個人を否定・断罪する意図はありません。

  9. 4

    #002 幸福の底は本当に48歳なのか

    会議室の長机の端。四十八歳の男が、意味のない図形を描いている。中年の危機、と私たちは呼ぶ。人生の幸福度は四十代後半を底にしたゆるやかなU字を描く──世界中どこでも観測されてきた、経済学でもっとも頑健な発見のひとつだった。ところが、2025年に発表された研究が、そのU字が消えたと報告した。谷は埋まったのではない。両側が落ちていた。私たちが四十年ものあいだ「人生の谷」と呼んでいたものは、一体なんだったのか。統計学と測量のものさしで測り直してみました。■ 今回の道順・幸福度のU字曲線 ― 中年でもっとも低くなるという通説・2025年の研究 ― 谷は埋まっていない。若者側の満足度が沈んだだけ・日本水準原点 ― 「高さ」は物の性質ではなく、基準点との差でしかない■ 参考・Blanchflower et al.(2025)44か国データによる幸福度の年齢分布の変化に関する研究/PLOS ONE・西ヨーロッパ21か国のEurobarometer分析(1973年〜)・日本の幸福度の底はおよそ48歳前後/プレジデントオンライン・日本水準原点の沈下データ/国土地理院※本エピソードは、紹介した研究や概念をもとにした考察です。用いた比喩は独自の枠組みであり、特定の生き方や個人を否定・断罪する意図はありません。

  10. 3

    #003 目標のない人間のほうが遠くへ行く

    一月四日、買ったばかりの手帳の最初のページ。今年こそ何かを決めようとして、ペンを持ったまま十分が過ぎている。目標がない。ビジョンがない。私たちはそれを欠落として扱う。だが妙なことがある。目標を早く決めた人ほど、二十年後に遠くまで行っているだろうか。むしろ、何をしたいのか長く分からなかった人が、思いもよらない場所に立っていたりする。決めないことは、本当に劣った状態なのか。強化学習と微生物学のものさしで測り直してみました。■ 今回の道順・多腕バンディット問題 ― 「探索」と「活用」は同時にできない・秘書問題 ― 最初の37%はどれだけ良くても断るのが最適解・大腸菌の泳ぎ方 ― 順調なときほど、迷う枠を手放さない■ 参考・多腕バンディット問題/Wikipedia・秘書問題(最適停止問題)/Wikipedia・高校数学の美しい物語・大腸菌走化性運動における最適な感知と制御/日本生物物理学会誌※本エピソードは、紹介した研究や概念をもとにした考察です。用いた比喩は独自の枠組みであり、特定の生き方や個人を否定・断罪する意図はありません。

Type above to search every episode's transcript for a word or phrase. Matches are scoped to this podcast.

Searching…

We're indexing this podcast's transcripts for the first time — this can take a minute or two. We'll show results as soon as they're ready.

No matches for "" in this podcast's transcripts.

Showing of matches

No topics indexed yet for this podcast.

Loading reviews...

ABOUT THIS SHOW

生物学、工学、経済学。畑違いの領域から比喩を借りてきて、身の回りの当たり前をまわり道して考える番組です。

HOSTED BY

Hallow

CATEGORIES

Frequently Asked Questions

How many episodes does 迂回する知性 have?

迂回する知性 currently has 10 episodes available on PodParley. New episodes are automatically indexed when they're published to the podcast feed.

What is 迂回する知性 about?

生物学、工学、経済学。畑違いの領域から比喩を借りてきて、身の回りの当たり前をまわり道して考える番組です。

How often does 迂回する知性 release new episodes?

迂回する知性 has 10 episodes. Check the episode list to see recent publication dates and frequency.

Where can I listen to 迂回する知性?

You can listen to 迂回する知性 on PodParley by clicking any episode. We provide an embedded audio player for direct listening, and you can also subscribe via your preferred podcast app using the RSS feed.

Who hosts 迂回する知性?

迂回する知性 is created and hosted by Hallow.
URL copied to clipboard!