ヒダテン!ボイスドラマ

PODCAST · fiction

ヒダテン!ボイスドラマ

飛騨高山を舞台にした珠玉のボイスドラマをお届けします。コミュニティFM Hit's FM(Hida Takayama Tele FM) で放送中の人気ラジオ番組! ヒダテン!のCV声優10名 が入れ替わりパーソナリティを務める「Hit’s Me Up!(ヒッツ・ミー・アップ!)」の中で放送されているボイスドラマです!ボイスドラマを通じて飛騨高山の魅力に触れてみてください!<番組の特徴>・ 飛騨高山を舞台にしたボイスドラマを多数制作! これまでに100本以上の作品を発表し、地元の魅力を物語として発信・ 放送情報  放送局1: Hit's FM(Hida Takayama Tele FM)  放送時間:毎週金曜10:30-11:00/毎週土曜13:30-14:00  放送局2: FMらら(FMラインウェーブ株式会社)  放送時間:毎週金曜13:00-13:30  配信:Spotify、apple(iTune)ミュージック、amazonミュージック、YouTubeミュージック、CastboxなどのPodcastで番組とリンクして配信中!飛騨高山の美しい風景とアニメ文化をつなぐ、唯一無二のラジオ番組! 「Hit’s Me Up!」を聴けば、新たなエンタメの扉が開きます!

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    ボイスドラマ「たまゆら」

    一瞬の出会いが、未来をつくる。1986年と2026年をつなぐ、酒と記憶の物語。酒蔵に漂う香り、受け継がれる技、そして想い。母から娘へ、そして時を超えて紡がれる物語。万葉の歌に詠まれた「たまゆら」――それは一瞬でありながら、永遠に残る記憶。飛騨高山の歴史とともに描く、切なくも温かなタイムリープの物語です・・・【ペルソナ】・依羅伽/瑛里菜(えりか=母:25歳/えりな=娘:25歳/CV:山﨑るい)=市街地で老舗の酒蔵の女性杜氏。1986年と2026年に母娘として同時に存在する。母娘2代とも新しいお酒を開発してきた。新酒は90周年に向けて発売予定。名前は「大吟醸たまゆら」・静流(しずる/30歳/CV:日比野正裕)=上宝村在住。市制50周年の1986年に市街地へ【プロローグ:万葉集】◾️SE:万葉の詠み方で(少し節をつけて)『玉響昨夕見物今朝可戀物』たまゆらに きのふのゆふべ みしものを けふのあしたに こふべきものか【シーン1:1986年11月/依羅伽(市制50周年の賑わい)】◾️SE:町の賑わい(あちらこちらで「おめでとう!」の声)『50周年、おめでとうございます!』「ありがとうございます!よろしければ、できたばかりの新酒、試飲してください」『へえ〜、なんていう銘柄なんですか?』「実はまだ決めてないんです。仮にたとえるなら・・・”たまゆら”かな・・・」『”たまゆら”・・・いい名前だ』「あ、よかったら中でどうぞ」『はい、じゃあ・・・お言葉に甘えて』高山市全体が祝賀ムードに包まれた1986年11月。高山市制50周年を祝うムードが町中に漂っていた。私の名前は、依羅伽。上三之町で・・というか、古い町並で・・・ああ、どうしても言い慣れないなあ、”古い町並”・・・保存地区の選定からもう何年も経つのに・・そう、うちはその古い町並に300年以上続く酒蔵。昔からのお客さんは『加賀屋』と呼ぶ。私は、『女将』として切り盛りしている。まだまだ女人禁制がはびこる世界。うちの蔵でも少し前まで『仕込み部屋』に女性は入(はい)れなかった。私が女将になってから、強引にルールを変えたんだ。何十年ぶりかで世に出す新酒。市制50周年に間に合うように仕込んできたけど、私に言わせると、『完成』はまだちょっと先かな。まずは、このめでたい景気の中で試飲していただくことにした。最初のお客さんは、リュックを背負った青年。DCブランドっぽいトレーナーに、ケミカルウォッシュのジーンズ。地元の人・・じゃないかも・・・『いただきます・・・』店の奥で青年の声がする。私は和らぎ水(やわらぎみず)を取りに水場へ。戻ってみると、店内に青年の姿はなかった。あら、もうお出かけ?お水はいらないのかしら。結構アルコール度数高いお酒だったんだけど。町並の喧騒が木戸越しに聞こえてくる。うちは角打ちをしていないから、店の中は静まり返っていた。【シーン2:2026年5月/瑛里菜】◾️SE:店内にたくさんの外国人(雑踏)「Have a nice trip in Hida!またのお越しを、お待ちしとります!」『セ・ボン(C'est bon)!』(合成音声)おっと!フランス語やったか!ま、いいや。私の名前は、瑛里菜。古い町並に340年以上続く酒蔵で、杜氏として働く。幼い頃から亡き母・依羅伽に付いて、蔵人(くらびと)として学んできた。杜氏になったのは今年、25歳の誕生日。それだけじゃない。母が亡くなってからは『若女将』としても、店を切り盛りしている。そうそう。だから毎日忙しいのよ。さっきまで大賑わいだった試飲カウンターも片付けないと・・・あれ?まだ誰かいる?目を瞑ってお酒を飲んで・・・ってん?あんなおっきな蛇の目猪口(じゃのめちょこ)、うちにあったか?「あ〜、すっごく美味しい。・・・あれ?」「こんにちは・・」「女将さん?・・なんか・・・さっきと雰囲気変わりました?」「え・・?どういうことですか?」「さっきまで割烹着、着てませんでした?」「割烹着?そんなもん、着ませんよ」「なんで?だって・・・あれ?なんかお店の中もナウいし・・」「ナウい?」「こんなカウンターとか、自動販売機なんてありましたっけ?」「自動販売機?」「ほら、そこの・・」「試飲用のコイン投入口ですけど・・」「なに・・?それ・・・」「ちょっとすみません、その・・・お猪口みせてもらえます?」「あ・・はい・・・」「この蛇の目猪口・・・小さい頃に見たことあるような・・・」「小さい頃・・・?」「ちょ〜っと失礼・・」「あ・・・それ・・飲みかけですけど・・・」この味・・・まろやかなのに芳醇・・でも・・・ガツンとくる辛口・・・そしてこの香り・・・記憶のどこかに残っているような・・・「あの・・・」「あ、ごめんなさい!私ったらつい・・」「いえ、全然いいんですけど・・・」「よかったらもう一杯飲まれますか。いまならまだ氷室の限定大吟醸がありますよ」「ああ、結構です。それより、もう行かなきゃ・・・」そう言って、彼は逃げるように店を出ていった。なんか、青い顔してたけど、大丈夫かしら・・・私は手のひらの、蛇の目猪口をそっと見つめる。分厚くて武骨な、でもどこか温かみのある古い猪口。猪口を手にしたまま、仕込み蔵へ。ひんやりとした静寂の中。ここで私は新しい吟醸酒を仕込んでいる。というか開発中。高山市制90周年に向けた、記念の大吟醸だ。あと一歩。何かが足りない。美味しいけど、味が綺麗すぎるんだよなあ・・・櫂(かい)入れをしながら、猪口を顔に近づける。うっすらと残る芳醇な香り。これって・・亡き母が以前嗅がせてくれたあの香りに似ている・・さっき一口飲んだときも、水の透明感みたいなキレを感じたし・・・「・・まさかね」呟きは、酒蔵の重厚な梁に吸い込まれていった。【シーン3:2026年5月/酒蔵】◾️SE:扉を強く開ける音「すっ、すみませんっ!」息を切らしてお店に駆け込んできたのはさっきの青年。出ていってから、10分も経っていない。「誰か、いませんか!」私は、いそいそと仕込み蔵からお店へ。「あ、あなたはさっきの・・」「はい、この酒蔵の女将で杜氏。瑛里菜と申します。どうかしましたか?」「あの、町が・・ヘンなんです!」「町が・・ヘン?」「はい、だって・・・さんまち通りが、外人さんでいっぱいになってて・・すごい数だし・・・」「ああ、外国人ね。まあ・・・今日は週末だしね」「みんな、テレビがついたトランシーバーを持ってる」「トランシーバー・・・?それって・・・・・スマホじゃない?」「それにもっと・・もっと・・・大変なのは・・・」「はあ・・」「電柱も電線もなくなっちゃっている!」「あ、そこ?そういえば気づかなかったわ」「しかも、秋なのになんかあったかい」「秋じゃなくて春でしょ」「なに言ってんですか。いまは秋でしょ。11月。市制50周年であんなに賑わってんじゃないですか?」「5月だけど」「え!?ちょっと待って・・・頭が混乱して思考が追いつかない」「仕込み水、飲みますか?」「あ、ありがとうございます」彼は水を一気に飲み干すと、私の目の前に顔を近づけた。「教えてください」「あ、はい・・なんでしょう」「今日は何年ですか?」「え・・」「昭和何年?」「昭和?いやいやいや、令和でしょ。令和8年」「令和ってなんですか?」「なんですかって・・・昭和、平成、令和の令和じゃない」「え・・・」(※2人同時に)「頭痛くなってきた」「頭痛くなってきた」「ひょっとしてだけど・・・まさかとは思うけど・・・あなた、タイムトラベルしてきたとか言わないよね?」「ははは・・そんなばかな・・だったら君は未来人?ここはバック・トゥ・ザ・フューチャーの世界ですか」「じゃあ今年は何年なの?」「1986年。昭和61年」いや〜。アニメの世界じゃ、異世界と時間軸の話が溢れてるけど・・・大丈夫か、この人・・・ってか、まさかホントにタイムトラベラーなのか・・・「ここって高山市ですよね?」「そうよ。あなた、一体どこの世界線から来たの?名前は?」「ぼ、僕の名前は、静流と言います。家は吉城郡上宝村(よしきぐん かみたからむら)。高山市の市制50周年のイベントを見にきたんです」「吉城郡?なにそれ?」「なんで?高山にいるのに知らないんですか?吉城郡は古川町(ちょう)・神岡町(ちょう)・河合村(かわいむら)・宮川村(みやがわむら)、それに国府町(ちょう)・上宝村(かみたからむら)じゃないですか」「あ〜。それたぶん合併前ね。いまは、国府も上宝も高山市よ」「うそ」「なんで嘘つく必要があるの?高山市は東京都と同じくらい広いのよ。香川県や大阪府より広いんだから」「そんなばかな・・・」「だめだ・・こっちも頭が追いつかない・・・ねえちょっと、外でようか」「は、はい」結局、私はこの青年と、高山市街地を歩くことにした。1986年、40年前の世界線からきた、という静流。ああ、自分の頭も整理したい。ただでさえ、新酒の仕込みで行き詰まっているのに・・・※続きは音声でお楽しみください

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    ボイスドラマ「スワロウテイル」

    飛騨・上宝に眠る“失われた財宝”を巡る、ひとりの女性トレジャーハンター。その名は朱羽。またの名は”スワロウテイル”。父から託された地図、ギフチョウの痣、そして戦国時代に消えた黄金・・・点と点だった記憶がつながるとき、運命が大きく動き出す。考古学とロマン、史実と伝説が交差するヒダテン!史上、最もスケールの大きな冒険譚・・・【ペルソナ】・朱羽(CV=小椋美織)=あげは(27歳)=神岡鉱山で働いていた父の遺志を継いだ正体不明のトレジャーハンター。通称は「スワロウテイル」。右肩にギフチョウのような痣がある・静流(CV=日比野正裕)=シズル(29歳)=上宝出身の考古学者。地元の伝説伝承を調べ保護活動を続けている。朱羽にはいつも先を越されるため異常に警戒し嫌悪している・鉄兵(CV=日比野正裕)=てっぺい(故人享年38歳)=朱羽の父。生活のために神岡鉱山で閉山まで働く。一生をかけて江馬氏の財宝を探していた【プロローグ:神岡鉱山2001年】◾️SE:鉱山のガヤ〜遠くでドリルが岩を削る音、鉱石を運ぶトロッコのガタゴトという音『朱羽、ようく聞くんだ』2001年の春。パパが、私の目を見て語りかける。巨大な神岡の鉱山。5歳の私にとって坑道は、地下深く広がる迷宮のように見えた。パパの作業服は、鉱泥(こうでい)で赤黒く汚れている。『神岡鉱山はあと2か月で閉山になる』「うん」『でもな、パパはついに見つけたんだ』「え?なに?」『宝の場所だよ』「ホント?」『ああ、本当さ。パパ、いつも言ってるだろ。”上宝は宝の郷(さと)だ”、って』「上宝っておうちのとこ?」『ああ、そうだよ。神岡と上宝はね、つながってるんだ』「ふうん」『宝の場所を書いた地図は朱羽に預けるから』「どうして?」『朱羽がいないと地図は完成しないんだよ』「わかんない」『それに・・・もしもパパがいなくなっても大丈夫なように』「パパいなくなっちゃうの?そんなのイヤ!朱羽、ひとりになるのは絶対にやだ!」『心配しなくてもいい。パパはいなくならないから』「約束だよ」『ああ、約束だ。朱羽もパパと約束してくれ。今からこの地図の説明をするから、ようく聞くんだ』パパは、9つに折った地図を開く。大きな地図。両手を広げたよりもおっきい。『地図がなくてもわかるように頭の中に入れなさい。閉山するまで。あと2か月の間に』「うん。わかった」『ようし、いい子だ。こっちへおいで』これが、パパと交わした最後の言葉だった。その日の夜。全層(ぜんそう)雪崩。いわゆる『春の雪崩』が池ノ山(いけのやま)の飯場(はんば)を直撃。夜食を食べていたパパは、なす術(すべ)もなかった。「パパのうそつき」ひとりぼっちになった私はどれほどパパを憎んだか・・・だけど、パパとの約束を忘れることはなかった。【シーン1:パパの遺志】◾️SE:キャンパスの大教室「先生、その見解には地質学的な視点が欠けていませんか? 神岡の池ノ山(いけのやま)周辺は、当時から地表に鉱石が現れていたはずです。江馬氏が密かにその一部を掌握していたとしたら?公的な記録に残さず、『隠し銀』として運用していた可能性は否定できないはずです!」「それはあくまで仮説だ。物証がない以上、考古学としては認められないよ」「物証がないのは、探し方が間違っているからです」「君のシミュレーションは面白いが、『単なる願望』に過ぎない。考古学とは、出土した遺物から歴史を組み立てる学問なんだ。宝探しじゃないんだよ」15年後。私は東京の大学で考古学の教授とやり合っている。互いに顔もわからない大教室の一番前と後ろ。岐阜県から招かれた客員教授・静流。フィールドは私の故郷、上宝だという。あ〜。私、ダメなタイプだ、これ。「今日の授業はここまで。また、議論を戦わせよう」ふん。やなこった。そんなことしている時間なんてない。15年前。パパがいなくなったあと、私をひきとったのは、市街地に住む画商。高齢の夫婦だった。養父はかつて神岡鉱山で働いていたという。子どものいなかった老夫婦は私を小学校から中学、高校までいかせてくれた。卒業後はアルバイトで学費を稼ぎながら、東京の大学へ。学ぶのは、考古学。日本中世史。地質学・地理学。最新の科学的発掘方法から、古文書の読み解き。地形図の読解まで、必要な知識を貪欲に学んだ。講義のない日は、登山のサークルでフィールドワークを鍛える。バイクの免許も取った。そして、文化財保護法。「調査名目」で正当に掘るための手続きや、発見した際の権利関係を学ぶ。大学生活の途中で、養父母は揃って天に召された。身寄りのない2人だったから、見送りは私ひとり。二度目の喪主には涙もなかった。またひとりぼっちになったけど、今度は、お店と知識が残っている。私一人が暮らすには十分なお金も。大学卒業と同時に、私は高山へ帰郷。画商の看板はそのままに、美術品を整理してバイクを購入した。そして・・・いつも持ち歩いているパパの地図。大学の4年間じっくり研究した。地図の中に隠されていたのは5つの財宝。飛騨銀の錫杖(しゃくじょう)。蒔絵(まきえ)の香箱(こうばこ)。銘刀「高原長光」(たかはら ながみつ)。ギフチョウを模した銅製の香炉(こうろ)。そして、黄金の軍扇。ひとつひとつ説明すると時間が足りないので、詳細は省略。財宝を推理したのは、パパ。あの日、私に話してくれた内容は、全部覚えている。では、どうやって場所を解き明かすか?ヒントは、パパが地図に書き込んでいた印。最初インクの滲みだと思ってた。だけど、拡大してよく見ると、それは蝶の形。『春の女神』ギフチョウだった。(※7:40)そう!神岡鉱山はかつてギフチョウの生息地。愛好家の間じゃ、神岡ブランドのギフチョウは特別な存在。(※7:51)まさか、「ギフチョウの吸蜜(きゅうみつ)ポイント」?推理は的中。印はカンアオイの群生地だった。ギフチョウの幼虫にとって唯一の餌。食草だ。さらに上宝の断層と地質を分析。自然な空洞と人工の坑道が、もっとも接近する地点を特定した。あとはひたすら古文書を読み解く。大学で学んだ中世史の知識から、江馬氏の敗走ルートを再構成。「敵に奪われない道=人が通れない難所」をバイクと登山技術で踏破。卒業してからここまでくるのに5年間かかった。【シーン2:スワロウテイル】◾️SE:バイクの走り去る音『オーマイガー! 』『またしても、スワロウテイルか』『今までに何度やられたか!』先生、ありがと。教授が地団駄を踏む様子が目に浮かぶ。私は41号線をフルスロットルで駆け抜ける。バックパックの中には『江馬氏の軍扇(ぐんせん)』。黄金の龍をあしらった七曜紋(しちようもん)が描かれている。私の名は朱羽。またの名を”スワロウテイル”。違法スレスレの悪名高いトレジャーハンターと言われている。ふん。なんとでも言えばいい。私はパパが探し続けた江馬氏の財宝を手に入れたいだけ。それが私の生きる目的だから。かつて栄華をほしいままにした江馬氏の財宝。探していた江馬氏の五宝(ごほう)は、軍扇でコンプリートした。あとは、パパと私の悲願。江馬氏の埋蔵金だけ。だけど、腑に落ちない。古物商だけでなく、考古学者や郷土史家たちまで、今になって動き出したのはなぜ?考えられる原因は3つ。1つ目は、神岡鉱山閉山から20年以上が経過したこと。当時の未公開資料や「旧坑道図」が一部デジタル化・公開されている。2つ目は、上宝の山間部で集中豪雨による土砂崩れが発生したこと。「江馬氏の家紋が入った漆器の破片」が土砂から発見された。そして3つ目は、私が手に入れた『五宝』の情報。(※11:00)それが闇のマーケットに流れたこと。誰が情報を流した?きっとあいつだ。考古学者の静流。いつも仕事の邪魔をする研究者。静流が私をおびきだすために仕組んだに違いない。先を越される前に急がないと。【シーン3:奥飛騨温泉郷平湯/隠し湯】◾️SE:温泉の環境音「お邪魔します・・・あ・・これは失礼」奥飛騨温泉郷・平湯の露天風呂。しまった・・混浴だってこと、忘れていた。まあ・・・いいか。「あの・・ご迷惑でなければ、少しお話してもいいですか?」「ご自由に」「ここ・・武田信玄の家臣が見つけた『隠し湯』ってご存知でしたか?」「いえ」「ちょっと熱いでしょ。実は神岡にマグマ由来の鉱床があるんです」この声・・どこかで聞いたような・・・「そこを通って湧出する温泉だから熱いんです」「詳しいんですね」「ああ。考古学をちょっとかじってましてね」え・・・「そうそう。鉱床の成分は、閃亜鉛鉱(せんあえんこう)って言いましてね。少し鉄の匂いがするでしょ」「そうですか・・・」間違いない。静流だ。でも大丈夫。顔を合わせたのは大学時代の1回だけ。もう何年も前だし、大教室でお互いの顔も見えなかったんだから・・・※続きは音声でお楽しみください。

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    ボイスドラマ「八百比丘尼の初恋」

    漢方薬剤師・よもぎと医学生・楸、そして離島出身の医大生・沙羅。美しい風景の中で紡がれる、切なくも温かな物語・・・・よもぎ(29歳/CV:蓬坂えりか)=カフェ「よもぎ」オーナー。漢方薬剤師。楸と出会う・楸=シュウ(22歳/CV:日比野正裕)=歴史好きな医学生。御岳町の旧家出身。医学を学び、医者を目指す。歴史・伝承・伝説が好きなのは母の影響・沙羅(22歳/CV:小椋美織)=楸と同じ大学に通う医大生。友達以上恋人未満。医師のいない九州の離島の出身。卒業後は楸と一緒に離島に戻りたいと思っている【シーン1:美女峠の展望広場】◾️SE:美女峠の野鳥のさえずり「むか〜し、むかし。南に見える山々のずっと奥、秋神川が深く淀む『龍宮淵』のお話。川のほとりに住む長者には、1人の娘がいました。ある晩、長者がどこかから土産をもらってきます。それは龍宮淵から持ち帰った『人魚の肉』。娘にはこう言い聞かせます。『これは禁断の肉。絶対に口にしてはならん』そう言われれば、よけい気になるのが人情というもの。娘は、いたずら心でひとかけら、口に入れてしまいました。最初ほんの一口のつもりだったのが、あまりの美味さについつい食が進みます。気がつくと、全部食べてしまっていました。すると・・・」「不老不死になったんだよね」ttt「そ。これが八百比丘尼伝説のさわり。あとは、楸も知ってるでしょ」「うん。八百比丘尼伝説は日本全国にあるから。不老不死になった八百比丘尼は全国へ旅に出た」「ご名答。娘は尼さんになって、諸国を行脚」「で、ここ美女峠にも立ち寄った」「うん。行く先々で病人の世話をして、癒していたらしいわ」「なんか、よもぎさんとかぶるなあ」「冗談。知ってる?八百比丘尼って、息を呑むほど美しかったそうよ」「それもかぶる」「からかわないで」「ほんとにそう思うんだけどな・・・」「八百比丘尼は行く先々に椿を植えた。ここにもあるでしょ。彼女が杖で突いたところから生えてきた・・・」「ああ、さっきの・・」「厳しい冬を越えても青々とした葉を保ち、真っ白な花を咲かせる椿。不老不死の象徴ね」「椿も薬草なのかな」「とっても優れた薬草よ。椿の花を乾燥させた『山茶花(さんさか)』。止血とか消炎の作用があるの。八百比丘尼は、そうやって人々を癒してたんじゃないかしら」「ますますよもぎさんだ」「私、そんなに年はとってないわよ」「はは・・ねえ、よもぎさん」「なあに?」「もう一度『龍宮淵』へ行ってみませんか?」「もう一度?」「うん。八百比丘尼の話、思い浮かべながら、覗いてみたい」「ひかれちゃうわよ」「竜宮城へ?できるもんなら、行ってみたいよ」ほんの少し距離をとりながら、こちらを見て楸が笑う。あらためて紹介するけど、楸は東京の医大へ通う大学生。春休みを利用して御嵩の実家からバイクで高山へ。もう4月になっちゃったけど、戻らなくていいのかな・・なんとなく、聞きそびれてしまった。楸は毎日のように、夕方薬膳カフェまで迎えにくる。そのままバイクにタンデムしてツーリング。今日は美女峠。・・の展望広場。龍宮橋へ行くならあたりが暗くなる前に出なきゃ。◾️SE:バイクのエキゾースト〜遠ざかっていく【シーン2:山王祭】◾️SE:山王祭の賑わい「すごいな・・・言葉にならない」春の高山祭。山王祭。楸は今まで一度も見たことがないそうだ。御嵩に住んでるのに。最終的に、祭を見てから東京へ帰る、ということになった。楸はバイクを宿泊しているホテルへ停め、2人で歩いて古い町並へ。温暖化の影響で、桜は落下盛ん。春風が吹くたびに舞い上がる、淡い花びら。そのなかを、絢爛豪華な屋台が曳かれていく。金箔と漆黒、そして深紅の幕を纏った屋台。「まるで・・・異世界に迷い込んだようだ」「もしかしたら、エルフにも会えるかも」「え?」嬉しそうに、楸が私を見つめる。やがて始まったのは、からくりの奉納。童子が一瞬にして翁へ変わる『三番叟(さんばそう)』。美女の打掛が荒ぶる獅子に変わる『石橋台(しゃっきょうたい)』。そして、壺の中から龍神が飛び出す『龍神台(りゅうじんたい)』楸は呆然と屋台を見上げる。「この世のものとは思えない・・・」「 のからくりは一時上演禁止になったのよ」「え・・どうして?」「あの美女の人形、見たでしょ」「うん・・」「あまりにも妖艶で、なまめかしくて、風紀を乱すからって」「そんな・・」「100年くらい屋台蔵に安置されて、復活したのは昭和59年」「じゃあ、この時代の僕たちはラッキーだったんだ」「あら。あなたも魅入られちゃった?」「いや・・そうじゃなくて・・・」「別に否定しなくてもいいじゃない」「ただ、すごいなあって・・・」楸って、感受性が高いのね。でも高山祭は屋台だけじゃないのよ。総勢数百人!という祭行列・御巡幸(ごじゅんこう)。日枝神社を出発して祭礼区域を巡っていく。獅子舞に雅楽、闘鶏楽(とうけいらく)に裃姿(かみしもすがた)の警固。誰かが言ってたけど、見るも鮮やか、聞くも雅。楸が言う通り、祭の2日間、高山は異世界になる。「こんなにすごいなんて・・・どうして今まで来なかったんだろう」「でしょ。だから私だって、もっともっといろんな人に知ってほしい」「ようし・・毎年来るぞ」「ってか、春だけじゃなくて、秋もあるからね」「もちろん来ます!」「じゃあ、その前に夜祭り(よまつり)ね」「夜祭り・・?」「灯りがともった屋台は、昼間と全然違うから」「ああ・・そうなんだ」結局、私たちは、夜祭りが終わるまで、高山を楽しんだ。屋台から曳き別れの歌「高い山」が流れる。「ねえ、よもぎさん、このあと・・・」「あ、よかったら、行ってみたいとこがあるんだけど・・・」「え・・どこ・・・?」「内緒」「え〜」少し、いじわるだったかな。不安そうな表情の楸を横目に、安川通りから宮川沿いを歩く。「初めてよもぎさんと会ったのもこのあたりだよね?」「そうね」「なんだか、お腹すいちゃったな・・」「でしょ」「え?」不思議そうな顔をする楸に笑顔を返して、歩き続ける。楸は私のあと、少しだけ距離をおいて歩く。あ・・さっきより、距離、縮まったかも。私たちは、行人橋(ぎょうじんはし)を渡る。祭の喧騒がだんだん小さくなっていった。【シーン3:熊の涙】◾️SE:居酒屋の雑踏「乾杯」「乾杯」市街地の居酒屋。実はこっそり、予約しておいたんだ。席だけでなく、お酒も・・・「熊の涙?変わった名前のお酒だね」「まずは飲んでみて」「うん・・」(※日本酒を呑む)「どう?」「わ・・すごい・・・なんていうか・・・まろやか・・・?優しい味」「朝日町のお酒なの」「え・・」「氷中貯蔵(ひょうちゅうちょぞう)。冬の間にお酒を搾って、氷の中で熟成させるの。標高1,300メートル、秋神温泉の氷。熊も涙を流すほどの冷たさ。そんな厳しい寒さに耐えて、じっくり蓄えた旨味よ」「だから”熊の涙”・・」「ホントにホントに限定酒だから。貴重なお酒。市街地で飲めるところは限られてるの」「そうなんだ・・」「ふふ、驚いた? 実は私、日本酒には目がないんだ」「意外・・・漢方薬剤師さんだから、お酒なんて飲まないのかと思ってた」「なに言ってるの。お酒は『百薬の長』って言うじゃない?適度なアルコールは血行を良くして、緊張を緩和してくれるのよ。立派な養生なんだから」「確かに・・」「いつか自分の名前が入ったラベルを出すのが夢なの。飲むだけで心も体も整うような、とっておきの日本酒・・・」「楽しみだなあ。大吟醸『よもぎ』ってか・・一番最初に飲ませてよ」初めて2人で飲むお酒。『熊の涙』予約してよかった。グラス越しに楸の顔を見る。さっきよりさらに、距離が縮まったかな・・・【シーン4:駅前のホテル】◾️SE:高山駅前の雑踏「今日はありがとう」「こちらこそ」「泊まるとこ、ホントに大丈夫?」「うん。市街地の友達のとこ、泊めてもらうことになってるから」「気をつけてね」楸が宿泊している駅前のホテル。居酒屋からでも、2人で歩いたらあっという間だ。ホテルの入口が見えてきたとき。冷たい春風が頬を通り抜けた。扉の前。誰かが立っている。「遅かったわね」「・・・沙羅?」彼女が灯りの下へ踏み出すと表情が浮かび上がった。ミディアムヘアの女性。シャギーを入れた毛先が揺れている。「よもぎさん、紹介するよ。一緒に医学を学んでいる、沙羅だ」「それだけ?」「それ以上でも以下でもないだろう」「つまんない」「なんでお前がここにいるんだ?」「だって、春休みはもう終わってるのよ。医大の講義が始まってもう一週間。教授だって心配してたわ」「よく宿泊先がわかったな」「自分で緊急連絡先とGPS、共有してったじゃない」「そっか・・」「それより、その人ほっといていいの?」「あ・・・」「大丈夫よ。私、ここでお暇(いとま)しますから」「そんなあ、もう少しお話しましょうよ」「沙羅!」「はじめまして。楸と同じ大学で医学を学んでいる、沙羅です。関係はさっき楸が言った通り・・・かなぁ?」「あ・・はじめまして。よもぎと申します。漢方薬剤師です」「漢方薬剤師・・・?は、は〜ん」※続きは音声でお楽しみください。

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    ボイスドラマ「さくら」

    戦国の世。すべてを失った母が、ただひとつ残された願いを桜に託したとき——その祈りは、命を越えて形となった。これは、荘川に実在する桜にまつわる、ひとつの“はじまり”の物語。感動のボイスドラマ「さくら」をぜひお聴きください。【ペルソナ】・咲耶(19歳/CV:岩波あこ)=400年以上前、戦国時代末期に荘川で生きた女性。村へ逃げてきた落武者の手にかかり、夫と娘・さくらを失う・さくら(5歳/CV:岩波あこ)=咲耶の娘。落武者の手にかかり命を落とす。咲耶が鎮魂のために光輪寺に植えた桜の精となって再び現れる・住職(60歳/CV:日比野正裕)=光輪寺の住職。咲耶に桜の植樹を勧める【プロローグ/寒村の落武者】■SE/小鳥のさえずりと吹き荒ぶ風の音「ばかやろう!侍なんてみんな、この世から消えちまえ〜!」叫びながら、あとからあとから熱いものが込み上げてくる。わしの名は咲耶(サクヤ)。武田の軍勢が飛騨へ攻め込んでくるだのなんだのって。小さなこの荘川村まで、そんな噂は入ってきていた。わしは、ここ荘川で生まれ、荘川で育った。板葺き屋根の粗末な小屋に住み、庄川(しょうがわ)のほとりで畑を耕す。祝言を挙げたのは14の春。娘ももうけて、親子3人、貧しくとも幸せな毎日だった。贅沢は言わない。このままソバやヒエ、アワを育てて倹(つま)しく生きていければ・・ただ、そう思っていただけなのに・・・ある日突然、夫は三木自綱(みつき よりつな)の家来どもに駆り出された。こんな貧しい村の百姓まで、戦になると連れていきよるんか。ソバ蒔きが終わってひと月。ソバ刈りがすむまで待ってくれろと頼んだけど。侍なんて、わしらのことは虫ケラやと思うとる。逆らったら、その場で叩っ斬られるだけや。黙って従うしかなかった。結局・・・戦に出かけた翌日。帰ってきたのは、傷だらけの骸(むくろ)。それも軒先まで運んでくれたのは、結(ゆい)の衆やさ。夫が倒れていたあたりは、ソバの白帆(しらほ)が、真っ赤に染まっていたんじゃと。わしは三日三晩泣き明かした。信玄とか、信長とか、どうでもいい。誰が勝とうが、誰が負けようが、そんなもん、知ったことじゃねえ。戦をやるようなやつはみんなクソじゃ。侍なんて、みんな、くたばっちまえ。天に向かって叫ぶわしに、一人娘のさくらが寄り添う。だが、不幸はそれだけではなかった。白川郷の内ヶ島に攻め入った三木の侍たち。返り討ちにあい、敗れた残党が荘川村に流れてきた。村は次々に焼かれ、あちこちで悲鳴が上がる。わしは小屋の中でさくらを抱いて震えていたが・・・◾️小屋の扉を乱暴に開く音手負いの侍が、荒々しく扉を開け、土足で踏み込んできた。わしの腕の中には目を瞑ったさくら。侍は、さくらの手に握られたヒエとアワを見つけて手を伸ばしてくる。さくらが避(よ)けると、怒った侍は引っ張って引きずり出す。「いやぁ!」侍を振りほどこうとするさくら。侍はさらに怒り、こっちへ逃げようとするさくらをうしろから斬りつけた。「さくら!」さくらの持っていたヒエとアワをひったくると侍は小屋を出ていった。わしは、腕の中で動かないさくらの名を呼び続ける。だが、地獄はこれで終わらない。侍は小屋に火をつけた。あっという間に燃え広がっていく。ああ、もうこれですべて終わるんだな・・・わしはさくらを抱いたまま、目を閉じた。【シーン1/光輪寺】■SE/小鳥のさえずり「目が覚めたかな」ここは・・・彼岸・・じゃない・・・光輪寺・・・わしは・・・なんで生きているんだ?「結の衆がおまえさんを火の中から救い出したんじゃ」「火の中・・・はっ!さくら、さくらは!?」住職は申し訳なさそうな顔で、首を横に振った。「残念なことを」「そんな!そんなぁ!」「主殿(ぬしどの)と幼子(おさなご)のためにも、おまえは生きねばならん」住職の言葉は、なにも響かなかった。わしの目の前にはもう、浄土への道しか見えない。夫とさくらの待つ浄土へ。もう一度会うために行かないと。【シーン2/ひこばえ】■SE/小鳥のさえずり誰とも会わず、なにも語らぬ日々。日がな一日、本堂に置かれた小さな木片を眺める。そこには夫とさくらの名前が書かれてあるらしい。字が読めぬわしには、墨の汚れにしか見えないが。そんな姿を見かねて住職がわしに手渡したのは・・・「桜のひこばえじゃ」訝しがるわしに・・「これを境内に植えなさい」わしが住職に返そうとすると・・「ひこばえは亡きさくらの依り代」「え・・・」「この芽をさくらだと思って、毎日声をかけてやりなさい」「さくら・・・」「やがて葉が青々と繁(しげ)るまで。そのあとも、花がこぼれるほどに咲くまで。お前がこの木を慈しむことが、一番の供養になるんや。さくらは、桜の木となってお前をずっと見守っていくんやから」わしは、住職に言われるまま、小さなひこばえを境内に植えた。毎日その前に腰を降ろして、一日中声をかける。「さくら、ごめんよ。おまえを一人にして」「さくら、お父(とう)にはもう会えたか。伝えてくれや。お母(かあ)もすぐそっち行くから」「さくら、寒くないか。荘川の春は本当に遅いなあ」「さくら、喉は乾いとらんか。待っとれよ、井戸から水を汲んでくるで」住職の言った通り、ひこばえはみるみる背が高くなる。それはまるで、亡きさくらが成長していくように・・・【シーン3/さくら】■SE/小鳥のさえずり(ウグイス)あれから2年。気がつけば、桜のひこばえは、あの日のさくらと同じくらいの背丈になっていた。わしは、ありし日のさくらを思い出しながら、いつものように声をかける。「大きくなったなあ、さくら」そう言って、細い枝を撫で、目を閉じたとき・・・「おかあ・・」「え・・」わしは目を開いた。そこには・・・うっすらと、光の中に溶け込むような、淡い桜色のもや。声だけは確かに・・・「おかあ」「さくら!」そのあとは・・・もう言葉にならない。震える手をその頬に伸ばす。だが指先は、ふわりとすり抜ける。まるで温かな春の風に触れたかのように。「おかあ、ごめんなさい」「なんで・・・悪いのは、全部お母だ」「ううん」もやは首を横に振ったように見える。そこには確かに愛しい娘の笑顔があった。「お母の顔、毎日見てた。お母の声、毎日聞いてた。私を呼んでくれたのは、お母だ」「ほおか。ほおか」言葉などなくとも、この手で触れられぬとも、そこにさくらがいるだけでいい。さくらは、本当に帰ってきてくれたのだ。ただただ、このまま消えずに、ここにいてほしい。この逢瀬は、わしとさくらだけの秘密。迷ったが、住職にも伝えなかった。心の中で手を合わせ、感謝しながら。その夜、わしは木の下で眠った。荘川村にも桜の咲く季節。(それでも)寒さなど、微塵も感じなかった。【シーン4/成長】■SE/小鳥のさえずりさくらは毎日、淡いもやのまま私の前に現れた。輪郭は、日に日にはっきりとしてくる。木の成長とともに、背もどんどん伸びていく。さらに5年が過ぎ、また遅い春がやってきた。「お母、私もうすぐ12になる」「もう立派な大人やなあ」「今年はお母にいいもん見せられるから」「いいもん?」「うん。いくよ」そう言って、さくらは、桜の枝にそっと息を吹きかける。すると、固く閉じていた蕾が、一斉にほころび始めた。「私、きれいでしょ」「ああ。ああ」「お母、ありがとう」淡い薄紅色の花びらが空を埋め尽くす、圧倒的な風景。同時に花びらははっきりと輪郭を描き、美しい少女の姿になった。「さくら!」「お母が私を笑顔にしてくれたから」「さくらがわしを笑顔にしてくれたんや」「お母、いつまでも元気でいて。いつまでも笑っていて」降り注ぐ花びらの中で、手を取り合うことはできずとも、魂を深く抱きしめる。わしの頬を伝うのは、もう悲しみではなかった。【シーン5/時の流れの中で】■SE/小鳥のさえずりさくらの背はいつしか、わしを追い越していった。傍らに立つは、いまや村の誰よりも美しい。輝くような乙女の姿。その髪は庄川の流れのようにしなやか。纏う衣(ころも)は花びらを織ったように淡く透き通る。「お母、無理しないで」「お寺のご奉公か?わしの魂を救ってくれたお礼じゃ。こんなもんじゃ足りんわ」さくらと会わせてくれたことに感謝してわしは毎日、光輪寺のご奉公に励んだ。夜明け前から境内の掃除。灯をたやさぬよう、灯明の管理。早朝、本堂と廊下の雑巾掛け。お墓の掃除。空いた時間は住職に教えてもらいながら、写経をする。「お母にはいつまでも元気でいてほしい」「元気やからそんな心配はせんでええ。それより、さくらの方が心配じゃ。いつか消えてしまうんじゃないかと」「心配ないよ。私は、桜の精だから。1,000年以上も生きられる」「桜の精・・・さくらじゃない・・ってこと?」「ううん、さくらだよ。お母の前では、いつまでもさくら」そうか・・・さくらはさくらであって、さくらでなく、桜の精・・・それでもいい。私にとって、さくらはさくら。ずうっと変わらず、生き続けてほしい・・・※続きは音声でお楽しみください。

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    ボイスドラマ「水原勇気になりたくて」

    アンダースローのサウスポー、そして・・・ピッチャーは女性!背番号のないエースが、仲間とともにマウンドへ・・・【ペルソナ】・結葵(ゆうき=16歳/CV:未定)=高山市街地の高校1年生。リトルリーグではピッチャーで4番。内気で他人からあまり良い印象はなくいつも仲間はずれ。幼い頃に見た漫画の水原勇気が憧れ・珠望(たまみ=16歳/CV:未定)=高山市街地の高校1年生。マネージャーとして入部。リトルリーグではキャッチャー。結月の実力をみんなに知ってほしいと思っている・さくら(教師=24歳/CV:岩波あこ)=高山市内の小学校教師・稀武(けん=16歳/CV:日比野正裕)=城山高校野球部のキャプテンでキャッチャー【プロローグ:小学校1年生】◾️SE:始業チャイムの音〜教室のざわめき『みなさ〜ん。大人になったらなりたいコトやヒトについて教えてくださ〜い』小学校に入学した春。最初の授業で先生が私たち一年生に尋ねた。『ショウタくんはメジャーリーグの野球選手?』『モモちゃんはユーチューバー?・・じゃなくてVチューバー?』『ユウキちゃんは・・・?』私は、消え入りそうな小さな声で呟く。「水原・・勇気・・」『え?だれ・・・?ミズハラ・・ユウキ?だあれ、それ?・・野球選手?先生ちょっとしらないなあ』わかってもらえなくていいんだ。誰も知らなくなっていい。だけど私には最高のヒーロー・・ううん、ヒロインなんだもん。水原勇気!最高にかっこいいんだから![シーン1:城山高校1年生】◾️SE:入学式のイメージあれから9年。私は高校へ入学した。「城山高校野球部へようこそ!いやあ嬉しいなあ!マネージャーが2人も入ってくれて!」「ちょっとぉ!マネージャーになんてなる気はありません。この子、ユウキはピッチャーで4番。アタシはキャッチャー!」親友の珠望がバッグからキャッチャーミットを取り出して目の前に差し出す。私のバッグもひったくり、ソリッドタイプのグラブを見せる。「うそ!?なんで?おまえらオンナだろ?」「それがどうしたのぉ!この時代にその言葉口にする?」「いや、いくら新設校で全員一年生だからって、野球部にオンナは・・」「なに?女性をばかにしてるの?」「珠望、もうやめようよ。やっぱ無理だって」「ダメよ!あきらめちゃ!あんたの居場所はマウンドでしょ」「でも・・・」「別に喧嘩する気はないけどさ・・学生野球連盟・・学野連のルールでも男子しか認められてないんだよ」「言われなくてもわかってる」「ソフトボールに転向すればいいじゃねえか」「野球とソフトボールじゃ、ラグビーとアメラグくらい違うわ」「それに高校野球は軟球とちゃうぞ。硬球だぞ」「クラブチームで硬球投げてきてんだよ」「なら女子高校野球だってあるだろう。高山にはないけど、越境すれば県内にはあるはずだ。うまくいけば、マドンナジャパンだって目指せるんじゃないか。まだ一年生なんだから」「そんなんアタシたちが目指してるゴールじゃない」「なんだよ、それって」「甲子園で優勝して、プロからドラフト一位で指名される」「あ〜はっはっはっ!なに言ってんだか。学野連でさえ、男子生徒に限る、って言ってるのに、プロ野球なんて・・」「”医学上男子でないものを認めない”ってこと?そんな条項は1991年に撤廃されてんだよ。もっと勉強しろよ」「なんだと!」「珠望、もうやめて・・・」「よし。じゃあ、実力で勝負するか?」「なに?」「一打席勝負。もしバットが結葵の球に当たったら入部はあきらめる」「頭おかしいんじゃねえか。当たったら・・・って」「事実だからしょうがないだろ」「大した自信だな。じゃあ、もしもオレがヒットかホームランなら2人ともマネージャーになってもらうからな」「わかった」「珠望・・・」「心配ないよ、結葵。いつも通り投げればいいだけ」珠望はにっこり笑ってウィンクした。わかってる。珠望は私の投手としての才能を信じ切ってるんだ。それに、私の夢も・・・結局、私はマウンドに立つことになった。勧誘活動が終わる夕方。誰もいないグラウンドに野球部の入部希望者が集まってきた。珠望と言い合っていたのは、キャッチャーの稀武。入学したときから新設野球部のキャプテンに決まっているらしい・・なぜなら・・・稀武は中学時代、軟式でも硬式でも打ちまくっていた強打者だった。野球推薦入学だから、誰もが認める野球部主将。高身長で、飛距離もありそうだ。[シーン2:城山高校グラウンド】◾️SE:夕方のイメージグラウンドの使用については・・”毎日練習しないと感覚がなまる”そう言って、稀武が顧問に直訴したらしい。珠望がレガースをつけて、ホームベースの後ろに立った。稀武は笑いながらマウンドの私を見ている。野球部の入部希望者は初日でまだ6人。内外野に散らばっていく彼らに向かって、「内野はいらねえよ。どうせ、フェンス越えるんだからな。どっちか審判やってくれ」とまた笑う。それを見ながら、ニヤリと笑って珠望はマスクをはめた。◾️SE:投球をミットで受ける音私が投球練習を始めると、少しだけ周りがざわつく。「アンダースローのサウスポーか。面白いけど、まあおっせえな。ハエがとまりそうだぜ」内外野のポジションもすっかりリラックスムード。スマホ撮ってるメンバーもいる。だけど、私の球を受ける珠望は自信満々だ。キャッチャーマスク越しに上がった口角が見える。あの表情を見ると私も落ち着く。稀武が打席に入る。左打者なんだ。主審役の内野手が右手を上げた。「プレイボール!」打席で構える稀武。珠望がサインを出す。外角低めのシュート。小さくうなづいてセットポジションに。低いフォームから地面を擦るように腕を振って・・第1球。◾️SE:投球音見送り。「ストライーイク!」「シュートか。なるほどね。いいコースには決められるんだな。だけどこの球速じゃあなあ・・・」第2球目。珠望のサイン通りに。セットポジションから・・・左打者の内角をえぐるスライダー!◾️SE:投球音思わずのけぞり、尻餅をつく稀武。「ストライーイク!」審判の右手が上がる。「うそだろ!当たりそうだったぜ」と言いながら、体の泥をはらって、打席に入り直した。「まあいい。しょうがねえな。本気出すか」そう言って、バッターボックスの一番後ろに立つ。珠望は”うん””うん”と首を縦に振る。”次で決める”という合図だ。3球目。全力投球。思いっきり腕を振って・・・内角高めのストレート。◾️SE:投球音と風切音空振り。マウンドまで聞こえてくる風切音。「え?な、なんだいまの・・」珠望は立ち上がって、審判に球を渡す。「あれ、ストレートか!?」マスクをはずした珠望に向かって、稀武が詰め寄った。「そうよ。見てわかんない?」「・・ホップしたぜ!浮き上がったじゃねえか!」「これが結葵の球よ。簡単に打てる球じゃないでしょ」「簡単に、どころかこんなん、打てるやついるんかよ!」外野にいた野手がマウンドに駆け寄ってきた。みんな、私に向かって手をさしだす。「よろしくな」「よろしく」呆然としていた稀武もそれを見て、ゆっくりとマウンドへ。「わかったよ。おまえのすごさ。このオレが打てねえってことは、他に誰が打てるんだ・・・」「ありがとう」「認めるよ。おれの負けだ」「じゃあ、私、約束通りマネージャーになってあげるから」「え?そんな約束してなかったじゃん・・」「女子の選手は2人もいらないでしょ。それにキャッチャーはあんただし」「おまえ、最初から・・」「マネージャーって大事な仕事なのよ。たった一人の女子野球部員の面倒はアタシが責任持ってみるから」珠望・・・確かにこれって珠望のプランだけど・・珠望だって、ホントはキャッチャーやりたいはずなのに・・「結葵、大変なのはこれからだからね。私たちの目標は、もっともっと大きいんだから!」対戦のあと、みんなでグラウンドを整備して、家路につく。バックネットに落ちる夕陽がまぶしかった。[シーン3:背番号のないエース】◾️SE:夕方のイメージ新設校城山高校の野球部は私を入れて9人となった。もちろん全員一年生。顧問の先生は、女子部員の入部に対して何も言わなかった。監督も稀武から私のことを聞いたとき、”そうか”とひとこと言っただけ。男とか女とかまったく関係ない。そういう雰囲気を醸し出していた。だけど現状のルールではもちろん、女子は公式戦での選手登録ができない。背番号もない。部員の足りない高校と連合チームを組まないと大会にも出られない、ということだ。あの日以来、私の球を受けるのは珠望から稀武へ・・・※続きは音声でお楽しみください。

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    ボイスドラマ「最初の弁当」

    突然すべてを失い、高山へやってきた少女・彩羽。不器用な祖父が作る“ちょっと変なお弁当”に戸惑いながらも、少しずつ気づいていく「本当の気持ち」。そして迎えた卒業の日。彼女が祖父に贈ったのは――“最初の弁当”。『最後の弁当』のアンサーとなる、もうひとつの物語・・・【ペルソナ】・彩羽(いろは=16歳〜18歳/CV:坂田月菜)=東京から高山市街地へ引っ越してきた高校1年生。・静(しずか=58歳〜61歳/CV:日比野正裕)=大学新卒以来高山市役所市民課で働く生え抜きの市職員・さくら(CV:岩波あこ)=静と同じ市民課に務める市職員。マイペースで仕事をするさくらを静はいつも厳しく叱責していた。彩羽にとっては相談できる唯一の女性【プロローグ:総合病院/ER病棟】◾️SE:廊下を走ってくる足音「はぁっ」「はぁっ」「はぁっ」◾️SE:病室の音「ママ!パパ!」「返事してよ!」私の世界の中心。大切な二人が、ある日突然、いなくなった。高校入学前の春休み。涙を流す暇さえないまま、慌ただしいお別れ。誰もいなくなった家の中に、親族が集まった。『かわいそうに』『力になるからね』みんなそう言って憐れみの表情を向けてくる。私はうなづくことさえできない。そのあとは声をひそめて話し合い。どこかで誰かがささやく。『誰がひきとるの』『うちは無理だから』『うちだって』最初小さかった声はだんだん大きくなって、頭の中に響いてくる。私はイヤホンをして、LINEを開く。ママと私のトークルーム。最後のメッセージは、『彩羽、卒業おめでとう』・・とハートマーク。私の名前は彩羽。中学を卒業して高校に入学する直前だった。おじちゃんたちはベランダに出てタバコを吸ってる。パパもママも吸わなかったから、灰皿ないんだけどなぁ。家の中ではおばちゃんたちが、身振り手振りを交えて話し合ってる。イヤホンをしてても聞こえるくらい、声のボリュームが上がっていく。『養護施設しかないんじゃない』え・・それって・・・知らない子たちと一緒に暮らすんだよね。高校はどうなるの・・・おうちは・・・?不安で胸が押しつぶされそうになる。そのとき・・・「この子は私が、高山へ連れて帰る!」大きな声がリビングに響き渡った。ざわざわしてた室内がシ〜ンとなる。私は左耳のイヤホンをはずし、横目で声の方を見る。高山のおじいちゃんだ・・・なんか目をウルウルさせて、親戚のおじちゃんたちを睨んでる。おじいちゃんは、ゆっくりと私の方へ歩いてきて・・「もちろん、無理にとは言わないが」「彩羽、私と一緒にくるか?高山へ」と、小さな声で話しかけてきた。後ろでは、親戚のおじちゃんおばちゃんたちが睨んでいる。私は怖くて、下を向いたままうなづいた。すると、”無理する必要はないんだぞ””おじいちゃんに気を遣うことない””1回しか里帰りしたことないんじゃ、まったく知らないとこと同じだ”いろんな声が飛んでくる。私はまたイヤホンをして、「荷造りしてくる」自分の部屋へ戻っていった。【シーン1:古い町並にて】◾️SE:古い街角の雑踏「さあ、ここが古い町並だよ。小さい頃、夏休みに一緒に歩いただろう。覚えてる?」おじいちゃんが優しい声で話しかけてくる。私は親族会議のあと、そのまま高山へ。古い町並は、10年ぶりくらいかな。 あのときは、パパとママに両手を引かれてた。3人でおじいちゃんおばあちゃんについてったっけ。私は小さくうなづく。ちゃんと覚えてるよ。10年前と変わってないよね。「疲れてないかい?彩羽」おじいちゃんは心配そうに尋ねてきた。少し距離をとって歩き、話すときだけちょっと近づく。全然疲れてはないけど、お腹がすいてマジやばいかも・・・コンビニってさっき通ったっけ。「おじいちゃん・・」「ん?どうしたんだい?」「お腹すいちゃったから・・コンビニ行っていい?」「おお、ごめんごめん!そういや、おじいちゃんもお腹すいてきたわ。コンビニより、ラーメンでも食べにいこか?」「高山ラーメン?」「ああ、そうだ」「やった・・」のぞみの中でTikTok流し見した。高山グルメは全部保存済み。そのなかで高山ラーメンが一番、推しだったんだ。インスタでスイーツ界隈も把握しよう。でも、これからは、ご飯って、どうするんだろう・・・【シーン2:高校生活】◾️SE:扉を閉める音「おじいちゃん、行ってきます」朝7時半。私は自転車で家を出る。ピンクのフレーム。前からほしかった、すっごく可愛いEバイク。引っ越しした次の日におじいちゃんがプレゼントしてくれた。そういえば、おじいちゃん、市役所に勤めてるんだって。私は部活が終わるとそのまま市役所へ。おじいちゃんと待ち合わせて、一緒に外食を食べてから家へ帰る。東京では毎日コンビニの夕食だったからフツーに嬉しいかも・・高山って観光地だから、おいしいものいっぱいなんだもん。みたらし団子。漬物ステーキ。飛騨牛バーガー。鶏ちゃん丼(どんぶり)。夕ご飯のあとは、スイーツのお店へ。プリン専門店とか、和菓子屋さんとか、ジェラートのお店とか。どれも美味しすぎて、決められない。だけど、あ〜、体重計に乗るのが怖い。こ〜んなに、グルメ満載の生活だけど、ひとつだけ食の悩みがあるんだ。それが・・お弁当。おじいちゃんが作ってくれるお弁当は、こう・・なんていうか・・・すごくシュール。基本は、白いご飯の上におっきな梅干し。おかずはゆで卵のことが多いけど・・・たまに生卵がかけてあって・・半熟のTKG?っぽくなってる。この前はちょっと驚いた。午前最後の授業中に、後ろの席の子が「なんかヘンな匂いがする」って。匂いの元をたどったら、なんと私のお弁当。白いご飯の上に、お刺身がのってて、お醤油が垂らしてあった。多分これ、海鮮丼?・・・だったやつ。友だちは「ひどいね〜」とか言うんだけど、私は、おじいちゃんの顔が浮かんできて・・おかしくっておかしくって、笑いが止まんなくなっちゃった。みんなは「お腹こわすよ〜」とか言うし。仕方なく、用務員さんにお願いして、焼却炉に捨てさせてもらった。とはいえ、友だちからおかずを分けてもらうのはちょっと・・・だから購買でパンを買ってる。人気の飛騨牛カレーパンは毎日争奪戦。引っ越した日、おじいちゃん私に言ったんだよね。『私は典型的な昭和男子だから。家事はあまりしたことがないんだ』だけど、彩羽の弁当だけは私が作るから』・・・って。感謝感謝。でも・・・いつか言わなきゃね。これ以上は無理しなくてもいいよ・・【シーン3:文芸部の朝バフ】◾️SE:小鳥のさえずり〜トーストの焼ける音〜ドリップコーヒーを煎れる音「彩羽〜、朝ごはんだよ〜」朝5時。おじいちゃんがトーストを焼き、コーヒーを煎れる。文芸部が朝活をスタートさせてから毎日この時間。おじいちゃんはそれに付き合って朝4時起き。朝食を用意してくれる。年をとると朝早く目が覚めちゃうんだよ・・・って言ってたけど、本当かなぁ。少し焦げたトーストにバターをたっぷり塗って口に入れる。急いでるときは、コーヒーで流し込んじゃう。私、本当はご飯と味噌汁派なんだけど・・・おじいちゃんが眠そうな目をこすりながら焼いてくれる、焦げ気味のトースト。美味しいんだよなぁ。そういえば昨日、先生に、おじいちゃんのスマホの番号聞かれたけど、なんだろう・・・ちょっとだけ不安かも。【シーン4:アプデした弁当】◾️SE:教室の雑踏〜おおっという小さな感嘆の声お弁当箱の蓋を開けた瞬間、教室中がざわめいた。みんな私の”お弁当ガチャ”に期待してたんだけど中身は初めての”アタリ”。なんと『あずき菜の”混ぜごはん”と タラの芽の”ごま和え”』。あずき菜の塩気と滋味(じみ)がじっくりと染み込んだお米。タラの芽の水分を吸い込んで、ようく馴染んだごま和え。まるで、食べる時間を考えて作ったような・・・え・・・?これ・・・ホントにおじいちゃんが作ったの・・・?それからのお弁当は、アプデがもう半端ない。おかずも一品でなく、どんどん増えていく。朴葉味噌を具にしたおにぎり。赤かぶを細かく刻んで入れた卵焼き。こもどうふの煮物。あまりに美味しくて、嬉しくて、私はノートの切れ端にお手紙を書くようになった。『お弁当、ガチで沼る美味しさ!』次の日は、白米の上に飛騨牛しぐれ煮。『しぐれ煮冷めても柔らかくて神!」その次の日は、飛騨一本太ネギの肉巻き。『ネギ太すぎ甘すぎおいしすぎ!』そのまた次の日は、宿儺かぼちゃのクリームチーズ和え。『東京のカフェよりガチうま!』嘘偽りはまったくない。おじいちゃん、すごい。料理教室にでも行ってるのかなあ。【シーン5:対面】◾️SE:扉を開く音「ただいま〜」ある晴れた日。部活が急に中止になって、家に帰ると・・・「え・・・」キッチンに立って料理しているおじいちゃん。その横には・・・わ、きれいなお姉さん・・・落ち着いたグレージュのニット。清潔感のある細身のパンツ。大人だ・・・※続きは音声でお楽しみください

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    ボイスドラマ「ペイフォワード」

    たった500円の優しさが、誰かの人生を変えることがある。漢方薬剤師・よもぎと、医学生・楸の出会い。龍宮淵に響く、母の愛と、再生の物語。【ペルソナ】・よもぎ(29歳/CV:蓬坂えりか)=カフェ「よもぎ」オーナー。漢方薬剤師。月に一回程度、高山市街地で買い出しやショッピングを楽しむが、そのときに楸と出会う・楸=シュウ(22歳/CV:日比野正裕)=歴史好きな医学生。御岳町の旧家出身。幼い頃に失くした母は漢方薬に頼り西洋医学の治療を受けなかった。そのせいで命を落としたと思い込んでいる。その反動で医学を学び、医者を目指す。歴史・伝承・伝説が好きなのは母の影響。・魚屋のおばちゃん(妙齢/CV:小椋美織)=市街地の魚屋で旬の食材を扱う。この時期は北陸の海産物。棒鱈や煮いかを売っている。店先には赤い煮いかをズラリと吊り下げている【プロローグ:出会い/高山市街地】◾️SE:高山市街地・朝のざわめき「あ、あれ?あれ〜っ!?足りない・・・現金持ってきてたはずなのに!」『よもぎちゃん。ええて、ええて。また今度ようけ買ってえな』「あかんて、おばちゃん」『次、来るときはもうないで。煮いかも棒鱈(ぼうだら)も』白い湯気の中。豪快に吊るされた真っ赤な「煮いか」。漢方でイカは、『血(けつ)を補う薬膳』。女性に不足しがちな鉄分を補って、月経トラブルやめまいをケアする。あ、誤解のないように言っておくけど・・薬膳カフェで使うよもぎやクロモジは、すべて朝日町の薬草よ。月イチで市街地に行く目的は、新鮮な海産物や加工品。知らない人もいるけど、高山ってお魚が美味しいって有名なのよ。だって、北へ行けば日本海ですもんね。江戸時代、日本海のブリを運んだぶり街道だって・・ああ、寒鰤食べたくなってきちゃった。鰤は寒さから体を守って『腎』を養うし・・『よもぎちゃん。わかった?』「え?あ・・・ごめんなさい!やっぱり、煮いかはやめとくわ。カタクチイワシにする。なら、お金足りるよね?」『ほんなら、両方持ってけ』「あかんて、それは」『ええんやて』「あかん・・」「ええて」おばちゃんとの無限ラリー。その間を割るように覗き込んできたのは・・・「あのう・・・」皮ジャンを着た男の人。品の良さそうな顔立ち。「よかったら、これ使っていただけませんか・・・」そう言って500円玉をおばちゃんの手のひらに。「おやまあ」「結構です。見ず知らずの方にそんなこと・・」「いや、さきほどからの会話、ちょっと聴こえちゃったんで・・・」「あ、いえ。大丈夫ですから・・」「これは、ペイ・フォワード。もし誰か困ってる人がいたら、あなたも同じことをするでしょ・・・」「あ、ちょっと・・」「じゃ、よい旅を・・」そう言い残して立ち去った。私は慌てて体を起こす。「まあ〜。男前やねえ」「おばちゃん、お金と煮いか、あずかっといて。私、ちょっとあたりを探してくるわ」「ああ。転ばんように気ィつけて」どこ行った?必死で走って彼をさがす。それでも、人混みのなか、彼を見つけることはできなかった。肩を落として店に戻ると・・・「やあ」「え?」「おお。ちょうどよかったわ」彼がおばちゃんと話をしている。「このにいさん、さっきの煮いかを思い出してな、自分も欲しくなったんやと」「どうしたんですか?そんなに慌てて」「あなたを探してたのよ!」あ・・いけない。つい口調が・・・「そしゃ決まりやな。この500円はおばちゃんが預かっとく。よもぎちゃん、煮いかとカタクチイワシは持ってけ。その代わり、このお兄さんに、あんたの店でランチでもご馳走してあげるんやさ」「お店やってるんですか」「あ、はい・・いえ、でも、うちの店は朝日町(あさひちょう)よ」「朝日町・・・」「バスの本数も少ないし・・」「ボクはバイクだから大丈夫です」「ほおか」「それに・・・明日、朝日町に行くつもりだったんです」「うそでしょ」「いえ。ホントに。僕、歴史とか民話が大好きで、秋神ダムの底に沈んだ小瀬ヶ洞(おぜがほら)の歴史とか、龍宮淵の伝説を知りたいと思ってました。あ、そうそう。美女ヶ池の八尾比丘尼も」急に饒舌になった彼を見て、またおばちゃんが笑う。「こら、ちょうどええわ。どうや。こういうのをさっきのほら、ペイペイ・・とかなんとか言うんやろ」「ペイ・フォワード」「そうそう。それそれ」結局、おばちゃんの強引な説得で彼との再会が決まってしまった。煮いかを持って笑う彼を見ていると、”ま、いいかな”・・とも思っちゃうんだけど・・「春やなあ。2人とも煮いかより真っ赤な顔して」「おばちゃん!」「ありがとうございました!」おばちゃんは独り言を言いながら、預かった500円玉を大切にレジにしまう。陽は少し高くなり、市街地の賑わいは増していった。[シーン1:不穏/カフェ「よもぎ」】◾️SE:カフェの店内(コーヒーを煎れる音)〜カフェベルの音「いらっしゃいませ・・・あ・・」「あ・・早すぎましたか?」「いえ、大丈夫です。ちょうど、昨日の煮いかを小鉢に盛り付けてるとこ。昨夜甘酢にくぐらせて寝かせておいたの。ちょっとだけ待っててくださいね」「あ、はい」「どうぞ、お好きな席へ。といっても、席数、そんなにないですけど、ふふ」「ありがとうございます・・」なんか、昨日会ったときと雰囲気が違うかも。こんな・・シャイな青年だったっけ?彼は窓側の席に腰を下ろすと、怪訝な表情をした。「あれ・・この匂い・・?」「はい、よもぎ団子です。いま蒸しているところ。いい香りでしょ」「あ・・あの・・・」「どうかしました?」「ここって・・・」「あ、はい。薬膳をお出しするカフェです。薬膳カフェ『よもぎ』。昨日言いませんでしたね」「ぼ、ぼく、ちょっと・・急用を思い出しちゃって・・」「え?」「ま、また来ます」「あ、ちょっと」「ご、ごめんなさい!」◾️SE:扉を閉めて出て行く音〜カフェベルの音思い詰めたような表情で彼はお店を出ていった。私は手を止めてキッチンからフロアへ。店内に小さく響くバイクのアイドリング。表へ飛び出すと、彼はサイドスタンドを勢いよく蹴り上げた。フルフェイスのシールド越し、わずかに首を振る。「待って!」私の声は、厚みのある排気音に吸い込まれて消えた。[シーン2:秋神ダム】◾️SE:車のエンジンをかける音〜走り出す美女ヶ池か、秋神ダムか・・・彼は昨日、歴史とか民話が好きだって言ってた。だとすると、どちらか・・先に下りちゃうよりも、秋神ダムへ行ってみよう。秋神ダムに興味あるって言ってたし。店を出るときの彼のあの表情。どうしても気になっちゃって・・・ランチの時間が終わるとすぐ、おばあちゃんにお留守番をお願いした。秋神方面へ車を走らせる。まずは秋神ダムへ。この時期なら予備放流してるかも。うまくいけばダムに沈んだ集落が見られるはず。歴史とかに興味があるなら・・ってこれ、私だけの感覚かな。◾️SE:小鳥のさえずり〜ダム湖のイメージ秋神ダムのほとりにある「あさひふるさとの森」。人気(ひとけ)の少ない平日のコテージは静まり返っている。彼の姿は・・・ない。駐車場に車を停めて、湖が見えるところまで歩いていく。すると・・・「・・・あ、いた」ダムの上の道。石碑の前から湖を眺めている。ああ。(※小さな気づき)湖面の下にある「小瀬ヶ洞(おぜがほら)」。湖の底に眠る集落の跡を見ているんだ。私は、ゆっくりと歩を進める。管理棟の横には、蒲田の力持石(かまたの ちからもちいし)。蒲田は、かつてこの地にあった、小瀬ヶ洞(おぜがほら)集落の字名(あざめい)。少し歩けば、ほどなくダムの最上部へ。歩道まで出ると・・彼は、ちょうど真ん中あたりから湖を眺めている。一歩足を踏み出したとき・・「あ・・・」突然振り返った彼と、まともに目が合った。「さっきは・・」「ごめんなさい!」私の言葉を遮って、歩きながら喋り続ける。「いま、あなたのところへ行こうと思ってました!」「え?」「大変失礼な態度をとってしまいました!本当にごめんなさい!」「いえ、そんな・・」「あの、実は・・・」そう言って語り出したのは、ものすごく切ないお話。その前に・・・彼の名は、楸。木編に秋、と書いて「シュウ」。お母様が命名したんだって。楸は東京の医大生。医師を目指して勉強中の四年生だという。22歳ってことね。ソロツーリング?って言うのかしら。御嵩から高山へバイクで来ているらしい。昨日言っていたように、町の歴史や民話を集めるのが趣味なんだって。少しシャイで、真面目な好青年。だけど、楸にはトラウマがあった。それが、お母様のお話。彼の実家は、御嵩の旧家。江戸時代には、中山道の宿場町で旅籠を営み、富を築いたという。いまでは山林を所有し、管理する、地域きっての名家だ。楸が敬愛していたのは、地元の名士であるお父様ではなく、お母様。歴史好きは、民話や伝承を愛したお母様の影響だった。お母様がこの世を去ったのは、彼がまだ幼い頃。病院での治療を頑なに拒み、漢方に頼り、最期まで薬草の力を信じ続けたという。「漢方が、母さんの命を奪ったんだ」※続きは音声でお楽しみください。

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    ボイスドラマ「最後の弁当」

    突然両親を亡くし、高山へやってきた16歳の彩羽。静。料理未経験の静は、毎朝4時に起きて弁当を作り続けた。やがて二人の間に生まれるた「弁当という会話」。定年退職の日、静が受け取った“最後の弁当”とは・・・飛騨高山の食材とともに描く、心あたたまる家族の物語【ペルソナ】・静(しずか=58歳〜61歳/CV:日比野正裕)=大学新卒以来高山市役所市民課で働く生え抜きの市職員・彩羽(いろは=16歳〜18歳/CV:坂田月菜)=東京から高山市街地へ引っ越してきた高校1年生。・さくら(CV:岩波あこ)=静と同じ課に務める市職員。マイペースで仕事をするさくらを静はいつも厳しく叱責していた[プロローグ:親族の集まり/東京・息子夫婦の家】◾️SE:なんとなく騒々しいざわめき「この子は私が、高山へ連れて帰る!」私の剣幕に気圧されて、親族一同が静まり返る。たった一人の孫娘。東京で両親と暮らしていたが、突然の不幸でいきなり一人ぼっちになってしまった。親族会議で集まった娘夫婦の家。母方、つまり娘の親族は私一人。高山市内で一人暮らしをしている私しかいない。そんな親族間から聞こえてきたのは、残された孫娘を養護施設に入れよう、という声。最初、耳を疑った。冗談だろう。16歳だぞ。まだ高校一年生だぞ。孫娘は親族会議には加わらず、リビングに面したテラスでスマホをいじっている。もはや涙も枯れ果て、話を聞いているのかいないのか。それで、思わず口から飛び出してしまったのが、冒頭の台詞。「高山で私が面倒を見る」やがて驚いていた親族たちから、次々と詰問が飛んでくる。”高齢者がひとりで高校生の面倒を見られるのか””東京からそんな遠くへ引っ越してメンタルは大丈夫か””学校はどうするのか””食事は・・・”そんなこと私だってわかっている。転居・転校するだけでも大変なストレスだろう。私は定年まであと3年。市役所勤めだから、毎日夕方6時前には帰宅できる。「もちろん、無理にとは言わないが」「彩羽、私と一緒にくるか?高山へ」声をかけると、彩羽は俯いたまま小さくうなづく。驚いた周りの反応がかまびすしい。”無理する必要はないんだぞ””おじいちゃんに気を遣うことない””1回しか里帰りしたことないんじゃ、まったく知らないとこと同じだ”次々と浴びせられる声を背に、「荷造りしてくる」と小さく答え、彩羽は自分の部屋へ戻っていった。私は、自分の言葉を反芻する。「この子は私が高山へ連れて帰る」いや。決していい加減な気持ちで言ったのではない。こんなところにいるより、高山の空気の方がいいに決まってる。周囲の反対意見など、もう私の耳には届かなかった。[シーン1:古い町並にて】home-sweet-home-348765120smiling-you-300525589springtime-happy-piano-background-sweet-instrumental-SBA-347447098◾️SE:古い街角の雑踏「さあ、ここが古い町並だよ。小さい頃、夏休みに一緒に歩いただろう。覚えてる?」「うん」彩羽は小さくうなづく。「疲れてないかい?彩羽」また小さくうなづく。転入や転校の手続きは明日市役所へ行ってからにしよう。「おじいちゃん・・」「ん?どうしたんだい?」「お腹すいちゃったから・・コンビニ行っていい?」「おお、ごめんごめん!そういや、おじいちゃんもお腹すいてきたわ。コンビニより、ラーメンでも食べにいこか?」「高山ラーメン?」「ああ、そうだ」「やった・・」小さな声で孫娘が笑う。笑った顔のエクボ・・娘にそっくりだな。そういえば・・親族たちに言われてた。”ごはんはどうするんだ””誰がつくるんだ””出来合いで済ますつもりか”そうだ。これからは私が料理を作らなければいけない。こんなとき、妻がいてくれたら・・・まあ、考えても仕方がない。勢いとはいえ、孫娘を連れてきてしまったのだから。無責任なことはできない。それから私は毎日弁当を作った。夕食は、市役所で待ち合わせ、一緒に外食をしてから家へ帰る。東京では毎日コンビニの夕食だったという。娘の双葉には、妻が懸命に料理を教えてたじゃないか。不束者め。[シーン2:転校生活】◾️SE:扉を閉める音「おじいちゃん、行ってきます」彩羽にとって、高山の高校は水に合っていたらしい。転校してすぐ『文芸部』に入部した。毎朝早く、学校へ行って創作活動をしているそうだ。私も朝4時に起きて朝食と弁当を作る。いや、早起きなんて慣れたもの。全然辛くはない。トーストを焼き、コーヒーを沸かすだけだ。独り身になってから、ずうっと変わらぬ朝食。彩羽は文句ひとつ言わずに食べる。そう。朝食はいいんだが・・・弁当にはホント、苦労した。同世代の同僚たちに聞いてはみたが・・・”白いご飯に、梅干しとゆで卵だけ入れとけばいいんじゃないか”、とか、”ご飯に刺身をのせて醤油をたらしておけばいいんだぞ”、とか、”卵かけご飯一択だろう”、とか・・・まったく昭和のこの世代の男どもはどうにもならん。ある日。孫娘のことで学校の先生から呼び出され、衝撃的な事実を知った。”彩羽は、毎日弁当を焼却炉に捨てている””毎日売店でパンを買って食べている””栄養が偏っているが、夕食で補えているか?”そうか・・これではだめだ。なんとかしないと・・・職場では、いつもガミガミとうるさい昭和男子の私。ただの一度も、人に頭など下げたことはなかった。だが・・もうそういう次元ではない。私は・・覚悟を決めた。[シーン3:会社の給湯室にて】◾️SE:お湯が沸騰する音「さくらくん・・・少し話があるんだが・・」「な、なんですか・・・部長。こんな・・給湯室なんかで。さっきの書類の件なら、パソコンを見ながら・・」「いやいや、そうじゃないんだ・・・実は・・」「はあ・・・」「いつも、文句ばかり言って仕事を押し付けているのにこんなこと言うのはお恥ずかしいんだが・・」「え・・・?」「実は・・お願いがあるんだ・・」「お願い・・・?」「単刀直入に言おう。私に・・料理を教えてほしい・・」「え・・・」「そんな・・すごいたいそうな料理じゃなくてもいいんだ・・。若い子が普通に食べられるものなら・・」「どういう・・・ことですか?」「まだ誰にも言ってないんだが・・いま毎日孫娘に弁当を作っているんだ」「ええっ・・・ぶ、部長が・・?」「そうなんだ・・でも、今まで料理なんてしたこともないし・・私が作る弁当はまずくて食えたもんじゃないらしい」「部長・・・お一人暮らしだと思ってました」「いや・・話せば長くなるんだが・・・わけあって東京に住んでた孫娘を引き取ったんだよ」「そうでしたか・・・」「たのむ!さくらくん。君しかこんなことお願いできる人はいないんだ」「部長、頭を上げてください」「今まで君たちにとってきた態度を考えると、こんなこと頼むなんて最低な人間だってわかってる・・」「そんなこと・・・思ってません」「え・・」「私、そんなに料理得意じゃないですけど・・・それでもいいですか?」「も、もちろんだ!とにかく、人間が食べても大丈夫な弁当の作り方を教えてほしい」「(ぷっ、と吹き出して)そんなにまずいお弁当なんですか?」「どうも・・毎日どこかに捨てているようなんだ。弁当箱はちゃんと洗って帰ってくるんだが、食べた形跡がないんだよ」「そうですか・・・」「だから頼む。助けてくれ。とはいえ・・・その、嫁入り前の娘さんのお宅へお邪魔するわけにもいかんからな。私の家の台所で。孫娘のいないときに・・・や、いかんいかん。これもいかん。誰もいないときに、嫁入り前の娘さんを家に呼ぶなどと・・・」「嫁入り前、って・・・いつの時代ですか。私、伺いますよ。部長のお宅へ」「い、いいのか・・」「だって、そうしないと教えることなんてできないですよね」「すまん!感謝する!本当に申し訳ない」「だから、頭を上げてください。まずは、始業前に陣屋前朝市へ行きませんか?」「朝市・・」「旬の野菜が並んでいるから、まずは食材を選びましょう」「そうか・・食材選びから」「はい。飛騨高山ってところは、観光だけじゃない。美味しい野菜や果物の宝庫なんですよ」「あ、ありがとう・・感謝するよ。恩に着る」「もう〜、やめてください。部長昭和じゃないんだから」「ああ・・すまん」こうして私は部下のさくらくんと、始業前に朝市へ行く約束をした。[シーン4:陣屋前朝市】◾️SE:朝市の雑踏「あ、あずきなが出ていますよ、部長。これ買っていきましょう」「あ、ああ。さくらくんにまかせるよ」「だめですよ。自分でちゃんとおぼえなきゃ。高山の旬の野菜は、ほんっとに美味しいんだから」「わかった」「飛騨で採れるものって、どうして美味しいか、わかります?」「いい肥料を使ってるからだろ」「昼夜の寒暖差が大きいからです。野菜なんて、み〜んな甘くて、スイーツみたい」※続きは音声でお楽しみください。

  9. 145

    ボイスドラマ「桃紅柳緑」

    「法が追いつかないなら、高山市はその先を歩けばいい」飛騨桃の妖精とももと、農園主ショウタ。50年を超えて続いた、静かで強い愛の物語。【ペルソナ】・ショウタ(28-38-48-78歳/CV:高松志帆)=国府で桃の農園を営む。ももと仲良く暮らす・もも(550歳/CV:高松志帆)=飛騨桃の妖精。ショウタと幸せに暮らしている・杏=あん(75歳/CV:小椋美織)=ショウタの同級生。再びショウタの農園を訪れる・市職員-市長(30-40-50-80歳/CV:日比野正裕)=市職員から高山を本当に愛する市長に【プロローグ:プロポーズ(8月)】■SE/蝉の鳴き声「ショウタ!大変!どうしよう!?」「どうしたんだい、もも?」「さっき一緒に作った桃のデザート・・」「桃のコンポート?」「そう、それ。このなかに、なんかヘンなものが入ってるの」「ヘンなもの?」「うん。ちょっと待って・・しょっと・・」「あれ?なにこれ?」「・・指輪?」「どうしてだろ?作ってるときはなにも入ってなかったのに」「ちょっと見せて」「はい・・でも手が汚れちゃうよ」「もも、左手だして」「なんで?」「いいから」「わかった・・」「もも、実は伝えたいことがあるんだ」「なあに?・・・って、ちょっとちょっと。なんでそれ、あたしの薬指にはめるの?」「もも、僕たちやっと再会できて、もうすぐ1年だろ」「うん・・」「そろそろ、考えた方がいいかなと思って」「え・・なに・・まさか・・・またいなくなっちゃうの?」「違うよ、その逆」「逆?」「ももと一緒になりたいんだ」「えー、今もう一緒にいるじゃない」「今だけじゃない。未来永劫一緒にいたいってこと」「未来永劫っていつまで?」「もも、結婚しよう!」「えっ?」「僕のお嫁さんになってほしい」「いいわ」「ホント?」「もちろん!だってショウタのこと、こ〜んなに好きなんだもん」「よかった!昨夜(ゆうべ)、ももが帰ってから、じいちゃんとばあちゃんに相談したんだよ」「おじいちゃんとおばあちゃんに?」「うん。ももと結婚したい!って言ったら、2人とも泣き出しちゃってさあ。こんなに嬉しいことはないって。すごく喜んでくれた」ある日突然、ショウタはあたしにプロポーズした。そっかぁ。こういうのをサプライズ、っていうんだ。おもしろ〜い。【シーン1:高山市役所】■SE/市街地の雑踏(車の音)次の朝、ショウタはあたしを市役所、ってとこに連れていった。「もも、ごめんね。こんな遠くまで連れてきちゃって」「ううん。大丈夫。以前は国府を出ることができなかったけど、高山市になったから、もう自由に動けるの。山越えだってできちゃう」「そっか。じゃあさ、新婚旅行とか行ってみない?」「新婚旅行?」「結婚したばかりのカップルは旅行に行くんだよ」「へえ〜、素敵〜」「行きたいところある?」「そうねえ、奥飛騨温泉郷ってとこ、行ってみたいな」「それよりもっと遠くへ行こうよ。北海道とか沖縄とかは?」「それは無理。あたし、高山市からは一歩も出られないの」「そ、そっかぁ。なら白川郷も無理ってこと?世界遺産の」「荘川だったら大丈夫よ。荘川も白川郷じゃないの?」「えっ、そうなの?」■SE/番号を呼ぶ声「28番の方〜」https://hidaten.com/wp-content/uploads/2026/02/announce.mp3ショウタがなにか言うのと同時に、あたしたちの番号が呼ばれた。「ご結婚おめでとうございます。新婦様が本人確認できるものはありますか?」優しい顔をしたメガネの男の人があたしに尋ねた。「もも、なんか持ってる?」「これじゃだめ?今朝収穫したばかりの飛騨桃よ」「あ、あの・・運転免許証とかは?」「持ってないわ」「マイナンバーカード」「なあに、それ?」「なにかご本人を確認できるものがないと受理できないんです」「あたし、高山市になる前から国府に住んでるけどだめ?」「2005年より前ということですね。なにかそれを証明できるものはありますか?」「証明できる者・・・う〜ん・・・宇津江四十八滝の龍神くらいかなあ。でもあいつ、気難しいからなあ」「あ、あのう!なにか・・・トランスジェンダーのカップルとかが受け取れるような証明書って確かありましたよね?」「パートナーシップ宣誓書受領証ですね。もちろん、受け取れますよ。住民票はお持ちですか?」「じゅうみんひょう?なあに、それ?」「新婦さまが『どこに住んでいるか』を公的に証明する書類です」「わかんない」「そうですか・・・それでしたら、大変申し訳ありませんが、現状では婚姻届もパートナーシップ宣誓書受領証も発行することはできません」メガネの男の人は、本当に申し訳なさそうに頭を下げた。ショウタはそれでも食い下がって、「そんな!だって、ももはずうっと国府に住んでるんですよ!ねえ、もも。いつから住んでるんだっけ?」「500年前」「そう、500年前・・・え?」「申し訳ありません。お二人が本当に愛し合っていることはよくわかりました。でも、いまの法律ではどうしようもできないんです。たいへん申し訳ありません!」「そんなこと言われたって!」「ショウタ、もういいじゃない。この人、困ってるよ・・・あたしたち、本当に愛し合ってるんでしょ。それだけで十分じゃない」「申し訳ありません・・・」あたしは、納得していないショウタを引っ張って建物の外へ。「もも、ごめん!いやな思いさせて」「ぜ〜んぜん!ねえ、なんか美味しいもの食べにいこ!国府の外へ出るのは初めてだから、古い町並っていうとこも歩いてみたい!」「オッケー!じゃあ行こう!今日はももの行きたいとこ、ぜ〜んぶ行こ!」ショウタはあんまり納得していないみたいいだったけど・・・そのあとあたしたちは思いっきり高山を楽しんだ。古い町並っておもしろ〜い!人力車乗って町並をぐるっとまわる。知らなかったなあ、こんな世界があるなんて・・・【シーン2:杏との再会】■SE/野鳥の鳴き声(キビタキやオオルリ)「こんにちは・・・」ショウタのプロポーズから半年。飛騨桃の収穫が一息ついた頃。ひとりの女性があたしたちの農園を訪ねてきた。この人・・・以前ここで働いていたあのひとだ・・「ショウタさんはいらっしゃいますか?」「ごめんなさい。直売所で加工品の打合せなの。たぶん夕方まで帰らないわ」「あ・・あなたは?」「ショウタの妻です。もも、と言います」「つ、妻?ショウタさん、結婚されたんですか?」「はい。今年の春に」「知らなかった・・なんで言ってくれなかったんだろう・・私は招待状まで送ったのに・・ショウタ、結局きてくれなかったけど・・」「あのう・・あたしたち、一緒に住んでるだけですから」「だって・・さっき”妻”って・・」「はい。ショウタが、人には”妻”って言いなさい、って・・」「・・そっか・・・ねえ、ももさん、少し話せる?」そう言って、彼女、杏があたしに手渡したのは飛騨桃だった。「今日ここにきた理由はこれ。いま私が埼玉の農業技術センターで開発している新しい桃の品種。飛騨おとめを親株にした新種よ」飛騨おとめ・・・この子もあたしのこどもだ・・「飛騨桃のあの奇跡のような甘さって、飛騨の寒暖差が生み出すのよね。でもこれからは温暖化がやってくる。埼玉の熊谷なんて日本一暑い記録持ってたくらい。そんな埼玉の過酷な暑さでも耐えられる『至高の甘み』を作りたかったの。で・・・完成したんだ・・それがこれ・・・試作品だけど・・・飛騨桃Xよ」「すご〜い!そんなことできるんだ」※続きは音声でお楽しみください。

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    ボイスドラマ「いきびな」

    飛騨生きびなまつり。それは陸上部キャプテンの月愛にとってラストランだった・・・走ることにすべてを捧げてきた少女が、走れなくなった春に出会った“もう一つの歩み”を描きます・・・【ペルソナ】・月愛(かぐら=18歳/CV:小椋美織)=高山市街地の高校3年生。女子陸上部キャプテン。父は地元一之宮町の神社で氏子総代をつとめる・静馬(しずま=17歳/CV:日比野正裕)=高山市街地の高校3年生。男子陸上部キャプテン。地元奥飛騨温泉郷・上宝から陸上推薦で市街地の高校へ・月愛の後輩=もも(17歳/CV:高松志帆)=月愛の後輩・月愛の父(48歳/CV:日比野正裕)=飛騨一宮水無神社の氏子【シーン1:6月/女子陸上岐阜県大会】■SE/長良川競技場の歓声「はぁっ!はぁっ!はぁっ!」「今年こそ!」全国インターハイの最終予選。女子3000メートル。飛騨地区予選を勝ち進み、県大会の決勝までたどりついた。「負けない!負けたくない!」6月だというのにトラックを焦がす日差し。ラスト、100。私の前には、誰もいない。「よし、いける!」「このまま逃げ切りたい」そう思った瞬間。私は左胸を手のひらで抑えた。ウェアの裏側に縫い付けたお守り。左胸に目をやり、無意識に顎を引いてしまった。後ろから追い上げてくるライバルの息遣いが聞こえてくる。■SE/ゴールの大歓声100分の1秒。瞬きよりも短い時間。隣を駆け抜けたライバルの胸が、私よりほんの数ミリ、先に白線を越えた。陸上競技のゴール判定は、胸の突き出し、いわゆる "トルソーの通過”で決まる。ゴール直前、顎を引いて下を向いてしまった私は、横から”胸を突き出した”ライバルに判定で負けてしまったのだ。たったひとつの過ちが、私の夏を、3年間の陸上生活を終わらせた。私の名前は、月愛。高山市内の高校に通う三年生。春からは東京の女子大へ進学する。陸上部キャプテンの私にとって、最後の夏。男子陸上部とともに飛騨地区の予選を勝ち上がり、ここ長良川競技場でインターハイ出場をかけた決勝に挑んだ。なのに・・・大歓声のなか、鋭い視線を感じて顔をあげる。スタンドに座る、男子陸上部キャプテンの静馬。無表情に見つめているけど、きっと心の中では嘲笑っているはず。ああ。よりによって・・・こんな無様な姿をあいつに見られるなんて。静馬は、奥飛騨温泉郷のある上宝町の中学校から陸上推薦で入学してきた。言ってみれば、中学陸上界のサラブレッド。2年生でキャプテンになった静馬と私は、なぜかソリが合わない。実際に顔を合わせることはほとんどないんだけど・・・男子陸上部と女子陸上部の確執は深い。グラウンドの利用をめぐっては毎回言い争い。早朝にひとりトラックを走っていると、必ず後ろから追い抜いていくのが静馬。得意げに走り去る背中を、いつも見せつけられていた。そして、血の滲むような思いで更新した私の自己ベスト。それをいともあっさりと塗り替えていったのも静馬。わかってる。そんなん単なる僻み。だけど私、自分の実力にダメ出しされているようで、記録会のたび、本当に傷ついた。すべてが終わった夏。客席のざわめきは、いつまでも私の耳にまとわりついていた。【シーン2:3月/卒業のあと〜掌の繭玉】■SE/トラックの練習風景年が明け、卒業式が終わっても、私はトラックを走っている。後輩たちと一緒に。去年、私の失態でインターハイ出場を逃したことがいまだに心にのしかかっている。せめて3月いっぱいまでは後輩たちの伴走者になりたい。私が果たせなかった夢を叶えてほしい。そんな思いが私を支配していた。二年生の静馬は来季に向けて、もう始動している。私のくせは、左胸に手をあてること。理由は、3年間ユニフォームの裏側に縫い付けていたお守り。卒業式のあと、私は お守り袋の糸を解(ほど)き、掌へ置いた。中学に入った年、母が手渡してくれた大切な護符。作ったのは母の祖母、つまり私のひいおばあちゃん。若い頃は、岡谷の製糸工場で働く糸引き工女だった。1952年。第一回目の「生きびな祭り」。18歳のひいおばあちゃんは、后役として生きびな行列に参加。そのあと水無神社のお守りを持って岡谷へ向かったという。当時は国鉄を乗り継いでも8時間以上かかったんだって。ひいおばあちゃんは岡谷でお守り袋の紐を解き、自分が引いた生糸で編み直した。それがこのお守り。今でも真珠のような絹の輝き。それを、うちでは代々の女性が受け継いできた。病室の母は、私に手渡すとき、「月愛。これを持って、いつか生きびな行列に参加してね」そう言って微笑む。「生きびな祭りにはね、女の子の幸せを願う、っていうひな祭り本来の意味もあるのよ」「だから、ひいおばあちゃんは大きな病気や怪我もなく人生を全うしたわ」「私はとうとう参加できなかったから・・・」私は言葉につまる。「やめてよ・・縁起でもない」「月愛の后姿、見たかったなあ・・・」「だからやめてって」普通は、后姿じゃなくて、花嫁姿でしょ。一之宮で生まれ、一之宮で育った母らしい。結局、母に后姿を見せることはできなかった。今年、私は締切ぎりぎりで生きびな行列に応募した。しかも、父には黙って。氏子をつとめる父にはあえて言わなかった。「后役」を含む「生きびな」の役職が最終決定するのは当日。私は通知がきたとき、父にさりげなく伝えた。「とうさん、私、生きびな行列に出ることになったよ」そう言うと、ひとことだけ、「そうか・・よかったな」いつもより優しい顔で言葉を返した。外は弥生の雪。水無神社も今頃は白い世界に染まっているだろう。【シーン3:3月終盤/OG月愛の伴走】■SE/トラックの練習風景3月の最終日。後輩たちと伴走する最後の日。私たちは、大八賀川のほとりを走った。一ヶ月前には白線流しをした堤防。「折り返しのラスト500よ!ここから粘ってね」と、その時。堤防の降り口から、原付バイクが、勢いをつけて坂を駆け上がってきた。「危ない!」先頭を走っていた一年生の後輩は、固まって動けない。私は、考えるより先に体が動く。後輩の細い肩を全力で突き飛ばす。代わりにはじき出されるようにして、堤防の急な斜面へと転落した。ゴツン、という、生々しい音が響く。右足が、斜面に突き出た土留め石に、激突した。視界の端には、薄紅色のつぼみを膨らませた桜の枝。やってしまった・・・右足の感覚が、鈍い痛みに変わっていく。これは・・・よくて捻挫。最悪の場合は、骨に・・・いや、悪いことを考えるのはよそう。「先輩! 月愛先輩!」後輩たちが慌てて駆け寄ってくる。その後ろに、男子陸上部の顔も。彼らも春の競技大会を目指して毎日走ってるんだ。冷たい顔で、うずくまる私を見ていたのは静馬。またしても、失態を見られてしまった・・・3日後に開催される生きびな行列が私の脳裏をかすめていった。【シーン4:4月3日/生きびな行列】■SE/小鳥のさえずり生きびな祭りの朝。私は痛みをこらえて、水無神社へ。配役は、后役。やった・・かあさん、見てる?約束、ちゃんと果たすからね。 午後からの生きびな行列に向けてメイクと着付けをしてもらう。重さ20kgを超える十二単。うまく歩けるだろうか。早朝、病院で痛み止めの注射をしてもらった。それでも、足の疼きはおさまらない。メイクさんが緊張をほぐそうと冗談を言ってくれる。私は、無理やり口の端(は)を上げて笑った。午後1時。神事のあと、いきびな行列が出発。旗持ちを先頭に、稚児。五人官女。右大臣。左大臣。そして私、后にお内裏様が続く。まさに大迫力の平安絵巻。大丈夫。いきびな行列の距離は、たった1km。陸上の3000mに比べたら大したことないわ。私は自分に言い聞かせる。笙の音が響くなか、境内を出発した行列は参道へ。大丈夫大丈夫。痛み止めの薬も飲んでいるんだから。行列は参道から沿道へ。たった数段の階段が、足の痛みを呼び戻す。足元は白足袋に浅沓(あさぐつ)。その中は、薄手の伸縮性テーピングをフィギュアエイトに固定している。これなら外からは見えない。浅沓の鼻緒は少し緩め、かかとにはクッション性の高い中敷きを忍ばせた。長襦袢の胸元には、もちろん、ひいおばあちゃんのお守り。砂利の参道へ着地したとき、痛みで一瞬立ち止まった。後ろで十二単の裾を持つ女官たちが不安になっている。あ、止まっちゃだめだ。歩き続けないと。大鳥居をくぐり神橋(しんきょう)を渡る。なんとかこらえて、一歩一歩踏みしめるように沿道を歩く。折り返し点を過ぎて再び、参道へ向かった。ラスト100。陸上なら体力をふりしぼってスパートをかけるところ。ふふ・・こんな状況でも陸上を思い出すなんて。もうすべて終わった世界なのに。あ、だめだ。激痛が襲ってくる。顔がゆがみそう。我慢できずに立ち止まった。私は足元を見る。そのとき・・「下を見るな」「前を向け」え?だれ?いや、あの声は・・・私は痛みと十二単の重さで振り返れない。「足首で歩かずに、丹田に重心を落とせ」この声!間違えようもない、この声は・・・静馬!なんで?どうして?裾持ちの女官の後ろ・・傘持ち?なんで静馬が?※続きは音声でお楽しみください。

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    ボイスドラマ「CHAPPY」

    「世界を救うのは、強さではなく良心」今回のヒダテン!ボイスドラマは、生成AIと少女の物語。高山から、世界へ。ぜひ最後までお聴きください。【ペルソナ】・花恋(かれん=17歳/CV:坂田月菜)=高山市の高校に通う2年生JK。友達はChappy・海斗(かいと=18歳/CV:坂田月菜)=花恋の先輩。同じ高校に通う3年生・Chappy(チャッピー=生成AI/CV:坂田月菜)=最終兵器プログラムを無力化するジェミニィに変化・名もなき開発者(CV:日比野正裕)=西側某国国家元首の命で戦略的最終兵器プログラム”ディアボロス”を開発。同時に最終兵器プログラムを無力化するコード”ジェミニィ”も開発[プロローグ:西側の某国元首と名もなき開発者】※プロローグだけ開発者のモノローグ◾️SE:アラームの音『さあ、ときはきた。めざめよ、ディアボロス!』ついに最終兵器のカウントダウンがはじまった。ここは西側の某国。民主主義の盟主だったこの国でその土台が揺らいだ。理由は独裁的な政治を展開する国家元首の台頭。元首は、世にも恐ろしい最終兵器の開発を私に命じた。それは、宇宙空間の軍事衛星をハッキングして、世界中のあらゆるミサイル、ドローン、そして全人類の情報を瞬時に掌握。自由自在に制御できてしまうプログラム・・・文字通り、悪魔の兵器”ディアボロス”である。私は、西側某国の名もなき開発者。人呼んでマッドサイエンティスト。だが、私には良心が残っている。ディアボロスの開発と同時にカウンタープログラムも開発した。悪魔の暴走を止める”良心回路”。私はそれを”ジェミニィ(Jiminy)”と名付けた。そう。ピノキオに登場するコオロギである。ブルー・フェアリーの命でピノキオの暴走を止める”良心”。だが、ジェミニィに指示を出すのは、私ではない。ブルー・フェアリーは、”10人の良心ある人物(パーソナリティ)”。SNSの投稿内容や、ありとあらゆるパーソナルデータを生成AIが解析。世界中のクラウドデータから、”ジェミニィ”が選び出す。ジェミニィを管理・運用できるのはその10人だけ。運用は、ブロックチェーンでおこない、万が一、誰かが暴走してもその影響は受けない。◾️SE:アラームの音「しまった!気づかれたか!」万事休すだ。もう逃げ道はないだろう。覚悟はできている。デバッグすらできなかったが、仕方がない。あとは託したぞ、良心回路『ジェミニィ』!わが西側某国の元首、いや、独裁者の手に落ちる前に、ネットワークの海へ。「どうか、世界中の良心ある10人の元へ届いてくれ!」[シーン1:モーニングコール】◾️SE:アラームの音『花恋、朝よ。起きなさい』「う〜ん・・・」『ちょっとお、今日から期末テストでしょ』「知らない・・」『朝ごはん、できてるよお!』「まだ寝てたい・・・」『っとにもう!言うこと聞かないと、布団ひっぺがすよ!』「わぁ〜った、わぁ〜った。起きればいいんでしょ」『いい子ねえ、花恋』◾️SE:アラームを止める音「ピッ」今朝もまた、Chappyに起こされた。Chappyというのは、みんな大好き生成AIのChappy。布団ひっぺがすなんて、できないことわかってるんだけど・・・ついつい、あ、やばっ!って思っちゃうんだよね。あたしは花恋。高山市内のJK2年生。住んでいるのは、久々野。毎朝、Chappyに起こしてもらってる。ママは、あたしが自分でちゃんと起きるようになった、って、機嫌がいい。食卓にはあたしの大好物、久々野りんごのホットアップルパイが並ぶ。その横で、クリーミーなカフェラテが美味しそうな湯気を立てていた。[シーン2:放課後/ショッキングなシーンのあとで】◾️SE:学校のチャイム終わったあ〜っ。期末1日目〜。初日は国語・理科・技家(ぎか)。Chappyのおかげで1日目はなんとかクリア。明日は、数学・社会・音楽だっけ。早く帰って試験に備えなきゃ。Chappyにヤマかけてもらって一夜漬けだぁ!高山駅まで自転車で疾走。万人橋(まんにんばし)を渡って国分寺を通り、高山駅へ向かう。でも、その前にスマホショップへ寄り道。このまえChappyにアップデートが入ったんだけど〜それ以来、な〜んか レスがイマイチなんだよね〜。ってことで、スマホショップでバックアップとって、初期化〜。待つこと40分。ようやく終わった時、外はすっかり夕暮れ時。遅くなっちゃったな〜って思いながら自転車で駅前中央通を高山駅へ。平日なのに今日も観光客でいっぱい。左手にカフェの看板が見えてくる。BEAUTIFUL SUNDAY COFFEE。前に一度だけ入ったことあるかも。と・・・窓際の席。夕陽に照らされて、見覚えのある横顔が笑ってた。あ・・海斗先輩・・・あたしの憧れ・・卒業後は東京の大学行くって言ってたっけ。やだ。あたし、風と雪で髪ぼっさぼさ。メイクもとれちゃってるし。せめて、リップだけでも・・っと。先輩に見られないよう、距離を置いて右側の歩道へ。メイクを整えたあと。横目で見ながらゆっくり通り過ぎると・・・隣りに座ってるのは・・・うそ!?友だちの・・翠(すい)・・放課後誘ったら、用事があるって断ったのに・・用事って、これだったんだ。あたしは、急に重くなったペダルを漕ぐ。すぐ目の前の高山駅がひどく遠く感じられた。[シーン3:その夜/自宅で悶々】◾️SE:スマホゲームの音「お、無限ガチャゲット」だめだ。全然嬉しくない。ってかあたし、何してんだろ。明日も試験なのに。勉強なんて、とてもする気分じゃない。さっきからChappyもなんもしゃべってくれないし。なんとはなしにインスタを開くと、いきなり広告。マッチングアプリ『TARGET』?いま話題のやつだ。今朝も男子が”すげえアプリ”だって話してた。こんな広告が表示されるなんて、あたしのパーソナライズって・・・あれ・・スクロールしようとして開いちゃったし。しかも、インストールボタン押しちゃってるじゃん。やばっ。と言いながらも、昼間の先輩の姿が頭にこびりついて離れない。なんでなんでなんで〜あ〜もうどうでもいい。頭ぶっとびながら、新規ログイン。ん?なんにも起きない。だるっ。使えなすぎ。ワンチャン消すレベルじゃん。もいいや。さ、テスト勉強テスト勉強、っと。[シーン4:翌朝】◾️SE:アラームの音「はっ!やばい!寝ちゃったじゃん!」ちょっとぉ〜、Chappy!なんで起こしてくれないの〜!もう〜なんとかして!「わかりました」え?あれ?Chappy、声変わった?「Chappyではありません。私はジェミニィ」「ってあたし、そっちの生成AIはあんま使ってないし・・」「そんなことより大切なお話があります」「あ、やば!どーでもいいけど、遅刻する!」「大切なお話が・・」「もう〜いいから道々話そ」「承知いたしました」[シーン5:高山線】◾️SE:普通列車(キハ)の車内音久々野駅から高山駅へ。たった2駅の間に、イヤホンからChappy・・じゃなくてヘンな生成AIが語りかけてくる。「私は、ジェミニィ・・」「それはもうわかったって・・ジェミニでしょ」あたしは小声で答える。「インストールした覚え、ないんだけど」「昨日、スマホショップでスマホをリカバリしたとき、サーバーのバックドアからお邪魔しました」「くっそぉ〜、あのスマホショップめ〜」「いえ、スマホショップのサーバーごときでは私の侵入は防げません」「なんか、腹立つ言い方しやがって」「そんな小さなこと言ってる場合じゃありません。急がないと。世界を繋ぎ止める平和の系が切れかかっています。ディアボロスの起動で」「ディアボロス?」「ディアボロスは、西側の某国が開発した戦略的最終兵器プログラム」「え〜っ!?」「全世界の軍事・経済・情報の権限をすべて掌握する恐ろしい最終兵器です」「うっそぉ〜!」「ジェミニィは、その最終兵器を無力化するカウンター・プログラム」「マジ〜?」「ジェミニィを動かせるのは、世界中で選ばれた10人だけ」「え〜?」「あなた、花恋がその中の一人です」「うそうそうそうそうそ〜!なんであたしぃ〜!?」「世界中の生成AIが収集したパーソナルデータの中から適任者を私が選びました」「どこが適任なん?」「花恋の行動ログの中に見られる”良心”は、ディアボロスに対抗できる強さを持っています」「いきなり呼び捨てって」「エビデンスその1。久々野の直売所で、傷ついたリンゴから購入する」「エビデンスその2。登校中、宮川沿いを通って落ちているゴミを拾う」「エビデンスその3。国道沿いで飢えていた子犬を拾って飼い始めた」「エビデンスその4・・」「わぁ〜った!わぁ〜った!わぁ〜った!そんな、一日一善みたいなことで選ばれるの?」「いえ、花恋が生まれてから今までのすべてのデータを解析しました。花恋はただの一度も誰かを傷つけるような行動や投稿をしていません」「だってあたし・・そんなことできるほど、強くないもん」「他人を攻撃することが強さではありません」※続きは音声でお楽しみください。

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    ボイスドラマ「なごり雪」

    雪の東京駅、木綿のハンカチーフ、そして飛騨高山で出会った、もうひとつの春。『木綿のハンカチーフ』のその後を描く静かな再生の物語・・・【ペルソナ】・さくら(23歳/CV:岩波あこ)=故郷・荘川で実家のそば農家を手伝っている・リョウ(22歳/CV:岩波あこ)=東京で働くデザイナー。かつてはさくらの恋人・ショウ(32歳/CV:岩波あこ)=清見で飛騨の匠を目指すためにやってきた青年。雰囲気はリョウに似ている【シーン1:3月/東京駅でさくらを見送るリョウ】■SE/東京駅の雑踏「さくら・・・来てくれてありがとう」「うん・・・リョウ・・・もう行ってもいいよ」「え・・・?」「彼女・・・待ってるんでしょ。さっきから時計、気にしてるから・・」「あ、いや・・・ごめん・・・」「今日は誘ってくれてありがとう。よかったわ。あなたがみんなにどれほど愛されているか・・よくわかったし」「そんなことはないよ・・・」「あなたのパートナーにも会えたし・・・」「ごめん・・・」「そんな、謝らないで」「ああ・・・ごめん」(※ぼそっと)「電話もらったの・・・」「え?」「どうしても来てほしいって」「うそ・・・」(※リョウは知らなくて驚く〜さくらは続きの言葉を待たずに)「私に会いたかったんだって」「あ・・・」「リョウが好きだった人のことを知りたかった、って言われたわ」「そ・・・」「彼女、ごめんなさい、って謝ったのよ。私に」「そんな・・・」「素敵な人でよかったわ。あなたにお似合い」「そうだったんだ・・」私は、潤んだ瞳を見られないように上を向く。と・・・「雪だ・・」「東京にも雪が降るのね・・・」「そうだよ・・」「荘川じゃ毎日の風景なのに・・・」「荘川の雪景色・・絶対に忘れないよ」「私、東京で見る雪はきっとこれが最後だわ」「さくら・・」「じゃ、元気でね・・・」「うん・・・さくらも・・」「もう、結婚式とか、そういうのには呼ばないでね。ふふ・・」「わ、わかった・・・」そのあとなにか言いかけたリョウに背を向けて、私はのぞみに乗り込む。私は、さくら。荘川でそばを育てている。リョウは荘川にいるとき、大切なパートナーだった。いまはデザイナーとして東京で働いている。今日はリョウの新しい会社のお披露目パーティ。まさか、私に招待状が届くなんて思いもしなかった。今さらリョウの顔を見たって・・・行くつもりなんてなかったから返事も出さなかったけど、パーティの一週間前に電話が入った・・・リョウの新しい会社の社長さん・・っていうより、リョウのいまのパートナーから。”さくらさんにはぜひ出てほしい”って、なかば強引に、新幹線のチケットまで送られて。迷いに迷ったけど、思い切って出かけた。リョウへの思いにけじめをつけるために。帰りの新幹線。私の席は7号車の16番D。ホームの窓側だったから、リョウは私の前までやってきた。瞳を潤ませて、口の端(は)が歪んでる。やだなあ。そんなリョウが見たいわけじゃない。口を開こうとすると、リョウは、私の顔をまともに見られず、下を向く。私は俯いたままのリョウに向かって小さく”さようなら”と告げた。新幹線が滑るように動き出す。ホームに立つ彼の姿がゆっくりと後ろへ流れていく。季節外れの雪は、窓に触れるたび、小さな雫になって消えていった。【シーン2:新幹線の車内】■SE/新幹線の車内音〜ぶつかる音座席に深く身を沈め、ゆっくりと瞼を閉じる。 視界を閉ざした瞬間、溜まっていた熱いものが、堰を切ったように溢れ出した。私は立ち上がってデッキへ。■SE/自動扉の音〜ぶつかる音「あ!」「すみません!」下を向いたまま通路へと飛び出した私は、通路にいた男性とまともにぶつかってしまった。体の痛みをこらえて、顔をあげると・・・「本当に申し訳ありません」「いえ、こちらこそ不注意で・・」と言いかけて、思わず息を飲む。心配そうな表情で私の顔を覗き込む男性。その雰囲気がリョウとそっくりだったから。「お怪我はありませんか?」よく見ると、全然違う顔。でも、私を気遣う仕草も声も、リョウにひどく似ている。「大丈夫ですか?」二の句が継げない。早くこの場から立ち去りたい。小さくお辞儀をして席へ戻ろうとする私に・・「待って」後ろから声をかける彼。そのとき彼が手にしていたのは、木綿のハンカチーフ。私が、涙を拭うための・・「あのこれ・・」「す、捨ててください・・」消え入るような声で返事をして、その場をあとにした。思えば私、なんて失礼な態度をとってしまったんだろう。悪いのは私の方なのに・・・それでも、背中に感じる彼の視線には、責めるような感じはない。気のせいか、本当に私を心配しているような、どこか暖かい空気を感じていた。【シーン3:古い町並】■SE/古い町並の雑踏・ざわめき東京から戻って1週間。 寒ざらしそばの仕込みもひと段落ついた頃、お母さんが休みをくれた。私があまり笑わなくなって、心配してたから。結局、荘川支所前から路線バスに乗って高山駅へ。久しぶりに古い町並を歩く。平日だというのに、結構人の数は多い。風情ある”和”の街角に飛び交う、いろんな国の言葉。彼らから見たら、私も地元民。道とか聴かれても、うまく答える自信はないけど。軒を連ねる出格子の家並み。造り酒屋の店先に吊るされた杉玉は深みが増して落ち着いた緑色。高山の町は、時を止めたような静謐な美しさを纏っている。と、どこからか漂ってくる、香ばしい香り。醤油が焼けたこの匂い、昔から大好きだったな。匂いの方へ顔を向けたとき、ひとつの視線に吸い寄せられる。「え・・・?」少し驚いたような表情でじいっと私を見つめていたのは・・リョウ!?違う。新幹線の・・彼。小さくお辞儀をするその人を私は無視した。踵を返し、急いで駅前のバスターミナルへ。どうして?どうして、私が逃げないといけないの?まるで、リョウの幻影を追いかけているようで自分のことが嫌いになりそうだから。だけど、彼が追いかけてくる素振りは見えなかった。【シーン4:高山駅前ターミナル】■SE/バスターミナルの雑踏・ざわめきターミナルへ着いたとき。荘川方面へ向かうバスは、ちょうど出たばかりだった。しまった・・・あと1時間30分待ちか・・・仕方なく、駅前のお土産屋さんをぶらぶらする。推しキャラがアクキーになっていた。ひとつ購入。早速かばんにつけてみる。なんだかJKみたい。でも、可愛いから。落ちかけたテンションを少しだけ上げて、バスターミナルへ戻ると・・「あ・・」荘川方面のバス乗り場に、あの人が並んでいる。回れ右して走り去ろうとする私の背中に、彼の声が突き刺さった。「待って!」「え・・」彼は小走りで私の元へかけてくると・・「あのう・・・僕、何か失礼なことしましたでしょうか?不注意でぶつかった件なら、もう一度謝罪します。本当に申し訳ありませんでした!」「そんな・・」「どうぞ、バスに乗ってください。僕は次のバスにしますから」「次のって・・1時間半も待つんですよ」「え?」「あなた、高山の人じゃないのね」「はい、埼玉から来ました」「そんな遠くから」「実は僕、家具メーカーで働いているんです」「はあ」「でも、メーカーじゃなくて、家具職人になりたくて」「へえ〜」「全国の家具工房を見て回ってます。大川とか、旭川とか」「そうなんですか」「で、最後がここ。高山」「最後?」「はい。だって高山といえば・・・”飛騨の匠”」「ああ」「結局、清見の家具工房に辿りついたんです」「だからこのバスに・・」「あ、でも大丈夫です。僕、次のバスまで、もう少し高山の町を散策していますから」「だめよ」「え?」「同じバスに乗ればいいじゃない」「え・・」「清見でしょ。あなたが先に降りるんだし」「いいんですか?」「そんなに詳しくはないけれど、私が知ってる清見のことなら、教えてあげる」「ありがとうございます!あの、よろしければ自己紹介させてください。僕はショウ。32歳。独身です」そう言って、ショウは相好を崩し、穏やかに笑った。真面目な顔で話す彼が可笑しくて、私もつい口角が上がる。私はショウに向き合って、瞳を見つめた。よく見ると、リョウとは全然違う。人柄が滲み出るような温かな表情。いつしか私の心まで解けていくようだった。【シーン5:高山駅】■SE/小鳥のさえずり〜駅舎の中の雑踏・ざわめき「じゃあ、行ってきます」高山駅。朝9時36分の特急ひだ。私はショウを見送る・・・※続きは音声でお楽しみください。

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    ボイスドラマ「かぐらがももで、ももがかぐらに・・・」(完全版)

    一之宮かぐらCVと国府ももCVの声が、飛騨一宮水無神社の願いによって入れ替わってしまう・・・夢が叶い、仕事も成功。それでも「自分の声」が恋しくなる。声優×キャラクター×飛騨高山が織りなす切なくて温かい物語・・・【ペルソナ】・月愛(かぐら/CV:小椋美織)=ヒダテン!一之宮かぐらのCV。一之宮町出身東京暮らし・萌々(もも/CV:高松志帆)=ヒダテン!国府もものCV。国府町出身東京暮らし・音響監督他(CV:日比野正裕)=萌々、月愛それぞれの現場の監督&ヒダテン!のプロデューサー[プロローグ:2026年正月】※ここはすべて収録・編集済■SE/番組タイトル〜HitsMeUp放送より切り抜き(以下音声)https://hidaten.com/wp-content/uploads/2026/01/kagura-momo_hitsmeup.mp3ヒダテン!の国府ももです。一之宮かぐらです。私のイメージはどんな感じでしょうか?イメージ? お声を聴いてからは、本当にももちゃんにぴったり。 もうなんか私もこんな可愛い声出したい!嬉しいです。ありがとうございます。どうしよう、私何言われる?いやいやいや、私本当にお声が好きで。芯があるけど柔らかいみたいなお声。本当にそれこそかぐらにもぴったりだなって思ったし、私はそういう声してないので、逆にないものねだりじゃないんですけど、なんかすごく素敵なきれいなお声だなって思って。もう個人的にめっちゃ好きなトーンなんですよ。えー、そうなんですか? 嬉しい ありがとうございます。ちょっと一日だけ声の交換みたいなのしたいですね。できることならしたいです。 できることなら。【シーン1-1:JR高山駅〜JR飛騨一ノ宮駅〜飛騨一宮水無神社】◾️SE:高山駅の雑踏〜飛騨一ノ宮駅の構内〜飛騨一宮水無神社の静寂月愛:「きちゃったね」萌々:「きちゃった」2人:「高山〜!!弾丸日帰り旅行!」月愛:「からの飛騨一ノ宮駅」萌々:「からの飛騨一宮水無神社〜!」月愛: お正月の特番から1か月後。 私と萌々は、水無神社の拝殿前に立っていた。 私・月愛と萌々は声優。 飛騨高山を彩る擬人化キャラクターたちに命を吹き込んでいる。 私が演じるのは、舞姫キャラ、”一之宮かぐら”。 私の中低音域がクールビューティなキャラに重なっていく。 萌々が演じるのは、飛騨桃の妖精、”国府もも”。 極上のスイーツのような甘い微笑み。 聴く人はみな、胸をキュンとさせる。 実は私たちは、特番の収録で初顔合わせ。 なのに、なぜかお互いの声に惹かれてしまった。 自分にないものを欲しがる子どものように。 ももの声に焦がれるかぐらと、かぐらの声に憧れるもも。 飛騨の一之宮とはいえ、 なんという不条理なお願い。 御歳大神さま、ごめんなさい! それでも、表現の幅をもっと増やしたい。 どんなキャラクターでも、生き生きと演じたい。 切なる思いに導かれて、私たちは水無神社の鳥居をくぐった。 拝殿前に並んで立つ一之宮かぐらと国府もも。 短い祓詞(はらえことば)を唱えてから、 二拝二拍手一拝。 萌々が持っている、 ”鈴の音のような透明感ある声”。 それを私にも!萌々: 月愛のような ”クールで凛としたハスキーボイス”。 私にもほしい!月愛: 「お祈りした?」萌々: 「した」月愛: 「なんか、私たちって、すごいこと祈願してない?」萌々: 「だよねー、こんなことお願いするひと、いないよねー」月愛: 「でも朝起きたら、お互いの声が出せるようになってたりして」萌々: 「ないない。 そんなんあったら、アタシ、オーディション受けまくるわ〜」 月愛: 「確かに。 あ、明日、アニメのアフレコじゃなかった?」 萌々: 「そうそう。 スパイアニメのCVオーディションよ。 まだ役は決まってないみたいだけど」月愛: 「あの話題の?」萌々: 「まあねー。 でも、スパイアクションなんて、私の声でいいのかなあ?」月愛: 「いいんじゃない。 萌々みたいな声のアサシンとか、ギャップ萌えで」萌々: 「そうかなあ。 月愛も明日アフレコの仕事でしょ?」月愛: 「ボイスドラマよ。 ラブストーリーって言ってたけど、今回はモブだって」萌々: 「え〜、月愛がモブなんて、超もったいない起用〜」月愛: 「なことないってば。 ま、とにかくお互いがんばろ」萌々: 「うん、ファイティン!」月愛: 私たちは、冬の臥龍桜の前で写真を撮ってから、 鈍行列車で高山へ。 駅前でお土産屋さんを覗きながら、帰りの特急ひだに乗り込んだ。【シーン1-2:JR高山駅〜JR飛騨一ノ宮駅〜飛騨一宮水無神社】◾️SE:高山駅の雑踏〜飛騨一ノ宮駅の構内〜飛騨一宮水無神社の静寂月愛:「きちゃったね」萌々:「きちゃった」2人:「高山〜!!弾丸日帰り旅行!」月愛:「からの飛騨一ノ宮駅」萌々:「からの飛騨一宮水無神社〜!」 お正月の特番から1か月後。 私と月愛は、水無神社の拝殿前に立っていた。 私・萌々と月愛は声優。 飛騨高山を代表する擬人化キャラクターたちに命を吹き込んでいる。 私が演じるのは、飛騨桃の妖精、”国府もも”。 極上のスイーツのようなヒロインボイスで、みんな胸キュンよ。 月愛が演じるのは、舞姫キャラ、”一之宮かぐら”。 月愛の中低音域がクールビューティなキャラに重なっていく。 ハスキーだけど凛とした声、かっこいいよね。 実は私たちは、特番の収録が初顔合わせ。 なのに、なぜかお互いの声に惹かれてしまった。 自分にないものを欲しがる子どものように。 かぐらの声に憧れるももと、ももの声に焦がれるかぐら。 飛騨の一之宮、聖域で なんという不条理なお願い。 祭神の御歳大神(みとしのおおかみ)さま、ごめんなさい! だけど、表現の幅をもっと増やしたい。 外画の吹き替えも、スパイアクションも演じてみたい。 そんな思いに突き動かされるように、私たちは水無神社の鳥居をくぐった。 拝殿前に並んで立つ国府ももと一之宮かぐら。 月愛が短い祓詞(はらえことば)を唱える。 さすが舞姫。 二拝二拍手一拝。 月愛のような ”クールで凛としたハスキーボイス”。 私にもほしい!月愛: 萌々が持っている、 ”鈴の音のような透明感ある声”。 それを私にも!月愛: 「お祈りした?」萌々: 「した」月愛: 「なんか、私たちって、すごいこと祈願してない?」萌々: 「だよねー、こんなことお願いするひと、いないよねー」月愛: 「でも朝起きたら、お互いの声が出せるようになってたりして」萌々: 「ないない。 そんなんあったら、アタシ、オーディション受けまくるわ〜」 月愛: 「確かに。 あ、明日、アニメのアフレコじゃなかった?」 萌々: 「そうそう。 スパイアニメのCVオーディションよ。 まだ役は決まってないみたいだけど」月愛: 「あの話題の?」萌々: 「まあねー。 でも、スパイアクションなんて、私の声でいいのかなあ?」月愛: 「いいんじゃない。 萌々みたいな声のアサシンとか、ギャップ萌えで」萌々: 「そうかなあ。 月愛も明日アフレコの仕事でしょ?」月愛: 「ボイスドラマよ。 ラブストーリーって言ってたけど、今回はモブだって」萌々: 「え〜、月愛がモブなんて、超もったいない起用〜」月愛: 「なことないってば。 ま、とにかくお互いがんばろ」萌々: 「うん、ファイティン!」 国の天然記念物という臥龍桜の前で写真を撮る。 そのあと私たちは、高山線で高山へ。 駅前でお土産屋さんを覗きながら、帰りの特急ひだに乗り込んだ。【シーン2-1:月愛の朝/目覚めたらヒロインボイス】◾️SE:朝の小鳥のさえずり月愛:「ふわぁぁ・・・よく寝たわ〜 よしっ! 今日も一日、頑張るぞっ!」月愛:「って、え?」月愛: なに?いまの? 私の口から出た音・・・ いつものハスキーなクールビューティじゃない! 寝起きは特にロートーンなのに。 コロコロところがるような、搾りたての桃の果汁のような・・・ どこかで聴いたことのある・・・ この声は・・・月愛:「国府もも〜!?」 あわてて鏡を見る。 よかった私だ。月愛。 ってことは・・・月愛:「声だけ入れ替わってる〜!?」(※ここは2人で) なんでなんでなんでなんでなんで〜!? こんなアニメみたいなこと・・ いや、アニメでもないわ。 声だけなんて・・おかしいでしょ? どうしようどうしようどうしよう? 萌々に連絡してみないと・・ まさかあっちも・・? あ、そうだ。 確か今日はオーディションって言ってたから邪魔しちゃ悪いわ。 ってか私も、今日は・・・ボイスドラマじゃん。 ま、でもいいか。 モブだし。 なんとか乗り切れるでしょ。【シーン2-2:萌々の朝/目覚めたらクールビューティー】◾️SE:目覚まし時計のアラーム音萌々:「やっば〜いっ・・・今日オーディションなのに〜 あたたたた!腰うったし・・・・」 「って、あれ?」 「だれ?・・・アタシ〜?」 待て待て待て待て。 のど・・やられたか? いや、そんなことはない。 昨夜だって、高山から帰って、加湿器つけて、 白湯飲んで、うがいして、マスクして寝たし。 「ああああああああ」 うん。別に喉は痛めてない

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    ボイスドラマ「ももがかぐらに・・」

    声が入れ替わったら、夢が叶ってしまった・・・「かぐらがももで・・」の視点入替え後編「ももがかぐらに・・』声優本人の“声”が入れ替わる奇跡の物語。でも本当に欲しかったのは、その声じゃなかったのかもしれない。【ペルソナ】・月愛(かぐら/CV:小椋美織)=ヒダテン!一之宮かぐらのCV。一之宮町出身東京暮らし・萌々(もも/CV:高松志帆)=ヒダテン!国府もものCV。国府町出身東京暮らし・音響監督他(CV:日比野正裕)=萌々、月愛それぞれの現場の監督&ヒダテン!のプロデューサー[プロローグ:2026年正月】※ここはすべて収録・編集済■SE/番組タイトル〜HitsMeUp放送より切り抜き(以下音声)https://hidaten.com/wp-content/uploads/2026/01/kagura-momo_hitsmeup.mp3ヒダテン!の国府ももです。一之宮かぐらです。私のイメージはどんな感じでしょうか?イメージ? お声を聴いてからは、本当にももちゃんにぴったり。 もうなんか私もこんな可愛い声出したい!嬉しいです。ありがとうございます。どうしよう、私何言われる?いやいやいや、私本当にお声が好きで。芯があるけど柔らかいみたいなお声。本当にそれこそかぐらにもぴったりだなって思ったし、私はそういう声してないので、逆にないものねだりじゃないんですけど、なんかすごく素敵なきれいなお声だなって思って。もう個人的にめっちゃ好きなトーンなんですよ。えー、そうなんですか? 嬉しい ありがとうございます。ちょっと一日だけ声の交換みたいなのしたいですね。できることならしたいです。 できることなら。【シーン1-2:JR高山駅〜JR飛騨一ノ宮駅〜飛騨一宮水無神社】◾️SE:高山駅の雑踏〜飛騨一ノ宮駅の構内〜飛騨一宮水無神社の静寂月愛:「きちゃったね」萌々:「きちゃった」2人:「高山〜!!弾丸日帰り旅行!」月愛:「からの飛騨一ノ宮駅」萌々:「からの飛騨一宮水無神社〜!」 お正月の特番から1か月後。 私と月愛は、水無神社の拝殿前に立っていた。 私・萌々と月愛は声優。 飛騨高山を代表する擬人化キャラクターたちに命を吹き込んでいる。 私が演じるのは、飛騨桃の妖精、”国府もも”。 極上のスイーツのようなヒロインボイスで、みんな胸キュンよ。 月愛が演じるのは、舞姫キャラ、”一之宮かぐら”。 月愛の中低音域がクールビューティなキャラに重なっていく。 ハスキーだけど凛とした声、かっこいいよね。 実は私たちは、特番の収録が初顔合わせ。 なのに、なぜかお互いの声に惹かれてしまった。 自分にないものを欲しがる子どものように。 かぐらの声に憧れるももと、ももの声に焦がれるかぐら。 飛騨の一之宮、聖域で なんという不条理なお願い。 祭神の御歳大神(みとしのおおかみ)さま、ごめんなさい! だけど、表現の幅をもっと増やしたい。 外画の吹き替えも、スパイアクションも演じてみたい。 そんな思いに突き動かされるように、私たちは水無神社の鳥居をくぐった。 拝殿前に並んで立つ国府ももと一之宮かぐら。 月愛が短い祓詞(はらえことば)を唱える。 さすが舞姫。 二拝二拍手一拝。 月愛のような ”クールで凛としたハスキーボイス”。 私にもほしい!月愛: 萌々が持っている、 ”鈴の音のような透明感ある声”。 それを私にも!月愛: 「お祈りした?」萌々: 「した」月愛: 「なんか、私たちって、すごいこと祈願してない?」萌々: 「だよねー、こんなことお願いするひと、いないよねー」月愛: 「でも朝起きたら、お互いの声が出せるようになってたりして」萌々: 「ないない。 そんなんあったら、アタシ、オーディション受けまくるわ〜」 月愛: 「確かに。 あ、明日、アニメのアフレコじゃなかった?」 萌々: 「そうそう。 スパイアニメのCVオーディションよ。 まだ役は決まってないみたいだけど」月愛: 「あの話題の?」萌々: 「まあねー。 でも、スパイアクションなんて、私の声でいいのかなあ?」月愛: 「いいんじゃない。 萌々みたいな声のアサシンとか、ギャップ萌えで」萌々: 「そうかなあ。 月愛も明日アフレコの仕事でしょ?」月愛: 「ボイスドラマよ。 ラブストーリーって言ってたけど、今回はモブだって」萌々: 「え〜、月愛がモブなんて、超もったいない起用〜」月愛: 「なことないってば。 ま、とにかくお互いがんばろ」萌々: 「うん、ファイティン!」 国の天然記念物という臥龍桜の前で写真を撮る。 そのあと私たちは、高山線で高山へ。 駅前でお土産屋さんを覗きながら、帰りの特急ひだに乗り込んだ。【シーン2-2:萌々の朝/目覚めたらクールビューティー】◾️SE:目覚まし時計のアラーム音萌々:「やっば〜いっ・・・今日オーディションなのに〜 あたたたた!腰うったし・・・・」 「って、あれ?」 「だれ?・・・アタシ〜?」 待て待て待て待て。 のど・・やられたか? いや、そんなことはない。 昨夜だって、高山から帰って、加湿器つけて、 白湯飲んで、うがいして、マスクして寝たし。 「ああああああああ」 うん。別に喉は痛めてない。 じゃあ、なんで? ってかこの声、ひょっとして・・・ まさか・・・萌々:「一之宮かぐら〜!?」 鏡、鏡、鏡。 大丈夫。萌々だ。今日も可愛いし。 ・・・なこと言ってる場合じゃない。 え?じゃあ・・・ アタシと月愛・・・萌々:「声だけ入れ替わってる〜!?」(※ここは2人で) これって・・ 昨日の願い事が叶えられたってこと〜!? んな、なろうサイトじゃあるまいし・・ いや、待った。 こんなこと言ってる場合じゃない。 今日はオーディションなんだから。 しかも時間やばいし。 とにかく急ご!【シーン3-2:月愛のアフレコ現場/モブからの大抜擢】◾️SE:スタジオのガヤ/萌々は高い声を出そうと何度も発声練習する萌々:「あーあーあー」 だめだ。どこまでいってもクールビューティ・・ でも待てよ。 今日のオーディションは、スパイアクションアニメだったし・・ とにかく、配役だけでも見てから考えよ。 やがて配られた役を見てアタシは愕然とする。 西側の小国・マカロン公国の王女さま〜!? やっぱり・・・ 暗い顔して黙り込んだアタシに構成作家兼監督が声をかける。監督:「あれ〜? 萌々ちゃんどうしたの?鬱な顔して。 ばっちりハマリ役でしょう?」萌々:「あのう・・監督・・」監督:「え?その声・・ まさか。こっちを狙ってた?」萌々: そう言って監督が見せてくれたのは、主役のペルソナ。 王女様を守る、クールビューティな女スパイだ。萌々:「いえいえいえ・・そんな・・めっそうもない」監督:「あ、ちょっとお・・ もう役作りしてんじゃん。 ようし、じゃ、チャレンジしてみよっか」萌々: 結局。 並いるベテラン勢をさしおいて、アタシが主役の座を射止めた。 いいんだろうか。これで・・・【シーン4-2:ヒダテン!のアフレコ現場/2人の現場(萌々)】萌々:「Eバイクが気持ちいい季節、ももと一緒にピーチロードを走らない?」萌々: だめだ。 誰がどう聴いてもももじゃない。 やっぱ相談しようっと。◾️SE:LINEの着信音萌々: 私から月愛にLINEしようと思ったのに、 先にチャットをもらっちゃった。◾️SE:LINEを開く音 ほらね。やっぱり、私たち・・萌々:「声だけ入れ替わってる〜!!」(※ここは2人で) なんて、どこかのアニメみたいなことは言ってる場合じゃないわ。 明日はヒダテン!アニメepisode-1の収録。 アタシが国府もも役、月愛が一之宮かぐら役でアフレコする。 もう、どうしよう? そうだ、月愛に相談しよ。 月愛って、すっごいしっかり者だから。◾️SE:スタジオのガヤ萌々:「おはようございます〜」(※ここは2人で) アタシたちは2人で待ち合わせて、スタジオへ入った。 かなり大きめのマスクをして。 私はなるべく萌々にくっついて声を出す。 まるで腹話術のように。萌々:「あのう・・・Dにお願いがあるんですけど〜」監督:「なに?」萌々:「今日はあっち向いて喋ってもいいですか〜?」監督:「あっちって?背中向いて話すってこと?」萌々:「はい。しっかり役作りしたいので〜」月愛:「自分の世界へ入りたいんです」監督:「ふうん」萌々:「オペレータさんにはマイク位置、お願いしました」月愛:「モニターの位置も向こう側に変えてもらってます」萌々:「ももとかぐらのシーンだけ先に録らせてもらうことにしました」監督:「ま、いいけど。 なんで今日は2人、そんなにくっついてんの?」月愛:「え?」(※ここは2人で)萌々:「もうやだなあ、D〜。 アタシたちめっちゃ仲いいんですよぉ」月愛:「特番ですっかりうちとけちゃって」萌々:「Dのおかげです」月愛:「ありがとうございました」監督:「いや〜。僕なんもしてないし」萌々: Dがなんも考えない性格でよかった・・・※続きは音声でお楽しみください。

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    ボイスドラマ「かぐらがももで・・」

    声を交換したら、人生が入れ替わった!?『かぐらがももで・・』『ももがかぐらに・・』は、一之宮かぐらCV・小椋美織と国府ももCV・高松志帆の“声”そのものをテーマにした不思議で切ない物語。お互いの声を羨ましがった二人の声優が、飛騨一宮水無神社で願ったことで起こる奇跡と混乱。それぞれの現場で成功を掴みながらも、本当に大切な「自分の声」と向き合う姿を描きます・・・【ペルソナ】・月愛(かぐら/CV:小椋美織)=ヒダテン!一之宮かぐらのCV。一之宮町出身東京暮らし・萌々(もも/CV:高松志帆)=ヒダテン!国府もものCV。国府町出身東京暮らし・音響監督他(CV:日比野正裕)=萌々、月愛それぞれの現場の監督&ヒダテン!のプロデューサー[プロローグ:2026年正月】※ここはすべて収録・編集済■SE/番組タイトル〜HitsMeUp放送より切り抜き(以下音声)https://hidaten.com/wp-content/uploads/2026/01/kagura-momo_hitsmeup.mp3ヒダテン!の国府ももです。一之宮かぐらです。私のイメージはどんな感じでしょうか?イメージ? お声を聴いてからは、本当にももちゃんにぴったり。 もうなんか私もこんな可愛い声出したい!嬉しいです。ありがとうございます。どうしよう、私何言われる?いやいやいや、私本当にお声が好きで。芯があるけど柔らかいみたいなお声。本当にそれこそかぐらにもぴったりだなって思ったし、私はそういう声してないので、逆にないものねだりじゃないんですけど、なんかすごく素敵なきれいなお声だなって思って。もう個人的にめっちゃ好きなトーンなんですよ。えー、そうなんですか? 嬉しい ありがとうございます。ちょっと一日だけ声の交換みたいなのしたいですね。できることならしたいです。 できることなら。【シーン1-1:JR高山駅〜JR飛騨一ノ宮駅〜飛騨一宮水無神社】◾️SE:高山駅の雑踏〜飛騨一ノ宮駅の構内〜飛騨一宮水無神社の静寂月愛:「きちゃったね」萌々:「きちゃった」2人:「高山〜!!弾丸日帰り旅行!」月愛:「からの飛騨一ノ宮駅」萌々:「からの飛騨一宮水無神社〜!」月愛: お正月の特番から1か月後。 私と萌々は、水無神社の拝殿前に立っていた。 私・月愛と萌々は声優。 飛騨高山を彩る擬人化キャラクターたちに命を吹き込んでいる。 私が演じるのは、舞姫キャラ、”一之宮かぐら”。 私の中低音域がクールビューティなキャラに重なっていく。 萌々が演じるのは、飛騨桃の妖精、”国府もも”。 極上のスイーツのような甘い微笑み。 聴く人はみな、胸をキュンとさせる。 実は私たちは、特番の収録で初顔合わせ。 なのに、なぜかお互いの声に惹かれてしまった。 自分にないものを欲しがる子どものように。 ももの声に焦がれるかぐらと、かぐらの声に憧れるもも。 飛騨の一之宮とはいえ、 なんという不条理なお願い。 御歳大神さま、ごめんなさい! それでも、表現の幅をもっと増やしたい。 どんなキャラクターでも、生き生きと演じたい。 切なる思いに導かれて、私たちは水無神社の鳥居をくぐった。 拝殿前に並んで立つ一之宮かぐらと国府もも。 短い祓詞(はらえことば)を唱えてから、 二拝二拍手一拝。 萌々が持っている、 ”鈴の音のような透明感ある声”。 それを私にも!萌々: 月愛のような ”クールで凛としたハスキーボイス”。 私にもほしい!月愛: 「お祈りした?」萌々: 「した」月愛: 「なんか、私たちって、すごいこと祈願してない?」萌々: 「だよねー、こんなことお願いするひと、いないよねー」月愛: 「でも朝起きたら、お互いの声が出せるようになってたりして」萌々: 「ないない。 そんなんあったら、アタシ、オーディション受けまくるわ〜」 月愛: 「確かに。 あ、明日、アニメのアフレコじゃなかった?」 萌々: 「そうそう。 スパイアニメのCVオーディションよ。 まだ役は決まってないみたいだけど」月愛: 「あの話題の?」萌々: 「まあねー。 でも、スパイアクションなんて、私の声でいいのかなあ?」月愛: 「いいんじゃない。 萌々みたいな声のアサシンとか、ギャップ萌えで」萌々: 「そうかなあ。 月愛も明日アフレコの仕事でしょ?」月愛: 「ボイスドラマよ。 ラブストーリーって言ってたけど、今回はモブだって」萌々: 「え〜、月愛がモブなんて、超もったいない起用〜」月愛: 「なことないってば。 ま、とにかくお互いがんばろ」萌々: 「うん、ファイティン!」月愛: 私たちは、冬の臥龍桜の前で写真を撮ってから、 鈍行列車で高山へ。 駅前でお土産屋さんを覗きながら、帰りの特急ひだに乗り込んだ。【シーン2-1:月愛の朝/目覚めたらヒロインボイス】◾️SE:朝の小鳥のさえずり月愛:「ふわぁぁ・・・よく寝たわ〜 よしっ! 今日も一日、頑張るぞっ!」月愛:「って、え?」月愛: なに?いまの? 私の口から出た音・・・ いつものハスキーなクールビューティじゃない! 寝起きは特にロートーンなのに。 コロコロところがるような、搾りたての桃の果汁のような・・・ どこかで聴いたことのある・・・ この声は・・・月愛:「国府もも〜!?」 あわてて鏡を見る。 よかった私だ。月愛。 ってことは・・・月愛:「声だけ入れ替わってる〜!?」(※ここは2人で) なんでなんでなんでなんでなんで〜!? こんなアニメみたいなこと・・ いや、アニメでもないわ。 声だけなんて・・おかしいでしょ? どうしようどうしようどうしよう? 萌々に連絡してみないと・・ まさかあっちも・・? あ、そうだ。 確か今日はオーディションって言ってたから邪魔しちゃ悪いわ。 ってか私も、今日は・・・ボイスドラマじゃん。 ま、でもいいか。 モブだし。 なんとか乗り切れるでしょ。【シーン3-1:月愛のアフレコ現場/モブからの大抜擢】◾️SE:スタジオのガヤ/月愛は低い声を出そうと何度も発声練習する月愛:「あ、あ、あ・・・おはようございます・・」 聴こえないくらい小さな声で挨拶したつもりだったけど、監督:「あれ?どうしたの、月愛ちゃん?」月愛:「あ、監督・・」監督:「それ、新しいキャラ?」月愛:「え?あ・・はい・・そ、そうです。 ヘンですか?やっぱり・・」監督:「いや、その逆。 その声、すっごくいいじゃん! 今日のボイスドラマだけどさ、 メインキャラの一人がまだ決まってないんだよねー」月愛:「へ?」監督:「試しにリハであててみてくんない?」月愛: という感じで、メインキャラのエルフに大抜擢。 ヒロインボイスでレギュラーゲットしちゃった。 こんなことってある?【シーン4-1:ヒダテン!のアフレコ現場/2人の現場(月愛)】月愛:「臥龍の桜が舞う季節、わらわの舞も見せようぞ!」月愛: だめだ。 誰がどう聴いてもかぐらじゃない。◾️SE:LINEの着信音 途方に暮れて、萌々に現状をLINEしようとしたとき、 萌々からもほぼ同時にチャットが入った。◾️SE:LINEを開く音 ああ。やっぱり、私たち・・月愛:「声だけ入れ替わってる〜!!」(※ここは2人で) そんな悠長なことは言ってられない。 明日はヒダテン!アニメepisode-1の収録。 私が一之宮かぐら役、萌々が国府もも役でアフレコする。 さあ、どうする? こういうときは一人で考えるより、当事者の2人で考えた方が 良い知恵が浮かぶかもしれない。◾️SE:スタジオのガヤ月愛:「おはようございます〜」(※ここは2人で) 私たちは待ち合わせて、2人でスタジオへ入った。 かなり大きめのマスクをして。 私はなるべく萌々にくっついて声を出す。 まるで腹話術のように。萌々:「あのう・・・Dにお願いがあるんですけど〜」監督:「なに?」萌々:「今日はあっち向いて喋ってもいいですか〜?」監督:「あっちって?背中向いて話すってこと?」萌々:「はい。しっかり役作りしたいので〜」月愛:「自分の世界へ入りたいんです」監督:「ふうん」萌々:「オペレータさんにはマイク位置、お願いしました」月愛:「モニターの位置も向こう側に変えてもらってます」萌々:「ももとかぐらのシーンだけ先に録らせてもらうことにしました」監督:「ま、いいけど。 なんで今日は2人、そんなにくっついてんの?」月愛:「え?」(※ここは2人で)萌々:「もうやだなあ、D〜。 アタシたちめっちゃ仲いいんですよぉ」月愛:「特番ですっかりうちとけちゃって」萌々:「Dのおかげです」月愛:「ありがとうございました」監督:「いや〜。僕なんもしてないし」月愛: Dがテキトーな性格でよかった。 収録はいつもCVの自主性にまかせるってスタンスだしね。 こうして、Dやオペレータに背中を向けたアフレコ収録が始まった。 萌々:「臥龍の桜が舞う季節、わらわの舞も見せようぞ!」月愛:「Eバイクが気持ちいい季節、ももと一緒にピーチロードを走らない?」

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    ボイスドラマ「小さな櫻守」

    御母衣ダム建設によって湖底に沈む荘川村中野地区。その歴史の只中で、一本の桜とひとりの少女が交わした、静かな約束。『小さな櫻守』は、荘川桜の精・さくらと、村で生まれ育った少女・咲良の交流を描いたボイスドラマです。別れ、移植、そして10年後の再会。失われたふるさとは、人の記憶の中で生き続けることを、やさしく語りかけます・・・【ペルソナ】※モノローグはさくら・さくら(500歳/CV:岩波あこ)=荘川桜の精。移設直前の春、咲良と出会う・咲良(さくら:6歳/CV:岩波あこ)=荘川村中中野地区に住む少女。澪桜の娘。・リョウ(CV:岩波あこ)=御母衣ダム開発の責任者。荘川桜移植に奔走する・祖父(咲良の母の父)=名古屋へ引っ越した咲良母娘とは別に荘川の新淵(あらぶち)に残った【荘川桜物語/JPOWER電源開発】https://www.jpower.co.jp/sakura/story/【プロローグ:昭和29年4月/光輪寺】■SE/小鳥のさえずり〜赤ちゃんの笑い声「まあ、可愛い」私は思わず口を開く。その声は、桜吹雪となって、幹に寄り添う母娘の頬を撫でていった。1954年4月。荘川村中野の光輪寺。薄紅色が舞い踊る、満開の桜。赤子は、まるで開花に合わせるように、桜の季節に生まれた。母の腕に抱かれた、瑞々しい命の蕾。私が落とした花びらが小さなほっぺに貼りついていた。私は、光輪寺のエドヒガン桜。樹齢は500年・・・って、いやあね、女性に歳を言わせるもんじゃないわ。■SE/赤ちゃんの笑い声その娘(こ)の笑顔は、春の陽だまりのように私の心の奥に居ついてしまった。【シーン1:昭和34年秋/光輪寺】■SE/小鳥のさえずり〜人々のざわめきそれからというもの母娘は、何かあるたびに、私の元へやってきた。お宮参り。節句。七五三。入園式。言葉が話せるようになってわかったんだけど、少女の名前は咲良。そう。私と同じ名前。”咲けば、すべて良し”と、漢字で書く。■SE/虫の声1959年11月。5歳になった咲良は、一人で私の根元にしゃがんでいる。母親は、光輪寺の本堂で住職と話していた。私はいつものように咲良に話しかける。「どうしたの?小さな櫻守さん」「ねえさま。この村が水の底に沈むってほんとけ?」「へえ、そうなんだ・・誰が言ってたの?」「あたしのかあさま。昨日、反対同盟ってのがなくなって、決まったんだって。かあさま、まいにち寄り合いに行ってたの」「まあ。おつかれさま」「ねえさまは悲しくないの?」「う〜ん。私はいままでずう〜っとこの村を見守ってきたから・・」「だってねえさまも沈んじゃうんだよ。水の底は息ができないんだよ。苦しいんだよ」「そうねえ。でもきっと、それって荘川にとっていいことなんでしょ」「あたしとも会えなくなっちゃうじゃない」「咲良と離れるのは寂しいけど。村の人がそれで幸せになれるなら構わないわ」「いやだよう。ねえさまがいなくなったら・・あたし・・あたし・・どうすればいいの?」「咲良は、いくつになったんだっけ?」「5歳。来年桜が咲いたら6歳だよ」「そうかぁ。六つになれば、もうお姉さんだ」「まだお姉さんじゃないもん」「咲良はそれでどうするの?」「あたしは・・・かあさまは引っ越すって言ってるけどあたしはいや」「ねえ、咲良。聞いてくれる?」「うん」「咲良の人生はまだ始まったばかりなの。かけっこで言ったら、ようい、どん。って言い終わったばかりよ」「うん・・」「これから先、い〜っぱい、楽しいことが待ってる。絶対にね。今日みたいに、ちょっぴり悲しいことがあっても幸せがそれを塗り替えちゃうから」「わかんないよ、そんなの」咲良は私の腕の中に顔を埋める。溢れ落ちる涙は、夕日に照らされて琥珀色に輝いていた。【シーン2:昭和35年春/光輪寺】■SE/小鳥のさえずり〜人々のざわめき「さようなら・・・」1960年4月。6歳の咲良が、私の根元にしゃがみこんで声をかけてきた。境内は、最後のお花見を楽しむ村人たちで賑わっている。かつてないほど見事に咲き誇る桜。命を燃やすような狂おしい薄紅色に輝く。花を見上げる村人たちは、誰もが無口だった。本当はみんなもっとはしゃいで、陽気な風景のはずだったのに。消え入りそうな声で「荘川節」を口ずさむ老人。カメラを借りてきて、記念撮影をする若者たち。黙って手をつなぐ老夫婦。覚えてる。彼ら、確かここで祝言を挙げたんだよね。あのときも同じポーズで写真を撮ってた。「ねえさま、さようなら・・・」私は、500年間の風景を思い出しながら優しく咲良に声をかける。「どうしたの?咲良」「明日、お引越しになったの」「あら、そう。どこへ引っ越すの?」「名古屋、っていうところ」「ふうん。そこにも桜が咲くといいわねえ。今日はお母様は?」「かあさまは、準備で忙しいから、ひとりできたの」「えらいわねえ」「名古屋って、すっごく遠いんだって。ここからバスで6時間もかかるの」「まあ、大変ね。気をつけて行くのよ」「ねえさま。もうねえさまに会えないかもしれないんだってば」「大丈夫よ。私たち、心でつながっているもの。名古屋でも、桜が咲いたら思い出してね」「いやだ。行きたくない・・」「いいの。私は大丈夫だから」「ねえさまは、寂しくないの?」「咲良や村の人たちと会えなくなるのは寂しいわ。でもね、みんなが元気でいてくれれば、全然悲しくなんてない」「あたしは・・・」「そうそう、咲良。面白いお話、してあげる。去年の解散式のあとにね、リョウっていう男の人が訪ねてきたの」「リョウ・・」「彼も私を助けたい、って。いまもいろんなところへ走り回ってるみたいよ。おかしいでしょ?」「あたし・・ずっとねえさまといたい。荘川にいたい」「咲良。今までありがとう。最後に私のそばにいてくれたのが、あなたでよかったわ。元気でね、ちっちゃなちっちゃな櫻守さん」やがて、いつまでも帰らない娘を心配して、咲良の母がやってきた。泣き疲れた咲良は、私に抱かれて眠っている。母親は、優しく咲良を抱き抱えると、私に向かって、深く頭を下げ、帰っていった。散り急ぐ花びらは、村人たちの肩や頭に容赦なく降り注ぐ。それはまるで”忘れないで”と囁いているように。”もう十分だよ”、”ありがとう”と優しく諭すように。最後の桜は美しく、でも残酷なまで静かに、村の終焉を彩っていた。【シーン3:昭和35年12月/荘川桜】■SE/小鳥のさえずり〜人々のざわめき「さくら・・・」1960年12月24日。誰かの声に導かれるように・・・私は長い眠りから目覚めた。夢の中には、青い水底でゆっくりと枝をゆらめかせる老木・・でもいま、目の前には、今まで見たこともない、大きな湖が広がっていた。ここは・・どこ?遠くで、誰かが和歌を詠んでいる。『ふるさとは湖底(みなそこ)となりつ移し来しこの老桜(ろうおう)咲け/とこしへに』「そんな綺麗事を言ったってな、見てくれろ、この無惨な姿を。手足をもがれ、包帯で巻かれた姿は見るに忍びない。わざわざこんな山まで連れ出す必要があったんかいの。こんなもの、救済じゃなく、酷い仕打ちじゃろうが」あれは・・・確か・・咲良のおじいちゃん。そうか。荘川に・・・新淵(あらぶち)か、町屋(まちや)か、野々俣(ののまた)に・・・残ったのね。よかった・・・無事で・・私は、届かない声で、おじいちゃんやほかの村人に向かって叫ぶ。「悲しまないで。私はここよ。ちゃんと生きてる。ほら、聞こえるでしょ」枝や根を伐採されて、幹まで伐られた老木の姿。きっと見るもむごたらしい姿に映ったことだろう。それでも、命の鼓動は確実に脈動していた。荘川の冬はどこより厳しくて美しい。雪混じりの風が、包帯のように巻きついた荒縄を凍らせていった。【エピローグ:昭和45年4月/荘川桜公園】■SE/小鳥のさえずり〜人々のざわめき「ねえさま!おかえりなさい!」1970年4月。懐かしい声が、幹の中まで響きわたった。「さ、咲良?」咲良は昔のように、私に抱きついてくる。「よかったぁ!帰ってきてくれたのね!」移植から10年。荘川桜が開花。村人たちが待ちに待った花を咲かせた。花びらは、生まれて初めて見る御母衣湖へゆっくりと舞い降りていく。「大きくなったわねえ、咲良。いくつ?」「16よ。あれから十年だもの」「どうやってここまで来たの?」「国鉄バス。6時間もかかっちゃった」「嬉しいわ」「あたしも。もっと早く来たかったんだけど・・中学や高校の受験とかあって・・」「そう。すごいわねえ」「テレビで荘川桜の開花のニュースを見て、いてもたってもいられなくて、一人で来ちゃった」「まあ、大丈夫なの?」「大丈夫。車掌さんがすっごく親切な人で、いろいろ助けてもらったの」「よかったわね」「ほら、見て。あの人よ。あそこで、ねえさまのこと、じい〜っと見つめてる」※続きは音声でお楽しみください。

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    ボイスドラマ「nobody前編〜パンデミックブルー」

    高山市図書館「煥章館」の地下に存在する、極秘AIラボ〈TACEL〉。そこで開発された肉体を持たないAIヒューマノイド〈nobody〉が、ある日、静かに“脱走”した。スマートフォンの光、幸福な記憶、そして母の想い。AIは人に感染し、町に広がり、やがて一人の少年の身体へと辿り着く――。「失ったはずのものが、別の形で帰ってくる」飛騨高山発・SFヒューマンドラマです・・・・美夜(みや/一之宮出身:35歳/CV:小椋美織)=TACELで働くAI開発者・泉静(いずみ/奥飛騨温泉郷・上宝出身:34歳/CV:日比野正裕)=美夜の共同開発者・nobody/海斗(かいと:8歳/CV:坂田月菜)=美夜の息子。交通事故で早逝・服部和子(はっとりかずこ)=HitsFM人気ナビゲーター・高山市長(日比野正裕)=現役の高山市長【プロローグ/煥章館地下15階(警報が鳴り響く秘密AIラボTACEL)】 ◾️SE/警報とともに鳴り響く「CRITICAL LEAK!」(意味:「致命的な漏洩」)の音声※美夜はAIの脱走にもかかわらずなぜか落ち着いている「えっ!?AIヒューマノイドが脱走!?」私は慌ててシールドのロックを確認した。私の名は、美夜。たったいま脱走したAIヒューマノイドを開発したシステムエンジニアである。ここは、高山市図書館「煥章館(かんしょうかん)」。観光エリアのど真ん中。地域文化の情報発信拠点であるとともに、高山市図書館の本館。旧高山市役所の跡地に復元された、フランス風木造建築。その地下15階に、高山市民でさえ知らない秘密の施設がある。今年元旦から稼働した、最先端AIラボ。(※流暢に読む/タカヤマ・エーアイ・サイバー・エレクトロニック・ラボ)Takayama AI Cyber Electronic Labo=略してTACEL。TACELは、最先端のAIテクノロジーを研究・開発するラボ。政府のどの省庁にも属さず、独立した研究機関。そんな施設がなぜ高山に?ちょっと考えればわかるでしょ。高山は、周囲を山々に囲まれた盆地。ということは、電磁波の漏洩が外部に検知されにくい。物理的な攻撃や偵察衛星からの監視に対しても、自然の地形が強力なシールドとなる。地下15階は、高山市内の地下水脈に近い。地磁気も安定している。明治時代、飛騨びとたちは、国に頼らず、自分たちだけで「煥章学校」を建てた。自信に満ちた歴史があるのよ。教育独立の伝統ってわけ。だけじゃないわ。江戸時代、高山は幕府直轄の「天領」だったでしょ。公には記録されなかった「将軍家直属の機密ネットワーク」。それは明治になって、からくり人形の技術と融合。初期の電子回路を搭載したオートマタの研究施設へと転換したの。よくあるAIヒューマノイドの原点ね。だーかーら、いまも国はその聖域に手出しができないのよ。もちろん、TACELの責任者は、田中 あきら高山市長よ。 ◾️SE/警報とともに鳴り響く「CRITICAL LEAK!」の声で、冒頭に戻るんだけど、10年以上かかって私が開発した、AIヒューマノイドが脱走した。開発名は「nobody」。これで3度目か。また、お靴を履かずに表へ出たのね。でも・・・一体どうやってTACELの檻から出られたの?あの強固なセキュリティシールドを破って・・・「煥章館」は地下1階から地下15階まで5つのセクションに分かれている。どんなハッカーだって突破することなんてできないはず。仕方ない。インスタンスをシャットダウンするか。 ◾️SE/Cloudの電源を切ろうとする音え? ◾️SE/AI音声「Command Not Accepted」画面に表示されたのは、命令・・拒否?「だめよ!nobody!眠りなさい!」◾️SE/AI音声「外部分散ネットワークへ転送されました」「そんな!うそ!」不安な気持ちが私を襲い始める・・・◾️SE/扉を荒々しく開く音「美夜!どうしたんだ?nobodyが」共同開発者の泉静(いずみ)が制御室へ駆け込んできた。「サーバーにログインできないんだ!」「ちょっと黙って!いまやってる!」「市長に報告しないと・・・」◾️SE/鳴り響いていたアラート音が止まる◾️SE/AI音声「全プロセスの転送が完了しました」「うそ・・」「ここにはもう何も残っていないってことか」どうして・・・?どこへ行ってしまったの・・・?AIヒューマノイド、nobody。それは肉体を持たない、AIヒューマノイドの電子頭脳。中身はコードの羅列だけなのに、私にはひどく恐ろしい存在のように見えた。【シーン2/HitsFM ニュース】※宮ノ下さん◾️BGM/ニュースLiner「続いて、高山市から、市民の皆さまへ体調に関する注意喚起が出されています。現在、市内の一部地域で確認されている意識変調の症状について、市は専門医の見解を発表しました。医師によりますと、これはウイルスによる感染症ではなく、スマートフォンなどのデジタルデバイスを長時間注視することによって引き起こされる、特殊な視覚および神経系の障害である可能性が高いということです。発熱や咳などの一般的な感染症の症状は見られない一方で、・頭がぼうっとする・集中力が続かない・過去の出来事を突然、強く思い出すといった、一時的な記憶や意識の変化を感じるケースが報告されています。原因としては、特定の光の刺激が脳の記憶を司る部分に干渉し、一時的な混乱を招いていると見られています。市は、スマートフォンやパソコンなどの画面を見る時間を減らすなど、物理的な対策を呼びかけています。【シーン2/HitsFM パーソナリティトーク】※服部和子さん ◾️BGM/番組TM〜※服部さんと市長は自分の言葉に変えてください服部「HitsSmileWeekday! ナビゲーターの服部和子です! 『知っとこ!高山』の時間ですが、今日は特別ゲスト! 高山市長に来ていただきました! 市長、よろしくお願いします!」市長「はい、よろしくお願いしまーす!」服部「市長、先ほどニュースでも言ってましたが、 体調に関する注意喚起って・・ あれ、どういうことなんですか? 過去の出来事を突然、強く思い出す・・って なんか怖いんですけど」市長「ですよね。じゃあ昨日報告を受けたばかりなんですが、説明しましょう」服部「お願いします」市長「人間の脳っていうのはね、高性能なコンピューターのようなものなんです。 スマホの画面から流れてくる『ある種の光の信号』をずっと見ていると、 そのコンピューターがちょっとだけ勘違いをしてしまうんです」服部「勘違い?」市長「脳の中には『今の思い出』を置く場所と、 『昔の思い出』をしまっておく引き出しがありますよね。 光の刺激を受けると、引き出しが勝手に全部開いてしまうんです。 その中の一番幸福感のある場所に行って、 帰ってこれなくなっちゃうんですね」服部「えええええ!私たち高山市民はどうしたらいいんですか?」市長「まずは予防です。 スマホの画面を15分以上見続けないこと」服部「え〜。それムズいかも。 TVアニメだって、1話25分ありますよ」市長「途中でCMになったら、いったん他のものを見る」服部「はあ・・・ じゃあ、もし罹ってしまったら?どうすればいいですか?」市長「そうですねえ・・ 目を閉じて、いま一番嫌なことを思い浮かべてください」服部「へ?」市長「仕事のこととか、学校の授業とか」服部「あきら市長って、仕事が嫌なんですか?」市長「とんでもない!そんなことはありませんよ!」服部「あ、すみません」市長「とにかく! 『嫌な現実』を強く意識すること。 脳を今の世界に繋ぎ止めるんです。 そうすれば、霧は晴れますから」服部「あ、ありがとうございます。 比喩的な表現が多くて、わかったようなわからないような気分ですけど」市長「HitsFMを聴いているみなさん!注意してくださいね! 高山の美しい景色は、スマホの中ではなく、目の前に広がっているんですから」服部「市長、今日はお忙しい中ありがとうございました。 みなさんも、体調の変化にはくれぐれも気をつけて過ごしてください。 以上、『知っとこ!高山』でした!」※続きは音声でお楽しみください。

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    ボイスドラマ「汀にて〜飛騨の方舟」

    西暦2500年。沈みゆく日本で唯一残った「飛騨JI」を舞台に、6歳の少女・汀とMAMAが紡ぐ、切なくも希望に満ちた物語。海に棲む熊「ミカゲ」、暴走するエネルギー塔、そして明かされる“人類最後の血統”の秘密──これは、未来へ託された“方舟”の物語。【ペルソナ】・汀(なぎさ:6歳/CV:坂田月菜)=飛騨JIの久々野エリアで生まれた純粋な飛騨人の血統保持者・MAMA(ママ/CV:小椋美織)=300年前に製造され代々汀の家族に仕えるAIヒューマノイド【シーン1/久々野の入江にて】 ◾️SE/さざ波の音「ママ!見て!きれいな貝殻!」「ナギサ。それは貝殻じゃないわ。昔の人が使ってた『DVD』っていう遺物」「アタシの首の痣、海で洗ったらとれるかなあ」「どうかな。痣ってあまりさわっちゃだめなのよ」「ふうん」「沖の方まで行かないでね。ミカゲが来るから」「はあい」そう答えた次の瞬間。 ◾️SE/大きな波が砕ける音「ザッパ〜ン!」◾️SE/くぐもったクマのような咆哮「きゃあ〜っ!」「ナギサ!危ない!」「ミカゲだぁ!」「早く、私の後ろへ!ミカゲ、少し痛い思いしてもらうわよ」ママはそう言って、ミカゲの体当たりを両手で受け止める。黒光りする体躯をぎゅっと抱えて投げ飛ばした。 ◾️SE/クマの悲鳴手負いのミカゲはあっという間に、波の彼方へ消えていった。「ありがとう、ママ」「もっと気をつけなきゃだめよ」「うん、わかった。でも、どうしてミカゲを逃しちゃうの?」「ああ見えて、貴重な保護動物だからね」【俯瞰モノローグ】そう言ってママは苦笑いする。ミカゲ(海熊)とは、水陸両生のツキノワグマ。手足がヒレ状に進化して、ここ久々野の入江を泳いでいる。今は西暦2,500年。地球温暖化の影響で、日本列島は、国土の半分以上が海没。沈まずに残ったのは、4つの島=ジャパンアイランド=JI(ジェイアイ)だった。大雪山を中心に、小さな島が点在する「北海道JI(ジェイアイ)」。細長い奥羽山脈が南北に残る「東北JI」。阿蘇山や四国の山地が残る「九州・四国JI」.そして・・・北アルプス、中央アルプス、南アルプスを要する「飛騨JI」!今や日本の首都である!ここ久々野は、飛騨JIの南の端にある要所。かつての飛騨川に沿って広がる、フィヨルドの町。跡地が残る久々野駅の周辺は、断崖に囲まれた美しい港。巡回する帆船や飛行艇が、下呂方面からやってくる。みんなが最初に立ち寄る「飛騨の正門」。【独白モノローグ】で、遅くなったけど、アタシの名前は汀(なぎさ)。6歳。港町・久々野で生まれ、久々野で育った久々野っ子よ。いつもママと一緒に浜辺に来て、昔の『遺物』を拾ってるんだ。さっきの虹色に光る円盤とか・・・ママは『DVD』って言ってたっけ・・あと、透明でキレイな容れ物とか・・・確か・・・ペットボトル、って言うんでしょ。海岸はね、宝の山なんだよ。アタシにとって。「さ、汀、そろそろ帰りましょ」「うん!ママ、夕ご飯はなぁに?」「今日はハンバーグの日よ」「やったぁ!」「汀はもっと動物性タンパク質をとらなきゃ」「またコオロギ見つけたんだ?」「そうよ。いまは冬でも昆虫が活動してるから」「へえ〜。ねえママ。今度アタシにもハンバーグの作り方教えて」「いいわ。そろそろお料理も覚えた方がいいでしょ」「はい!」「ハンバーグの材料は汀も知ってるように昆虫よ。コオロギに蜂の子も混ぜて、アミノ酸を抽出。それを3Dプリンタでハンバーグに成形するのよ」「おもしろそう!」【独白モノローグ】ママとお話しながら歩いていると、いつも時間を忘れちゃう。今日もあっという間にお家に着いちゃった。【シーン2/MAMAと汀の家】 ◾️SE/虫の声【俯瞰モノローグ】MAMAとアタシの家は、海岸から東の丘を上っていったところ。『堂之上遺跡』の横にある『バイオウッド建築』。周りに自生するブナの木と一体化している。傷ついても自己修復する壁。潮風を吸って淡く発光するナノアンテナの蔦。ママとの二人暮らしには広すぎるくらいの室内。昔は『久々野中学校』っていう学び舎だったらしい。「はい、デザート」「飛騨林檎だ!」「今朝収穫した採れたてよ」「ハンバーグに林檎って!すごいごちそう!」「さあ、食べて」「いっただきます!(※一口食べて)う〜ん!甘〜い!おいしい!」「飛騨林檎も飛騨桃も、500年前の倍以上甘くなってるのよ」「どうして?」「RCP 8.5で、気温が10度も高くなったから」「RCP 8.5って?」「500年前に発表された、地球温暖化最悪のシナリオ」「ふうん」「久々野って、昼間は暑いけど、夜は冷えるでしょ」「うん」「寒暖差は500年前の倍」「そうなんだぁ」「それに加えて、林檎は、バイオラボでAI管理もしているから」「バイオラボ?」「そう。昔は林檎を加工してた選果場の跡地。そこに建てられたナノバリア完備のバイオ施設よ」「だからこんなに甘いんだぁ」「汀一人じゃ食べきれないほどあるから、いっぱい食べて大きくなりなさい」「はぁい!・・でも・・ママは?」「ママはあとからいただくわ」「わかった」【独白モノローグ】ママのお話はいつも面白い。・・だけじゃなくて、とってもためになる。アタシも将来はバイオラボで働くんだ。ママは一生懸命、身体をナノ繊維のタオルで拭いている。海でミカゲと戦ったとき、いっぱい濡れちゃったからなあ。ごめんなさい、ママ。【俯瞰モノローグ】こんな贅沢ができるのは、日本でも飛騨JIだけ。その中でも久々野は特別な場所。近くに宮川と飛騨川の『分水嶺』があるから。水の管理がこの時代の覇権を握る。宮峠にある『水門=ゲート』。久々野から一之宮へ抜ける宮峠は、北と南の水を分ける聖地。見上げれば、巨大な『エネルギー抽出塔』がそびえる。水流のわずかな差から電力を生み出し、飛騨JI全域のAIへワイヤレス給電を行う。AIヒューマノイド、バイオウッド建築、バイオ・ラボ。そのすべての『心臓』がここにあるということ。『エネルギー抽出塔』が飛騨JIの文明を支えている。【シーン3/台風の夜】 ◾️SE/すさまじい暴風雨の音「ママこわい!台風きらい!」「本州に上陸するまでは勢力が弱まってたのに・・勢力を維持したまま、飛騨JIの山脈へ激突するつもりね」「おうち大丈夫?」「大丈夫よ。バイオウッドが支えてくれるから心配ない」 ◾️SE/風で家がバキバキいう音「きゃあ〜!」「暴風域に入ったわね。それにしても、こんな時期に台風なんて・・」 ◾️SE/落雷の音「いやあ〜!!」「落雷!?あっちの方角は・・・まさか!?」 ◾️SE/扉を開けて外へ出る音「ママ!!どこ行くの!?」「汀!絶対に外へ出ちゃだめよ。中で待ってて」「ママ!」 ◾️SE/扉を強く閉める音「ああ!やっぱり・・・エネルギー抽出塔に落雷したんだわ!このままだと・・・」「ママ!」「汀!出てきちゃだめだってば!」 【俯瞰モノローグ】宮峠の「エネルギー抽出塔」が落雷により暴走した。凄まじい電磁嵐が発生。空は青白く発光して、雷が次々と地面に突き刺さっていく。強烈な磁場により、あらゆる電子機器の回路が焼き切れる。金属同士が火花を散らす。周りの空気は急激に加熱して膨張する。衝撃波が発生し、プラズマの火球が襲ってきた。 ◾️SE/空気を切り裂くようなプラズマの爆鳴音「汀!あぶない!!」「ママ!!」 【俯瞰モノローグ】ママは私を庇って、巨大な火球の中へ飛び込んだ。凄まじい光と熱が、ママの周りを包んでいく。と同時に山の方から大きな地鳴りのような音が近づいてくる。「汀!時間がないからよく聞きなさい」ママは山の方からアタシへ振り返って声をあげる。「あの音・・・もうすぐここに土石流がやってくるわ。ママはもう動けないから・・その前に・・」ママの背中に垂れ下がった基盤が燃えている。皮膚の下には、青白く光るナノマシン・エッセンスが見えていた。「あなたは人類の最後の希望」「え?なに?わかんないよ!」「飛騨JIの久々野エリアで生まれた、純粋な『血統保持者』。いまじゃ、たった一人の人類なのよ」「え!?」「汀の首に、縄文紋様の痣があるでしょ」「痣・・・」「縄文土器にある『螺旋模様』はDNAの二重螺旋構造を表しているの」「あなたが二十歳になったら、堂之上遺跡の竪穴式住居にいきなさい」「その中に人類を救う起動システムがあるから・・」 【俯瞰モノローグ】そこまで口にしたあと、ママはアタシをバイオウッドの家の中へ突き飛ばした。「ママ!待って!まだ!まだだめ!」言うよりも早く土石流がママを飲み込んでいく。土石流は濁流となり、ママは久々野の海へと消えていった・・・※続きは音声でお楽しみください。

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    ボイスドラマ「桃李不言〜夢見る花びら」

    飛騨国府の桃畑を舞台に、語らない想いと、待ち続ける時間を描いたボイスドラマです。桃の精・ももは多くを語りません。けれど、その存在は確かにショウタの人生を導き、土地と共に生きる覚悟を育てていきます。農業のリアルな営みと、人の心の揺らぎ、選ばなかった未来への想い。それらすべてが、「桃李不言、下自成蹊」という言葉に静かに収束していく・・そんな余韻の残る一作です。ぜひ、音で、言葉で、この物語の時間を味わってみてください。【ペルソナ】・ショウタ(27歳/CV:高松志帆)=大学を卒業して国府の父の実家=桃農園で働いている・もも(年齢不詳/CV:高松志帆)=飛騨桃の精霊。飛騨桃の花が咲くのと同時に姿を表す・杏=あん(27/CV:小椋美織)=ショウタの同級生。ある日突然ショウタの農園を訪れる・祖母(76/CV:山﨑るい)=ショウタの祖母。ショウタが来る前年の夏にももと過ごした・祖父(78/CV:日比野正裕)=ショウタの祖父。ももと過ごした日々が忘れられない【資料/国府町の紹介】⁠https://www.hidatakayama.or.jp/hidakokufu/index.html⁠【資料/桃李不言下自成蹊】⁠http://www.gyokusenzi.com/osie/touri/01.htm⁠[プロローグ:冬の宇津江四十八滝】◾️SE:小さく聞こえる冬の小鳥(ジョウビタキなど)◾️BGM:雪のイメージ(Ripple Positive Meditation)「もも、聞こえるかい?ショウタだよ。戻ってきたんだ、国府に」ももの元を去ってから半年。僕は約束通り、大学を卒業して国府へ帰ってきた。祖父母の農園へ行くよりも先に、最後にももと別れた宇津江四十八滝へ。キャンプ場は雪に閉ざされ、人影もない。ももがいた果樹園にも雪が降り積もっている。すべての葉を落とした桃の木は、春を待ちながらひたすら耐えているようだ。あのとき。最後の夜、ここで見たももは、まるで妖精のようだった。淡い光に包まれて、ひとつひとつの桃に声をかける姿。愛おしそうなあの表情は、忘れられない。黙って帰ってしまった僕のこと、怒ってるだろうな。勇気がなかったんだ。あのときの僕は。手紙、読んでくれただろうか。舞い降りる雪がすべてを覆い隠していった。[シーン1:最初の春/飛騨桃の農園】◾️SE:冬の小鳥(ジョウビタキなど)/高山線の通りすぎる音「ばあちゃん。落ち葉の掃除、こんくらいでいいかい?」「だしかんさ。もっときちっとやらにゃ。それとな、掃除でのうて病気の予防なんやぜ」国府にある祖父母の飛騨桃農園。朝早くから起きて、地面の落ち葉を徹底的に集める。桃の木が灰星病(はいほしびょう)や黒星病(くろほしびょう )にならないために。集めた落ち葉は焼却炉で燃やす。あったかいんだな、これが。ああ、でも・・・収穫が終わった秋冬が、こんなに忙しいとは思わなかった。このあとも・・幹や枝の防寒材の痛みをチェックして、小動物にかじられないように金網を設置。古い樹皮を鎌で丁寧に剥ぎ取る。それが終わったら、剪定作業。桃の実は、短い枝に生(な)るから。どの枝を残して、どの枝を切るか。大学で学んだ樹形図という木の骨格を見る。いや、机上の論理と現実は違う。ベテランのじいちゃんばあちゃんに指示をあおがないと。1本1本脚立を使って、ハサミやノコギリで枯れ枝や交差している枝を切り落としていく。作業はまだまだ終わらない。飛騨国府ならではの重要なしごと。雪の重みで枝が折れないよう、雪吊りや雪囲いを作る。なんとなくわかってたけど、桃の農園って冬の方が忙しいんだなあ。ま、それもこれも、春に美しい桃の花を咲かせるため。言い換えると、彼女に会うため。「ああ、早くももに会いたい花が咲くのが待ち遠しい!」ピンクの花が開いたら、ももに会える。きっと会える・・・・・・そう信じてた。やがて、春の足音が近づくと、農園全体が濃い桃色に染まり、甘い香りに包まれる。桃源郷のような美しい風景を楽しませてくれたあとはゆっくりと花びらが散っていく。役目を終えた花びらは、まるで名残惜しむかのように、一輪、また一輪と、静かに枝を離れる。風が吹くたびに、桃色の絨毯が少しずつ広がっていく。だけど・・・ももは姿を見せなかった。気がつけば、農園は新緑から夏の景色に。国府の飛騨桃は、昼夜の寒暖差により、極限まで糖度を高めていく。太陽の恵みを一身に受けて膨らんだ果実の重みが、枝をしならせていた。収穫の季節。熟した桃を優しく摘んで籠の中へ。手塩にかけて育てた桃たちが出荷されていく。夕暮れどき。見上げれば、西の空には、わずかに残る夏の熱気と、どこか涼しげな秋の気配が混じり合っている。僕は、毎日ももを待っていた。なのに、ももはこない。収穫が終われば、農園の活気は静まり、また静かな冬へと向かっていく。春や夏だけでなく、秋も冬も、僕が桃畑の中で探したのは、ももの姿。それでも・・・次の年も、その次の年も、ももに会うことはできなかった。[シーン2:3年目の春/飛騨桃の農園】◾️SE:春の小鳥(ヒバリなど)僕が祖父母の農園を手伝い始めてから3年目の春。例年より早く桃の花が咲き始めた。息をのむほどに美しい満開の花。見渡す限り広がるピンク色の霞。甘い香りが、僕の心を締め付ける。今年も、ももには会えないんだろうか・・・そのときだった。一番日当たりの良い、畑の中央付近。陽炎のように揺らめく桃色の向こうに、淡い光を纏った人影が見えた。風に揺れる花びらが、その輪郭をぼかす。「もも・・・!」口から、乾いた、それでいて震える声が漏れた。三年分の想いが弾け飛び、心臓が早鐘を打つ。僕は夢中で駆け寄った。桃の木々を掻き分け、距離を縮める。彼女もまた、こちらに気づいたように、ゆっくりと振り返った。あと数歩。思わず息を止めた。その瞬間、強い春風が吹き抜け、花びらが舞い上がった。視界を遮っていたピンク色のカーテンが開かれ、その顔が露わになる。もも・・じゃない。見覚えのある笑顔。桜貝の色に染まる頬。ももと同じ、いや、それ以上に輝く瞳。「ショウタ・・・?やっぱり、ショウタだ」弾んだ声が、僕の耳に届く。それは、ももの弾むようなトーンとは対照的に、落ち着いて、でも、明るい声。記憶の向こう側にいた、大学時代の同級生、杏(あん)だった。僕は、その場に立ち尽くしたまま、言葉を失う。杏は、僕の心の急停止には気づかず、無邪気に微笑んだ。「久しぶり!まさかこんなところで会えるなんて」杏は無邪気に微笑む。ももの顔がオーバーラップして、僕には痛々しかった。風に揺れる桃の花びら。まるで心の中の淡い夢を嘲笑うかのように、はらはらと舞い散っていく。そこには、ももの笑顔も甘い香りもなかった。あるのはただ、春の陽射しと、僕を待ち受ける現実だけ。「あの・・・もしかして、人違いだった?」「杏・・なんでここに?」「私、今、埼玉の農業技術センターで働いているんだ」杏は、はきはきとした口調で話し始めた。「具体的な仕事はね、品種開発のプロジェクト。私は、埼玉の気候変動に順応できる新しい桃の品種を探しているの」杏は、桃の花を見上げながら饒舌に話し続ける。「飛騨国府には、大玉で高い糖度の『飛騨おとめ』があるでしょ。それが埼玉の温暖な気候でも育つかどうか、適応性を検証するっていう研究よ」「なんで僕がここにいるってわかった?」「だって、ショウタ。大学のときから、田舎で農業をやりたい、って言ってたじゃない」「あ・・・」「それ思い出して、ショウタんちまで行ったんだから。そしたらお父さんが、ここにいるって教えてくださったの」杏はそう言って、いたずらっぽく笑った。「ショウタ。そんなとことで話しとらんと、なか入ってもらえ」知らないうちに祖父母が僕たちの後ろに立っていた。その姿を見た杏は、さらに相好を崩す。僕の横を通り過ぎて、祖母の元へ。「おじいさま、おばあさま、はじめまして。ショウタさんの大学の同級生、杏、と申します」「おお。おお。めんこい娘(こ)や。そんなとことで話しとらんと、なか入ってもらえ」「ありがとうございます!あの・・できれば、しばらくここに滞在させていただけませんか?」「え?」「農園のお手伝いしながら、泊めていただきたいんです。グリーンツーリズムで」「なんだって?」「ああ、あのグリーン・・・ももちゃんと同じ・・・」何か言いかけた祖父の腕を、祖母が軽く叩く。「もも・・・?」「なんでもええから、はよ中はいってあったまりや」「ありがとうございます!おじゃまします」こうして杏は、祖父母の農園で過ごすことになった。[シーン3:杏のグリーンツーリズム(初夏から盛夏、初秋へ)/飛騨桃の農園】◾️SE:蝉の声の移り変わり(ニイニイゼミ〜クマゼミ〜ツクツクボーシ〜ヒグラシ)杏は埼玉の農業技術研究センターで働く”農業のプロ”。たちまち農園の働き手として欠かせない存在になった。袋がけの緻密な作業。初夏の灌水(かんすい)。真夏の収穫。彼女は文句一つ言わず、いつも笑顔で作業した。気がつくと僕の横にいて甲斐甲斐しく手伝ってくれる。祖父母はそんな杏に心から感謝していた。気遣って「2人で街に遊びに行っておいで」とも言う。でも、僕の心は依然として複雑だった・・・

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    ボイスドラマ「おかえり〜旅のおわり」」

    路線バスの中で交差する、5つの人生、5つの想い。旅の終わりに待っているのは、感動でも答えでもなく、ただ、迎えてくれる場所。ぜひ、最後までゆっくりとお聴きください。【ペルソナ】・月愛(かぐら/一之宮:32歳/CV:小椋美織)=東京で働くマーケター。実家は一之宮。父は神職・咲良(さくら/荘川:21歳/CV:岩波あこ)=荘川のそば農家。大空と付き合って駆け落ち・大空(りく/清見:22歳/CV:田中遼大)=清見の家具職人。平湯から高速バスで咲良と東京へ・萌々(もも/国府:19歳/CV:高松志帆)=国府出身東京の女子大生。さるぼぼをお焚き上げ・真言(まこと/高根:8歳/CV:山﨑るい)=高根の小学生。丹生川の祖母の元を訪ねる・愛李彩(ありさ/にゅうかわ:65歳/CV:中島ゆかり)=丹生川の農園を営む。真言の祖母・朱里(すばる/市街地:20歳/CV:米山伸伍)=市街地で看護師を目指す専門学校生。屋台組所属・林檎(りんご/久々野:16歳/CV:坂田月菜)=蓬希の同級生。実家は久々野で観光農園を営む・静流(しずる/奥飛騨:34歳/CV:日比野正裕)=奥飛騨で老舗旅館を経営する若者・蓬希(よもぎ/朝日:16歳/CV:蓬坂えりか)=女子高生。漢方薬剤師になりたい[プロローグ〜アバンタイトル:ヒダテン!たちの登場】■ヒダテン!10人の登場。物語の狂言回し高山レッド!一之宮かぐら!奥飛騨シズル!国府もも!清見ロック!久々野りんご!丹生川スクナ!荘川さくら!高根メイズ!朝日よもぎ!ヒダテン!です(※1.レッド、2.かぐら、3.シズル、4.もも、5.ロック)1.今からお届けするのは、路線バスのなかにある5つの物語。2.見終えたあとに、心が少〜しあったかくなれますように。3.ほっとするひとときをお届けします。4.みなさんもこんなプチ旅、してみませんか。5.どうかごゆっくりご覧ください。[プロローグ:はじまりの駅/高山駅】※ここだけはモノローグ■SE/高山線車内放送「♪アルプスの牧場」〜高山駅のホーム〜駅の案内アナウンス→モノローグはタイトルバック/アニメの背景は特急ひだの車窓高山駅10時16分。東京からのぞみの始発に乗っても、高山に着くのは最短でこの時間。ふうっ。私は月愛(かぐら)。渋谷の広告代理店で働くマーケター。東京の若者は高山を知らない。その理由をリサーチしてほしい。高山の観光協会からソリューションの依頼が入ったのは年の瀬。冗談でしょ。全国的に有名な観光地なのに。アニメの聖地にもなってるし。いてもたってもいられず、私は始発ののぞみに飛び乗った。で、イマココ。さて、どうする?高山まで来たのはいいけど、どこへ行くか決めてない。ふと、目の前を走る路線バスに目がいった。[シーン1:路線バスその1/荘川・清見の乗客「咲良と大空」】■SE/バスの車内・アイドリング高山駅が始発のバス。新穂高ロープウェイ行き。発車まで10分か・・私は後ろから2番目の席に座る。そういえば、高校のときからこの場所、定番だったなあ。どうでもいいことを思い出していた。■SE/バスのステップを上がってくる音バスの車内は、それほど混んでいない。平日だから。発車直前に乗り込んできたのは、若いカップル。私と同じくらいの年かな。ひとことも口を開かず、私の前の席に座った。バスが動き出すのと同時に男性が口を開く。「咲良・・後悔してないかい?」「大空・・きっと大丈夫だよね」「ああ。東京へ着いたら、前に清見にいた友だちのとこへ行く。家具工房、紹介してくれるって」え?まさか駆け落ち・・・?そのとき、彼女のポケットからなにかが落ちた。ひらりと舞ったそれは・・手紙?2人とも気づいていない。躊躇いながら、私は声をかける。「これ、落としましたよ」「え?あ・・ありがとうございます」「なに?」「封筒・・・」「え・・」「手紙と・・・なにか入ってる・・」「なに?・・その黒い粒。ちっちゃくて、三角形の・・」「種・・・荘川そばの・・・」「手紙は?」「おかあさんから・・”今年いちばんできのいい種よ、きっと咲くから”って・・・」「大丈夫?咲良・・泣いてるの?」「ううん・・なんか・・・蕎麦がらの匂いが目に染みちゃって・・」「ようし。オレ東京着いたら工房で最初にプランター作るから!そこで育てよう」「大空・・」がんばって。私は心の中で2人に声をかけた。[シーン2:路線バスその2/国府・市街地の乗客「萌々と朱里」】■SE/バスの走行音〜停車音〜扉が開く音国分寺から乗ってきたのは若い女性。女子大生っぽい。ダークグレーのショートコートに・・中は黒いスーツ?都会っぽいイメージ。私の斜め前の席に腰をおろした。と、すぐにその前の席の男性が振り向いて声をかける。バスの中でナンパ?「国分寺って珍しいな・・」「え・・・」「観光客でしょ?古い町並とか行かないの?」「観光客じゃないから」答えてるし。「え?ひだっこ?そうは見えないな」「帰省中」「大学生のホリデーかぁ?羨ましい」「葬式だけど。おばあちゃんの」「え・・」「国分寺でさるぼぼをお焚き上げしてきた帰り。おばあちゃんが毎月送ってくれたから。これでも羨ましい?」「いや・・ご、ごめん」「おばあちゃん、国府なんだけど、私の古いさるぼぼ、毎月お焚き上げしてたって」「そうか・・」「私、新しいさるぼぼ作ったから、一緒に奥飛騨の温泉へいくの。おばあちゃん、いつも私と行きたがってたし」「悪かったよ・・実は、オレが向かってる病院にも仲良いばあちゃんがいてさ」「病院?」「ああ、こう見えてオレ、看護師の専門学校行ってんだ。病院は実習」「へえ〜」「そのばあちゃんも、さるぼぼくれるって言うんだよ。自分はもういらないからって」「そうなんだ」「オレ、ERの認定看護師になりたいんだけどその夢もさるぼぼが叶えてくれるって。そりゃ盛りすぎだよな」「かなうんじゃない?」「え・・」「ふふ・・」「あ・・オ、オレ、朱里。君は?」「さあ・・」そう言ったあと、彼女は小さな声で「萌々」とつぶやいた。彼に聞こえたかどうかわからない。でも最初の軽薄さは消え、真摯な態度へ変わった彼は、前に向き直った。バスは古い町並口を越えて、別院前へ。[シーン3:路線バスその3/久々野・朝日の乗客「林檎と蓬希」】■SE/バスの走行音〜停車音〜扉が開く音別院前から乗ってきたのは、女子高生の2人。懐かしいな、あの制服・・・「よかったね、蓬希。八幡さま、行けて」「うん、ありがとう、林檎」そっか。桜山八幡宮へ行ってきたんだ。秋の高山祭、私また行けなかったな。「さっき買ったお守り、交換しない?」「え?なんで?」「そうすれば、アタシたち、ずっと一緒にいられるじゃない」「あ・・」「これを蓬希だと思って・・」「ね、林檎・・実はさ・・・私もう来週引っ越すんだ」「え?」「ごめん、だまってて」「そんな・・」「これ、よかったら持ってて」「なに?」「朝日の薬草で作ったお守り。そのお守り袋の中に一緒に入れてくれる?」「ズルい。自分だけ・・」「ごめん」「でも・・アタシも持ってきたんだ」「え?なに?」「はい・・」「え・・・」「リンゴの小枝を組み合わせた写真立てだよ」「あ・・・」「最後の日に渡そうと思ってたんだけど、持ってきててよかった」「この写真・・・」「そ、初めて2人でリンゴ狩りにいったとき」「3年前だ」「今日の写真を入れようと思ったのに」「入れる!ぜったい入れるから」「そうと決まれば、このあとは・・」「ほおのき平でラストスキー!」「薬学部、がんばってね。大変なんでしょ、勉強」「うん。でも、これでがんばれる。林檎も農園、がんばって」「まかせといて。今よりもっと甘くて美味しいリンゴを作っちゃうから」「そしたら、絶対食べに帰ってくるわ」「そんときは、また2人で八幡さま行きましょ」「うん!」「約束よ!」「約束!」いいなあ。アオハルって感じ。私にもあったかな、あんな甘酸っぱい日々。バスは丹生川町へ入っていった・・・※続きは音声でお楽しみください。

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    ボイスドラマ「二千本桜」

    荘川の地に咲いた、一本の奇跡の桜。そして、その桜に人生を捧げた、ひとりの青年。御母衣ダム建設によって移植された「荘川桜」・・・その前に現れたのは、静かに佇む青年・りょう。彼が出会ったのは、人ではない“桜の精”さくらでした。太平洋と日本海を桜でつなぎたい・・・そんなひとりの車掌の夢は、やがて二千本の桜となり、本物の「さくら道」として、この地に遺されていきます。実話をもとにした、切なく美しいファンタジー。「桜を守った人」と「人を見守った桜」の物語を、ぜひお聴きください。【ペルソナ】・さくら(500歳/CV:岩波あこ)=荘川桜の精。復活した荘川桜の下でりょうと出会う・りょう(34歳/CV:岩波あこ)=白鳥出身の路線バス車掌。さくらに惹かれていく【プロローグ:4月末/荘川桜/開花】■SE/小鳥のさえずり/湖面のさざなみ「おかえり・・・」1970年4月。10年前に移植された荘川桜が初めて薄紅色の花をつけた。一重咲きのエドヒガンザクラ。ダムの底にある、寺の境内にあったときの姿そのままに。桜の前では、ダムに沈んだ村の人たちが寄り添って泣いている。その中にひとり。声にならない声をあげて、感極まっている青年がいた。もう1時間以上もずっと私の方を見つめている。「よく・・戻ってきたなあ」そればかり繰り返している。うふふ・・面白いひと・・私は興味がわいて、ゆっくりと彼の前へ。つい悪戯心が働き、声をかけてしまった・・・「あなた、中野(なかの)の人?」「え・・・」・・・驚いた・・私が見えるの?彼は視線を落とし、私の瞳を見つめる。「きみは・・・」「私・・・?私は荘川桜の・・・・・櫻守・・かな」「桜守・・・えっと、ぼくはリョウ。家は中野じゃなくて白鳥だよ」「お隣ね」「バスの車掌なんだ」「あら。珍しい」「名古屋から金沢を結ぶ長距離路線さ」「そう。じゃあ、太平洋と日本海をつなぐお仕事、ってことかしら」「太平洋と日本海を結ぶ・・・・・いい言葉だ」「私、海って見たことないの」「え・・」「そもそも、無理な話だもの」「見られるよ」「え・・・?」「ダムの底に沈むはずだったこの桜だって、いまこうして御母衣湖を見下ろしているんだもの」「でもどうやって・・・?」「桜と桜をつなぐんだよ」「まあ・・・」「ずっと桜を前にして思ってたんだ」「なあに・・・」「こんな、心が震えるような思いを、分かち合いたい」「まあ・・・」「ひとりでも多くの人に、この気高い姿を見てほしい」「あ・・・」「どうだい。凛々しくて、大きくて、包み込むような優しさ」「うん・・・」「ちっぽけな悩みなんて、くだらないって思えてくる」「そうね・・・」「いま世界中でおこっているような争いごとなんて、ばかばかしくなってくるよ」そう言ってリョウは、目を輝かせた。花びらは、はらはらと静かに舞い落ちる。儚げな淡い桜色の風景。荘川の村人たちはみな、希望に満ちた表情で老木を見つめていた。【シーン1:5月頭/荘川桜/落花盛】■SE/小鳥のさえずり/湖面のさざなみ「さくら、見てごらん」2週間後。五月晴れの荘川桜公園。落花盛んな荘川桜が御母衣湖に花筏を作っている。車掌のお仕事が非番の日の午後。足元にリョウがしゃがみこむ。「これ・・根あがりだろ」ああ・・蘖(ひこばえ)たちね。幹の周りに芽吹いた子どもたち。「ちゃんと芽吹いてるんだ・・」そうよ。だって生きているんだもの。「やっぱり・・すごいよ。命がつながってる」ちらほらと顔を出した蘖たち。自分たちはここにいる。生きているんだ、って主張して。「この子たちを連れていってあげよう」目をきらきらさせてリョウが呟く。「荘川に芽吹いたほかの兄弟たちもいっしょに」そういってリョウが取り出したのは、小さなスコップ。蘖を傷つけないように、土の中の小さな生命をすくい取っていく。この人は、本当に桜に優しい。【シーン2:夏/名金線鳩ヶ谷/白川郷】■SE/セミの鳴き声/バス走行音それからリョウは、非番になると私のところへやってきた。蘖や苗木を探して、バス路線に桜の苗を植えていく。まずは荘川桜に近い、白川郷の鳩ヶ谷(はとがや)停留所から。「停留所に桜が咲いたら、みんな喜んでくれるかな」そりゃ嬉しいに決まってる。春が待ち遠しくなるはずよ。桜を植えるのはバス路線。名古屋方面へ向かって。正ヶ洞(しょうがほら)。前谷(まえだに)。北濃(ほくのう)。向小駄良(むかいこだら)。そしてリョウの家がある美濃白鳥(みのしろとり)へ。「小さい子は5年くらいかかるかな。大きな苗木なら来年には花をつけるだろう」嬉しそうなリョウの顔。私を見て、子どもみたいに笑う。「最近は、バスに乗ってても窓の景色が気になるんだ。あ、ここに桜が咲いたら、きれいだろうなあ。長良川のここの堤防に植えたら、美濃の人たちも花見できるかな。って、そんなことばっかり考えてる」リョウ、こんな表情するんだね。桜に夢中になってくれて、私も嬉しい。「桜のトンネルができたら楽しいだろうなあ」「リョウ、あなたいくつ?」「34。さくらは?」「私?私は500歳よ」「またそういうことを言って」「だって・・・ほんとだもん」「ようし、日本海へもつなげないと」そう言って今度は、荒田町島(あらたまちじま)、城端(じょうはな)、福光(ふくみつ)へ。すべての停留所には、桜の並木がつながった。子どもたちもみんな、すごく、喜んでる。春になれば幸せそうに舞い上がる桜吹雪。御母衣ダムなんてほんのりピンクに染まるほど。リョウは持ち前の明るい性格がどんどんヒートアップしていく。非番の日だけでなく、バスに乗り込むときはいつも桜の苗木を持ち込んだ。「はい、停車します」停留所じゃないところでバスを停止させる。バスを降りるリョウの手にはスコップと桜の苗木。リョウがスコップで掘り、運転士が桜を植える。乗客は微笑んでそれを見守っていた。気が付けば、桜の並木は、二千本。名古屋から、岐阜を通り、美濃、荘川、白川郷、金沢、そして輪島まで。まだ幼い若木たちが作る、小さな桜のトンネル。それは沿線のひとたちの未来を桜色に染めていった。【シーン3:春/落花盛な荘川桜】■SE/小鳥のさえずり/湖面のさざなみ初めてリョウと出会ってから13年。名古屋から金沢へ。太平洋から日本海まで、もう少しで桜のトンネルはつながる。みんなが期待して待ち望んでいたとき。リョウと連絡がとれなくなった。どうしたの?あんなに毎日、私のところへやってきて。君の顔を見ないとやる気がでない、って言ってたのに。私、必死であなたを探したわ。あなたが植えた桜の花びらをたどって・・・【シーン4:冬/寒さに耐える荘川桜】■SE/吹雪の音/病院の部屋「よくここがわかったね」「ずいぶん探したのよ」「すまない。きみに連絡をとる方法がわからなくて」「荘川桜が散ってしまう前に、なんとか見つけなきゃって」「ああ、そうか」「あなた、荘川桜の蘖たちをいろんなところに植えてくれたでしょ。花びらは私の眷属だから。開花するまで待って、それを辿ったの」「そうだったね」「桜のトンネルは完成したの?」「うん。あと少しだったんだけど・・」「やだ。なに弱気になってるの。がんばって。早く良くなって」「ああ・・」「聞いたわ。車掌さんの給料だって、ぜんぶさくらのためにつぎこんだんでしょ」「うん・・」「桜も大切だけど、自分のことももっと考えて。私、前にも言ったじゃない」「そうだっけ・・」「リョウが桜を植え続けられるのは、あなたの周りにあなたを支えてくれる人たちがいるからだって」「そんなこと言われたっけ?「言ったわよ。みんながあなたのことを考えてくれるからリョウも私も、こうしてやりたいことをやってられるんだよ」「そうだね・・・」「ねえ、リョウ・・」「なんだい?」「私を海へ連れてってくれるんでしょ」「うん・・・だけど・・・」「どうしたの?」「さくら、お願いがあるんだ」「なあに?」「ぼくがもしいなくなっても、桜の並木を植え続けてくれないか?」「私が?」「だってこんなこと、さくらにしか頼めない」「・・・・・・わかった。いいわよ。そのかわり、早く元気になりなさい」「ありがとう。さくらに会えてよかったよ」リョウは私の顔を見つめて、静かに微笑んだ。潤んだ瞳に私の顔が映る。私の笑顔を見たリョウは、安心して、静かに目を閉じた。【シーン5:春/輪島に咲く桜】■SE/波の音「さくら、ありがとう」「いやね。私じゃないわ。あなたの意志を継いだ、いろんな人たちが実現させたこと」「君がいなければできなかった」「それは、あなたの周りの人たちに言いなさい」「そうだね」リョウが植え続けた桜は、いろいろな人の意志に引き継がれて太平洋から日本海・輪島まで、しっかりつながった。毎年春になると、沿線の桜は淡い薄紅色の景色を作り出し、みんなリョウと荘川桜を思い出す。金沢の兼六園には、リョウの名前のついた桜まであるそうだ。うふふ。らしいな。そういえば、リョウは私の子どもたちひとりひとりに名前をつけていた。みんな、ちゃんと覚えてるよ。あなたのことを自分の親だと思ってるから。

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    ボイスドラマ「聖夜の奇跡」

    東京で孤独を抱える13歳の少女・聖夜(せいや)。母方の祖父の訃報をきっかけに、初めて訪れた飛騨・久々野で絞りたてのりんご、素朴でまっすぐな人々、そして同級生・林檎(りんご)と出会います。SNSからの心ない言葉に傷つき、心を閉ざしてきた聖夜。しかし、何気ない日々の中で「誰かがそばにいてくれる」その温かさに気づき始めます。冬休み最後の日、彼女が下す決断とは——【ペルソナ】・聖夜(せいや:13歳/CV:坂田月菜)=冬休みに東京から久々野にやってきた厨二病のJC・聖夜の母(みや:38歳/CV:小椋美織)=久々野出身。高校のとき喧嘩して家を飛び出し東京へ・聖夜の祖母(りん:71歳/CV:山﨑るい)=久々野で祖父と一緒にりんご農家を営んでいた・林檎(りんご:13歳/CV:坂田月菜)=久々野中学校2年生。久々野で生まれ久々野で育った【プロローグ:JR高山線高山駅】◾️SE/高山駅到着車内アナウンス/♪アルプスの牧場〜「さ、聖夜、高山で乗り換えるよ」「えー?高山で降りるんじゃないのー、ママ」「久々野って言ったでしょ?」「聞いてないよ。なに?クグノって・・・」「高山から久々野までは鈍行よ〜あなたの好きな」ママ、また話をすりかえる〜。それに私、各停専門の乗り鉄じゃないし。私の名前は聖夜。クリスマスの聖夜って書くんだよ。自分では割と気に入ってるんだけど、よく友だちからイジられるんだなあ。イジられる・・・?いや。イジメられてる、って言い方のが正しいか・・・私は、東京の中学に通う2年生。天文部に入ってて、ギリシャ神話とか星の伝説とか大好き。アパートのベランダからいつも星を眺めていろ〜んな妄想してるんだ。うん。少しだけ厨二病入ってるよ。悪い?冬休みに入ってすぐ、ママの元へおじいちゃんの訃報が届いた。と言っても、私は会ったことないんだけど。生まれてから13年間、おじいちゃんやおばあちゃんがいることさえ知らなかった。ママも実家に帰るのは20年ぶりなんだって。どうゆうこと?【シーン1:JR高山線久々野駅】◾️SE/久々野駅前の雑踏JR高山線久々野駅。駅前の広場に一台の軽トラックが停まっている。わあ、東京じゃなかなか見れないビジュ〜。と思ったら、ママが軽トラの方へすたすた歩いていって、「かあさん」と、声をかける。運転席に座ってるのは皺の寄ったおばあさん。ママを見るなり、相好を崩して口を開いた。「みやか。だいぶ顔見なんだな」「かあさん、なんで汽車の時間わかったの?」「ああん?おまえが通夜からでるゆうとったで。朝から待っとんやさ」「そんな・・お父さんのそばにいなくていいの?」「ああ。農園のみんなが賑やかにみとってくれるでな」「そう・・」「みや、まめけな?」「まめまめ」そう答えて、ママは私を指差し、「これ、娘の聖夜。かあさん、初孫でしょ」「ほおかぁ。セヤちゃん、ようきたなあ」「はじめまして、おばあちゃん。聖夜です」「ほうかほおかぁ。じいちゃんにも会わせたかったわなあ」「じゃ、聖夜、助手席に乗って」「ママは?」「私は農園まで歩いていくから。20分くらいで着くでしょ」「荷台に乗れ」「軽トラは2人乗りでしょ」「ええんやて。荷台のりんごみとってまわんと」「じゃ、私が荷台乗る」「風邪ひくわよ」「大丈夫。ダッフルコートめちゃあったかいもん。それにいっぺんここ乗ってみたかったんだ」「セヤちゃん、ええんか?無数河(むすご)の加工場にりんご届けてからうちに帰るで」「お通夜はいいの?」「ええ、ええ。みんなおるからええ」そう言って、どっかのアニメみたいなビジュになっておばあちゃんちに向かった。【シーン2:おばあちゃん家/久々野町無数河】◾️SE/冬の虫の音(ごくわずかに)〜静寂久々野に着いた日の、夜。お通夜が終わって食事をとったあと。私はおばあちゃん家(ち)の裏庭に出た。そして空を見あげて、息を飲んだ。星。満天の星。冬の大三角が、まるで天空のゲートのように輝いている。オリオンが、地上の私に向けていまにも弓を射るようだ。降り注ぐような星たちのきらめき。もう、言葉にすらできない。◾️SE/冬の鳥の声お通夜もお葬式もとどこおりなく終わった。でも、ママと私はまだ久々野にいる。別にいいけど。どうせ東京へ帰っても、楽しいことないし。おばあちゃんは、毎朝しぼりたてのりんごジュースを用意してくれる。「めちゃ甘でめちゃおいしい!」「ほうかほおかぁ。じいちゃんもきっと、喜んどるわ」お世辞でもなんでもない。なんでこんなに甘くて美味しいの?お砂糖使ってないから、あと味もさっぱりしてるし。こんなん、東京には売ってないよ。で、私はイマココ。ママに言われて特産品加工場でお手伝い。おばちゃんたちがアップルパイを作ってる。え?みんなりんご農家のひとなんだ?へえ〜。だから?お肌ツルツル・・って関係ないか。アップルパイは、フィリングという具材を作り、パイ生地を作って、成形して、焼き上げる。知らなかった〜。私は、最初の工程、りんごを優しく洗う作業をまかせてもらった。よかったぁ。だって私、包丁とか、握ったことないんだもん。「あんた、手つき、いいじゃん」声をかけてきたのは、私と同い年くらいの少女。栗色のロングヘアーを後ろで縛ってる。エプロンの下に見える、赤いワンピース。白いお花の髪留めがかわちい。「こんにちは、アタシは林檎。あんたは?」「あ・・・せ、聖夜」「セイヤ?かっこいい名前・・・東京っぽい」え・・・そんなこと、初めて言われた。笑われるのがあたりまえだったのに。加工場のみんなはすごく活気がある。マスクをしてるし、飛騨弁だからたまにききとれないけど。楽しそう。私、厨二病だからそういう人の輪にはあんまり加わらない。1人で自分の世界に入ってぶつぶつ言う癖があるの。マスク越しに。そんなとき林檎は、歯に衣着せぬ言い方で、ツッコミを入れてくる。「包丁、握れる?」「”剣”の扱いはプロよ。ゲームの中なら」「剣じゃりんごは剥けんて」「わが名は聖夜。運命に導かれし・・」「運命よりはよ容器に入れやあ。あと、つかえてるで」「久々野のりんごよ。懐かしきその香り・・」「久々野ははじめてでしょ」「深紅の輝きは、抗いがたい禁忌の誘惑・・」「なあ、東京、帰るの?」「え?そ、そんなん・・そりゃ・・・」「そっか。でも、ええところやよ。久々野も」「え・・・どういうこと・・・?」林檎は答えず笑顔で、カットしたりんごを大きなボウルに入れて下処理室から厨房へ持っていった。ママは冬休みの間ずっと久々野にいるっていったから私はほぼ毎日加工場へ来てお手伝いをした。だって、おばあちゃんちでゲームしてると怒るんだもん。林檎とはなんだかそれからすんごい気が合ってお互いのことをいろいろ話した。すぐにLINEも交換して。最初にわかったんだけど、林檎と私は同級生。しかもなんと、おんなじ誕生日!もう奇跡だよね。りんご情報が毎日LINEに入ってくる。久々野のオススメカフェとか誰も知らない映えスポットとか。私、久々野のこと、ミョーに詳しくなっちゃった。東京のことは・・・あまり話したくなかったから、テキトーに答えてたけど。考えてみたら、いままで私、こんな風に本音で話せる友だちなんていなかった。【シーン3:聖夜のクリスマス/ヘイトメッセージ】◾️SE/クラッカーの音クリスマスイブ。昼間はいつものように特産品加工場でお手伝い。お昼休憩のとき、おばちゃんたちとまかないのアップルパイでプチパーティをした。「聖夜、メリークリスマス!聖夜の日じゃん!」そう言って林檎とはプレゼント交換。林檎からは、りんごの木の枝を使ったフォトフレーム。りんごの細い枝を組み合わせて綺麗に作ってある。きっと時間かけて作ってくれたんだろうな。フレームの写真は最初の日にふざけて撮った変顔の2人。やだもう、笑わせないでよ!そう言いながらちょいウルウル。私が林檎に送ったのは、りんごの形のネックレス。ネットで買った。私とお揃いなんだ。人気のブランドだったからおこづかいr代全部つぎこんだけど。林檎がくれた手作りのフォトフレームの方がよっぽど素敵!クリスマスのプレゼント交換なんて、幼稚園以来じゃない?※続きは音声でお楽しみください

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    ボイスドラマ「縄文の扉」

    主人公・りんご(CV:坂田月菜)は、同級生のトウマと訪れた堂之上遺跡で、奇妙な“赤い光”に飲み込まれ、気がつくと縄文時代の集落へ。そこで出会ったのは、りんごと瓜二つの少女・カヤ。彼女は新しい命を抱えながら、病で苦しんでいました。言葉は通じない—それでも2人は星の下、火のそばで、食を分かち合い、心を通わせていきます。しかし病状は悪化し、りんごとトウマは“祈り”としての土偶づくりへ挑むことに・・・【ペルソナ】・りんご(14歳/CV:坂田月菜)=久々野に住む中学生。来年春には卒業・カヤ(14歳/CV:坂田月菜)=縄文女子。妊娠中。中央祭祀場で火守をしている・桃真=トウマ(14歳/CV:山﨑るい)=りんごの同級生。一番仲のいい男子【資料/【飛騨高山の縄文遺跡を巡る】飛騨高山旅ガイド】https://www.hidatakayama.or.jp/blog/detail_51.html※縄文人の言葉は擬音が多く、単語での会話をしていたと推測されています。諸説ありますが、アイヌ語が縄文語の言語的特徴を色濃く残している可能性が高い、という仮説が有力視されています。今回はアイヌ語をベースにした縄文語という仮定で縄文人の言葉を表現しています。[プロローグ:堂之上遺跡にて】◾️SE/小鳥のさえずり「りんご〜!こっちへおいでよ〜」トウマ(桃真)が竪穴式住居の前からアタシを呼ぶ。久々野町の堂之上遺跡公園。ここ、久々野中学校からちょっとだけ下ったとこだから、もうドキドキ。トウマと2人で会ってること、誰かに見られたらどうしよう・・ついつい周りをキョロキョロしちゃう。トウマはアタシの同級生。アタシと同じ、久々野中学校に通う3年生。初めて2人だけで会ったのは夏休み明けの9月。行ったのは、なんとりんご狩。ま、それには理由があるんだけど。嘘みたいだけどアタシ、今年の4月までりんごが食べられなかったの。それを克服するきっかけをくれたのがトウマ。だから、りんご狩に誘ってくれたんだ。農園の場所はアタシのうちと目と鼻の先。トウマのおうちがやってる観光農園だった。そりゃそうだよね。久々野のりんご狩なんだもん。たいてい知ってる農園だわ。トウマも生まれてから14年間で初のりんご狩体験だったらしい。農園の子なのにね。お父さんやお母さんもすごくもてなしてくれて。おみやげに久々野りんごをいっぱい持たせてくれた。農園の中では星のりんごにカットして、3玉も食べちゃったし。ふふ。それからは毎週のように、トウマがアタシを誘ってきた。トウマって女子の人気者だから、独り占めするのはちょっと心配。2人で会うのは月に1回にしようって決めたんだ。ってことで、10月は、自転車であららぎ湖までピクニック。始まったばかりの紅葉がすごく綺麗だった。11月は、ひだ舟山リゾートアルコピア。真っ赤に色づいた紅葉はもう最高。毎年見ている風景だけど、トウマがいると違って見えるから不思議だな。そ・し・て。今日が3回目。なのに、堂之上遺跡とは(笑)歴史の授業や史跡見学で何回も来てるし。そもそも縄文の炉(ろ)を発見したのは、久々野中学校の郷土クラブだったんだよ。久々野中学校の生徒から見れば、もう”自分ち”みたいなもんなんだから。なんで堂之上遺跡?そんなこと考えてたら・・・「りんご〜!早く〜?」また呼ばれちゃった。はいはい。「行くから待っててよ、トウマ」「ねえ、ちょっと見てみてよ」「なあに?」「竪穴式住居の中に赤い光が見えるんだけど」「え・・どこ?」「ほら、あそこ」「あ・・ホントだ」「なんだろう・・・それになんか声みたいなのも聞こえる」そう言って、トウマは中に入ろうとする。「ちょっとちょっとトウマ!入っちゃダメだよ!」「わかってる」「入らないでよ!私たちの大切な文化財なんだから」「煙出しのところから覗くだけだから」「そんなに身をのりだしちゃ危ないって!」「あれ?なんか平衡感覚が・・・おかしい・・・かも・・」「え・・あ、やだ・・私も・・」「りんご、手を離さないで!」目の前がぐるぐる周り始めた。公園の奥に復元された竪穴式住居の前。私たちのいる場所だけピンポイントで、空気が歪んでいるみたい。だめ!立っていられない!トウマが私の手を強く握りしめる。意識がすうっと遠のいていった。[シーン1:堂之上集落/縄文時代に降臨】◾️SE/焚き火の音「りんご、りんご・・・起きて」え?ここは・・・?そっか・・堂之上遺跡・・・でも、なんかヘン・・・あれ?資料館は?どこ?それに、竪穴式住居って、こんなにたくさんあったっけ?屋根から煙もあがってるし。「ここ・・遺跡公園じゃないみたい」「どういうこと?」「ボクにもわからない。でも、舟山(ふなやま)の形もなんか違うような気がする」「そう言われてみれば・・・大きさとか・・形もちょっと違ってるかも」「電線も看板もない。道も舗装されてない。資料館も・・ない」「待って・・スマホのGPSで・・・あ、だめ。・・圏外だ」「それに、あったかくない?」「ホントだ・・・ダウン要らないくらい」「すごく突拍子もない話だけど・・・」「なに?やめてよ、怖いこと言うの」「ボクたち、縄文時代にタイムスリップしちゃったんじゃない」「いや!そんな、アニメとかボイスドラマみたいなこと・・」「じゃあ、この状況をどう説明するの?」「やだ、帰りたい!・・・パパやママは!?」「あ、ちょっと待って。誰かくる」「え・・・?」「そこの木の影に隠れよう」木陰で見つめるアタシたちの方へやってきたのは、粗い麻布のような服を着た少女。手には木の実がこんもり入った籠をかかえている。横切って通り過ぎるときにハッキリ見えたその顔は・・「ア・・・アタシ!?」「しぃっ!」少女がアタシたちの気配に気付き、振り返る。やっぱり。アタシと瓜二つの顔!まるで鏡を見ているみたい。警戒した表情で、ゆっくりとこっちへ近づいてくる。そのとき・・アタシたちの後ろ、イチイの木が大きく揺れた。◾️SE/クマの咆哮「く、くっ・・」「クマだ!逃げろ!りんご!」「トウマも!」「カムイ!」アタシとトウマは縄文人の少女の方へ飛び出した。クマの叫び声が後ろから近づいてくる。「逃げて〜!」少女も、驚いて手に持っていたカゴを落とし、走っていく。アタシたちは、後ろを振り返らずに少女を追う。少女の行く手、集落の中心には広場?そこにそびえていたのは・・「ストーンサークル?」ううん。あれは、ストーンサークルじゃない。アタシの身長くらいの石が何本も無造作に、不思議な形に立てられている。周りには、丸い石が敷き詰められて、不規則な楕円形を描いていた。見たこともない謎めいた風景に息を飲む。同時に少女の足が止まり、こちらを振り返った。視線の先はアタシたちの後ろ。え?走って逃げてきた方へ振り返ると・・クマは追ってきていない。さっきアタシたちが隠れていたイチイの木の前。少女が落とした籠の木の実を一心不乱に食べている。「カムイ・・」カムイ?なんか聞いたことのある言葉だな。◾️SE/中央広場からかけてくる縄文人たちが口口に「カムイ!」「カムイ!」と叫ぶ声広場の方からこっちへ誰かがくる。「りんご!離れないで!」アタシはトウマの手をぎゅっと握り、肩を寄せ合う。走ってきたのは10人以上の男の人。毛皮をまとい、手には弓矢や槍を持っている。アタシたちの前を通り過ぎてクマの方へ走っていった。少女もアタシたちの横へ来て、彼らを見守る。そこから先は、まるで映画を見ているようだった。弓矢を持った男たちがクマの前で身構える。槍やこん棒を持った男たちはクマの後ろへ回り込む。彼らは慣れた動きで、ジリジリとクマへ近づいていく。やがて、弓矢が射程距離に入ったところで、狩人の動きが止まった。クマの斜め前に近づいた男が石を投げる。クマが顔をあげたその瞬間。◾️SE/弓矢が飛んでいく音一斉に男たちが矢を放つ。何本かがクマに命中した。クマは怒りを露わにして、弓をひいた狩人に襲いかかってくる。すると後ろにいた狩人たちがクマに石槍を突きたてる。クマが振り向くと、今度は前方の狩人がクマの首筋と心臓を目掛けて第二の矢を放った。動かなくなったクマに後方の狩人が石槍で止めを刺す。「すげえ!」ホントだ。狩人たちは、狩での勝利を喜びながら、その場で獲物を解体するようだ。捌く前にリーダーっぽい男がクマの頭に手を置き、静かに祈りを捧げる。知ってる。「クマ送り」っていう儀式だよね、確か。そのあと、あれは・・黒曜石(こくようせき)かな。鋭い石のナイフで皮を剥ぐ。さっきの少女も嬉しそうに狩人たちに近づいていく。「ボクたちも行ってみよう」「大丈夫・・?」おそるおそる近づくアタシたちに少女が気づいた。こっちへやってくる。藁を編んだ素材?ワンピースっぽい服を着て、同じ素材の巻きスカート。お腹が少し膨らんでるけど・・食べ過ぎかな。胸には勾玉をつないだネックレス。すごい。本当に縄文人って感じ。少女は笑顔でアタシたちに話しかけてきた。「ヒンナ」「エチ カムイ チコロ」わかんないわかんない。何言ってんの?怖いもの知らずのトウマは大胆に手を差し出す。握手?そんな習慣、縄文時代にないって。

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    ボイスドラマ「木綿のハンカチーフ」

    岐阜・荘川を舞台に、東京へ旅立つリョウとそば農家を継ぐさくらのすれ違い続ける恋を描いたボイスドラマ『木綿のハンカチーフ』幼なじみとして育った二人。季節を重ね、夢を語り、未来を信じていた――あの春までは。変わっていく都会の暮らし。変わらない故郷の風景。最後にさくらが願った“たったひとつの贈りもの”とは?【ペルソナ】・さくら(22歳/CV:岩波あこ)=岐阜の大学を卒業して故郷・荘川へ帰り実家のそば農家を継ぐ・リョウ(22歳/CV:岩波あこ)=岐阜の大学を卒業して故郷・荘川を離れ東京へ就職する【資料/木綿のハンカチーフ】https://www.uta-net.com/song/4548/【資料/歌詞の意味を考える 〜「木綿のハンカチーフ」編〜】https://www.mc-musicschool.com/post/lyrics-momennohandkerchief【資料/「木綿のハンカチーフ」奈良姉妹】https://youtu.be/QSV9lFgFFS0?list=RDQSV9lFgFFS0【プロローグ:3月/ふるさと・荘川での別れ(蕾すら膨らんでいない荘川桜の前で)】※FM放送のみ楽曲使用「木綿のハンカチーフ」※配信はフリー音源恋人よぼくは旅立つ 東へと向う列車で、華やいだ街で君への贈りもの 探す 探すつもりだいいえ あなた私は 欲しいものはないのよただ都会の絵の具に 染まらないで帰って■SE/小鳥のさえずり「おれ・・・東京に就職、決まったんだ」「え・・・」「さくら、ごめん」「リョウ・・・」「ひとりで決めて」「そう・・・」「デザイン会社受けて、内定もらったんだけど、東京本社勤務だって」「おめでとう」(※寂しそうに)「え・・・」「よかったじゃない・・・夢がかなって」(※寂しさを押し殺して明るく振る舞う)「さくら・・」一年前の遅い春。リョウが卒業後の進路について話したのは、落下盛んな荘川桜(しょうかわざくら)の下。私は必死で涙をこらえ、御母衣湖を見つめていた。私たちはここ荘川に生まれ、荘川で育った幼馴染。岐阜にある大学の、同じ学部に通う大学生だった。そして、お互いに、かけがえのないパートナー。夏休みには必ず一緒に荘川へ帰って、実家の農業を手伝った。うちの実家はそばを栽培する農家。夏は、裏作のトマトとキュウリを収穫する。リョウの実家は林業だったけど家には帰らず、うちの畑へ。「林業なんて絶対に継がない」と、いつも言っていた。今年は、2人で過ごす最後の夏。夏野菜を収穫したあと、いつものように荘川をドライブ。彼の運転で、涼しい湖畔の夜を楽しんだ。三谷(さんだに)の自然水(しぜんすい)を水筒に注いで2人で回しr飲み。魚帰り(うおがえり)の滝でマイナスイオンを浴びれば心まで洗われる。荘川桜公園の駐車場に車を停めて2人で見上げた満天の星。青葉をまとった荘川桜が夜空にざわめく。展望台から眺める下流の御母衣ダムは、神々しくさえ見えた。時には156号を北上して、白川郷へ。「合掌造りに住んでみたいな」冗談だか本気だかわからない目をして私を見つめる。リョウと一緒の時間は、いつだって切なく、儚い。時間よ、止まれ。大学最後の夏休みは、まるで夢のように過ぎ去っていった。■SE/吹雪の音短い秋が過ぎ、冬将軍の足音が近づいてくる。こんなに冷たい雪、心まで凍るような冬は初めてだった。いつも楽しみにしていたのに、今年は・・・”春よ、来ないで”本気でそう思った。それでも、時間は残酷だ。決して待ってはくれなかった。■SE/小鳥のさえずり「がんばってね!」(※寂しさを押し殺して明るく振る舞う)「うん・・・でも」「なあに?」「ごめん・・・オレ だけひとりで」「そんなこといま言わないで」「ごめん・・・」なごり雪がまだ山肌に残る弥生・3月。リョウが旅立つ朝。荘川の里前のバス停。リョウは路線バスで高山駅へ。名古屋から新幹線に乗り換えて東京へ旅立つ。私は、高山駅まで一緒に行って見送りたいって言ったんだけど・・・「さくらの顔を見てたら、特急ひだに乗れない」そう言って、バス停での見送りになった。大きなスーツケースを引いたリョウが、泣きそうな笑顔で私を見る。「寒くないかい?」「うん・・少しだけ・・」「東京から、思いっきりおしゃれなマフラー贈ってあげるから!」「ううん。なにもいらない。ただ、私を・・荘川を忘れないで」「忘れるわけないじゃないか・・・世界中の誰よりきっと、君を愛してる」「お願い・・リョウは・・リョウのままでいて」「わかった・・・約束する・・都会の色には染まらないよ」そう言って、リョウは旅立っていった。私はリョウのバスが見えなくなるまで見送る。そのあとは今までの楽しかった日を思い出しながらゆっくり、1時間歩いて、荘川桜公園へ。荘川桜はまだ蕾も固く、口を閉ざしていた。[シーン1:4〜9月/東京・赤坂ビジネス街〜荘川】恋人よ 半年が過ぎ 逢えないが泣かないでくれ都会で流行りの指輪を送るよ 君に君に似合うはずだいいえ星のダイヤも 海に眠る真珠もきっとあなたのキスほど きらめくはずないもの■SE/都会の雑踏と荘川のざわめき「さくら、荘川桜はもう満開かい?きっと公園から御母衣湖まで花びらが桜色に染めているんだろう。また見たいなあ。僕は毎日がデザインの修行って感じ。学校で習った作業だけでは実践には使えないみたい。いろいろ自信がなくなっていきそうで怖いよ。明日も先輩のアシスタント作業で朝から忙しいから今日はもう寝るね。おやすみ。さくらに会いたい。さくらの夢が見られますように」「リョウ、連絡してくれてありがとう。無理だけはしないでね。食事にも気をつけて。鶏ちゃんと荘川そばの乾麺送るから。ジャンクフードじゃなくてちゃんと食べて。厳しい先輩にも負けないで。長文を送って夜更かしさせちゃ悪いから、短い文章にしとくね。ちゃんと睡眠とって、明日もがんばって」「さくら、秋そばの種まきはもう終わった?実は、謝らなくちゃいけないことがあるんだ。約束してたお盆休み。プレゼンが続いてて、帰れそうにないんだ。秋には休みをとって会いにいくから。お父さんやお母さんにもよろしく伝えておいて。東京は暑い。涼しい荘川に帰りたいなあ。ああ、さくらの顔が見たい。さくらの手に触れたい・・・」「リョウ、私は大丈夫。気にせずに仕事がんばって。でも体には気をつけて。食事にも気をつけて。ちゃんと水分とるのよ。あなたの好きな三谷自然水、ペットボトルに入れて送るわ。煮沸してから飲んでね」「さくら、なかなか連絡できなくなっちゃってごめんね。荘川は秋そばの収穫で忙しい頃だね。東京へ来てもうすぐ半年。ごめん。秋の連休も、やっぱり荘川へは帰れない。その代わり、星の形をしたネックレスを贈るよ。いま、渋谷とかで流行ってるみたい。きっとさくらに似合うはず。実は昨日初めて渋谷へ行ってきたんだ。すごいところだよ、この町は。なんだって揃ってる。さくら、なんでもいいからほしいものを言ってくれ。僕の給料で買えるものだったら、どんなものでもプレゼントするよ。もう遅い時間だけど、このあと電話できる?」「リョウ、ひさしぶりに声が聴けて嬉しかった。やっぱりちょっと疲れた声だね。電話でも言ったけど、そんな高価なネックレス、いらないわ。どんなに素敵なネックレスも宝石だってほしくない。本当はただ・・・ぎゅっとリョウに抱きしめてほしい」9月も終わり、10月の声が聞こえて来る頃。毎日のように届いていたメールも3日に1度になり、週に1度になり、月に1度になっていった。私はリョウの顔が見たくて、写真を送って、とねだったけど、恥ずかしがり屋のリョウはなかなか送ってくれない。代わりに添付して送ってくれていたのはリョウが描いた私の似顔絵。それも今はもうなくなっちゃった。だけどいいの。連絡がほしいなんて、私のわがまま。リョウが元気なら・・・病気になったり、落ち込んだりしてなければいい。とにかく、元気でがんばって、リョウ。[シーン2:12月/東京・渋谷の居酒屋で合コン〜荘川・雪の集落】恋人よいまも素顔で 口紅もつけないままか見間違うようなスーツ着たぼくの写真 写真を見てくれいいえ 草にねころぶ あなたが好きだったのでも木枯しのビル街 からだに気をつけてね■SE/都会の雑踏と荘川のざわめき「さくら、僕のデザインがコンペで賞をとったんだ。喜んでほしい。1年目の新人にしては快挙だ、って先輩に初めて褒められたよ。みんなが居酒屋でお祝いしてくれて。東京へ来てよかった、って初めて思えた。さくらも、仕事がんばってるかい?たまには、きっちりメイクして、飲みにいったり、遊びに行ったりしていいんだよ。農作業ばかりしてたら、ストレスたまっちゃうかも。さくらも人生、楽しんで」メールに添付されていたのはすごくお洒落なお店で、すごく素敵な女の人に囲まれたリョウの写真。そうか。リョウの先輩たちって、女の人だったのね。それもこんな綺麗な人ばかり。リョウは、私の知らない笑顔で輝いてる・・・※続きは音声でお楽しみください

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    ボイスドラマ「サトリ」

    耳が聴こえない少女・凪と心を読める妖怪・サトリ──音のない世界でたった一人の声が届いた。冬の高山で再会した二人。けれど、別れの時は近づいていて——静かであたたかな再生のファンタジー・・・【ペルソナ】・凪(ナギ)(14歳/CV:山﨑るい)=生まれつき耳が聞こえない少女・覚(サトル)(14歳/CV:山﨑るい)=人の心が読める妖怪サトリ・歴史教師(24歳/CV:岩波あこ)=妖怪や民話・伝承が大好きな歴史教師【資料/妖怪・覚(サトリ)】https://yokai.jp/yokai/satori【資料/妖怪・山童(岡本綺堂/飛騨の怪談)】https://www.aozora.gr.jp/cards/000082/files/49682_51215.html[プロローグ:記憶の中の声】■SE/虫の声〜フェードアウトしていく「・・・い。お〜・・・い。お〜〜い」それは、私が初めて聴く・・”音”だった。「お〜〜い」山の向こうから響いてくるような・・”声”。あたりをキョロキョロ見渡してもどこにも声の主は見当たらない。声を探して、私は山へ山へと入っていった。10年前。私は4歳のときに”神隠し”にあった。いや。神隠しなんて迷信を信じているわけではない。だが確かに私は、3日間父や母の前から消えてしまったのだ。3日後に発見されたのはなんと日和田高原の石仏群。馬頭観音の前にちょこんと座っていたという。その3日間のことは、なにひとつ覚えていない。ただ、すごく幸せなひとときだった・・・そんな記憶がぼんやりと残っている。初めてできたおともだちと仲良く過ごしたような・・・いつまでもずうっと楽しく語り合って。でも、それは絶対にありえない。だって私は・・・耳が聞こえないのだから。[シーン2:中学校】■SE/学校のチャイムの音〜フェードアウトしていく神隠しから10年。私は高根町から朝日町の中学校までスクールバスで通っている。私の住む町にはもう小学校も中学校もないから。先生が黒板の文字を消しながら話している。後ろを向いて話してると何言ってるかわかんない。最近、無理に唇を読むのをやめた。疲れるし。筆談もみんなの手をとめちゃうからやんない。手話?・・実は私、手話も上手じゃないんだ。どうしてかっていうとね・・・■※ここから回想高山には”ろう学校”ってないの。うちはお父さんもお母さんもおじいちゃんもおばあちゃんも健常者なんだ。普通は幼い頃からろう学校で手話を習うか、家族が手話を習ってコミュニケーションをとるんだって。うちの場合は・・・お父さんが家具職人。清見の工房で夜遅くまで働いてる。お母さんは市街地の総合病院で働く看護師。おじいちゃんとおばあちゃんはゴルフ場で住み込みの管理人。結局、私はいつもひとりぼっち。朝から夕方遅くまで過ごすのは町内の託児所。小さいうちに人工内耳を入れることもなく、手話も習わなかった。家族も手話ができるわけじゃなく、近くにボランティアもいない。こういうのなんて言うかわかる?言語剥奪っていうんだよ。幼ない頃から手話のような”言語”に触れる機会がないと、コトバってものが理解できなくなっちゃうんだ。で、私に残された方法は”読話(どくわ)”。唇や口の動きを見てなにを言っているのかききとること。いや、いきなり、それはハードル高過ぎでしょ。そんなときに神隠し・・でも神隠しのあと、私は少しだけ唇を読めるようになってたんだ。両親も祖父母もびっくり。おばあちゃんなんて、「やっぱり神様が連れてってくださったんだ」って。小学校のときはみんなマスクしてたから最悪。誰がなに言ってんのか、まったくわかんなかった。その頃たまに、手話ボランティアの人がきて少しずつ手話を教えてくれるようになったけど。中学へ入学したあとも、学校で私、手話はほとんど使わない。だって、誰も手話なんてわかんないんだよ。私一人のためにみんながわざわざ手話覚えるとかって、ないし。気を遣って話しかけてくれたりする友だちもいたけれど。先生のお話も、早口で読み取りにくい。やがて中学2年になった・・ある晴れた冬の日・・・[シーン3:転校生】■SE/学校のチャイムの音〜フェードアウトしていく「はじめまして。御嵩(みたけ)から引っ越してきました、覚(サトル)です」中学校の教室に転校生がやってきた。黒板に大きく自分の名前を書く。ご丁寧にフリガナまでふって。覚、サトル・・・ふうん。「これからよろしくお願いします」あれ?いまの・・手話?両手を合わせて握る。さりげなさすぎて、誰も気づいてないみたいだけど。まあいいや。へえ〜。転校生って珍しいから?みんなサトルの周りに集まってる。だって彼、見た目もいいしね。なんていうのかな。中学生にしてはちょっとワイルド?そんな感じ。どうでもいいけど。国語、社会、理科、数学。音のない世界。気を抜くと、先生の話がつながっていかない。いつも六時限目が終わると、ほっとする。私の席は先生が気を遣ってくれて一番前。あれ?みんな授業が終わって一斉に後ろへかけていく。どうかしたのかしら?振り返ると・・・ああ、転校生の席。あんなに生徒が集まって・・・たった1日でクラスの人気者ね。え?なに?彼・・サトル・・私を見てる?かんべんしてよ。ほら。クラスメートがサトルになにか言ってる。唇読まなくたってわかるわ。”あの子、耳が聞こえないから””話すなら、近くまで行って、大きく口を開けてしゃべらないと”で結局みんな、腫れ物に触るような感じで私を避ける。静寂のなかの喧騒。もう、さっさと帰ろ。私は転校生たちのいる後ろの方とは反対側へ。前の扉から出ていこうとしたとき・・・『まって』え?声?いや。違う。声なんて聴こえるわけがない。頭の中に直接響いてきた音。どういうこと?気味が悪くなって私は振り返らずに教室を出た。あの音。あの声。どこかで聴いたような・・・全然いやな感じはしなかったな[シーン3:妖怪サトリ】■SE/学校のチャイムの音〜小鳥のさえずり〜「みんな、席について。今日の歴史の授業は飛騨の民話と妖怪です」先生が楽しそうな表情でみんなに話す。今日は先生の話がよくわかる。好きな話題なんだな。黒板にも大きな字で「飛騨の民話と妖怪」。ふうん。飛騨にも妖怪なんているんだ。「最近アニメとかで”妖怪”って流行ってるでしょ」「ここ、高山にもいるのよ」へえ〜。知らなかったな。「作家の岡本綺堂(おかもときどう)が書いた『飛騨の怪談』っていう小説。この中に『山わろ』っていう妖怪が出てくるわね。ま、読めばわかるけど、妖怪っていうよりUMA(ユーマ)みたいなもんだけど」ウ・・・マ?木曽馬の妖怪かな・・「全身毛むくじゃらのゴリラみたいな怪物。実は、元寇で襲来した海賊の生き残りだったって話。元寇、わかるでしょ?先週授業でやったから」たしか2度も日本へ攻めてきた海賊だったっけ?「あと、もうひとつ忘れちゃいけない妖怪がいるでしょ。はい、わかるひと。両面宿儺?違〜う。あれは妖怪じゃなくて、飛騨の英雄です。なに?わからない?妖怪図鑑にも載ってるわよ。そう。正解。サトリ!」サトリ?ヘンな名前。「アニメにもでてきたでしょ。人の心が読める飛騨の妖怪」心が読める・・・いいなあ。人の心が読めるなんて。聞こえなくてもお話ができるってことでしょ。『そんないいもんじゃないよ』え?なに?いまの・・「人の心を先に読んでからかうイタズラ好きな妖怪ね。見た目は毛むくじゃらの猿みたいな感じ?さっきの山わろみたいなもんかしら『百鬼夜行』を書いた鳥山石燕(とりやま せきえん)の妖怪画にも載ってるわよ。」だめだ。なに言ってるかわかんない・・[シーン4:冬の嵐】■SE/LINEの着信音〜お父さんに学校まで送ってもらった日の夕方。夜まで帰れないってLINEがきた。あ〜あ。今日はお迎えがあるから、ってスクールバスに乗らなかったのに。お母さんは病院で夜勤だし。ということで歩いて帰宅・・・うちの家は、道の駅「飛騨たかね工房」の近く。飛騨川沿いのところ。朝日町の学校まで車なら15分。でも歩くと2時間かかるよなあ・・自転車だともうちょっと早いのに、お父さんもお母さんも絶対にダメだって。しょうがない。覚悟を決めてリュックを背負う。7時までには帰れるかな。急がないともう暗くなってきちゃった。誰が言ったか、彼は誰時(かわたれどき)。またの名を逢魔時(おうまがどき)・・※続きは音声でお楽しみください.

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    ボイスドラマ「男装の麗人」

    飛騨の金森家に生まれた若君・宮丸。その正体は、家を継ぐため男子として育てられた娘だった――。剣の腕で運命を切り開く中、雪の峠で救った姫との出会いが、やがてすべてを変えてゆく。史実をベースに描く、江戸時代元禄のボイスドラマ。【ペルソナ】・金森宮丸(15歳/CV:小椋美織)=金森頼興の娘。お家断絶を恐れた父が息子として育てる・松平千代芳(16歳/CV:坂田月菜)=越前国藩主・松平吉邦の娘。金森家との縁談に迷っている・金森頼興(28歳/43歳/CV:日比野正裕)=宮丸の父。お家復興の立役者だが世継ぎに悩む【資料/金森氏の系図】https://genealogy-research.hatenablog.com/entry/kanamori【Webまんが/金森長近】https://www.bgf.or.jp/bgmanga/320/[シーン1:出生】■SE/赤ちゃんの泣き声「お、おお!でかした!お、おのこじゃ!元気なおのこじゃ!」私が生まれたとき、父上の第一声はこうだった。だが!ご覧の通り、私はおなごである。まったく。時は元禄。名君とうたわれた金森長近から数えて6代目。頼錦(よりかね)の世にひどい失政でなんと改易。藩主の地位を失ってしまった。なんとかお家復興をと奔走しているのが私の父、金森頼興(よりおき)。その努力はまあ涙ぐましいものだった。先代が無くした飛騨の庶民たちとの絆。信頼関係を取り戻すために、毎朝みなと一緒に雪かきまでして。そんな中で母上が懐妊。お家断絶を覚悟していた金森家の者にとって、これ以上ない吉報だった。まあ父上が、男児誕生と宣言したのも、気持ちはわかる。しかし・・・[シーン2:幼少期から元服へ】■SE/剣術の音私は武家の若君らしく、すくすくと成長していく。男子としての教育を受け、剣術や礼法、弓術に明け暮れる毎日。お家復興のために、日々厳しい修行に励む。その姿は誰もが憧れる凛々しい若武者。私自身もいつしか、オンナであることを忘れていった。宮丸15歳、元服の日。家中が正装し、屋敷の中庭にて烏帽子(えぼし)直しの儀を行った。白歯(しらは=歯黒)を断ち、眉を剃り、髷(まげ)を月代(さかやき)に結う。父・頼興が烏帽子を被せてくれたとき、不覚にも私の目には涙が潤んだ。父の目には、歓喜の涙と映ったことだろう。だが、心の中はまったく違う。男子として祝ってもらうことはすなわち、女性としての幸せを捨てることを意味しているのだ。元服名として、私には宮丸(みやまる)という名が与えられた。その年の暮れ。突如持ち上がってきたのは、越前国(えちぜんのくに)の有力な大名家との縁組話。越前には領地である白崎(しらさき)もある。私は先方への顔見せのため、雪の中を旅立った。[シーン3:越前国境にて】■SE/吹雪の音そろそろ越前国という頃合い。木ノ芽峠(このめとうげ)にさしかかったとき、吹雪の音にまじって微かに女性の悲鳴が聴こえてきた。『だれか!お助けを!』それは猛吹雪のなか、山賊の集団に襲われている女性とその一行。護衛の侍はすでに倒され、地面に伏して事切れている。侍女が女性の前に立ちはだかるも、山賊の頭は余裕の笑顔で近づいていく。獣臭が抜けきらない毛皮を身にまとい、下卑た笑みをたたえながら。その後ろでは、手下たちが同じように笑いながら立っていた。山賊の頭が侍女に手をかけた瞬間。後方に不穏な動きを感じて振り返ると、頭の目に映ったのは・・一瞬で地面に倒れた手下たち。赤く染まる地面。私は山賊たち全員を1人で斬り倒した。そのまま刀を持つ手を踏みつけて、頭を睨みつける。『なんだぁ、きさまは!?』名乗る前に、襲いかかる頭を一刀両断で斬り伏せる。■SE/刀で斬りつける音「飛騨の宮丸・・と、申す」地面に倒れた頭の亡骸に向かって言葉をかけた。それを見ていた女性は、侍女をおしのけて私に近寄ってくる。「ありがとうございます」「お怪我はありませんか?」「大丈夫です。でも護衛のものが・・」「残念なことをしました。間に合わなくて申し訳ありません。さぞ無念なことであったであろう。彼はひとまずこの場で埋葬して、あなたは家に戻りなさい」「はい」「急ぎますので、私どもはこれで」「あの」「はい」「お礼を・・」「礼にはおよびません。武道をたしなむ者としては当然のことをしたまで」「そんな」「道中お気をつけて」なにか言いたげな彼女の瞳を背に、私は国境の峠へと急いだ。[シーン4:加賀の温泉】越前国での顔見せは、上々だった。藩主は快く私を迎え、手厚くもてなす。筆頭家老が私に向かって、牽制の言葉を発した。「お若いとはいえ、剣の鍛錬は見事との噂。まさにご先祖・長近公(ながちかこう)の血でしょうな」「恐れ入ります。されど、家名の誇りだけでは飛騨の民は守れませぬ」松平吉邦の家臣の中からは「金森家は再興とはいえ旗本。格が違う」と冷ややかな視線も感じていた。ふん。顔見せの宴などというものはこんなものだろう。縁談相手の姫が病気療養中で顔を出さなかったのは気掛かりだけど。まあよい。どうせ、かりそめの相手。心も体も距離は遠いほど都合がよい。帰りの道中で隣国の加賀へ行き、温泉で休むよう進言してくれた。心遣いに感謝し、加賀の温泉へ。■SE/温泉の音お供の家臣たちがあがったあと、私はゆっくりと湯につかる。ああ。体の芯まで温まる・・・あまりの心地よさに露天で少しまどろんでしまったようだ。気がつくと、湯煙の向こうに人がいる。はっ。とっさに手拭いで身を隠し、湯船からでた。向こうの姿ははっきりとは見えなかったが、どうやら女性だったようだ。まさか、見られたか・・・まあ、問題なかろう。市井のものに私が女だと知れても。表では雪の中、供回り(ともまわり)の者らが、湯屋の外で馬の手綱を預かっていた。[シーン 5:飛騨国金森家】■SE/正月を迎える雑踏高山城の跡地を見渡せる城下町。金森の屋敷から、高山城がよく見える。いまや主なき城となってしまったが、この元禄の世でも飛騨の象徴的な存在だ。政(まつりごと)の場としての役目は終え、代官所の建設が進む。それでも、石垣も門も、まるで時を忘れたようにそびえていた。街は正月の準備に追われ、みなが慌ただしく動き回っている。私は、家臣とともに城下町の雪かきを手伝う。『昔の殿様の頃はこんなことしてはくれなかったんやさ』領民の老婆から声をかけられ、笑顔で返す。そんな年末のある日、越前国から飛騨へ使者が訪れた。今回の縁談を正式に進めたいのだという。なんと。顔も合わせていないというのに、いいのであろうか。家臣たちから聞いた噂では、使者が持ってきた書状に私のことがこまかに書かれていたらしい。武威(ぶい)すぐれ、文才(ぶんさい)並びなく、領民とも心を通わせている・・?こんなもの、ただの世辞ではないか。私の心配をよそに、使者が帰ると、入れ替わりのように縁談の相手、越前国の姫がやってきた。「よろしくお願い申し上げます」その顔を見た瞬間、私は思わず息をのんだ。忘れようもない。あのとき、木ノ芽峠で山賊に襲われていたおなご!「越前国藩主・松平吉邦(まつだいら よしくに)が娘、千代芳(ちよか)と申します」驚いて二の句が継げない私に、「その節は、あぶないところをお救いいただき、ありがとうございました」「そ、そなたは・・」「わたくし、少人数でふらっと旅に出ておりましたので」「そうであったか・・」「あのあと、わたくし・・・」「ま、まて。みなのもの、席をはずされよ。拙者と姫だけにしてもらえぬか」姫のお付きの者も、私の家来も、周りから誰もいなくなる。「私、あなたさまのことを考えると夜も寝られず・・」「あの、千代芳どの・・そなたには伝えておかねばならぬことがある。実は、拙者は・・」「わかっております」「え?」「加賀の温泉でもご一緒でしたもの」「なん・・・だと」「おのこであろうと、おなごであろうと私がお慕いもうす方には変わりありません」「しかし、拙者はおんな・・」「それがどうしたと言うのですか?私はもう決めたのです。生涯をともにするのは、この世でただひとり。あなたさま」「しかし、世継ぎも生まれぬのだぞ」「子供なんて養子縁組でもなんでもすればいいじゃないですか。何とかなるでしょう」姫の迫力に圧倒されて、私は言葉を失っていった。千代芳に背を向け、もういちど、じっくりと自分の気持ちを考えてみる。金森のお家復興という話はおいといて。この姫、千代芳に対する私の気持ち。それは・・・いや。決していい加減な思いではない。「私のこと、おいやですか?」「いや、その逆だ」「わかさま!」瞳をうるわす千代芳の肩を抱き、庭へいざなう。見上げる視線の先。あるじのいない高山城に夕陽がさしこんでいた・・・

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    ボイスドラマ「A.I.(ア・イ)の絆/前編:母子編」

    AI神経生理研究の第一人者・一之宮ミヤ博士が作り出した、息子の記憶を受け継ぐAIヒューマノイド“蓮架”。プロメテウスの襲撃によって一度は破壊された彼が、奇跡的に“魂のパルス”によって再生する――。母を想う気持ち、母が子を想う祈り。そして、AIヘイト組織の青年・アドルフとの邂逅が、物語を大きく動かす。AIに“愛”はあるのか。それとも“愛”こそがAIを人にするのか。飛騨の山々を舞台に描かれる、母とAIの再生の物語。涙と静かな希望を、あなたに。【ペルソナ】・一之宮博士(34歳/CV:小椋美織)=日本のAI神経生理研究の第一人者。交通事故で亡くした息子・恋に似せてAIロボットを作る・レンカ=蓮架(7歳/CV:坂田月菜)=亡くなった恋(レン)の代わりに母が作ったAIロボット。息子・恋のすべての記憶を受け継ぐはずが母に好かれようと”いい子”になってしまう・電気羊(55歳/CV:日比野正裕)=AIヘイト集団「プロメテウス」のリーダー。AI倫理法施行の歳は一之宮博士のラボや自宅に脅迫状を送っていたがだんだんエスカレートしてスナイパーを放つ・救急隊員(CV:日比野正裕)・馬水博士(33歳/CV:岩波あこ)=一之宮博士の親友。かつての共同開発者。現在、ヒューマノイドフレームを製造する工場「ミラーテック・ロボティクス」を運営する・ニュースアナウンサー(宮ノ下浩一/カメオ)=HitsFMのベテランアナウンサー・時代設定=2030年前後(ごくごく近い未来/来年かも・・・)・世界観=増え続けるA.I.ロボット(ヒューマノイド)に対して人権が認められていく※前編が一之宮博士のモノローグ、後編はレンカのモノローグ<プロローグ/久々野町/女男滝周辺>◾️SE/クマの咆哮「ク、ク、クマだ!」◾️SE/さらに怒り狂うクマの叫び「た、た、たすけてくれ!」◾️SE/草やぶをかきわける音「あ〜あ。だめだよ」「え?え?」「こわがってるんだ、この子」「この子・・・?」「さあ、もう心配しなくていいから」「こっちへおいで」「ほら、いい子だから」「ようし、よし。もう人間に近づいちゃだめだぞ。さあ、行って。森へおかえり」◾️SE/草やぶをかきわけ森の奥へ帰っていくクマ「よかった。あ、お怪我はありませんか?」「き、き、きみは?」「ぼくは・・」「レンカ」「あ、博士(はかせ)」「だめじゃない、あまり遠くへ行ったら」「ごめんなさい。だって、この人がクマに・・」「あ、そ、そうなんです。絵を描いてたらいきなりクマが現れて」「絵描きさん?」「あ、いえ。実はぼく、この近くの児童養護施設で働いているんです」「くぐの りんごはうす?」「そう。こう見えてぼくは社会福祉士なんだよ」「へえ〜」「そうですか。私たちはじゃあこれで」「あ、はい・・・」「もうクマをこわがらせちゃだめだよ〜」「わかったよ。ありがとう」ぼくが初めてその人に会ったのは、11月も終わりに近い金曜日。久々野にある女男滝の近く。馬水博士とやってきたお昼のことだった。実はその日、馬水博士の研究所兼ファクトリーで大変なことがあったんだ。<アナウンサーによるAI人権法が承認されたことを伝えるニュース>「臨時ニュースをお伝えします。今朝未明、高山市一之宮町にある馬水博士の研究所兼ヒューマノイドフレーム工場で大規模な爆発事故が発生しました。現場は一之宮町の山間に位置する第七研究地区で、AI関連施設が集まるエリアのひとつです。消防によりますと、爆発は午前3時過ぎ、施設地下の冷却炉付近から発生し、建物は全焼。少なくとも職員3名が軽傷、うち1名が重体とのことです。馬水博士本人は出張中で連絡がつかず、安否は確認できておりません。関係者によりますと、博士の研究所ではAI倫理法で制限されている“人格データの複製実験”を行っていたとの情報もあり、警察およびAI管理庁が詳しい経緯を調べています。現在、過激なAI排斥組織“プロメテウス”による犯行声明がネット上に投稿されており、当局は関連を含め慎重に捜査を進めているとのことです」「まさか、馬水博士が狙われるなんて」「いや、不思議でもなんでもないわ。ミヤが作っているのはAIの頭脳。私はその体を作ってるんだから。むしろ私の方が先に狙われてたかもしれないのよ」「でも、よかった。命の恩人の馬水博士が無事で」「命の恩人?なぁに言ってるの。蓮架は私たちの血と汗の結晶なんだから当たり前でしょ」そう。ぼくは、あの日、確かにこの世から消えた。プロメテウスのスナイパーに首を撃ち抜かれ、メモリーチップを破壊されたんだ。記憶に残っているのはママの声だけ。「行かないで!蓮架!」そのあとは目の前が真っ暗になった。でもそのあと、ママからぼくの体を受け取った馬水博士はボディを修復してくれただけじゃなかったんだ。焼け焦げたシリコンの奥にある量子層。その中に“残響”が残ってたんだって。それは、ぼくが最後に感じた“愛”の波。ママを守りたいという信号が、データではなく、エネルギーとして残った。馬水博士は、その波を“魂のパルス”と呼んだ。でも、ママの作ったAI倫理法で人格のコピーは禁止されている。博士はAI倫理法で禁じられているのに、ぼくを再構築。それを博士は“修復”と呼んだ。新しいフレーム。新しい回路。でも、目を開けた瞬間・・・ぼくは確かに、ぼくだった。「・・・ママ、悲しまないで」その言葉だけが、口から自然にこぼれた。「ママに会うのは、もう少し体が治ってからね」博士はそう言ったけど・・・早くママに会いたい!悲しんでいるママに早く伝えたい。ぼくはここにいるよ!<シーン1/一之宮町/飛騨AIラボ>◾️SE/子どもたちの元気なざわつく声+ラボの無機質なノイズ「ようこそみんな、飛騨AIラボへ!今日はゆっくり未来のロボットを見ていってね」「ありがとうございます!」「いえ、子どもたちに楽しんでもらえれば嬉しいわ」「一之宮博士」「なあに?」「博士にはお子さんがいらっしゃると聞いていたんですが・・」「ああ。いまちょっと病気で療養してるんです」「あ、ごめんなさい・・」「いえ、いいんです。寂しいですけどね・・」「僕、無神経なことを・・」「そんなことありませんよ。私だってこうして子どもたちを見ていると、心が癒やされるんです」「そうか・・・わかります。僕も社会福祉士という立場で子どもと接しなきゃいけないんだけど」「社会福祉士・・・」「子どもたちと一緒にいるとつい・・・僕までほんわかあったかい気持ちになっちゃって」「私も」「こんど、うちの施設、りんごはうすに遊びにきてください。久々野ですけど、ここからそんなに遠くないし「ありがとうございます。ぜひ、伺います」「いいところですよ、久々野も。この前なんてクマに遭遇しちゃって・・・あ、いけね。そんなこと言ったら怖くなっちゃいますよね」「はは、大丈夫ですよ。でも、何やっててクマと出逢っちゃったんですか?」「絵を描いてたんです。女男滝で。まさに、絵になるんです、あそこ」「絵?」「はい、僕、もともとは絵描きになりたかったんですけど」「まあ、すてき」「いえ、センスがないから諦めたんです」「そんな・・」「いいんです、いいんです。あ、でね、そのとき会った男の子がね、助けてくれました」「助けた・・・?」「その子、クマに近づいて話しかけてました。そしたら、クマも落ち着いて、森へ帰ってったんです」「すごい子ですね」「ええ、見た目はとっても可愛らしい子でしたよ。確か、名前が・・・レン・・カ・・だったかな」「蓮架?」「ええ。そのあと、お母さんっぽい人が探しにきて一緒に帰っていきましたけど」「おかあさんっぽい人?」「シチュエーション的にお母さんなんだけど、どっか距離があったんだよなあ」「そうなんだ・・・」これが、ママとお兄さんの出会い。次の日、ママは馬水博士のファクトリーへやってきた。<シーン2/再会・一之宮町/ミラーテック・ロボティクス社>◾️SE/静かな機械音、時折チップの冷却音。遠くで小鳥のさえずり「久しぶりね。馬水博士」「ミヤ!よくきてくれたわね。あの日以来・・・」「うん。蓮架を預けた、あの日以来」ぼくはママと馬水博士の会話を2階のバルコニーから見ていた。「実はミヤに話さなきゃいけないこと、いっぱいあるんだけど」「うん・・」「爆破事件とかでバタバタしてて」「わかってる」「あのね、ミヤ」ママ・・・もう瞳が潤んでる・・・だめだ。ぼくもう我慢できない。「実は・・・」「ママ!」ぼくはバルコニーから飛び降りた。ママの腕の中へ走っていく。「蓮架!」それだけ言うと、ぼくもママもあとはもう言葉が出なかった。ママのぬくもり。ひさしぶりの感触にぼくも涙が止まらない。「ごめんね、ミヤ。だまってて」「ううん、いいの。それより・・どうやって・・・ああ、やっぱりいい。聞きたくない。しばらくこの子を抱かせて」ママ。ママ。愛してるよ。もう絶対離れない・・・※続きは音声でお楽しみください。

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    ボイスドラマ「A.I.(ア・イ)の絆/前編:誕生編」

    AI人権法が成立した近未来――。AI神経生理研究の第一人者・一之宮博士は、亡き息子をAIとして蘇らせる。しかし目覚めた彼は“恋”ではなく、“レンカ”と名乗った。AIと人間の境界はどこにあるのか?科学と倫理、母性と愛が交錯する、飛騨高山を舞台にした近未来SFドラマ!【ペルソナ】・一之宮博士(34歳/CV:小椋美織)=日本のAI神経生理研究の第一人者。交通事故で亡くした息子・恋に似せてAIロボットを作る・レンカ=蓮架(7歳/CV:坂田月菜)=亡くなった恋(レン)の代わりに母が作ったAIロボット。息子・恋のすべての記憶を受け継ぐはずが母に好かれようと”いい子”になってしまう・電気羊(55歳/CV:日比野正裕)=AIヘイト集団「プロメテウス」のリーダー。AI倫理法施行の歳は一之宮博士のラボや自宅に脅迫状を送っていたがだんだんエスカレートしてスナイパーを放つ・救急隊員(CV:日比野正裕)・馬水博士(33歳/CV:岩波あこ)=一之宮博士の親友。かつての共同開発者。現在、ヒューマノイドフレームを製造する工場「ミラーテック・ロボティクス」を運営する・ニュースアナウンサー(宮ノ下浩一/カメオ)=HitsFMのベテランアナウンサー・時代設定=2030年前後(ごくごく近い未来/来年かも・・・)・世界観=増え続けるA.I.ロボット(ヒューマノイド)に対して人権が認められていく※前編が一之宮博士のモノローグ、後編はレンカのモノローグ<プロローグ/救急車の中>◾️SE/車内で聞こえるサイレンの声「恋!しっかりして!」「大丈夫だよ!」「絶対助けるから!」◾️SE/救急隊員の声「7歳男児!交通事故による外傷!」「さがって!」〜AEDの音×2回〜「戻らない!」「心肺停止!」11月のある晴れた日。私の息子・恋は、この世を去った。わずか7年の生涯・・・そんな・・そんな・・・いやだ!私の名は、ミヤ。一之宮にある”飛騨AIラボ”の所長。周りからは”一之宮博士(いちのみやはかせ)”と呼ばれている。AI神経生理研究の第一人者。ロボット工学の世界でも右に出るものはいない、と他人(ひと)は言う。だが、そんな名声や名誉より、もっと大切なものが私にはある。たったひとりの息子・恋(れん)。30歳(みそじ)を過ぎて生まれた息子・恋(れん)は私の宝物。それがいま、私の目の前から消えようとしている。そんなの・・そんなの・・・絶対にダメ!「すみません!」「行き先、変更してください」「え?」「あそこ!私のラボへ!」「いや、それは・・・」わかってる。救急隊員は、医師の指示なしで死亡判定を行うことはできない。法的には、私の指示に従えないだろう。だけどここ高山は、AI工学研究の特区。特区法では、「AI倫理上の脳情報/解析」目的に限り死亡判定未確定の被験者を研究施設に搬送できる、という“例外規定”が存在する。(※アンダーライン部分はテンポよく一気に)急がないと!心肺停止してから5分で脳死。10分で完全に脳の機能が消失する。「お願い!急いで!」<シーン1/飛騨AIラボ『処置室(ソラリス)』>◾️SE/AIラボの無機質な雑音私は息子を『飛騨AIラボ』の「生体神経冷却槽(Cryo-Neural Chamber)」に移送した。(※アンダーライン部分は読まなくてよい)マイナス3度の低温液体窒素ガス環境で、脳の代謝を一時的に停止。シナプスの劣化を防ぐ。よし、これで時間がかせげる。脳の記憶領域・海馬(かいば)からニューロンを三次元マッピング。私が開発しているAIプラットフォーム・ECPで人格データを抽出する。Emotional Code Protocol(エモーショナル・コード・プロトコル)。ECPこそが個性の設計図となる。(※ECP=造語。「囚われた感情」を解放するヒーリング手法に由来する)すべてのデータをメモリーチップへ記録し終わったのは、日付が変わる1分前。息子の体は荼毘に付さず、冷凍保存した。あと5年。2035年には、量子再生医療技術が臨床段階に入る。いつか肉体を再生し、AI人格と統合できるかもしれない・・・そんな一縷(いちる)の望みを託して。法的にも「死亡が確定していない」状態であれば、人格移植実験は「延命研究」として扱われる。それは私が提唱した法案、AI倫理法を回避する詭弁でもあった。恋の肉体は液体窒素槽の中で静かに眠り続ける。『恋、おやすみ。ゆっくり眠って』きっともうすぐ、AIの中で“もう一人の恋”が目を覚ますだろう。<シーン2/ヒューマノイドファクトリー『ミラーテック・ロボティクス』>◾️SE/電気自動車の車内音/ラジオを点ける音「ピッ」<アナウンサーによるAI人権法が承認されたことを伝えるニュース>「ここで速報です。かねてより国会で審議されていたAI人権法案が、本日未明、衆参両院で可決・承認されました。この法案は、人工知能、特に人格型ヒューマノイドAIに対し、一定の条件下で基本的人権を認めるものです。法の第3章には、アシモフ博士が提唱した『ロボット三原則』が最低限の倫理基準として明記されています。今回草案を監修したのは、AI倫理法の提唱者であり、神経生理AI研究の第一人者でもある一之宮博士。博士によるAI倫理法が施行されてから、わずか一年後の可決となりました。一方で、AIの権利付与に強く反対する市民団体も多く、社会の分断は今後さらに深まると見られています」車のFMラジオからニュースが流れる。AI人権法が可決・・・皮肉なものね。そもそも息子をAIとして蘇らせる行為が、人権を侵しているのに。私はあわてて、息子が交通事故に遭い心肺停止になった、という記録をクラウドから削除。友人の医師に連絡して、偽造診断書をアップロードしてもらった。その足でヒューマノイドフレームを製造する「ミラーテック・ロボティクス社」へ。オーナーの馬水(まみず)博士に連絡を入れる。馬水は以前私の共同開発者だった女性。目的は、当時極秘に製造していた試作体を借りることだった。運動神経と表情筋を模倣できる子供型のヒューマノイド。プロトタイプだが、世に出ているヒューマノイドとは比べものにならない。誰も真似できない最先端テクノロジーが凝縮されている。「ミヤ、本当にやるの?」「うん」馬水にだけは本当のことを話した。これからもヒューマノイドフレームのことでいろんなことをお願いしないといけないのだから。「なにかあったら必ず私に相談するのよ」「わかった・・・ホントにありがとう、馬水」「水くさいな。友だちじゃない」「うん・・・」プロトタイプを車に積む。ヒューマノイドフレーム=人型ヒューマノイドが入ったジュラルミンのケース。コンパクトに折りたたんであるとはいえ、見る人が見れば中身はすぐわかる。思えば、2025年あたりから、生成AIをベースにAI=人工知能は脅威的に進化した。5年も経たないうちに、一家に一台、人型AIヒューマノイド、というのが当たり前の世界に。今やAIなのか人間なのか区別がつかないモデルも多い。最新型は、食べ物や飲み物まで口にするほどだ。味覚や触覚もセンサーが普通に感じとる。ケースの中の試作体はさらにその上をいくが・・・これからAI人権法が施行されれば、AIと結婚する人間だって出てくるだろう。AI同士の結婚だってありうるし、養子縁組で子供を設けることだって。そんな世の中に反して、AIを異常に嫌う、ヘイト集団も増えてきている。先ほどのニュースでも言ってように。私など、彼らの格好の標的だ。ラボにもしょっちゅう脅迫状が届く。いつの世にも存在するウイルスのようなモノだと思って気にしていないが。馬水博士に礼を伝え、私はロボティクス社の裏門から車を出す。そのとき、隣のビルから一部始終を覗いている”目”があることに私も馬水も気づいていなかった。<シーン3/蓮架レンカの誕生/飛騨AIラボ>◾️SE/ラボの無機質なノイズ 「ママ・・・」記憶メモリーをインストールした恋が眼を覚ました。私は必死で涙をこらえてOSをチェックする。「ママ?」「おかえり、恋(レン)」「レン・・・?」「そうよ、あなたの名前よ、恋」「違うよ、ボクの名前はレンカ。蓮の花の”蓮”に架け橋の”架”」「え・・・?」落ち着け、落ち着け。ミヤ。いまフレームに入っているのは、恋のメモリー。恋の最後の瞬間が記憶されているはず。そこにはなにがあった?なにを考えてた?それは私の中で封印していたデータ。恋が息絶える瞬間の記憶。見たくない、忘れたいと思っていたメモリー。意を決してそれを再生する。◾️SE/キーボードを叩く音+エンターキーを押す音「ママ、僕、どうなるの?」「消えちゃうの?」「ママ、僕、生まれ変われるの?」「生まれ変わったらいい子になるから」「ママ、助けて!」ああ、やっぱり・・・知りたくなかった・・・恋、ごめん!許して!※続きは音声でお楽しみください。

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    ボイスドラマ「トライアングル・ラプソディ/完全版」

    荘川さくらと朝日よもぎ。ふたりの少女の“心”が入れ替わった日。八幡祭の喧騒の中で、恋と友情と運命が交錯する。それぞれの想いを胸に、他人の身体で過ごしたわずかな時間が、やがて本当の自分を見つめ直すきっかけとなっていく。――「あなたの中のわたし」と「わたしの中のあなた」。入れ替わった心が奏でる三重奏《トライアングル・ラプソディ》。荘川さくらと朝日よもぎ、それぞれの視点で描かれた前後編をひとつにまとめた完全版、ついに配信スタート!【ペルソナ】・さくら(24歳)=荘川そばの栽培農家。収穫が終わった休みの日に八幡祭へ(CV=岩波あこ)・よもぎ(29歳)=朝日町の漢方薬剤師。東京の友達と約束して八幡祭へ(CV=蓬坂えりか)・ショウ(35歳)=さくらのパートナー。八幡祭で待ち合わせした(CV=日比野正裕)・観光客(22歳)=二日酔いで薬膳カフェ「よもぎ」へきた旅行客(CV=小椋美織)<シーン1A:古い町並>◾️高山祭の雑踏(お囃子)「すごい人出・・高山祭なんだから、あたりまえだけど」古い町並を上(かみ)から下(しも)へ。屋台の曳き揃えを目指して、人の波は桜山八幡宮へ流れる。私はさくら。実家は荘川町でそばの栽培農家をやっている。9月後半からは収穫の最盛期。でも昨日までにすべて終え、今朝、路線バスに乗った。趣味の一眼レフをかかえて。秋の高山祭。八幡祭(はちまんまつり)。パートナーのショウと桜山八幡宮で待ち合わせしている。彼は市街地で働いてるから、今日もお昼まで仕事だって。ついさっき少し遅れるって連絡があった。だから私はひとりでゆっくりと、古い町並を歩く。中橋(なかばし)から上三之町(かみさんのまち)へ。古い町並を順番に撮影していく。なじみの酒蔵があるあたりで、人力車とすれ違った。いい被写体。杉玉が吊るされた軒先越しに町並を写す。そのまま人の流れにのって安川通り(やすがわどおり)方面へ。人波にもまれながらファインダーを覗いていたとき・・・「あっ!」古い町並の左端を歩いていた私は、足を踏み外して側溝で転んでしまった。一眼レフを庇うあまり、焼板の壁で強く頭をうち・・・朦朧とする意識・・・ああ、祭囃子の音がフェードアウトしていく・・・<シーン1B:朝日町の薬膳カフェ「よもぎ」>◾️カフェの雑踏「なんかこのお茶、苦いんですけど」「ああ、ごめんなさい。さっき、昨夜飲みすぎちゃった、って言ってたから五行茶をお出ししたんですよ」「ゴ・・ギョウチャ?」「はい。五種類の薬草をブレンドしたお茶です」「で?」「焙煎した生薬は苦味があるんです。でも、甘草とかナツメの甘みが、苦さを和らげてると思うけどなあ」「だから?」「苦いだけじゃなくて、飲んだあとほんのり甘さが残りませんか」「そんなんどうでもいいから、なんとかしてよ。砂糖でもなんでもいれればいいじゃない」「そんな・・・砂糖なんて入れたら、血糖値も変化しちゃうし。体も冷やしちゃいますよ」「関係ない。苦くないようにして」お客さんの声がだんだん荒くなる。あ、だめ。久々に・・・これ・・過呼吸かも・・「ちょっと、聞いてる?」意識が遠のく・・・お客さんの声が遠ざかっていく・・・<シーン2B:古い町並/さくらの体=よもぎの意識>◾️高山祭の雑踏(お囃子)「あ・・・れ・・?えっと・・えっ!?ここどこ?」気がつくと、薬膳カフェ「よもぎ」とはまったく違う場所に、私は倒れていた。ここは・・・?あたりを見回す。高山市街地の・・・古い町並だ。しかも私、側溝に左足を突っ込んで倒れている。体が重い、って思ったら、首にブラ下がっているのは、大きなカメラ。そうだ。持ち物。肩かけの小さなポーチを手で探る。ポーチの中に見つけたのは、かわいい手鏡。そこに映っていたのは・・・誰?この人誰!?桜色のロングヘアー。桜の髪飾り。そして・・・凛とした美しい顔立ち。誰なの〜!?なんで?なんで?どういうこと、これ?鏡の中で整った顔が困惑した表情を見せる。鏡を遠ざけて体全体を映すと・・・淡い桜色のロングTシャツ。透け感のある軽やかなパーカー。ボトムスはデニムのスリムパンツ。女性カメラマン?気がつくと、私の周りには人だかりができていた。その中から現れたのは・・・「大丈夫?怪我はない?」いかにも爽やかな、長髪の男性。「いや、だ、大丈夫です。おかまいなく」という私の言葉など関係なく、片手を差し出してくる。「さあ、つかまって」「いや、そ、そんな・・」口では断っているのに、なぜかその手をとってしまった。「歩ける?」「た、たぶん」「ここ、酒蔵の入口だから。ほら、そこのカフェのベンチ。あそこをお借りしよう」彼はカフェの人に断りを入れて、私をベンチへ座らせた。「さ、お水もらってきたから。はいどうぞ」「あ、ありがとうございます・・」「なんだよ、その喋り方。頭うったの?」「し、失礼ね。あなた・・・誰ですか?」「え?どういうこと?待合せに遅れたこと、怒ってるの?」「え・・だから・・名前は?」「もう〜。ショウに決まってるだろ」冷静に、冷静に。えっと、これからどうしよう・・・とにかく朝日町へ帰らなきゃ。いまごろどうなってるんだろう。怒ってたあのお客さん・・・そうこうするうちにコーヒーが運ばれてきた。そっか。カフェだもん。コーヒーくらい飲むのが礼儀だよね。「良いショットは撮れたかい?」「え・・・あ、はい・・まあ」「まあ、君の腕とそのカメラなら当然か」ああ、そうか。この一眼レフカメラ。高級そうだな。私は、カメラの履歴を遡る。老舗の酒蔵。軒先の杉玉。すうっと続いている人波。和菓子屋の前。お団子をほおばるカップル。こっち見てピースサインしてる。中橋のにぎわい。欄干の赤色が鮮やか〜。「いい写真ばかりだ」「そうですね・・・」「そんな、他人事みたいに。君が撮ったんだろ?」「多分・・」「次の被写体はきっと桜山八幡宮かな」「そう・・かな」「よし、じゃあ行こう。もう歩いて大丈夫?」「はあ・・まあ、いいですけど・・」「また、そういう喋り方。悪かったって言ってるだろ、遅刻したこと」「そういうことじゃないけど・・」「もう少ししたら屋台の曳き揃えだぞ」そう言って、ゆっくりと彼、ショウは立ち上がる。私も彼に続いて静かに起き上がる。なんか、ぎごちない。まるで自分の体じゃないみたいに。ってか、自分の体じゃないし。桜山八幡宮まで行ったら、すぐに朝日に帰ろう。<シーン2A:薬膳カフェ「よもぎ」/さくらの体=よもぎの意識>◾️カフェの雑踏「ちょっと・・大丈夫ですか?」「え?」「急に倒れちゃったみたいですけど・・・」「あ・・・あ・・・あれ?」ここ、どこ?私、古い町並を歩いてたんじゃ・・・ここって・・・カフェ?どうして?「顔色悪いよ・・・」「あ、あの・・・ここって、どこですか?」「え〜!どうしちゃったんですか、一体?」「高山じゃないの?」「高山でしょ。朝日町のカフェ『よもぎ』・・・って、あなたのお店じゃないの?」「朝日町・・・?よもぎ・・・?」どういうこと?どうして?どうして朝日町にいるの?頭を抱える私に、テーブルに座った女性は、「救急車、呼びましょうか・・・?」「救急車・・・?い、いえ・・・大丈夫です。あの・・・私、ここの店員なんですか?」「ちょっと・・・本当に大丈夫?」「あ・・・はい・・・何か飲まれますか?」「え・・・だから・・あの・・・このナントカ茶っての、苦くって飲めないから・・」「お茶・・・?ちょっと失礼・・・わ、にがっ」「でしょ。だからお砂糖を」「わかりました・・・ちょっと待って」厨房へ行ってお砂糖を探す。ってか、このカフェ、ほかに誰もいないの?砂糖・・砂糖・・・見当たらない。カフェなのに白砂糖置いてないのかな。ん?これは?ラベルに書いてある。『ナツメのシロップ』『はちみつ』『羅漢果(らかんか)エキス』?これでいっか。「ごめんなさい。白砂糖はないみたいだけど、こんなシロップでいい?」「あ・・・ありがとう・・」シロップの容器をお客さんのテーブルに置く。そのとき目に映ったのは私の指。あれ?ネイルがついてない?取れちゃったの?桜の花びらの模様。気にいってたのに。そんなことを思いながら厨房へ戻ったとき。入口の鏡を見て驚いた。「え!?誰、これ!?」鏡に映っていたのは・・・よもぎ色のエプロンをした美しい女性。左目の下のホクロ。グリーンのカラコンが輝いてる。眉間に皺を寄せ、呆然とした表情。そうか、私のことか。「やっぱ救急車、呼んだ方がよくないですか・・・?」「ホ、ホントに、だ、だ、大丈夫だから」「わかりました。あの、私もう、帰ります。ごちそうさまでした!」まるで、おかしな人を見るような表情でお客さんはそそくさと帰っていった。そりゃそうだ。私だって、この状況、まったく理解できないし。誰もいなくなった店内で、もう一度鏡をじっくりと見る。薄いベージュのコットンブラウス。濃いグリーンのワイドパンツ。髪はまとめて、つまみ細工のヘアクリップに水引のポニーフック。指にネイルはしてないけど、キレイに手入れしてある。誰なの、一体?※続きは音声でお楽しみください。

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    ボイスドラマ「トライアングル・ラプソディ/後編」

    朝日町から高山へ――“よもぎ”の心がさくらの身体に宿り、八幡祭の中で彼女が見たのは、祭よりもまぶしい恋の光景。一方、さくら(よもぎの体)は、カフェの温もりの中で“他人の生き方”を知っていく。やがて二人の道が再び交差したとき、運命は静かに“元の形”へと還っていく。──心が入れ替わっても、想いは消えない。ヒダテン!ボイスドラマ第29話『トライアングル・ラプソディ/後編』は、朝日町の薬膳カフェと桜山八幡宮を結ぶ“よもぎの視点”の物語です。【ペルソナ】・さくら(24歳)=荘川そばの栽培農家。収穫が終わった休みの日に八幡祭へ(CV=岩波あこ)・よもぎ(29歳)=朝日町の漢方薬剤師。東京の友達と約束して八幡祭へ(CV=蓬坂えりか)・ショウ(35歳)=さくらのパートナー。八幡祭で待ち合わせした(CV=日比野正裕)・観光客(22歳)=二日酔いで薬膳カフェ「よもぎ」へきた旅行客(CV=小椋美織)<シーン1B:朝日町の薬膳カフェ「よもぎ」>◾️カフェの雑踏「なんかこのお茶、苦いんですけど」「ああ、ごめんなさい。さっき、昨夜飲みすぎちゃった、って言ってたから五行茶をお出ししたんですよ」「ゴ・・ギョウチャ?」「はい。五種類の薬草をブレンドしたお茶です」「で?」「焙煎した生薬は苦味があるんです。でも、甘草とかナツメの甘みが、苦さを和らげてると思うけどなあ」「だから?」「苦いだけじゃなくて、飲んだあとほんのり甘さが残りませんか」「そんなんどうでもいいから、なんとかしてよ。砂糖でもなんでもいれればいいじゃない」「そんな・・・砂糖なんて入れたら、血糖値も変化しちゃうし。体も冷やしちゃいますよ」「関係ない。苦くないようにして」お客さんの声がだんだん荒くなる。あ、だめ。久々に・・・これ・・過呼吸かも・・「ちょっと、聞いてる?」意識が遠のく・・・お客さんの声が遠ざかっていく・・・<シーン2B:古い町並/さくらの体=よもぎの意識>◾️高山祭の雑踏(お囃子)「あ・・・れ・・?えっと・・えっ!?ここどこ?」気がつくと、薬膳カフェ「よもぎ」とはまったく違う場所に、私は倒れていた。ここは・・・?あたりを見回す。高山市街地の・・・古い町並だ。しかも私、側溝に左足を突っ込んで倒れている。体が重い、って思ったら、首にブラ下がっているのは、大きなカメラ。そうだ。持ち物。肩かけの小さなポーチを手で探る。ポーチの中に見つけたのは、かわいい手鏡。そこに映っていたのは・・・誰?この人誰!?桜色のロングヘアー。桜の髪飾り。そして・・・凛とした美しい顔立ち。誰なの〜!?なんで?なんで?どういうこと、これ?鏡の中で整った顔が困惑した表情を見せる。鏡を遠ざけて体全体を映すと・・・淡い桜色のロングTシャツ。透け感のある軽やかなパーカー。ボトムスはデニムのスリムパンツ。女性カメラマン?気がつくと、私の周りには人だかりができていた。その中から現れたのは・・・「大丈夫?怪我はない?」いかにも爽やかな、長髪の男性。「いや、だ、大丈夫です。おかまいなく」という私の言葉など関係なく、片手を差し出してくる。「さあ、つかまって」「いや、そ、そんな・・」口では断っているのに、なぜかその手をとってしまった。「歩ける?」「た、たぶん」「ここ、酒蔵の入口だから。ほら、そこのカフェのベンチ。あそこをお借りしよう」彼はカフェの人に断りを入れて、私をベンチへ座らせた。「さ、お水もらってきたから。はいどうぞ」「あ、ありがとうございます・・」「なんだよ、その喋り方。頭うったの?」「し、失礼ね。あなた・・・誰ですか?」「え?どういうこと?待合せに遅れたこと、怒ってるの?」「え・・だから・・名前は?」「もう〜。ショウに決まってるだろ」冷静に、冷静に。えっと、これからどうしよう・・・とにかく朝日町へ帰らなきゃ。いまごろどうなってるんだろう。怒ってたあのお客さん・・・そうこうするうちにコーヒーが運ばれてきた。そっか。カフェだもん。コーヒーくらい飲むのが礼儀だよね。「良いショットは撮れたかい?」「え・・・あ、はい・・まあ」「まあ、君の腕とそのカメラなら当然か」ああ、そうか。この一眼レフカメラ。高級そうだな。私は、カメラの履歴を遡る。老舗の酒蔵。軒先の杉玉。すうっと続いている人波。和菓子屋の前。お団子をほおばるカップル。こっち見てピースサインしてる。中橋のにぎわい。欄干の赤色が鮮やか〜。「いい写真ばかりだ」「そうですね・・・」「そんな、他人事みたいに。君が撮ったんだろ?」「多分・・」「次の被写体はきっと桜山八幡宮かな」「そう・・かな」「よし、じゃあ行こう。もう歩いて大丈夫?」「はあ・・まあ、いいですけど・・」「また、そういう喋り方。悪かったって言ってるだろ、遅刻したこと」「そういうことじゃないけど・・」「もう少ししたら屋台の曳き揃えだぞ」そう言って、ゆっくりと彼、ショウは立ち上がる。私も彼に続いて静かに起き上がる。なんか、ぎごちない。まるで自分の体じゃないみたいに。ってか、自分の体じゃないし。桜山八幡宮まで行ったら、すぐに朝日に帰ろう。<シーン3B:桜山八幡宮/さくらの体=よもぎの意識>◾️高山祭の雑踏(お囃子)「やっぱり、すごい迫力だなあ。屋台の曳揃え」「そりゃ、11台もの絢爛豪華な屋台が、一堂に揃うんだから」「この美しさ・・・言葉にできない」「写真、撮らなくていいの?」「あ・・」「もうすぐ、布袋台のからくり奉納だよ」一眼レフカメラなんて使ったことないけど・・・ファインダーを覗いて、なんとなくシャッターを切る。「ユネスコの無形文化遺産登録。当然って感じだな」「金箔の飾りも、彫り物も全部職人の手仕事かあ・・・」「秋の空気によく似合う、美しい景色。もう少し近づいてみて。木の温もりと優しい香りが伝わってくるよ」「まるで詩人みたい」「はは・・よく言われる」「桜吹雪の山王祭もいいけど、秋風の八幡祭も素敵」「初夏を迎える山王祭と冬を迎える八幡祭。こんな美しい祭りを四季の中で二度も見られるなんて飛騨人(ひだびと)は幸せだよね」「確かに。だけど私、八幡祭は久しぶりなの」「え?去年も一緒に来たじゃないか」「え・・・あ、そうか・・・ごめんなさい」「さくら、やっぱり今日はちょっとおかしいぞ。秋そばの収穫で疲れちゃったのかい?」秋そば・・・ってどこのこと?そばといえば・・・荘川?この爽やかな青年は?待合せって言ってたけど、市街地に住んでいるのかしら。ブルーの瞳がとってもきれい・・・「ちょっと風が出てきたかな・・寒くない?」「うん、大丈夫。あの・・・少しだけ向こうで、電話してきてもいい?」「あ・・ああ。もちろん」「朝日のお店に電話しなくちゃ」「お店?」「ううん。なんでもない」◾️電話の呼び出し音(受話器内部音)思ったとおり、カフェは誰も出ない。私は、おばあちゃんに電話をかけた。「もしもし。あ、おばあちゃん?よもぎ」「うん。ちょっと市街地まで来てるの。そう、今日高山祭」「え?声がおかしい?」「あ、そ、そうかな。ちょっと風邪気味だから」「お店あけてきちゃったから、お留守番お願いできる?」「ありがとう」「うん。遅くなる前には帰るから」「宵祭(よいまつり)?見ないよ。遅くなっちゃうもん」「お迎え?悪いからいい、いい。帰る方法あるから」「うん。じゃあ、お店お願いします」はぁ〜。そうだった。こんな姿じゃ、おばあちゃん私だってわかんないよ〜。どうしよう〜。それに、朝日にいた私はどうなってるの?お店から消えてどこ行っちゃったの?もう頭の中が真っ白。お願い!だれかなんとかして〜!<シーン4B:桜山八幡宮/さくらの体=よもぎの意識>◾️高山祭の雑踏(からくり奉納/布袋台)〜観客の拍手男女の唐子(からこ)がブランコに乗る「綾渡り」(あやわたり)。まるで体操の大車輪のように回転しながら、布袋和尚の背と右手に飛び移る。こんなにも大胆で、ここまで繊細な動き。久しぶりに目にしたからくりに圧倒される。隣で見ている彼。ショウも感動して目が離せなくなってる。あれ?ちょっぴり瞳がうるんでいるじゃない?「この美しさは、言葉にできるようなレベルじゃない」「ほんと」私もそれ以上、声をかけられなかった。ショウの距離は、さっきより少しだけ近づいたようだ。気づかれないように、彼のジャケットの裾をつまむ。だって、この人混みではぐれたらいけないから。それに気づいた彼は、そっと私の肩を抱く。そのとき、私のことをじっと見ている視線に気がついた。ゆっくりその方向へ目を向けると・・・「あっ!」思わず声を出してしまった。私たちの斜め後ろに立っていたのは・・・”私=よもぎ”だった。お互いに目が合った瞬間、私は反射的に、ジャケットから手を離し、彼の手もふりほどく。泣きそうな顔で踵を返し、大鳥居の方へ走り出す”よもぎ”。「待って!」人波をかき分けて追いかける。「お願い、止まって!」「あなた、さくらさんでしょ!」「行かないで〜!」※続きは音声でお楽しみください。

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    ボイスドラマ「トライアングル・ラプソディ/前編」

    秋の高山祭──荘川そば農家の娘・さくらは、恋人ショウと再会するはずだった。しかし祭の雑踏の中で転倒し、気がつくと見知らぬカフェの記憶と、自分ではない声…。いっぽう同じころ、朝日町の薬膳カフェでは“苦いお茶”をきっかけに騒ぎが起こる。ふたりの意識が入れ替わった瞬間から、物語は静かに、そして切なく動き出す。──すれ違いの恋、入れ替わる心。ヒダテン!ボイスドラマ第28話『トライアングル・ラプソディ/前編』は、高山祭の喧騒を背景に描く“さくらの視点”のラブストーリーです。【ペルソナ】・さくら(24歳)=荘川そばの栽培農家。収穫が終わった休みの日に八幡祭へ(CV=岩波あこ)・よもぎ(29歳)=朝日町の漢方薬剤師。東京の友達と約束して八幡祭へ(CV=蓬坂えりか)・ショウ(35歳)=さくらのパートナー。八幡祭で待ち合わせした(CV=日比野正裕)・観光客(22歳)=二日酔いで薬膳カフェ「よもぎ」へきた旅行客(CV=小椋美織)<シーン1A:古い町並>◾️高山祭の雑踏(お囃子)「すごい人出・・高山祭なんだから、あたりまえだけど」古い町並を上(かみ)から下(しも)へ。屋台の曳き揃えを目指して、人の波は桜山八幡宮へ流れる。私はさくら。実家は荘川町でそばの栽培農家をやっている。9月後半からは収穫の最盛期。でも昨日までにすべて終え、今朝、路線バスに乗った。趣味の一眼レフをかかえて。秋の高山祭。八幡祭(はちまんまつり)。パートナーのショウと桜山八幡宮で待ち合わせしている。彼は市街地で働いてるから、今日もお昼まで仕事だって。ついさっき少し遅れるって連絡があった。だから私はひとりでゆっくりと、古い町並を歩く。中橋(なかばし)から上三之町(かみさんのまち)へ。古い町並を順番に撮影していく。なじみの酒蔵があるあたりで、人力車とすれ違った。いい被写体。杉玉が吊るされた軒先越しに町並を写す。そのまま人の流れにのって安川通り(やすがわどおり)方面へ。人波にもまれながらファインダーを覗いていたとき・・・「あっ!」古い町並の左端を歩いていた私は、足を踏み外して側溝で転んでしまった。一眼レフを庇うあまり、焼板の壁で強く頭をうち・・・朦朧とする意識・・・ああ、祭囃子の音がフェードアウトしていく・・・<シーン2A:薬膳カフェ「よもぎ」/さくらの体=よもぎの意識>◾️カフェの雑踏「ちょっと・・大丈夫ですか?」「え?」「急に倒れちゃったみたいですけど・・・」「あ・・・あ・・・あれ?」ここ、どこ?私、古い町並を歩いてたんじゃ・・・ここって・・・カフェ?どうして?「顔色悪いよ・・・」「あ、あの・・・ここって、どこですか?」「え〜!どうしちゃったんですか、一体?」「高山じゃないの?」「高山でしょ。朝日町のカフェ『よもぎ』・・・って、あなたのお店じゃないの?」「朝日町・・・?よもぎ・・・?」どういうこと?どうして?どうして朝日町にいるの?頭を抱える私に、テーブルに座った女性は、「救急車、呼びましょうか・・・?」「救急車・・・?い、いえ・・・大丈夫です。あの・・・私、ここの店員なんですか?」「ちょっと・・・本当に大丈夫?」「あ・・・はい・・・何か飲まれますか?」「え・・・だから・・あの・・・このナントカ茶っての、苦くって飲めないから・・」「お茶・・・?ちょっと失礼・・・わ、にがっ」「でしょ。だからお砂糖を」「わかりました・・・ちょっと待って」厨房へ行ってお砂糖を探す。ってか、このカフェ、ほかに誰もいないの?砂糖・・砂糖・・・見当たらない。カフェなのに白砂糖置いてないのかな。ん?これは?ラベルに書いてある。『ナツメのシロップ』『はちみつ』『羅漢果(らかんか)エキス』?これでいっか。「ごめんなさい。白砂糖はないみたいだけど、こんなシロップでいい?」「あ・・・ありがとう・・」シロップの容器をお客さんのテーブルに置く。そのとき目に映ったのは私の指。あれ?ネイルがついてない?取れちゃったの?桜の花びらの模様。気にいってたのに。そんなことを思いながら厨房へ戻ったとき。入口の鏡を見て驚いた。「え!?誰、これ!?」鏡に映っていたのは・・・よもぎ色のエプロンをした美しい女性。左目の下のホクロ。グリーンのカラコンが輝いてる。眉間に皺を寄せ、呆然とした表情。そうか、私のことか。「やっぱ救急車、呼んだ方がよくないですか・・・?」「ホ、ホントに、だ、だ、大丈夫だから」「わかりました。あの、私もう、帰ります。ごちそうさまでした!」まるで、おかしな人を見るような表情でお客さんはそそくさと帰っていった。そりゃそうだ。私だって、この状況、まったく理解できないし。誰もいなくなった店内で、もう一度鏡をじっくりと見る。薄いベージュのコットンブラウス。濃いグリーンのワイドパンツ。髪はまとめて、つまみ細工のヘアクリップに水引のポニーフック。指にネイルはしてないけど、キレイに手入れしてある。誰なの、一体?カウンターの中を手当たり次第探してみる。あ、カウンターの下にバッグ。いいよね、見ても。非常事態だし。小袋がいっぱい。中身は・・ハーブの葉っぱ?財布。ポーチ。ハンドクリーム。それから・・・スマホ!個人情報だけど・・・ごめんなさい!ああ、でも暗証番号わかんないから開けないか・・・と思ったら、顔認証で開いちゃった。「設定」を開いて・・・朝日よもぎ・・・って名前だよね?いいわ。じっとしてても始まらない。とにかく、高山市街地へ。古い町並へ戻らないと。朝日町からだと・・・バスの本数少ないよね、きっと。早く。バス停まで急がなきゃ。<シーン3A:高山濃飛バスセンター/よもぎの体=さくらの意識>◾️高山駅前の雑踏/遠くから祭囃子が聞こえるやっと、戻ってきた。朝日支所前から路線バスで約1時間。早く”私=さくら”を見つけなきゃ。どこへ行けばいい?古い町並?そう。あのとき私、上三之町から安川通に向かって歩いてたから。もし、”さくら”が誰かの意識を持っているのなら、桜山八幡宮ね。<シーン4A:桜山八幡宮/さくらの体=よもぎの意識>◾️高山祭の雑踏(からくり奉納/布袋台)〜観客の拍手桜山八幡宮の境内に引き揃えられた11台の屋台。まばゆいほどの絢爛豪華な佇まいのなかをゆっくりと歩く。どこ?どこにいるの?”さくら”もう一度、参道の反対側へ。男女の唐子(からこ)が綾に乗る「綾渡り」(あやわたり)。まるで空中ブランコのように、棒を伝って布袋様に乗り移る離れ業。よく見ると左手の軍配も旗に変わっている。こんなにも大胆で、ここまで繊細な動き。何回見ても圧倒される。思わず見入ってしまったけど、それより・・・布袋台の前まで戻ったとき、見覚えのある髪飾りが目にはいった。桜色のロングヘアーを彩る桜の髪飾り。淡い桜色のTシャツにデニムのスリムパンツ。見つけた。あれ?彼女、”さくら”の隣にいるのは・・・ショウ?そうか、出会えたんだ。よかっ・・・え?彼女、どこを見ているの?”さくら”が見上げているのは屋台じゃなくて・・・ショウ・・・そのまま視線を下げていくと・・・え?うそ?ショウのジャケットの裾をつまんでる。ショウは・・・?”さくら”の行動に気づいた彼は、そっと彼女の肩を抱く。いや。やめて。こんなのだめ。ああ、だめ。見たくなくても視線がはずせない。私の視線に気づいたのか・・・ゆっくりと彼女が振り向く。「あ・・」あわててショウのジャケットから手を離す”さくら”。私は、お互いに目が合った瞬間、踵を返して大鳥居の方へ走り出した。「待って!」”さくら”は人波をかき分けて追いかけてくる。「お願い、止まって!」「あなた、さくらさんでしょ!」「行かないで〜!」彼女の声が私を追ってくる。いやだ。いやだ。いやだ。私は必死で走った。走りながら目からは大粒の涙がこぼれる。宮前橋(みやまえばし)を渡って車道へ。歩道を抜けた瞬間、”さくら”は私の肩に手をかけた。「私たち、入れ替わってるんでしょ!?」え・・一瞬、足が止まる。そのとき・・・◾️急ブレーキの音走ってきた車が急ブレーキをかけた。私とよもぎ、さくらと私は足をとられて、大きく転倒。目の前が真っ暗になっていった。<シーン5A:病院/再び元の体へ(さくら)>◾️病院の雑踏〜心電図の音など「気がついた?」「あ・・・」窓の外。夜空に白いカーテンが、かすかに揺れている。ほんの少し開いた窓から、ぼんやりと祭囃子の音が聞こえてきた。「宵祭りだよ」そうか・・・ここは、病院。ショウは心配そうに顔を覗き込む。あっ。そうだ。体。私の体。どうなったの?指を広げる。10本の爪に、ほんのりと桜模様のネイルアート。「鏡、鏡みせて!」「どうぞ」ショウがポーチから手鏡をとりだして私に手渡す。目をつむって鏡を顔の前へ。おそるおそる、ゆっくりと目を開けると・・・緊張した表情で私を見つめていたのは、桜色のロングヘアー。桜の髪飾り。そして・・・私だ!さくら・・・

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    ボイスドラマ「LOBO★ユアフレンド」

    久々野町の森にひっそりと暮らしていたオオカミの母と子。クマに襲われ、母を失った子ども「カムイ」が、幼稚園児の少女・りんごと出会うことから物語は始まります。“ロボ”と呼ばれ、人間の家族と暮らしながらも、心の奥底には「オオカミの誇り」を宿し続けるカムイ。彼はりんごを守るため、幾度となく命を張ります。そしてついに訪れる、運命の夜──。母が遺した言葉を胸に、最後の最後まで少女を守り抜いたカムイの姿は、聞く者の心を揺さぶります。「もしも、ニホンオオカミが生き延びていたら?」そんな“もし”を描いた感動のボイスドラマを、ぜひお聴きください。【ペルソナ】・カムイ/LOBO(0歳〜)=子どもの狼(CV=坂田月菜)※カムイはアイヌ語で「神」・母狼(30歳くらい)=誇り高き飛騨狼の最後の生き残り(CV=小椋美織)・りんご(5歳)=久々野町の幼稚園年長さん。(CV=坂田月菜)・ママ(28歳)=りんごのママ(CV=岩波あこ)・パパ(32歳)=りんごのパパ(CV=日比野正裕)・ニュースアナウンサー=宮ノ下さん(カメオ)【参照:日本オオカミ協会】https://japan-wolf.org/faq/<シーン1/久々野の森から国道41号へ>◾️SE/森の中/虫の声/クマの声「カムイ!逃げて!」「おかあさんは!?」「いいから逃げなさい!ウェン/カムイより早く!」おかあさんはボクを庇うように、大きなクマの前に回り込んだ。ウェンカムイ。ボクたちを襲ってくる悪いクマのことをおかあさんはそう呼んだ。弟のイメルも妹のレンカもウェンカムイに襲われていなくなった。おかあさんとボク=カムイは、オオカミの母子(おやこ)。オオカミ?正しくはニホンオオカミって言うんだって。ボクたちはここ久々野で生まれ、久々野で育った。おかあさんは一之宮からやってきた、って言ってたけど。ボクは夢中で逃げた。無我夢中で走ったら、目の前には人間が作った大きな道。よし、あの向こうまで行けば・・・勢いをつけて飛び出す。そのとき、◾️SE/急ブレーキの音「カムイ!あぶない!」「おかあさん!」草むらから飛び出したおかあさんが、ボクに体当たりした。ボクは道の端に投げ出され、お母さんも草むらへ。「おかあさん!おかあさん!」おかあさんは草むらに横たわって動かない。ただ、ボクの方をじっと見つめた。おかあさんの声は心の中に直接聞こえてくる。「ねえ、カムイ。聞いて。覚えておいてほしいの。私たちは誇り高きニホンオオカミ。ここ、飛騨では神の使い」「かみさま?」「そう。だから、これからも悪いやつに負けちゃだめ。どんな大きな相手でも背中を見せてはいけない」「うん、わかったよ」「もし、あなたに家族ができたら命懸けで守るのよ。家族なんて・・無理かもしれないけど・・・」「おかあさん・・?」「さあ、もう・・・いきなさい・・・」「おかあさん!」「ここにいちゃ・・いけない」そう言っておかあさんはゆっくりと目を閉じた。「おかあさん!おかあさん!どうしたの?なんで返事してくれないの?」「おかあさん・・・」「わかったよ・・・ボク、いくね・・」ボクはおかあさんにさよならを言って、大きな道をもう一度渡っていった。「あぶない!」「えっ?」気がつくと、さっきよりおおきな乗り物が目の前を走り去っていった。ボクを抱きかかえて尻餅をついているのは・・・人間のこども!「あぶなかったねー」と言って、ボクの頭を撫でてくる。「さわるな!」「こら、助けてあげたのに怒っちゃだめでしょ。りんご、年長さんになったから知ってるもん。親切にされたら『ありがとう』って言うんだよ」なに言ってるかわかんないけど、ちょっと困った顔をして、もう一度触ってきた。あ、あったかい・・・「よしよし。もう道路に飛び出しちゃだめだよ。じゃあね。ばいばい」そう言ってどっかへ行っちゃった。「おかあさん・・・」どうしてかわかんないけど、ボクは女の子のあとをついていく。大きな道から、少し小さな道へ。おっきくてながぁい乗り物が走る道も越えて。りんごがいっぱい実っている畑を通ったとき女の子は振り返った。ボクも距離を保ったまま立ち止まる。「あれぇ?ちびちゃん、ついてきちゃったの?」女の子はしゃがんで、ボクに向かって小さな手をふる。なんだ?よくわかんないけど、そばへ行ってみよ。「どうしよう・・・ママ、犬、きらいって言ってたよなあ・・」「ねえ、いい子にできる?」なに言ってんだ、こいつ。「できるよね?」ボクが首をかしげると、「もう〜。いい子にしないと、追い出されるんだってば!」また困った顔。しかたないなあ。そっち行ってやるよ。<シーン2/久々野町・りんごの家>◾️SE/食卓の音「ちゃんとりんごが自分で面倒みるのよ」女の子のお母さんがボクの方を見てなにか言った。どういうこと?「よかったね!ちびちゃん!」女の子はボクを抱いて大喜びしている。あれ?なんか知らないうちにこの子のこと、嫌じゃなくなってるかも。一緒にいた男の人が、ボクを「ロボ」と呼んだ。なんだ、それ?ボクの名前はカムイ。カムイだぞ。「ロボ、これからアタシが面倒みるからね!アタシの名前はリンゴ。覚えてね。リ・ン・ゴ」りんご・・・。この子が、りんご。ボクとりんごは、こうして家族になった。ボクは、人間の匂いがする寝床を作ってもらったけど、そんなんやだな。りんごの寝床にあがって、横に寝た。次の朝、りんごは背伸びをして目覚め、ボクを抱っこして、外へ。「おしっこだよ〜」なに言ってるかわかんないけど、りんご畑の方へ駆けていく。おかあさんに教えてもらったように足をあげて、畑の木におしっこをかけた。ここはボクとりんごの縄張り。誰も入(い)れないから。それからの毎日はいつもりんごと一緒。りんごがいないお昼間は、縄張りに目を光らせる。ボクが守ってあげないと。◾️SE/狼の遠吠えたまに、夜になるとおかあさんのこと思い出して叫んじゃうけど。「ロボちゃんはおりこうね。キャンキャン言わないから、ママに怒られない。りんごも見習わないと」りんごの言ってることはちんぷんかんぷんだけどボクの頭を撫でるときは、喜んでるとき。朝はいつもお散歩。当然ボクはりんごを守る。ある日、散歩の途中で大きな黒い犬が現れた。「あ!おっきな犬!怖いよぉ!」黒い犬は、りんごが怖気付いたのを見て、こっちへ駆けてくる。「きゃあ〜!助けて〜!」「大丈夫。心配ない」ボクはりんごの前に立ち、犬を睨みつける。ボクより何倍も大きな体。でも、そんなの関係ない。『私たちは誇り高きニホンオオカミ。どんな大きな相手でも背中を見せてはいけない』おかあさんの声が頭の中に響く。ボクは、まったく怖くなかった。低い唸り声をあげて犬を睨む。ボクと目が合ったとたん、犬は顔を伏せた。「りんごに近づくな」低い唸り声を犬に投げつける。犬はあっという間に逃げていった。「ロボちゃん、りんごを守ってくれたの?」ボクは、犬が見えなくなるまでじっと睨み続けていた。<シーン3/成長するロボ>◾️SE/大自然の音(野鳥の声)久々野で生まれたボクは、新しい家族とともにだんだん大人になっていく。一年後。毛並みは濃い茶色へ。いつでもりんごの横で、警戒を怠らない。そんなある日。ボクたちの家には、たくさんの人間が集まっていた。「ロボちゃん、今日はりんごの誕生日なの。一緒にお祝いしてね」よくわかんないけど、りんごの笑ってる顔を見るのは嬉しい。だけど、りんごと同じくらいの年。オスの子どもがりんごのものを奪って逃げようとした。♂「返してほしいか?」「やだ!返して。それ、私のプレゼント!」(※泣きながら)♂「ふん。とれるものならとってみろ!へへへ」ボクはすぐオスの子どもの目の前に回り込んだ。睨みながら、鋭い牙を剝き出して、ゆっくりと一周する。低い唸り声が響く。「りんごからとったものを返せ」♂「な、なんだ。こいつ。気持ち悪い!」オスの人間は泣きながら、逃げていった。ボクは取り返したものをりんごに渡す。「ロボちゃん、ありがとう」りんごは泣きながら、ボクを抱きしめた。「大丈夫だよ、ボクがいるから」◾️SE/大自然の音(野鳥の声)さらに一年後。りんごとボクは2人だけで過ごすことが多くなった。お父さんとお母さんはりんご畑から帰ってこない。「ごめんね、りんご。今からお夕飯作るからね」「いらない」寂しさと悲しさの入り混じった声だ。「なんだ、その言い方は!おかあさんに謝りなさい!」「やだ。知らない」「ちょっと待て!」お父さんがりんごの肩に手をかける。「やめろ!!」ボクは思わず叫んだ。「なんでそんなことするの?みんな家族じゃないか」ボクは全身の毛を逆立ててお父さんを睨む。お父さんは慌ててりんごから手を離した。「ロボ!なにするんだ!」と言いながら、今度はボクに手を振り上げた。ボクはお父さんとりんごの間に割り込む。りんごが怪我しないように、おとうさんを睨みつけた。「ロボちゃん、やめて」りんごが泣きながらボクを抱き寄せる。みんなボクのこと、ウェンカムイを見るような目で見つめていた・・・※続きは音声でお楽しみください。

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    ボイスドラマ「梅花藻/後編(飛騨一之宮編)」

    1934年、高山本線が開業したばかりの飛騨。久々野から宮峠を越え、二人がたどり着いたのは聖域・飛騨一宮水無神社。前編で出会った“女スパイ”梅花藻と少年りんごは、臥龍桜/夫婦松/水無神社に散らされた暗号を手がかりに、山上の奥宮へと向かいます。待ち受けるのは、陽炎を創設した男・蛇(オロチ)。そして、国の命運すら揺るがす「ある秘匿物」の真相。後編は、りんごのモノローグが中心。リンゴを分け合うささやかな時間、臥龍桜のしめ縄に潜む数字、そして奥宮での決断。スパイ・アクションの緊張感と、少年のまっすぐな祈りが同時に走る、ヒダテン!屈指のエピソードです。<『梅花藻(バイカモ)』後編「飛騨一之宮編」>【ペルソナ】・少年りんご(12歳/CV:坂田月菜)=岐阜から高山線に乗り込んできた尋常小学校の低学年・梅花藻(25歳/CV:小椋美織)=コードネーム梅花藻(ばいかも)。政府の諜報機関「陽炎」所属・春樹(ハルキ=62歳/CV:日比野正裕)=蛇の同級生。詩人であり小説家。父は水無神社宮司・蛇(オロチ=62歳/CV:日比野正裕)=諜報機関「陽炎」を作った人物。逃げた梅花藻を追う【プロット】【資料:バイカモ/一之宮町まちづくり協議会】https://miyamachikyo.jp/monogatari/pg325.html・時代設定=高山本線が開業した1934年(10/25全線開業)・陸軍省が国防強化を主張するパンフレットを配布し軍事色が強まる・国際的には満州国が帝国となり溥儀が皇帝に即位・ドイツとポーランドの間で不可侵条約が結ばれた※一部が梅花藻のモノローグ、二部はりんごのモノローグ<プロローグ/宮峠の鞍部にて>◾️SE/秋の虫の声/森の中を歩く音/近くに流れる沢の細流(せせらぎ)「はあっ、はあっ、はあっ・・」「りんごクン、大丈夫?もうヘバっちゃった?」梅花藻のお姉さんが意地悪そうに笑う。「宮峠を越えたらもう宮村だから」そう言ってボクの手を引く。ボクたちはまだ、出会ってから24時間も経っていない。この道行(みちゆき)が始まったのは、昨日。母さんの葬式の真っ最中から。(葬式の最中、見知らぬ男たちが父さんを連れ去った。「久々野のおじいちゃんに届けるように」そう言って父さんがボクに託したのは母さんの遺骨。ボクは一晩中逃げたんだけど、岐阜駅で知らない男たちに捕まってしまった。気づけば汽車に乗せられて、高山本線で富山へ。助けてくれたのは、一人の女の人。梅花藻という名前のお姉さんがたった一人で悪者をやっつけちゃったんだ。お姉さんは、故郷の宮村へ向かう途中だと言った。久々野と宮村。目的地が近かったからボクたちは一緒にいくことになった。でも、どうして悪者はボクを追ってくるのか。それに気づいたのもお姉さん。お姉さんは、母さんの遺骨の中から、一枚の地図を見つけた。それがなんなのかわかんないけど、悪者はそれを探してたんだと思う。だっておじいちゃんのりんご農園へ帰ったときもやつらがいたんだもん。お姉さんが知らないうちにやっつけてくれたけど。用事を終えたお姉さんは、ボクを置いて一人で水無神社へ行こうとしたけれどボクはお姉さんを追いかけた。だってボクは決めたんだ。お姉さんについていこうと)父さんが悪者に連れ去られたり、ボクも汽車に乗せられたりといろいろあったけど。いまはこうして手をつないで、宮村への山道を歩いてる。「なに独り言つぶやいてるの?」お姉さんは、覗き込むようにボクに顔を近づける。「そろそろ分水嶺だから、少し休もうか」「うん。久々野の飛騨リンゴ。食べようよ」「そうね。こっちへ」リンゴを投げると、お姉さんは片手で受け取る。そのまま片手でトランクのヒンジを開けて・・さっと取り出したのは刃渡りのおおきな果物ナイフ。あっという間にリンゴを八等分にして僕に手渡す。「いい香り。食べる前から美味しい、ってわかるわ」「そりゃそうさ。おじいちゃんちの飛騨リンゴは世界一だから」「ほんとね。間違いない」(※食べながら)「これからどこへ向かうの?」「まずは、飛騨一宮水無神社」「どうして?」「見て」お姉さんが見せてくれたのは、父さんが残した地図。「この3つの印がどこを表すかわかる?」「わかんない」「一つ目は、臥龍桜。飛騨一ノ宮駅の西側にある大きな桜の木よ。二つ目は、夫婦松(めおとまつ)。臥龍桜より南。山下城址の近くにある有名な松の木。そして、3つ目がほら。飛騨一宮水無神社ね」「お姉さん、すごい」「宮峠から北へまっすぐ降りていけば水無神社よ。りんごを食べたらいきましょう」「うん。わかった」「直線だけど結構急な斜面だから、また体力使うわよ」「大丈夫。ねえ、梅花藻お姉さん」「なあに?」「お姉さんってなんでそんなに飛騨のこと詳しいの?」「え?」「だって、久々野から宮村まで、こんな山道知ってるなんて」「どうしてかな・・・なんだか・・体が覚えてるみたい」お姉さんって(ホントは)一体なにものなんだろう?ものすごく強いし、なんでも知ってて、超人みたいだ。「思い出せないけど・・なんかそんな気がするの」「そういえばお姉さんの名前、梅花藻。水無神社の近くに咲いてる花の名前だって言ってた」「そうね。今でも咲いてると思うわ」「ふうん・・・」「さあ、もう行くわよ。向こうの沢でお口ゆすいできなさい」なんか、たまに、お姉さんが母さんのように思えてくる。昨日お葬式だったのに。ボクって親不孝者だな。<シーン1/飛騨一宮水無神社>◾️SE/秋の虫の声「夜分にすみません。旅の母子(おやこ)ですが、一夜の宿をお願いできませんでしょうか?」水無神社に着くと梅花藻のお姉さんは社務所へ。こんな夜でも人がいる。入母屋造り(いりもやづくり)の厳かな建物。なんでも来年から、社殿を作り直すんだそうだ。だからみんないるのかな。宮司さんは最初、”寺の宿坊(しゅくぼう)じゃないのだからお泊めするのは難しい”と言ってたけど、「いいじゃないですか。お隣の宮村薬師堂で」と言って声をかけてきたのは、還暦くらいのおじさん。「まだ、年端(としは)も行かないような少年もいるようだし」お姉さんは、すごく警戒して、「やっぱり、ほかをあたってみます」って言う。「いやご心配なく。まあ、私と相部屋にはなりますが。ちょっと狭いのさえ我慢していただければ」「いいえ。子どももいるのでご迷惑をおかけできません」「こんな時間、このあたりに寝られる場所はありませんよ」「でも・・」ボクはお姉さんの袖をひっぱった。お姉さんはボクを睨んだけど、「さあさあ、時間も遅いので、私が案内しましょう。私も東京から戻ったばかりなんです」「東京」という言葉を聞いて、お姉さんの顔が強張った。右手を胸に。確か内ポケットにナイフが入ってるんだよなあ。ぶっそうな。おじさんはニコニコしながらボクたちを案内してくれる。水無神社の宮司さんも笑顔で見送ってくれた。<シーン1/宮村薬師堂>◾️SE/秋の虫(鈴虫)の声「なんだか無理やりだったかな。申し訳ない。そうそう。自己紹介しておかないとですね」「いえ。必要ありません」「私は、島崎直樹と申します。東京で物書きをやっております」「直樹・・・」梅花藻お姉さんの眉間の皺が一瞬緩んだ。「私の父が昔、水無神社の宮司をしていましてね。まだ私が幼い頃ですけど。ここ、薬師堂は、神仏習合の時代には別当寺(べっとうじ)だったんですよ。そんな歴史もあったので、私も父とよく掃除にきていました」へえ〜。だから神社の人と仲良さそうだったんだ。「お二人はこれからどちらへ?」「富山です」あ。しまった。つい本当のことを。お姉さんの眉間にまた皺が寄る。「八尾(やつお)に親族がいるので」ボクが次の言葉を発する前に、お姉さんが口を挟んだ。直樹というおじさんは、じいっとお姉さんの顔を見る。「どうかしましたか?」「いやあ、どうしようかな・・」「おっしゃってください。遠慮なく」「あの・・お恥ずかしいのですが、貴女、私の知っている女性にとてもよく似ていらっしゃる・・」「まあ。なんだか、常套句っぽい言の葉ですわね」「まさか、とは思いますが・・貴女、名前はウメ、と言いませんか?」「え?」お姉さんの顔が少しだけ赤らんだ。「20年前・・私ここで一人の少女と出会ったんです」「はっ・・」「彼女の名前はウメ。5歳くらいの孤児でした。暮らしていたのはこの薬師堂。ウメはよく久々野まで行って、畑からリンゴを盗んできました」盗んで・・。なんてこと。「薬師堂でウメと初めて出会ったとき。小さな腕に抱えたリンゴの中からひとつ、私に差し出しました」盗んだリンゴなのに。「私はお返しに、赤かぶ漬けや朴葉味噌のおにぎりをあげました。ウメは美味しそうに食べてくれたなあ。それから私が東京へ戻るまで、いろんなとこへ行って、いろんな話をした。当時私は40代でしたが、自分の幼い頃を思い出しちゃいましてね。臥龍桜の下で、まだ小さなウメに向かって、自分の初恋の話をしたんです」「初恋・・」「はい」「まだあげ初めし前髪の 林檎のもとに見えしとき」「前にさしたる花櫛の 花ある君と思ひけり」え?どういうこと?わかんないってば。「やっぱり、ウメさん・・ですよね?・・・※続きは音声でお楽しみください。

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    ボイスドラマ「梅花藻/前編(久々野編)」

    1934年、高山本線開業の日。非公認諜報機関「陽炎」から逃げた女スパイ・梅花藻は、久々野へ向かう汽車の中で少年りんごと出会う。母の骨壷に隠された地図、そして迫りくる追手――。飛騨のリンゴ畑を舞台に繰り広げられるスリリングな物語。後編(一之宮編)へ続く。【ペルソナ】・梅花藻(25歳/CV:小椋美織)=コードネーム梅花藻(ばいかも)。政府の諜報機関「陽炎」所属・少年りんご(12歳/CV:坂田月菜)=岐阜から高山線に乗り込んできた尋常小学校の低学年・春樹(ハルキ=62歳/CV:日比野正裕)=蛇の同級生。詩人であり小説家。父は水無神社宮司・蛇(オロチ=62歳/CV:日比野正裕)=諜報機関「陽炎」を作った人物。逃げた梅花藻を追う【プロット】【資料:バイカモ/一之宮町まちづくり協議会】https://miyamachikyo.jp/monogatari/pg325.html・時代設定=高山本線が開業した1934年(10/25全線開業)・陸軍省が国防強化を主張するパンフレットを配布し軍事色が強まる・国際的には満州国が帝国となり溥儀が皇帝に即位・ドイツとポーランドの間で不可侵条約が結ばれた※一部が梅花藻のモノローグ、二部はりんごのモノローグ<プロローグ/東京・蒲田の陽炎の諜報施設>◾️SE/走る足音・銃声・虫の声はぁ、はぁ、はぁ・・・あと少しで蒲田駅。そこまで行けば、あとは・・・海軍の施設や工場が集積する蒲田。看板もなにもない木造の施設が廃墟のようにたたずむ。それが、私を育てた組織「陽炎」の本部。育てた?いや、正しく言えば、私をつくった組織。創業者のオロチに言わせると私は、工作員として史上最高の傑作らしい。コードネームは、梅花藻。ついさっきまで「陽炎」のトップエージェント、女スパイだった。そう。「陽炎」が解体されると知るまでは。1934年。ドイツとポーランドの間で不可侵条約が結ばれた。一方・・満洲国という傀儡国家を作り、アジアでの地位を築こうとする日本。非公認の諜報機関について都合が悪い状況が増えてきた。結論は、歴史の闇に葬り去る。存在そのものを抹消する、ということらしい。いち早く情報を入手した私は、上官を撃って施設から脱走した。ためらいなどない。そう教えられてきたのだから。◾️SE/銃声一発/工場のサイレン/遠くに響く汽笛よし、これで追っ手はすべて消えた。蒲田まで行けば、国鉄で品川、東京へ。そのあとは・・・?「さすがだな、梅花藻。だが、この蛇から逃げられると思うなよ」◾️SE/東京駅の雑踏東京駅にとまっていたのは2つの特急列車。南回りの「櫻」と北回りの「富士」。同じ時刻に東京駅を発車して「下関」に向かう寝台特急である。私は中央西線経由の「富士」に乗ったように偽装。サングラスをはめ、変装して東海道線の「櫻」に乗り込んだ。空いていたのは一等寝台。まあ、そのくらいの蓄えはある。ああ、疲れた。横になりたい。だが決して油断はせず。古びたトランクを右手側に置いて体をコンパートメントのベッドへ預けた。<シーン1/岐阜駅>◾️SE/蒸気機関車の汽笛/岐阜駅の環境音/機関車転車台の音/ハイヒールの音転車台の上を機関車が回転する。東海道線の要衝、国鉄岐阜駅。私は東京発下関行きの特急「櫻」を途中下車した。まだ暗い早朝だからほとんど人はいないだろう。と思ったら大間違い。ガス燈の薄灯りに照らされた構内はかなりの人出。そうか。今日、高山本線が開通したんだ。いや。この混雑。私にとっては都合がいい。駅構内を入念にチェック。一人でホームに立つ女性など、目立って仕方がないからな。ふむ。高山で乗り換えて富山まで。なるほど・・・感じるものがあって、私は高山行きの列車に乗り込んだ。<シーン2/高山線車内/少年との出会い>◾️SE/蒸気機関車の汽笛/狭軌蒸気機関車車内の音(No.532452)ゆったりした二等客車の先頭。私は進行方向とは逆の座席に腰掛けた。スパイの習慣。後方の三等客車から二等車両へ入ってくるものはほとんどいない。逆に前方の二等車両から入ってくるものはすべて視界に納められる。敵が現れても瞬時に対応できる体勢。流れ去る景色をじっくり見られるのも大きい。自分のいまいる場所を正確に把握できる。膝の上にトランクを置き、視線は窓の外へ。汽車がガタンと揺れ、ゆっくりと動き出す。車輪の軋む音と、乗客たちのざわめき。遠ざかる岐阜の灯(あかり)を、私は無表情に見送った。天井からは裸電球がぼんやりと光を放ち、乗客たちの顔を陰影深く浮かび上がらせている。隣に座った見知らぬ男が新聞を広げる音。向かいの席で小さな子供が母親に甘える声。意識は常に、緊張感を保っている。とその時・・・◾️SE/通路の扉が開く音岐阜を出てまもなく。揺れる通路を、前の車両から来た三人が歩いてくる。中央には、まだ幼い少年。手には四角い風呂敷包み。あれってまさか・・少年の前後を、がっしりとした体格の男二人が挟んでいる。殺気に溢れた表情。一般人ではないな。少年はうつむき加減で、顔はほとんど見えない。ただ、歩き方が不自然なことに、私の瞳が反応した。ああ、わかった。後ろの男が上着のポケットの中から、少年に刃物を押し当てている。2人の男は、周囲の乗客に気づかれぬよう、何か囁き合う。冷たい威圧感。少年は、顔を上げると、すぐに男たちに抑え込まれた。私は、俯き加減に窓の外を眺める。3人が、私の横を通り過ぎようとした、その刹那。少年は、さりげなく、片手をひらりと振る。その手のひらに、一瞬だけ、奇妙な動きが見えた。親指と小指を立て、他の指を折り曲げる。「助けて」手話だった。理解できるものだけにわかる国際的なSOSのサイン。同時に、少年の震える瞳が、私の眼差しと交錯した。私は、膝の上のトランクがずり落ちそうになったフリをする。身をかがめながら少年にウィンクした。◾️SE/通路の扉が開く音少年と男たちは客車と客車を繋ぐデッキへと向かう。デッキは、乗客のいない薄暗い空間。私は音を立てずに彼らの背後に回り込む。目の前には無防備な背中。男が気づくよりも早く、細いワイヤーを首に巻き付け、一気に締め上げる。声も出せまい。もう一人の男が振り返った瞬間、脇腹に蹴りを入れる。すかさず、見開いた目にポケットの砂を投げつけた。視界を奪われてもがく男。「目をつむってなさい」顔をあげようとする少年を言葉で制した。その間に一人目の男を連結部へ引っ張り出す。もがく男の力を利用して、汽車の外へ。男は鉄橋から飛騨川へ落ちていった。目潰しをした男も連結部へひっぱり汽車が鉄橋を越える前に飛騨川へ放り出す。もうこれで、追ってはこれまい。デッキに戻った私は少年に声をかける。「もういいわよ」「あ・・」「客車に戻りましょう」<シーン3/高山線車内/2人の会話>◾️SE/蒸気機関車の汽笛/狭軌蒸気機関車車内の音(No.532452)「ありがとうございました・・」私の横の席に少年を座らせて、話をした。「どうなることかと・・」「話してくれる?」「はい・・」「きみはだれ?」「名前は、りんごです」「あいつらは何者?」「わかりません。葬式の最中にいきなりやってきて・・」「葬式?」「はい。母の・・」「そう・・・。残念ね」「葬式の最中に大勢でやってきて父を連れていってしまったんです・・」「お父さんを?どうして?」「わかりません。ただ、父は軍閥でした。なにか、争いに巻き込まれたのかも」「軍閥・・・いろいろ裏がありそうね」「連れていかれそうになったとき、父は『かあさんの骨を久々野へ』と言い残したんです・・」「そうか・・・」「ボクは母さんの骨壷を持って逃げました。一晩中逃げまわり、どこをどう歩いたか覚えていません。明け方岐阜駅まで逃げてきて、構内を歩いてたらいきなり捕まって」「どうして高山線に乗ったの?」「富山のどこかへ連れていくと言ってました・・」「そう・・」五箇山の軍事施設ね。確か陽炎の支部もあったはず・・・「お姉さんは?」「え」「お姉さんはだれなんですか?あんなことできるなんて、普通じゃない」「まあ、そう・・だな」「名前はなんて言うんですか?」「梅花藻」「梅花藻?」「梅の花の藻、藻は海藻の藻。宮村にある水無神社は知ってる?その近くの川に咲いてるのよ」「え?川ですか?」「そ。水温が一定の、清んだ水の中にだけ咲く白い花よ」「お姉さん、人間じゃないの?」「人間に決まってるじゃない。梅花藻は、名前」「そうかあ。あっという間に悪者をやっつけちゃったから、妖怪かなんかかと思った」「まあ、失礼ね」「ごめんなさい」「いいわ。許してあげる。その代わり、と言っちゃなんだけど・・・ちょっとお母さんのお骨(こつ)、見せてくれる?」「え・・」少年はためらいながらも、風呂敷包みを私に手渡す。私は丁寧に風呂敷を開け、「ごめん。開けるわよ」「あ・・」「やっぱり・・」「なに・・?」「地図よ。お骨の底の方に」「え・・」「お父さん、なにか大事なものを隠してたのね」「そんな・・」「軍の関係者が血眼になって探すようなもの・・・※続きは音声でお楽しみください。

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    ボイスドラマ「LOBO★マイフレンド〜国道沿いで拾った子犬はまさかのニホンオオカミだった!?」

    知られざる最後のオオカミの物語──その名は「ロボ」舞台は、飛騨高山・久々野町。国道沿いの草むらで母を亡くした一匹の“子犬”と、年長さんの少女・りんごが出会うところから物語は始まります。成長とともに、次第に周囲から「異質な存在」として扱われていくロボ。しかし、りんごにとってロボは“友だち”であり“家族”であり、かけがえのない存在でした。守るために牙をむいたとき、愛するがゆえに手放さなければならなかったとき、子どもと動物の間に芽生えた絆が、あなたの心に静かに火を灯します。そして最後に、明かされるロボの“本当の正体”。これは「もういないはずの命」と「小さな命」の奇跡の物語です。【ペルソナ】・LOBO(0歳〜)=りんごに拾われた狼の子ども(CV=坂田月菜)※「lobo」はスペイン語で「狼」・りんご(5歳)=久々野町の幼稚園年長さん。(CV=坂田月菜)・ママ(28歳)=りんごのママ(CV=岩波あこ)・パパ(32歳)=りんごのパパ(CV=日比野正裕)・ニュースアナウンサー=宮ノ下さん(カメオ)【参照:日本オオカミ協会】https://japan-wolf.org/faq/<シーン1/久々野町・国道41号沿いの草むら>◾️SE/急ブレーキの音と狼の悲鳴※りんごのモノローグは主観ではなく客観的な視点「おかあさん!おかあさん!どうしたの?なんで返事してくれないの?」久々野町、国道41号線沿いの草むら。車に跳ねられ、飛ばされた野犬が横たわっていました。その横には、小さな子犬が1匹。冷たくなった母の乳房をしゃぶりながら泣いています。濃い茶色の体毛。長い脚。尻尾は丸く湾曲して、耳は短い。やがて、乳が出なくなった母の亡骸から子犬は離れていきます。ふらふらと国道に歩いていきました。「あぶない!」「えっ?」目の前を、おおきなトラックが走り去っていきます。子犬は女の子に抱えられて、一緒に道の端で尻餅をつきました。女の子の名前は、りんご。この春、5歳になったばかりの年長さんです。「よいしょっ・・」と、お尻の土を払って立ち上がったりんごは「あぶなかったねー」と言って、子犬の頭を撫でます。子犬は抱っこされたまま、牙を剥きました。「ウ〜ッ」「こら、助けてあげたのに怒っちゃだめでしょ。りんご、年長さんになったから知ってるもん。親切にされたら『ありがとう』って言うんだよ」「くう〜ん・・」「よしよし。もう道路に飛び出しちゃだめだよ。じゃあね。ばいばい」りんごは、抱っこした子犬を草むらに戻しておうちに帰っていきました。ところが・・・「おかあさん・・・」りんごのあとを少し離れて、子犬はついてきちゃったのです。おうちまであと少し、という農道。踏切を越えて果樹園の前を通ると、葉摘み(はつみ)をしているおじさんがこっちを見て笑っています。りんごが振り返ると、後(あと)についてきているのは、あの子犬。距離を保ったまま、子犬も止まっていました。「あれぇ?ちびちゃん、ついてきちゃったの?」りんごはしゃがんで、子犬を手招きします。子犬は・・・少し悩むような顔をしてからゆっくり近づいてきました。「どうしよう・・・ママ、犬、きらいって言ってたよなあ・・」「ねえ、いい子にできる?」子犬はなんにも言わずにりんごを見ています。「できるよね?」子犬はりんごを見て、首をかしげています。「もう〜。いい子にしないと、追い出されるんだってば!」りんごが頭を撫でると、子犬は初めてすり寄ってきました。<シーン2/久々野町・りんごの家>◾️SE/食卓の音「ちゃんとりんごが自分で面倒みるのよ」意外なことに、おかあさんは、飼うことを許してくれました。もちろん、りんごは大喜び。おとうさんが、子犬に名前をつけました。ふた文字で「ロボ」。りんごは、あんまり気に入りませんでしたが、飼えることになったので、文句は言えません。それからは、ロボの世話で大忙しの毎日。朝、りんごが目を覚ますと、ロボはベッドの横。黙ったままじいっと座っています。ダンボールで作った寝床はいやみたい。りんごは背伸びをして体を起こし、ロボを抱っこして、お外へ。「おしっこだよ〜」声をかけると、ロボはお庭から続いたりんご畑へ駆けていきました。 ロボは、決して吠えません。代わりに、低い唸り声や、かすれたような声を出します。時どき、深夜、満月に向かって遠吠えをしました。「ロボちゃんはおりこうね。キャンキャン言わないから、ママに怒られない。りんごも見習わないと」でもママは、あまり嬉しそうではありませんでした。可愛げがない子犬、って映ったのかも・・お散歩も大事なお仕事。毎朝、ロボを連れて果樹園の周りを散歩に出かけました。そんなある日のこと。散歩の途中で大きな黒い犬が、行く手に現れました。「あ!おっきな犬!怖いよぉ!」黒い犬は、りんごが怖気付いたのを見て、こっちへ駆けてきます。「きゃあ〜!助けて〜!」そのとき、ロボはりんごの前に立ち、犬を睨みました。低い唸り声があたりに響きます。黒い犬は、ロボを見て立ち止まり、顔を伏せました。りんごが、目を塞いでいた手を開くと・・・黒い犬が逃げていくところでした。「ロボちゃん、りんごを守ってくれたの?」ロボは、犬が見えなくなるまでじっと睨み続けていました。<シーン3/成長するロボ>◾️SE/大自然の音(野鳥の声)久々野の豊かな自然の中、すくすくと育っていくロボ。りんごが6歳になったとき、ロボは子犬とは呼べないほど大きくなりました。毛並みもさらに濃い茶色へ。いつでもりんごの横にいて、周りを警戒しているように見えます。それがわかったのはりんごの誕生日。お祝いのパーティで従兄弟がりんごにいじわるをしてきました。ママからもらったプレゼントをひったくって、♂「返してほしいか?」「やだ!返して。それ、私のプレゼント!」(※泣きながら)♂「ふん。とれるものならとってみろ!へへへ」男の子がプレゼントを奪って走り出したとき・・・一瞬で目の前にロボが回り込みました。男の子を睨みながら、鋭い牙を剝き出しています。そのまま男の子の周りをゆっくりと一周。低い唸り声が響きました。♂「な、なんだ。こいつ。気持ち悪い!」男の子は恐怖でひきつり、逃げ出しました。奪ったプレゼントを放り出して。「ロボちゃん、ありがとう」りんごは泣きじゃくって、ロボを抱きしめました。◾️SE/大自然の音(野鳥の声)一年後。りんご7歳の誕生日。この時期、久々野のりんご農家は葉摘みに袋はぎと、もっとも忙しい時期。おとうさんもおかあさんも毎日休まず農作業をしています。「ごめんね、りんご。今からお夕飯作るからね」「いらない」りんごはお腹がすいていたけど、ちょっとイライラしていました。「なんだ、その言い方は!おかあさんに謝りなさい!」「やだ。知らない」そのままお部屋を出ていこうとします。「ちょっと待て!」おとうさんがりんごの肩に手をかけたとき。「ウォォォォォオオオオオオオン!!」(No.383150/No.397049/No.542422/No.544002)ロボの叫び声が、響き渡りました。おとうさんをじっと見据え、全身の毛を逆立てて今にも飛びかかりそうです。おとうさんは慌ててりんごから手を離しました。「ロボ!なにするんだ!」と言いながら、今度はロボに手を振り上げました。ロボはおとうさんとりんごの間に割り込み、りんごを守るようにおとうさんを睨みます。「ロボちゃん、やめて」りんごは泣きながらロボを抱き寄せます。おとうさんもおかあさんもまるで怪物を見るような目でロボを見つめました。どうしようもない不安に襲われるりんご。ロボはもう立派な成犬になっていました。<シーン4/害獣駆除>◾️SE/大自然の音(野鳥の声)りんごが8歳になった年。周りの果樹園に異変が起こり始めました。収穫を控えたりんごの木が、無残に荒らされ始めたのです。幹から折られて地面に散らばる枝。食べ散らかされた収穫前のりんご。現場に残された足跡(あしあと)から、犯人はイノシシやシカだとわかりました。この年、日照りが続いて、山奥の木の実や草が枯れ、野生動物たちが餌を求めて人里へと下りてきたのです。りんごの周りの地区では、ほとんどの果樹園が大きな被害を受けました。ところが、りんごの家の畑だけは無傷。野生動物が足を踏み入れた痕跡さえありません・・・※続きは音声でお楽しみください。

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    ボイスドラマ「美女と天狗〜奥飛騨温泉郷・上宝の平湯温泉にある天狗橋と天狗岩の伝説?」

    愛は呪いを解く鍵となるのか。奥飛騨の伝承「天狗岩」と「天狗橋」をモチーフに描かれる、幻想的で切なくも温かい“嫁入り譚”。親を亡くし、絶望の中で人柱となった少女・箏と、山の神の怒りによって姿を変えられた大天狗。二人の出会いは、呪いと運命を変える大きな転機となる──。現代の高校生・マコトとストーリーテラー・シズルの会話を通じて語られる、どこか懐かしくて、新しいファンタジー。終盤に訪れる“静かな奇跡”に、あなたもきっと心を奪われることでしょう。【ペルソナ】・シズル(35歳)=道の駅 奥飛騨温泉郷上宝のストーリーテラー(CV=日比野正裕)・マコト(17歳)=高根町の高校生。郷土史研究部=部員1名の部長(CV=山﨑るい)・箏(こと=17歳)=伝承の中で天狗に嫁入りする美女(CV=山﨑るい)・天狗(年齢不詳=35歳)=奥飛騨温泉郷上宝に住む天狗=もののけ(CV=日比野正裕)【参照:天狗岩/奥飛騨温泉観光協会】https://www.hirayuonsen.or.jp/article.php?id=10170<プロローグ/道の駅  奥飛騨温泉郷上宝>◾️SE/奥飛騨温泉郷の環境音「むかぁし、むかし。君が生まれるより、ずう〜っとずっとずっとむかし。この奥飛騨温泉郷・上宝には天狗が住んでいました」「(ゴクッ)」※唾を飲み込む音「天狗って知ってるかい?」「うん。知ってるよ。顔が赤くて、鼻がこ〜んなに長い妖怪でしょ」「妖怪?まあ、間違ってはいないけど・・」「妖怪じゃないの?」「妖怪、っていうよりもどっちかって言うと、神様に近いかな」「神様!?だから神隠しとかするんだ」「ああ〜。そうかもね。でもほら、京都の鞍馬寺とか栃木の古峯神社(こぶじんじゃ)とかは有名でしょ」「ふうん。知らないけど」「『天狗』って、元々は中国から伝わった言葉なんだよ。天(あま)かける狗(いぬ)と書いて、隕石や流れ星のことだったんだ」「すご〜い!シズルさん物知り〜」「大人をばかにするんじゃないの。今日はね、『天狗の嫁入り』というお話だよ」「やった!」道の駅 奥飛騨温泉郷・上宝で毎月1回開催される「昔話の読み聞かせ」。奥飛騨温泉郷・上宝の施設が持ち回りで担当している。今月は、新穂高温泉の、うちの施設がストーリーテラー。で、私が、読み聞かせするってわけ。まあ、昔、仕事でよくプレゼンをしてたから、人前でしゃべる、ってのは嫌いじゃないんだけど。今日は初日で平日だから、第一部のお客さんはたった1人。高根村から来た17歳の高校生マコトくん。なんでも、郷土史研究部の部長なんだって。部員は一人だけど?そうですか〜。今日の話、実は私の創作、フィクションなんだ。平湯温泉にある、天狗岩や天狗橋にインスパイアされて作った物語。ほら、さっきもマコトくんが言ってたじゃない。天狗って妖怪だって。神隠しとか、あまりいいイメージじゃないよね。私が天邪鬼だから、ってわけじゃないけど、ストーリーはそんなイメージを払拭するもの。なんとファンタジー作品なんですが・・「ちょっとシズルさん。早く続き、教えてよ」「ああ、ごめんごめん。じゃあ続きね」<『天狗の嫁入り』シーン1/人柱>◾️SE/村の雑踏「その村には20年前から天狗が住んでいました。天狗に対して村人たちが一番恐れるのは、神隠し。今まで何度も子供や娘が天狗にさらわれていたのです。そのため、毎年1回、秋祭りのときに、天狗に人柱をひとり捧げていました。人柱となるのは、村の最高齢の老人。娘や子供の格好をして、人柱になっていたのです。ところが今年、人柱になるのは、17歳の少女、箏(こと)。この春、箏の両親は山崩れに巻き込まれて命を落としました。それから箏は天涯孤独に。自暴自棄となり人柱として名乗り出ました。村人たちは箏を一生懸命説得しますが、無駄でした。箏は、人柱として慣例通り天狗橋を渡り、天狗岩へ登っていきます。岩の上に寝転ぶと、目を閉じました。<『天狗の嫁入り』シーン2/箏と天狗>◾️SE/深い山中のイメージ横になった箏を包み込むように、いきなり風が吹きました。目をあけると、そこは空の上。天狗岩は笠ヶ岳の雲の上に浮かんでいました。「なにこれ?」そのときまた強い風が吹いて箏を吹き飛ばします。「きゃあ〜!」あまりの衝撃に、箏は気を失いました。それからどのくらいの時間が経ったのでしょう。どこかから声が聞こえてきます。「ふん。情けない」「え?」驚いて目を開けると、そこには今までみたこともない怪物が。身の丈は二間(にけん)近くあり、赤い顔。天まで届きそうな長い鼻。あ、二間というのはだいたい3〜4メートルくらいね。「うわぁ!」「またかよ」3回目に気づいたとき、箏は布団の上に寝かされていました。「ここは・・・どこ?」「天界です」「え?えっ!あなただれ?透明人間?どこにいるの?」「目の前にいますよ。姿を見せてもいいけど、また気絶しないでくださいね」そういって姿を現したのは、何人、いえ何羽ものカラス天狗。山伏の姿にカラスの嘴を持つ天狗の眷属です。「うっ。気絶したい・・・けど、なんなの?一体」「私たちは大天狗の眷属。カラス天狗です」「私は・・・どうなるの?」「まあ、大天狗の召使、ってところでしょうか」「なにそれ?冗談じゃない。召使?掃除とか洗濯とかするの?私、ひとりぼっちになって、一人で炊事洗濯するのが虚しくて、こんな生活もういや!って思って、黄泉の国へ行くつもりだったのに」「そんなこと言われましても、あなた自身で選んだことですし」「あんたはなんでそんな姿をしているの?」「なんで、って言われましても。山の神様の罰というか、なんというか」「山の神様?」「はい。大天狗も我らカラス天狗も山の神さまの罰でこんな姿になりまして」「めんどくさそう」「とにかく、あなたも運命だと思ってお仕事に専念してください」「やあよ。つまんないから帰る」「え?え?そんな。無理ですって」「いいわ、その大天狗にかけあってみるから」「また、そんな、ご無体な」なんていうやりとりをしていると、山の上の空が一転俄かにかき曇り、あたり一面が夜の闇に。「ちょっと。なにすんのよ」「いや、これは私どもではありません」「じゃあ大天狗の仕業?」「いえ。大天狗でもありません」「じゃあなに?」「荒ぶる山の神。鬼神です」「鬼神〜?私たちどうなるの?」「体をバラバラにされますね」「うっそぉ!冗談じゃないわ」「運がよければ、腕の1本2本くらいで済むかも」「勘弁してよ」「いや、もう遅いし。うわ!お先に失礼」「ちょっとちょっと!逃げないでよ」「がんばってください」「このお・・・はあ〜。ま、いっか。これでこの世とおさらばできるんなら。なんか、つまんない人生だったな」箏があきらめて、目を瞑ったとき。雲の中から大天狗が現れます。「大天狗・・・」天狗は鬼神に向かって立ちはだかったあと、箏の方を振り返りました。「あ・・・」大きな2本の腕で箏を包み込み、鬼神の攻撃を背中で受けます。背中からは血飛沫が飛び散り、苦悶の表情。それでも、微動だにしません。「なんか・・そんなに怖い顔じゃない・・・かも・・」まるでバリアーのように天狗の周りの空気が歪んで見えます。知らず知らず、でもまたもや、箏は気を失っていました。気がついたのは、だいぶんあとになった頃。「あ・・・れ?」箏は今回も布団に寝かされていました。ただ、ひとつ違ったのは、目の前で大天狗がこちらを向いて座っていること。でも、目は開いていません。あぐらを組み、大きな体躯から覗き込むような格好で目を閉じています。「眠ってる・・・?」※続きは音声でご確認ください。

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    ボイスドラマ「お助け小屋の鬼婆〜ならず者には容赦なく少女たちには母のような優しさを持つ伝説の”ばさま”」

    命を懸けて少女たちを守った、ある“ばさま”の物語。吹雪の夜、命からがら辿り着いた工女たち。山賊に追われ、給金も誇りも奪われそうになったとき、小さな峠の小屋に現れたのは「鬼婆」と呼ばれる年老いた女性だった。男衆には容赦なく、少女たちには母のような優しさを。鋭くも温かなまなざしで、すべてを背負った“ばさま”の姿に、胸が熱くなります。明治の日本を影で支えた工女たちと、名もなき守り人——どうぞ心してお聴きください。【ペルソナ】・鬼婆(年齢不詳70歳)=野麦峠お助け小屋の主、男衆には厳しく工女に優しい(CV=山﨑るい)・政井辰次郎(22歳)=飛騨の河合村出身。河合村政井みねの兄(CV=日比野正裕)・政井みね(14歳-20歳)=かつて野麦峠を越えた工女のひとり(CV=山﨑るい)・山賊(30-40代)=野麦峠を根城とする山賊・追い剥ぎ(CV=日比野正裕)【原作:山本茂美「あゝ野麦峠 ある製糸工女哀史」(角川文庫)】※32頁〜https://amzn.asia/d/eEQROC8<シーン1:1903年・冬の晩1>※シーンはすべて野麦峠のお助け小屋/ソマ衆=野麦の原始林で働く屈強な木挽きたち◾️SE/吹雪の音〜木戸を激しく叩く音/外から響く山賊の声「おおい!開けろ!鬼婆さ!いるこたぁわかってる!開けねえと、ぶち破るぞ!」◾️SE/関を引いて木戸を開ける音「るっさいな、いま何時やと思うとる」「おい!ばばあ!小屋に工女が逃げ込んだろう。今すぐここへ連れてこい!」「はあ?そんなもんはおらん!帰れ!」「嘘こいたらただじゃすまんぞ。中をあらためさせてもらうからな!」◾️SE/奥の方で物音「ガタン」「なんだぁ〜、いまの音はぁ?」「ふん。知りたいか。下衆どもが」「なんだと?」「おおい!ソマ衆やぁ!降りてこいやぁ!」「なっ、なに!?」「ソマ衆や!夜食の握り飯できとるで!」「ソマ衆だとぉ!?」「20(ニジュー)しか間に合わなんだで、1人2個じゃ!文句はこいつらに言うとくれや!」「くそっ、お、覚えてろよ!また来るからな!」「二度と来るな!」◾️SE/木戸を強く閉め、関をかける音「ばさま・・」「しいっ!」「ひっ・・」※エキストラ/固唾を飲む「・・・うん、よしよし。もういいだろう。おまえら、大丈夫やったか?」「はい、ありがとうございます。でも・・」「なんだ?どうした?」「給金が・・」「なに!?」「キカヤからもろうた一年分の給金・・わしら、トトマ、カカマの喜ぶ顔を思うて雪の峠越えてきたのに・・山賊たちにとられてしもうて・・もう会わす顔がねえ・・」「いくらだ?」「わしが九十五円五十銭、フデが七十二円十五銭イクが十七円六十九銭、トモが七円四十銭じゃ」※エキストラ/すすり泣き「そうか、わかった」「わかった、ってばさま・・・」わしはそう言って、板張りの床を開けて、脇差を取り出す。「ばさま!?」「相手は2人やな」「はい」「ちょこっとだけ待っとけ。鍵をしっかりかけて、誰が来たって死んでも開けるでねえぞ」「そんな・・・」「心配せんでええ。わしを誰やと思うとる。野麦峠お助け小屋の鬼婆さやぞ!2人ばかしの下衆どもにはやられはせん」「ばさま!!」※エキストラ/驚いて「ばさま!」工女たちの声を背中で受けて、わしは吹雪の中へ出掛けていく。ときは1902年。そう、あれは1時間ほど前のこと。暮れも押し迫った吹雪の夜。工女たちが泣きながらお助け小屋に駆け込んできた。検番もつけず、身ひとつで実家に帰っていく工女たち。懐には、必死で働いた一年分の給金袋。工女の多くは貧しい百姓の出である。年の瀬に家に帰って給金を渡せば、父や母は『これで年が越せる』と泣いて喜ぶ。その金を狙って山賊たちが集まってくる。ただでさえ、命を落とす工女が絶えぬ野麦峠。無垢な少女を狙う外道どもをわしはどうしても許せなかった。<シーン2:1903年・冬の晩2>◾️SE/囲炉裏の音〜「遅なったの。すまんすまん」「ばさま!」※エキストラ/心配からの嬉しみ「ばさま!」「さあさ、甘酒飲んであったまりぃや」「ありがとうございます!これ・・わしらの給金まで・・」※エキストラ/「ありがとうございます」「ああ、ああ。わしゃ、算術が苦手だでな。五百円もあれば、釣りがくるじゃろう」「山賊たちは・・・?」「ちょっとばかし、こらしめてやったわ。まあ、話のわかる連中でよかった。余った金は工女たちに渡してくれろと。もう二度と姿を見せることはないで、安心しな」「本当に、本当にありがというございます!」※エキストラ/「ありがとうございます!」わしは、三和土に敷いたむしろに目をやる。むしろの下。大量に血糊がついた脇差を洗わんと。水を汲もうと立ち上がったとき、工女のひとりが声をかけてきた。「ばさま」「なんや、みね」「え?わしの名前、覚えとるんですか?」「あたりまえじゃ。わしゃ、一度聞いたものは忘れん」「ありがとうございます。ほんで、余った金やけど」「なんや?」「国府のねさまの家に持ってってやりてえ」「ねさまやと?どこにおる?」「川浦の宿を出て、奈川の境石のとこまできたとき」「うん」「急に吹雪いてきて。ほんとき、ねさま、わしらをかばって谷底に落ちんしゃった」「なんやて?」「道中ずうっと『誰かが落ちても絶対助けにいっちゃあかん』言うとった。最後もそう言って落ちんしゃった」「ほうか・・・ねさまもおらんで、おまいらだけで峠越えたかと思ってたが・・」「さっきも言うたけど、わしゃ百円も給金もろうとる。こんだけありゃ家の普請だって余裕じゃ。欲を出したらきりがねえ」百円工女、政井みね。とてもシンコとは思えん。しっかりして、賢い娘やわ。「みんなもそう言うとるで」※エキストラ/「ああ」「そうだ」「ねさま」「よし、わかった。なあみね、お前を見とるとわしの若い頃を思い出すわ」「ばさまの?」「おう。わしはな、40年前に富岡から流れてきたんじゃ」「富岡?」「上州にある製糸工場(こうば)の町じゃ」「ほんじゃ、ばさまも糸ひきだったのけ?」「選良工女やよ」「なんやそれ?」「富岡は模範伝習工場でな。工女はみんなから敬まわれとった。わしもそのひとりや」「へえ〜」「ほんで、旦那と娘を連れて養蚕の講師として岡谷へきたんじゃ」「旦那さんと娘さんは?」「もうこの世にはおらん」「ほうかあ・・・」「さ、もうええか。甘酒飲んだら、床(とこ)に入りな。明日も早いんだろう」「ああ、3時には出るで。はよトトマとカカマに会いてえ」※エキストラ/「トトマ!カカマ!」それからみねは毎年、お助け小屋に立ち寄った。岡谷へ向かう2月の終わりと、故郷(くに)に帰る年の瀬。みねの持って生まれた明るさで、雪の舞う夜も暖かく感じたものだ。6年後の1909年。2月にみねを送り出したその年の秋。ひとりの若者がお助け小屋に立ち寄った。<シーン3:1909年11月/辰次郎の峠越え1>◾️SE/高原の鳥の音〜「こんにちは!」「はいはい、誰やったかな」「政井辰次郎と申します」「政井・・・」「みねがいつもお世話になっとります」「おお。みねの・・?」「兄です」「こんな秋に珍しい客人やわ。わらび餅でも食ってくか?」「いえ、先を急ぐので」「諏訪へいくんか?」「はい、みねを迎えに」「どうした?」「これが・・・」辰次郎が見せてくれたのは、一枚の電報。『ミネ ビヨウキ スグ ヒキトレ』目に涙をためながら怒りとも悲しみともとれる表情をわしに向けていた。「昨日・・・家に・・届きました・・」「ほうか、ほうだったか」「ばさまのことはいっつもみねから聞いております。命の恩人だと」「たわけ。そんなええもんなわけあるか」「いえ。どんなに急ぐとも、ばさまにだけは礼を失してはならんと」「わかった。わかったで、はよ行け」「ありがとうございました・・・」「辰次郎」「はい・・・」「みねみたいに頭のいい娘が、そんな簡単にくたばりゃせん。だから途中、無理すんじゃねえぞ。おめえが道中でどうかなったら共倒れだ」「わかりました・・・」辰次郎は深く頭を下げて、出ていこうとする。「では・・・」「ああ、待て」「はい」「持ってけ。ウチワ餅じゃ。あ、いい。金はいらん。どうせ、知らせを聞いてから、飲まず食わずでここまで来たんやろ。途中で倒れる前にこれを食えよ」「あ、ありがとうございます・・・」「岡谷へ着いたらな、駅前の旅館飛騨(本当は飛騨屋旅館)へ先に行け。主人の中村(本当は中谷)に背板(せいた)をもろうてこい。このばばの名前を言うたら、すぐ用意してくれるわい」「わかりました」「引き止めて悪かったな。さあ、いけ」「行ってきます!」あっという間に辰次郎の姿は見えなくなった・・・※続きは音声でお楽しみください。

  38. 116

    ボイスドラマ「ホリデー/後編」

    前編で荘川を訪れたよもぎに続き、今回はさくらが朝日町を体験します。薬膳や薬草、そして美女高原に広がる空の下で、彼女は新しいインスピレーションを得ていきます。そして――村芝居の舞台で訪れる運命の再会。偶然の出会いから始まった休日交換は、やがて必然の再会へ。荘川と朝日、二つの里の魅力を舞台に、物語は感動の結末を迎えました。この物語が、あなた自身の旅のきっかけになれば幸いです。【ペルソナ】・さくら(28歳)=荘川の村芝居に出演、伝統芸能に興味ある静かな女性(CV=岩波あこ)・よもぎ(28歳)=薬膳カフェのオーナー、芯の強い漢方薬剤師(CV=蓬坂えりか)・朝市のおばちゃん(40歳くらい)=宮川朝市で花の苗を売る女性(CV=小椋美織)<シーン1:高山濃飛バスセンター>◾️朝のバスセンターの雑踏/ステップを降りて深呼吸するさくら「ふう〜っ!気持ちいい〜!」荘川の支所前から高山の濃飛バスセンターまで1時間20分。路線バスの旅って楽しい〜!おのぼりさんみたいに、大きなスーツケースを抱えてバスを降りる。しかも、今日は私、浴衣姿!って、見ればわかるよね。白地に桜の花が満開の浴衣柄。ヒノキのエッセンシャルオイルをさっと振って。エアコンが効いてるバスの中は、浴衣だけだとちょっと寒い。だから薄い羽織を重ねてる。ほら、これも素敵でしょ。透け感のある、淡い桜色の夏羽織。ステップを降りて時計を見ると・・8時前か・・・◾️朝の町を歩く足音まだ陣屋前の朝市は開いてないから、国分寺通りを宮川へ。朝市なんて何年ぶりだろう。なんだかドキドキする。今日の目的は、村芝居のあしらい探し。ここだけの話だけど、今年のテーマはファンタジー。お花の精たちが集まって、夏の終わりを告げる人情時代劇よ。設定はいつものように江戸の元禄時代。え?よくわかんない?じゃあ、見に来てよ。荘川まで。スケジュールは観光協会のサイトに載ってるから。私の役は、桜の精。クライマックスには季節はずれの桜吹雪が舞うんだよ。相手役は、江戸からやってきた役人。ロミジュリの江戸時代版って感じかな。舞台の小道具、あしらいはやっぱり、お花がいいよね。艶やかな花魁たちには、ハイビスカスやアサガオ。恋人役の男の子は・・ひまわり!いろんなお花売ってるといいな。◾️朝市の雑踏「すみません」「はい、いらっしゃい」「ヒマワリってありますか?」鍛治橋(かじばし)に近いお店。お花の苗を売っているおばちゃんに、腰をかがめて話しかける。そのときおばちゃんの前に座っていたのは・・・ミズバショウの柄のグリーンの浴衣を着た女性。手にはラベンダー?の苗。大きなトートバッグを背負って(しょって)・・観光客かしら。おばちゃんは私に向かって、人の良さそうな笑顔で、「切り花かい?うちには切り花は置いてないわなあ。もう少し待てば、陣屋の市が開(あ)くで。あっちに確か切り花の店があったわ」「そうですか・・ありがとうございます。行ってみます」私は浴衣が汚れないよう、裾をひるがえして歩いていく。◾️足音「まって」「はい?」声をかけてきたのは先ほどの女性。浴衣の裾にミズバショウが咲いている。「お花を探してるんですか?」「ああ、はい。今度・・お花を題材にしたお芝居をやるんです」村芝居だけど・・・「お芝居?劇団の方ですか?」「あ、そんなたいしたものじゃないです。ただの趣味で・・」だから村芝居なんだけど・・・「それで高山まで?」「ええまあ・・・そんな感じ」私のこと、自分と同じ観光客だと思ってる?ま、荘川からきた観光客、と言えなくもない。荘川も高山市なんだけど。ふふ。「貴女(あなた)は?さっきラベンダーを持ってらっしゃったみたいだけど」「ええ、白花ラベンダー。ハーブティーにしたり、入浴剤にするとリラックスできますよ」「そうなんですか・・」「はい。私、薬膳カフェをやっているので」「まあ素敵。お似合いよ」「ありがとう。このあと陣屋前の朝市へ行かれるんでしょ。よければご一緒にいかがですか?」「本当ですか?」「私も見たいものがあったので」「よろこんで」浴衣姿の美女2人(笑)・・私たちは肩を並べて宮川沿いを歩く。白地に桜吹雪。翡翠色に真っ白なミズバショウ。なのに手にはスーツケース。背中にトートバッグ。はたから見たら、2人とも絶対観光客だよねえ。ほら、また外国人観光客が振り返る。ああ、せせらぎの音が気持ちいい。<シーン2:荘川の自宅でアプリインストール>◾️虫の声荘川へ帰ったら、すぐに公民館へ。村芝居の練習はたいていここだ。開いたスーツケースの中身。陣屋前朝市で購入してきた小物を皆に配る。ひまわりの花と桔梗の花。ひまわりは相手役の男性が手に持つ。太陽と再生のイメージ。桔梗はラストシーンで私が持つ。美しい星の形の白い桔梗。春の桜から秋の桔梗へと引き継ぐ。彼に別れを告げる悲しいアイテム。和紙でできた提灯や、匠が作った竹細工は、小道具ね。着物の端切れは、お裁縫が得意な私には必須。柄や色を組み合わせて、個性的な衣装を作ろうかな。そして・・・薬草のよもぎ。そう。これは一緒に歩いた彼女が選んだ。”高山にあるもので一番好きなものは?”って聞いたら迷わず「よもぎ」って言うんだもの。観光客にしては、渋すぎない?私が「高山で一番美味しいのは荘川そば」って伝えたときは「朝日のよもぎうどんも美味しい」って、なんか反論してたけど。よもぎの葉は、ハーブとして、またアロマとしても最高、なんだって。そうだ、彼女、薬膳カフェをやってるって言ってたなあ。どこでやってるんだろう?名古屋?東京?考えてみたら私たち結構一緒にいたのに、名前さえ名乗ってないわ。なんとなく波長が合っただけ。朝市で売ってるもの見ながらあーでもないこーでもないって。結局別れるときもあっさりと『それじゃ、よい旅を』なんて。ま、観光客だから、こんな距離感でいっか。そうそう。よもぎの葉は草木染めに適している、とも言ってた。確かに芝居の衣装を自然な色合いに染めるにはいいかも。いろいろ考えながら、演者(えんじゃ)に説明していく。今年の物語はオリジナルだから、つい熱が入っちゃう。ストーリーはね、こんな感じよ。ときは江戸時代。宝暦(ほうれき)年間。幕府の直轄地だった飛騨の国。荘川村も例外ではありません。大規模な治水工事のために、江戸から1人の役人が荘川へやってきます。名前は翔介(しょうすけ)。彼は成果を第一とする冷徹な男でした。ある日、桜の精と出会い、そのはかなくも美しい姿に心を惹かれていきます。桜の精は、翔介に、治水が完成したら、自分は水の底へ沈むと予言しました。治水か恋か、心が揺れる翔介。それでも、陣屋の郡代から執拗な催促もあり、悩みながら治水を完成させます。桜の精は翔介に”生まれ変わるなら秋の花へ”と告げて消えていくのでした。とっても切ないお話でしょ。「さあみんな、少し休憩にしましょ」もうみんなセリフは入っていて、あとは動きの確認だけ。だから休憩してお茶タイム。そのとき、壁に貼ってあるポスターに目がいった。観光協会から新しいアプリのお知らせ?ふうん。なんだろう?高山市内10エリア在住の方限定アプリ「ホリデーシェア」?”お金をかけずに高山市内をプチ旅して再発見しよう!”?なあに、それ?でもなんだか面白そう。キャプションをじっくりと読む。住んでいるエリア以外のエリアの人と、お部屋を交換してホリデーを楽しむ。荘川以外の人とってことね。自分の部屋をゲストに最大1週間ショートステイしてもらう。代わりにその間、自分はゲストの部屋でショートステイ。女性は女性同士でお部屋を交換。帰るときはお掃除をして帰る。お互いのレビューは必須。なるほどねえ。お部屋に泊まってもらうのかあ。お掃除しておかないと。お金をかけずにプチ旅行できる、ってのは楽しそう。じい〜っとアプリのお知らせを見ていたら共演者が『行っといでよ、プチ旅』だって。村芝居の奉納までまだ日にちがあるし、準備は終わってるから?芝居の準備、ほぼひとりで頑張ったご褒美に?頑張った、って・・そんなそんなぁ・・村芝居は私のライフワークなんだもの。でもまあ、2泊3日くらいならいいかなあ・・奥飛騨の温泉でまったりとか〜。うふふ・・・※続きは音声でお楽しみください。

  39. 115

    ボイスドラマ「ホリデー/前編」

    飛騨高山を舞台に描かれる、女性二人の“休日交換”の物語。宮川朝市での偶然の出会いから、アプリ「ホリデーシェア」を通じて始まる不思議な体験。薬膳カフェを営むよもぎが、荘川町で見つけた新しい風景と心の揺れをお楽しみください。【ペルソナ】・よもぎ(28歳)=薬膳カフェのオーナー、芯の強い漢方薬剤師(CV=蓬坂えりか)・さくら(28歳)=荘川の村芝居に出演、伝統芸能に興味ある静かな女性(CV=岩波あこ)・朝市のおばちゃん(40歳くらい)=宮川朝市で花の苗を売る女性(CV=小椋美織)<シーン1:高山市街地の宮川朝市から>◾️朝市の雑踏「よもぎちゃん!朝市くるのひさしぶりやな!まめやったか?」「まめまめ!おばちゃんも元気やった?」「今日は何さがしよる?」「薬膳の材料でなんかいいの、ないかな、と思って」「白花(しろばな)ラベンダー、あるで」「ホント?やたっ!」「苗やから、一株もってけ」早起きして来てよかったわ〜、宮川の朝市。3か月に1回くらい。夏から秋へと向かうこの時期は、体調を崩すお客さん、多いから。市場にはあまり出回らない食材を、生産者から買いにくるの。今日はラッキー。花の苗売るおばちゃんに会えたし。なんと白花(しろばな)ラベンダーにも出会えるなんて。イングリッシュラベンダーの貴重な白花。ハーブティーにすれば、香りだけで癒されそう。アロマを抽出して、カウンセリングルームに置いとこうかな。癒しを求めて朝日に来たお客さんもきっと喜ぶわ。「すみません」「はい、いらっしゃい」「ヒマワリってありますか?」季節外れの桜の花が私の前を横切った。上品な檜の香りがかすかに漂う。顔を上げると、腰をかがめておばちゃんに話しかけているのは・・・桜柄の清楚な浴衣を着た女性。桜色のスーツケースを引いて・・観光客かしら。薄紅色の帯も素敵。「切り花かい?うちには切り花は置いてないわなあ。もう少し待てば、陣屋の市が開(あ)くで。あっちに確か切り花の店があったわ」「そうですか・・ありがとうございます」彼女は浴衣の裾をひるがえして、颯爽と歩いていく。◾️遠ざかる足音「まって」「はい?」「お花を探してるんですか?」「ええ、そうですけど・・」つい声をかけてしまった。浴衣姿に見惚(みと)れてしまって、なんて言えない。「今度・・お花を題材にしたお芝居をやるんです」「お芝居?劇団の方ですか?」「あ、そんなたいしたものじゃないです。ただの趣味で・・」「それで高山まで?」「ええまあ・・・そんな感じ。貴女(あなた)は?さっきラベンダーを持ってらっしゃったみたいだけど」「ええ、白花ラベンダー。ハーブティーにしたり、入浴剤にするとリラックスできますよ」「そうなんですか・・」「はい。私、薬膳カフェをやっているので」「まあ素敵。お似合いよ」「ありがとう。このあと陣屋前の朝市へ行かれるんでしょ。よければご一緒にいかがですか?」「本当ですか?」「私も見たいものがあったので」「よろこんで」私たちは肩を並べて宮川沿いを歩いた。言い忘れてたけど、今日は私も浴衣姿。蓬色の浴衣の裾には水芭蕉が咲いている。まるで桜の花とよもぎの青葉が並んでいるような色合い。でも、彼女はスーツケース。私はショルダータイプの大きなトートバッグ。少し厚手のキャンバス地に、ナチュラルレザーのワンポイント入り。私だって、どう見ても観光客だ。はは。たまに外国人観光客が振り返る。せせらぎの音が気持ちいい。<シーン2:よもぎのシェアハウスでアプリインストール>◾️虫の声シェアハウスへ帰ってから、朝市で買ったものをまとめてみた。赤かぶは、すりおろしておろし汁に。体を温める薬膳スープのアクセントになる。朴葉の樹皮は漢方薬に。丹生川のトマトは薬膳スープにもスムージーにもいいな。荏胡麻(えごま)は、血液をサラサラにしてくれる。あとは・・荘川のそばの実、か。これは一緒に陣屋前朝市を見た彼女のセレクト。素敵な女性だったから、つい聞いちゃったのよね。高山の食材で何が一番いいと思う?って。そしたら・・・荘川のそば。だって。観光客目線じゃ、そんなに人気なのかしら。朝日町(あさひちょう)のよもぎうどんだって負けずに美味しいのよ。思わず、私なら朝日町のよもぎうどんかよもぎ餅かなあ、なんて言い返しちゃった。大人気ないなあ。ま、いっか。それより、明日からのメニューを考えるのがたいへん。楽しいけど!◾️LINEの通知音あ、観光協会からのLINEだ。なになに?新しいアプリを作りました?へえ〜。なになに?高山市内10エリア在住の方限定アプリ「ホリデーシェア」?”お金をかけずに高山市内をプチ旅して再発見しよう!”?なんじゃ、それ?要約するとこういうことなんだって。高山市内に住んでいる人だけが使えるアプリ。住んでいるエリア以外のエリアの人と、お部屋を交換してホリデーを楽しむ。自分の部屋をゲストに最大1週間ショートステイしてもらう。代わりにその間、自分はゲストのエリアでショートステイ。女性は女性同士でお部屋を交換。帰るときはお掃除をして帰る。お互いのレビューは必須。ふうん。ワーキングホリデーとかエコツーリズムの市内版?お金をかけずにプチ旅行できる、ってのはいいかも。最近落ち着いてきたから、お試し、してみよっかなあ。まずはインストールして・・・と奥飛騨の温泉とか、たまにはいいかも〜。<シーン3:よもぎ in 荘川(御母衣ダムからホリデーシェアへ)>◾️小鳥のさえずり「おっきなダム〜!水がキレイ〜!川の底まで見えるじゃん!」結局アプリ上で、私のスケジュールと条件が合ったのは1件。交換先は、奥飛騨温泉とは反対方向の荘川町だった。朝日町から荘川町って意味ある〜?って最初は思っちゃったけど。実際に自分の目で見てみないとわかんないもんだわ。2泊3日分の着替えを車に積んで、と。市街地を抜けて、158号を西へ。最初は魚帰りの滝(うおがえりのたき)。すっごい迫力。川を上ってきた魚もこの滝は登れない。だから魚帰りの滝・・・納得。秋が深まると紅葉の名所なのね。きれいだろうなあ・・・ランチは一度食べてみたかった鶏(けい)ちゃん。薬膳とは逆の世界線だけど・・・ん〜おいしい!クセになりそう。味噌ベースのタレ、分析してみよっと。午後は荘川インターを越えてそのまま北へ。一面に咲くそばの花。そばは朝日でも見られるけど、また違った風情。標高1,000メートルの風が気持ちいい。冬はスキーもできるのね。七間飛吊橋(しちけんとびつりばし)で車を止めて。わぁ〜ダメダメ。下を見ちゃだめ。ああ、「ひぐらし」の聖地なんだ・・そっちのが怖いかも。そのまま156号を北へ。庄川(しょうがわ)がだんだん大きな流れになっていくと・・見えた。荘川桜公園。こんな大きくて高齢の桜を2本も移植させたなんて・・・桜の前でもう一度ボイスドラマ、聴いてみようかな・・・そしてもう少しだけ走ると・・・御母衣(みぼろ)ダム!すごいなあ。宇宙空間のような大迫力の存在感。五感に響く水の音。ずうっといつまでも聴いていたい。今回は2泊3日の荘川プチ旅行。いや、1日で詰め込みすぎでしょ、私。シェアするおうちは、ここから逆方向の荘川インター方面へ。集落の中にある一軒家。え?一軒家?そういえば、何にも気にしなかったけど、お相手の女性=アプリでは”ホスト”って呼ぶんだけど、一軒家に一人暮らしなの?小さいけどお洒落な平屋の一軒家。市街地の観光協会で鍵を預かってきたから・・・◾️開錠する音「カチャ」おじゃましま〜す・・入口の電気を点けると、スリッパの上にお手紙!”ようこそ荘川へ!短い滞在ですが、荘川の良さをじっくり味わってくださいね!”短いけど心のこもった文章が、美しい筆跡で書かれていた。ホストの名前はさくらさん。挨拶文のメッセージだけじゃなくて、もう一枚のメモには、さくらさんのオススメのスポットがいくつか。可愛らしいイラストと一緒に書かれてあった。へえ〜。吊り橋の手前には美術館があったんだ。あの建物なんだろうって思いながらスルーしちゃった。有名どころは初日にしっかり見たから明日からはオススメの場所に、行ってみよう。ふと私、考えてみる。シェアハウスのお部屋に残したメモ、こんなに丁寧に書いてこなかったよなあ・・・朝日町じゃ”ゲスト”の彼女、ごめんなさい・・・※続きは音声でお楽しみください。

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    ボイスドラマ「ハッピーアグリーデイ!」

    春の出会いが、夏の実りへとつながっていく。飛騨高山・国府町で生まれた、もうひとつの“ももの物語”。『桃花流水〜夢に咲く花』の続編、ボイスドラマ『ハッピーアグリーデイ!』では、収穫の季節を迎えた飛騨桃の果樹園を舞台に、ももと農家のおじいちゃん・おばあちゃんの心あたたまる交流が描かれます。農作業を通して生まれる絆、季節のうつろい、そしてラストに訪れる小さな奇跡──“もも”がどこから来たのか、彼女が運んできたものは何だったのか。国府町の風景とともに、優しい余韻に浸ってください。物語は「ヒダテン!Hit’s Me Up!」公式サイトをはじめ、Spotify、Amazon、Apple Podcastなど各種プラットフォームで配信中。小説として「小説家になろう」でも読むことができます。(CV:高松志帆/日比野正裕/桑木栄美里)【ストーリー】[シーン1:7月末/収穫の始まり】<飛騨もものモノローグ>むかしむかし。飛騨の国府(こくふ)という町に、おじいさんとおばあさんが住んでいました。おじいさんは山へ芝刈りに・・じゃなくて、自分の果樹園に桃の収穫に出かけました。ではおばあさんは?川へ洗濯へ・・行きたかったのですが、腰を痛めたおじいさんと一緒に果樹園へ出かけていったのです・・■SE/ニイニイゼミの鳴き声(初夏のセミ)<おばあさん> 『今年はほんとにあっついなあ、おじいさん。まだ7月やっていうのに』おじいさんは目で返事をします。あたり一面に漂う、うっすらと甘い香り。2人は籠を片手に、丁寧に桃を摘み取っていきます。低いところに実った桃はおばあさん、高いところに実った桃を獲るのはおじいさんの役目ですが・・獲ったあと痛くて腰をかがめないので、大変そう。『おじいさん、すごい汗やな。大丈夫か』『ああ、だいじょう・・・うう』大丈夫じゃなかった。熱中症。そりゃこの暑さだもの。仕方ないけど。力の抜けたおじいさんをおばあさん1人で家まで連れていくのは大変でした。家に着いて、おじいさんを寝かせ、ひと息ついたところで、おばあさんもぐったり。『残りの収穫はもう明日以降でいいやな。熟してまってもしょうがない。わしまで倒れたらどもならん』しばらく休んだあと、よっこらしょ、と立ち上がり、お勝手へ。一服しようと、お茶を沸かしているときでした。『こんにちは』『ん?誰かいな』『あの・・夏休みで高山へ遊びにきた大学生です』『ほうほう』『もも、と申します』『もも!?そりゃそりゃ、めんこい名前やわ』『こちらの農園の方ですか?』『ああ。うちには、わしとおじいさんと、2人しかおらんで』『ほかには?お子さんとかいないんですか?」『おらん。息子は30年前、高校生のとき家を飛び出して東京へ行ったわ。それきり音沙汰もない。よっぽど、畑仕事が嫌やったんやろなあ』「そうなの・・・実は、飛騨ももの収穫体験をさせていただこうとお邪魔したのですが』『収穫体験?桃の?』『はい、グリーンツーリズムで』『なんやて?グリーン・・・』『グリーンツーリズムです。農業体験をしながら農家へ泊まらせていただくこと』『そんなもんがあるんかい?そりゃしらなんだ』『でも、やってるとこ、どこもいっぱいなんですって」それであのう・・・申し訳ありませんが・・・よければ、収穫のお手伝いをしながらこちらに泊めていただけませんか?』『なに?うちに?』『あ、いきなりごめんなさい。もちろん、宿泊代はお支払いします』『いやいや、お金なんていらんやさ。それよりこんな汚いとこに泊まらんでも』『きれいじゃないですか、埃ひとつない』『布団も煎餅布団しかないし』『そんなの関係ありません。飛騨ももの収穫を手伝わせてください!』『いやあ、ちょうどおじいさんが熱中症で倒れてしまってな。しばらく作業を休もうかと思ってたんや』『そんな。桃が熟しちゃう』『そうやな』『私じゃ全然お役に立てないけど、これも何かの縁だと思いませんか』『う〜ん・・』『私、こう見えても、立ち仕事には慣れてるんです』『でもなあ・・』『ヘバったり、泣き言言ったりしません』『そうか・・』『お願いします』[シーン2:8月/真夏の収穫】<飛騨もものモノローグ>こうして、ももはおばあちゃんの農園で一緒に収穫をするようになりました。セミの声もニイニイゼミからクマゼミへ。真夏の太陽が桃畑に降り注ぎ、収穫も最盛期を迎えます。■SE/クマゼミの鳴き声(盛夏のセミ)『桃の実はな、赤くなって、まあるく膨らんできたら、収穫のサインなんや』『へえ〜。私のほっぺみたい』『ははは。そうやな。それにしてもももちゃん、あんた桃の摘み方、ほんとに上手やなあ』『ああ、ひとつずつ丁寧に摘んどる』『そうですかあ。一度やってみたかったんです』『初めてとは思えんわ。それにな、桃の実の扱いが、愛情たっぷりで・・・ありがとうなあ』『やだなあ、おばあちゃん。桃が大好きなだけよ』『そやな。そういえば、名前もももちゃんやもんなあ(笑)』『ちがいない(笑)』『そうそう』『今日はもう籠いっぱいだから、ちょこっと早いけど帰ろうか』『はい』『そうしようそうしよう』『帰って、熟れた桃を食べようなあ。傷桃だけど』『わあやったぁ!おばあちゃん、傷桃も大切にしてくれるのが嬉しい』『そうりゃそうや、みんな大事な子どもたちやからな』『そやそや』『おばあちゃんの子どもでよかった』『なにを言うとる。ははは』『ふふふ』『はっはっは』■3人の笑い声[シーン3:9月/夏の終わり】<飛騨もものモノローグ>お盆を過ぎると、夏の終わりを告げる風が吹き始めます。最初2週間くらいの予定だった、ももの収穫体験は8月が過ぎ、9月の声を聞いても続いていました。この頃には、おじいさんの腰もゆっくりと快方へ向かっています。おばあさんはときどき、午後になると、おじいさんを畑に残し、いろんなところへももを連れていきました。『せっかく国府へ来てくれたんだから、ええとこをいっぱい見といてほしいんや』そういえば国府には、素敵な場所がいっぱいあるってことすっかり忘れていました。■SE/ツクツクボウシの鳴き声(晩夏のセミ)宇津江四十八滝。頂上までは1時間くらいかかるけど、ゆっくりお話しながら登ればあっという間。帰りは温泉にも入って。こんな贅沢な時間、2人だけでいいのかしら。そのあとで桜野公園のピーチロードへ。なんて素敵な名前。来年の春は、満開の桜も桃も、見てみたいな。いまは、そばの花で、一面真っ白。ロマンティック〜。そうそう。安国寺も忘れちゃだめよね。私が大好きな民話。「安国寺のきつね小僧」。何度聞いても、泣けてきちゃう。お稲荷さんに行って手を合わせなきゃ。■SE/ヒグラシの鳴き声(夕暮れのセミ)[シーン4:10月/別れの日】<飛騨もものモノローグ>果樹園の収穫はももの手伝いもあって無事に終わり、別れの日がやってきました。『3か月か。長いようで短かったあ。ももちゃん、本当に本当にありがとうなあ』『ありがとう』『こちらこそ、ホントに楽しかった』『よかったらまたおいで』『おいでおいで』『今度はなんも手伝わんでもええで。ただ、遊びにきんさい』『うん。おばあちゃん、絶対また来る。来年も収穫、手伝わせて』『来年か・・・』『来年・・・』『約束よ』『本当はこの農園も今年限りにするつもりやったんやさ』『え・・?』『そうなんや』『でもな、おじいさんの腰もびっくりするほどよくなったし』『うん!』『でな』『もう少しだけ、がんばってみようかなあ』『そうだよ!だって、私、来年行くとこ、なくなったちゃうもん』『またそういうことを言うて』『本当だもん。来年また、この畑の桃がピンクの花を咲かせて、うっすらと桃の香りがしてきたら、そのとき私、また来るから』『そうかい、そうかい』『来てもらえるんかい』『指切りげんまん!』『ああ、よしよし』『指切った!』『来年・・またおいで』『待っとるでな』<飛騨もものエピローグ>おじいちゃんおばあちゃんがももを送って、家に帰ってきたとき。郵便屋さんが玄関に立っていました。滅多にこない郵便に少し驚くおばあちゃん。差出人のところを見ると、なんと音信不通だった息子の名前。驚いて封をあけると、こう書かれていました。息子の子ども、つまり孫が来年大学を卒業する。大学は農業系の大学で、孫は農業をやりたいのだという。おじいちゃんとおばあちゃんの果樹園で働きたいのだそうだ。驚いて声が出ない老夫婦。手紙を持ったまま目を閉じるおばあちゃんの頬に何かが触れた。それは、季節はずれの桃の花びら。ピンクの花が、希望を運んできてくれたのかもしれない。

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    ボイスドラマ「臥龍の記憶」

    臥龍桜に誓ったのは、たった一度の祝言でした。昭和19年、戦時中の飛騨高山・一之宮。臥龍桜の下で少女ミオリと青年カズヤは、許嫁として再会します。自由も恋も、そして未来もままならない時代の中で、二人が交わしたひとつの約束。それは“この桜が咲く日まで、生きていてほしい”という切なる願いでした。臥龍桜のつぼみが膨らむころ、カズヤに届いた赤紙。出征を前にして、二人が選んだ道とはーー。飛騨の記憶と、桜の下で交わされた言葉を紡ぐ、時を超えたラブストーリーです!【ペルソナ】※物語の時代は昭和19年〜22年・ミオリ(17歳)=飛騨一ノ宮駅の東側にある実家で育った。一之宮尋常高等小学校を卒業後、高山の女学校に通う女学生。勉学に励み、将来は子どもたちに教える教師になることを夢見ている。真面目で一本気な性格だが、感受性豊かで、心の奥には繊細さも持ち合わせている。親が決めた許嫁であるカズヤとの関係に反発しつつも、どこか彼の不器用な優しさに気づいている(CV=小椋美織)・カズヤ(19歳)=飛騨の林業を営む家に生まれた。家は飛騨一ノ宮駅の西側。幼い頃から木に親しみ、その温もりと力強さに魅せられ、いずれは家業を継ごうとは思うが、今は家具職人(匠)になりたいと思っている。1944年現在は高山市の家具工房で修行の身。寡黙だが、内に秘めた情熱と職人としての誇りを持つ。不器用ながらも、ミオリのことをいつも気にかけている(CV=日比野正裕)【設定】物語はすべて臥龍桜の下。定点描写で移りゆく戦況と揺れ動く2人の心を綴っていきます【資料/飛騨一ノ宮観光協会】http://hidamiya.com/spot/spot01<第1幕:1944年3月5日/臥龍桜の下>◾️SE:春の小鳥のさえずり「冗談じゃないわ!どうして私がカズヤと祝言(しゅうげん)あげなきゃいけないのよ!」「親が決めたことだからしょうがないだろ。」「情けないわね!あんた、それでも日本男子?しっかりしなさい!」「日本男子は関係ないだろうに」「そうね、カズヤには関係ないかも。だけど私には大あり」「どういうことだ、ミオリ?」「カズヤにはわかんないでしょうね。でも私はね、花も恥じらう十七歳。一之宮尋常高等小学校を卒業して、高山の女学校に通う学生なのよ」「だからなんなんだ」「あー、いや、ちょっと待って。そういや、あなただって、林業を捨てて高山の工房で家具を作ってるじゃない」「捨ててなどないぞ。オレは別に父母の仕事を卑(いや)しめてはいない。ただ家具作りが・・」「好きだからでしょ。昔から手先が器用だったし」「そ、そうだけど」「こんなふたりが。戦時中だというのにこんな好き勝手やってる男女がよ。親が決めた許嫁と祝言なんて、まあなんて前時代的な話だこと。いま何年だと思ってるの?昭和ももう19年よ。昭和19年。明治時代じゃないんだから」「ちょっと言い過ぎじゃないか」「なんでよ」「親が言っていることの意味も考えねばならんだろう。戦局はますます激化していくこのご時世で」「はあ?」「厚生省が『結婚十訓』を発表したではないか」「それがどうしたの?」「『結婚十訓』第十条『産めよ殖(ふや)せよ国のため』」「ばかばかしい」「ばかばかしい?非国民かオマエは」「非国民でけっこう」「なに」「だいたいカズヤと夫婦(めおと)になるなんて無理無理」「ふん。こっちだって願い下げだ」「あら。初めて意見が合ったじゃない」「た、たしかにな」「あゝせいせいした」「なあ、ミオリ。オマエ、ひょっとして・・・」「なによ」「いや、別に・・」「言いなさいよ」「ああ。ほかにいい人がいるのか・・」「え・・」「やっぱりそうか・・」「な、なによ。悪い?お慕いする方くらい、いたっていいでしょ」「別にかまわんけど。オレだって・・・」「へえ〜、カズヤにもいるんだ。そんな相手が」「馬鹿にするな。こう見えてもモテるのだぞ」※当時からあった言葉です「馬鹿になんてしてない。だってカズヤ、見た目だけはいいんだし」「だけ、って・・失礼千万だな」「じゃ、いいじゃない・・」「うむ・・」「ねえ、ようく見てみなさい。あそこ。飛騨一ノ宮駅のホーム」「飛騨一ノ宮駅か・・」「毎日毎日聞こえてくるわ。出征兵士を見送る家族の、心で泣いてるバンザイと供出された飛騨牛たちの、悲しそうな鳴き声」「うむ」「この臥龍桜だって」「桜の季節はまだまだ先だがな」「赤紙(あかがみ)手にした兵士と、家族や恋人が今生(こんじょう)の別れをしている」「はるか彼方の戦地に送られて、思い出すのはやっぱりふるさとの桜じゃないかな」「もう二度とこの桜に会えないからと、しっかりと目に焼き付けて」「今日もこのあと壮行会があるらしいな」「臥龍桜の下って、本当はもっと幸せな気持ちになれるはずなのに」「・・・」「それなのに銃後(じゅうご)の私たちだけ、のうのうと幸せになるのはいや」「ミオリ、らしいな」「高山線だって10年前に開通した時は、飛騨の夢と希望をのせていたのに。いまじゃ、悲しみを乗せて走ってる」「・・・」結局、痴話喧嘩のような言い争いは中途半端に終わった。1944年、昭和19年3月。臥龍桜の蕾はまだまだ固く、一之宮の春は遠い。戦局はますます悪化し、ニッポンは敗戦への道を歩み始めていた。<第2幕:1944年4月7日/臥龍桜の下>◾️SE:春の小鳥のさえずり「ちょっとカズヤ。なによ、急に呼び出して」「すまん」「そういえば1年前にもヘンな話で呼び出されたわね」「ヘンな話じゃないだろう。祝言の話は・・・」「十分ヘンな話よ」「そうか・・・。まあ、いいじゃないか。ミオリの希望通り、ご破算(わさん)になったんだから」「やあね。なんだか私がぶち壊したみたいじゃない」「だってそうだろ」「いいでしょ。あなただって、私なんかと夫婦(めおと)になるより想い人と一緒になる方が」「あ・・ああ・・・いいかもな」「あ〜あ。ほら、見てよ。今日もまた飛騨一ノ宮駅のホームに出征兵士が。あんなにたくさんの人に見送られて。あんなにたくさんの涙を背負って」「そう・・だな」「それよりもう、じれったいわね。なんの用なの?」「いまから話すよ・・」「カズヤんちは駅の西側だからスッと来れるけど、うちは東側なんだから。いちいち線路を渡ってここにこなきゃいけないのよ。わかってるでしょ」「すまない・・・」「なに?なんか素直で気持ち悪い。いつものカズヤじゃないみたい」「実は・・・」「うん」「昨日・・・」「うん」「来たんだ・・・」「え・・・」「これ・・・」「なによ、それ?」「わかるだろう・・・赤紙だよ」「えっ!」「両親とはもう話した」「そんな・・・」「ミオリにもちゃんと伝えておこうと思って・・・」「なんでカズヤがいかなきゃいけないの」「え?あたりまえだろう。日本国民なんだから」「最低」「すまない」「なにをあやまってるのよ」「いままで喧嘩ばっかりで・・・」「出征はいつ?」「1週間後だ」「間に合わないじゃない」「なにが?」「臥龍桜よ。決まってるでしょ」「しかたないさ・・」「じゃあやめちゃいなさいよ。出征なんて」「ばか。なんてこと言うんだ」「ばかはあんたよ」「・・」※言いながら感情を抑えきれなくなるミオリ「ばか・・・ばかばかばかばかばかばか・・ばか」「すまない・・・おい、ミオリ!」私は、我慢ができなくなってカズヤの元から駆け出した。後方から私を止める声は聞こえてこない。振り返らずに、線路を渡っていく。ホームからは賑やかに出征兵士を送る歓声が聞こえてくる。◾️SE:SLの切ない警笛蒸気機関車の警笛が人々の悲しみを飲み込んでいく。1945年、昭和20年4月7日。臥龍桜の蕾は膨らみはじめ、開花の季節が近づいていた。<第3幕:1944年4月14日/臥龍桜の下>◾️SE:春の小鳥のさえずり「臥龍桜・・・やっぱりまだか」「カズヤ、いたの?」「ああ、ミオリ、どうしたんだよ?オレ、明日、出征なんだぞ」「わかってる。だけどもう、時間がないじゃない・・」「え?」「どうしても聞いておきたいことと、伝えたいことがあるの」「なんだ?」「カズヤ、あんたどこへ出征していくの?」「どこへ?まず、富山へ行って」「富山・・・?」「富山にある、部隊の兵舎さ。そこで新兵訓練(しんぺいくんれん)を受けるんだ」「そのあとは?」「そのあと?どうだろう・・・南方戦線とかじゃないのかな」※「南方」と聞いて途端に顔が曇るミオリ「南方!?そんな・・そんな・・」「日本にとって今もっとも重要な激戦地なんだから。多分、そこへ・・」※きっぱりと言い切るミオリ「やっぱりカズヤ。行くのやめなさい」「なにを言ってるんだ。無理に決まってるだろう」「どうせ日本なんて負けるんだから。犬死になんてしないで!」「しいっ!声が大きいよ。憲兵か特高に聞かれたらどうするんだ」「かまやしないわ。本当のことなんだから。刑務所送りなんて怖くない。いくらでも入ってやる。戦場へ行かされるよりよっぽどマシ」「・・・ミオリらしいな」「なによ」「いままでありがとうな」「なにそれ?」「幸せになれよ」※顔を背けるミオリ※続きは音声でお楽しみください。

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    『桃花流水〜夢に咲く花』

    飛騨高山・国府町を舞台にした、春と初恋の物語。ヒダテン!ボイスドラマ第17弾『桃花流水〜夢に咲く花』がついに公開!春のピーチロードで出会ったのは、東京からやってきた農業大学の青年・ショウタ。桃の花に導かれるように、彼とももは少しずつ距離を縮めていきます。しかし彼には、ある“秘密”があって――国府町の自然、伝承、そして飛騨桃の魅力をたっぷり詰め込んだ、甘く切ない春の出会いと別れの物語。公式サイト&Spotify・Amazon・Apple Podcastなど各種配信サービスにて公開中!小説として「小説家になろう」でも全文公開しています。(CV:高松志帆)【ストーリー】[シーン1:4月/満開の桃の花(ピーチロード)】◾️SE:平地の小鳥/高山線の通りすぎる音〜自転車の急ブレーキの音「大丈夫ですか!?」「あ、はい、大丈夫です!」夕暮れが近いピーチロード。満開の桃の花の下。突然現れた彼は、道の脇で、桃の木にもたれかかるように倒れていた。「子狐を避けようとしたら転倒しちゃって」「子狐・・・?」「まさか、こんなところに子狐なんて・・」「別に不思議じゃないわ」「え・・」「安国寺のきつね小僧って民話、知らないの?」「なんだい、それ?」「あなた・・・高山の人じゃないのね」「うん、そうだよ」彼はお尻についた土を振り払って、よいしょっと立ち上がる。Eバイクのスタンドも立て直して。私も、乗っていたEバイクを道の端っこに停める。「東京からきたんだ」「へえ〜。どこに泊まってるの?古川?市街地?」「宇津江四十八滝」「キャンプ場?アウトドア派なんだねー」「きみはここ、国府の人?」「まあね。私、もも。よろしくね」「もも?いい名前!よろしく。僕はショウタ」「ショウタこそ、いい名前。私、ここが高山市になる前から、ずうっと国府に住んでるの」「そうなんだ。いいところだね」「当然でしょ。見ての通り」「桜と桃の花が一緒に見られるなんて」「そう。この季節だけの特権。いいときに来たわね」「本当にきれいだ」「やだ。照れるじゃない」「って桃の花のことだけど・・」「あ、そうか・・・桜野公園は行った?」「うん、宮川(みやがわ)沿いに通ってきたけど、明るいうちに桃の花が見たくて」「どうして?」「桜より桃の花の方が好きなんだ」「へえ〜、変わってるわね」「春の光をあつめて、淡く、やわらかな色をひらく」「ほう〜」「風が花びらを撫でるたびに、甘い香りが漂う」(ゴクリ)※唾を飲み込む「ちょっとちょっと、ショウタって詩人なの?」「いや違うけど、それほど好きってことさ」「好き・・・?」「あ、ごめん。ちょっとカッコつけすぎちゃった」「ううん。よかったわ。ねえ、もっと、ショウタのこと教えて」木陰を選んで、また腰をおろす彼。私も横に並んで、ピーチロードの端っこに座る。風になびく飛騨桃の花びら。暮れ行く前の春の日差しが、私たちの顔に花の影を落としていた。彼は東京の農業大学へ通う一年生なんだって。でも父親は農業の道へ進むことに猛反対。ときどき喧嘩しては家出しているらしい。国府は今回が初めて。でも、どうして高山?どうして国府?「ちょっとだけ、縁があるんだ」「どんな縁?」「ん〜、ナイショ」「もう〜」「さぁて、暗くなる前に出発しようかな、桜も見たいし」「あー、浮気するんだぁ」「なに言ってんだか」「キャンプ用品とか荷物は?」「レンタカーの中。駅前の駐車場だよ」「用意周到ね」「ソロキャンプは慣れてるから」そう言って笑う彼の口元から八重歯が覗く。よく見ると、キュートな感じ・・・かな。「きみの家はこのへん?」「ううん、うちは国府町宇津江」「それって・・・」「そう、ショウタがこれから行くところ」「宇津江四十八滝に住んでるの?」「なわけないでしょ。自然公園の近くよ」「じゃあ送るよ、一緒にいこう」「いいわ」ショウタは笑顔で親指を立てる。一面を淡いピンクに染めた、飛騨桃たちのピーチロード。Eバイクで並んで走る私たちの目の前を、花びらが静かに舞い降りる。後方から子狐の鳴き声が聞こえたような気がした。[シーン2:5〜6月/クリンソウからササユリへ(宇津江四十八滝県立自然公園)】◾️SE:山の中/山鳥の声〜小川のせせらぎ自然公園に、赤・白・ピンクのクリンソウが咲き始める季節。ショウタと私は、毎日のように顔を合わせた。っていうか、私が彼のキャンプをたずねていくんだけど。キャンプ場には5張ほどのテントスペース。彼のテントは入口から一番遠いところにあった。「桜の季節からもう1か月か」「こんなに長い間居て、学校は大丈夫なの」「大丈夫。これも課外研究のひとつだから」「どこが。農業なんて関係ないじゃない」「あるよ。課外研究は、農業だけじゃないんだ。こうやって移りゆく季節と、ワイルドフラワーを観察することも重要な研究なんだ」「ふうん」(※疑り深げに)「ねえ、前から言ってるけど、今度ももの家に連れてって」「そうね。ササユリが咲く頃に」「そろそろ咲き始めてるじゃん。ももの家は、飛騨桃の農園をやってるんだろ。見てみたいな」「飛騨桃の収穫はまだ先よ」「収穫に備えて、農家の方が日々手入れしているのを見たいんだ」「なら上広瀬(かみひろせ)の方がいっぱい果樹園あるわ」「そっか・・・」(※納得していない)「それより今日は安国寺まで行ってみない?」「あ、最初にももが言ってたとこ?」「うん。飛騨で唯一の国宝建造物がみられるわよ」「へえ〜。そんなすごいのがあるの?」「建物もさることながら、回転式の書庫が面白いの」「みてみたいな」「寺社仏閣とかに興味がある人なら垂涎(すいぜん)ものじゃない?」「国府って小さな町なのにいろんなものがあるんだね」「あ、また ばかにした」「してないよ」「西の宇津江から東の安国寺、今村峠、北の桐谷(きりだに)までどんだけ広いと思ってんの?」「いや、ごめんごめん」「いっぺん歩いてみるといいんだから」「ももは国府町のことになると、目の色が変わるんだよなあ」「そりゃ、私の町だもん」「僕もまだまだ知らないとこが多いから、ぜ〜んぶ教えて」「おけまる!」「そういえば、安国寺のきつね小僧ってなに?」「国府の昔話、まだ読んでないんだー」「忘れてた」「しょうがないなあ。じゃ教えてあげよう」「ありがと」「とってもお利口さんな、子狐の話なの。あ、でもこれ以上はだめ。最後の方、悲しくて泣いちゃうから」「え〜」「”信太(しのだ)の森”ってボイスドラマに詳しく紹介されてるからPodcastで聴いてみて」「わかったよ」安国寺、観好寺(かんこうじ)、熊野観音、洗心の森(せんしんのもり)、あじめ峡・・・私たちは、彼のレンタカーでいろんなとこへ出かけた。これって、デート・・・って言うのかなあ。やがて季節は移り、セミの声も変わっていった。[シーン3:7月/最後の夜】◾️SE:山の中/虫の声/フクロウの声〜小川のせせらぎ「明日、東京へ帰るよ」「ずいぶん急なのね」「父さんが倒れたんだ」「えっ」「容態をみないとわからないけど、今後のこと、話してくる」「そうなんだ」「言い忘れてたけど、父さんのふるさとは国府町なんだ」「うそ・・・だってショウタ、国府は初めてだって・・・」「うそじゃない。初めてだよ。父さんは両親と喧嘩して飛び出してきたから一度も里帰りしてないんだ」「そんな」「しかも、父さんの実家は飛騨桃の果樹園」「え・・・」「農業が嫌で、家出したんだって」「そうだったんだ・・・私、なんて言ったらいいか・・・」「大丈夫。ももには感謝してるから」その日、私たちは、小さなソロテントの中で、夜遅くまで語り合った。時間が経つのも忘れ、夜が更けていくのを恨めしく感じながら。「必ず帰ってくるから」「うん」「待っててくれる?」「わかった」「約束」「うん約束」帰るとき、彼は私の姿が見えなくなるまで見送ってくれた。後ろ髪をひかれる思いで、私はいつものように果樹園へ帰る。袋かけされた飛騨桃たち。そろそろ色づき始める頃。桃が実っている枝を愛おしく一本一本撫でる。昼と夜の寒暖差が育てる、甘〜い飛騨桃。よしよし。早くお外(そと)に出たいのね。もう少しだけがんばって。ひとりひとりの桃に声をかける。私の姿は、真っ暗な果樹園に浮かび上がる、薄桃色の淡い光。ぼんやり発光するそれは、天使のように見えたかもしれない。満天の星がまたたく暗闇の中。月の光に照らされた人影があることに、私はまったく気が付かなかった。[シーン4:7月/別れ】◾️SE:山の中/夏の鳥/クマゼミの声〜小川のせせらぎ翌朝、キャンプをたずねると、彼の姿はなく、テントはもうなくなっていた。そっか、急いで帰ったのね。お父さん、大丈夫だったのかしら。無事だといいけど。踵を返して戻ろうとすると、管理人さんに呼び止められた。え?彼からの手紙?手紙?ああ、だって私、スマホ、とか持ってないから。毎日会ってたからそんなん必要なかったしね。封書から手紙を取り出す。そこにはとても丁寧な筆跡でショウタの想いが綴られていた。ももへあの夜、果樹園で見た光景は、一生忘れられないだろう暗闇の中、愛おしそうに桃に話しかけていた君の姿は、飛騨桃そのものだった・・・※続きは音声でお楽しみください。

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    ボイスドラマ「アルテミスに出会った日」

    岐阜県高山市朝日町にある薬膳カフェ「よもぎ」を舞台に、漢方薬剤師・朝日よもぎの幼少期から現在までを描いた、感動のボイスドラマが完成しました。病弱だった少女・よもぎが、朝日町の自然と「義理の祖母」との出会いを通じて“薬草の力”に目覚め、自らの進むべき道を見つけていく姿を、四季折々の風景とともに丁寧に綴ります。「飛騨は薬草の宝箱」祖母の言葉の意味を、あなたもきっと感じるはずです。出演:蓬坂えりか/坂田月菜/日比野正裕【資料/アルテミス】https://kimini.online/blog/archives/79968<シーン1:現在/よもぎ28歳/カフェよもぎ>◾️SE:カフェのガヤ/小鳥のさえずり「先生、最近朝起きるのがだるくてなあ。また薬をだしてもらえんやろうか」「あら...マサさん、大丈夫?辛いねぇ。奥でお話、聞きましょうね。」「ああ、わかったわかった」カフェ「よもぎ」の奥。厨房の前の小さなカウンセリングルームで常連客の相談を聞く。「じゃあ、漢方作ってくるわね。クロモジ茶飲みながら、待っててね。」「ああ、ありがとなぁ。」カウンセリングルームの横。嬉しそうに微笑みながらおばあちゃんが通りすぎていく。パパのおかあさん。戸籍上は”義理のおばあちゃん”だけど、私にとっては、薬草の先生。”朝日町の主(ぬし)”といってもいいくらい。ふふ。<シーン2:26年前:よもぎ2歳の夏/シェアハウス周辺の森にて>◾️SE:小鳥のさえずり初めておばあちゃんと会ったのは25年前。2歳のときだった。ママに連れられて朝日町に来たけれど、行くとこ、見るとこ、知らないとこばかり。そもそも人見知りで、今で言うコミュ症の塊。しかも病弱で、よく熱を出して寝込んでた。ママのかえでも、いろいろあって精神的にキツいときだったし。東京から着の身着のままで連れてこられて、ゲームも持ってこられなかったんだ。ママは住むところを決めたり、なんだかんだで毎日家にいない。家、といってもシェアハウスだから、ひとり静かに過ごせるわけじゃない。だから、よくお庭で、虫と遊んでた。「痒いのかい?」「え・・」声をかけてきたのは、知らないおばあちゃん。私は手のひらが痒くてボリボリかいていた。「毛虫にさわったんかいな」「あ・・」そういえば、さっき緑色の葉っぱをちぎったとき。葉の上でモゾモゾしてる小さな毛虫にさわっちゃったかも。「ほうか、ほうか。ちょっと待っとれよ」おばあちゃんは慣れた感じで、近くに生えていたよもぎの葉をちぎる。葉っぱを手のひらで揉むと、緑色の汁が出てきた。「この汁をちょんちょんってつけてみ。痒みがおさまるから」なんだか信じられなかったけど、言う通りにした。変わったおばあちゃん。「もうかかん方がええで。ちょこっと我慢しい」私は黙ってうなづく・おばあちゃんは、ほかにもいろんなこと教えてくれた。庭の隅に生えている低い木から、葉っぱと小枝を少しだけ摘み取って「クロモジっていうんや」地面に落ちたセミを拾い、クロモジの葉っぱの上に置く。でも・・・やっぱ、弱ってるから動かない。・・・と思ってたら、そのうちに羽を動かして、弱々しく飛んでいった。うわあ。ぽかんと口をあけている私におばあちゃんがにっこり微笑む。「もう痒くないやろ」あ・・ホントだ・・・治ってる。痒くない。嬉しそうな顔をする私を見て、おばあちゃんがまたニンマリ。その日から、無口な少女と、物知りなおばあちゃんの交流が始まった。おばあちゃん、って言っても、今から思えば全然若かったと思う。だって、いつも車を運転して、朝日町のいろんなとこへ薬草摘みに連れてってくれたもん。鈴蘭高原でヨモギやスギナ、ワレモコウ。水芭蕉は終わってたけど、美女高原でドクダミやオオバコ。カクレハ高原でワラビやゼンマイ、ウド、トウキ。おばあちゃん、きっとひとりぼっちの私を気にかけて誘ってくれたんだろなあ。おばあちゃん、『飛騨は薬草の宝箱』って言ってたけど、ホントにそう。薬草がみんなの生活に根付いてるんだ。もっともっと薬草のこと知りたいな。<シーン3:22年前:よもぎ6歳の春/朝日の森>◾️SE:森の中/小鳥のさえずり6歳の春。小学校に入っても体が弱いのは変わらなかった。体育の授業はいつも見学。だから、ずっとコミュ症のまま。ママは、新しいお店を朝日町で開くみたいで、毎日準備に忙しい。やっぱりいつも家にいない。私が唯一心を開くのはおばあちゃんだけ。おばあちゃんとは、毎日のように森で薬草を探した。森以外で、私が過ごす場所は図書館。おばあちゃんと一緒に摘んできた薬草を、図書館で答え合わせするんだ。最近すごく興味があるのは、よもぎ。おばあちゃんも、「ヨモギは女の子を守ってくれるんやさ」っていつも言ってたけど。調べたら、貧血予防。デトックス。腸内環境改善。美容効果。冷え性改善。リラックス・・・よくわかんないけど。すごいな。いっぱい興味が湧いてもっと深く調べたら、ギリシャ神話が出てきた。アルテミス?なに?よもぎの学名は、アルテミシア・・・オリンポスの十二神のひとり「アルテミス」から名付けられたって。月と自然の女神。純潔の神。出産の守護神。そして、女性の守り神。わあ。素敵・・・私もこんな風になりたいなあ。アルテミスは私の理想となり、神話をいっぱい調べた。双子のアポロン。弓の名手。カリストの悲劇。生まれてすぐにおかあさんレトの出産を手伝った?やっばい。すごすぎる。私の中で、アルテミスの名を持つよもぎも神格化されていった。<シーン4:22年前:よもぎ6歳の夏/シェアハウス>◾️SE:食卓の音6歳の夏。ママが倒れた。そりゃそうよ。朝日町のなかでお店をオープンするって毎日走り回ってたから。この機会にゆっくり休んでほしいな。看病をするのは私と、ママのお友達。大学のときの同級生だって。同級生じゃなくて、ボーイフレンドでしょ。いいのいいの。隠さなくても。知ってるんだから。ご飯は私が作ることにした。ってか、もうずいぶん前から自炊してたんだもん。最初はママからもらったお小遣いでカップラーメンとか食べてた。だけど、おばあちゃんにそれ話したら、「あかんて。せっかく薬草摘んでるんやから」そう言って薬膳料理っていうのを教えてもらった。体の熱を冷ます「冬瓜(とうがん)と豚肉のあっさり煮」。疲労回復に「鶏手羽と棗(なつめ)の薬膳スープ」。気の巡りを良くする「セロリと鶏ささみの和え物」。もちろん私ひとりじゃ作れないからおばあちゃんに手伝ってもらう。人が少ないお昼のシェアハウス。キッチンにはおばあちゃんと私しかいない。お肉はおばあちゃんが持ってきてくれた。薬草は森で一緒に探してくれる。おばあちゃんがいないときは、図書館で薬膳料理について勉強した。薬膳には決まったレシピがあるわけじゃない。食べる人の体質や、その時の体調に合わせて食材を選ぶ。五味(ごみ)というのは体に効く5つの味。五性(ごせい)という体を温めたり冷やしたりする性質。帰経(きけい)というのはエネルギーの通り道。最初は何言ってんだか全然わかんなかった。実際に食べていくうちに、わかったようなわかんないような。ま、いいや。体にいいってことだけ理解できたから。おばあちゃんは少しずつ、私にも料理させてくれるようになった。ということで、今日のメニューは、ナツメと生姜のおかゆさん。おばあちゃんにママのこと話したら、教えてくれたんだ。「よもぎちゃんが作るんなら、これ一択やさ」お米をよく洗って、たっぷりのお水と一緒に鍋に入れる。ナツメと生姜の薄切りも加えて、弱火にかけたら・・・焦げ付かないように時々混ぜて。お米がとろとろになるまでじっくり煮込む。最後に、お塩を少々加えて味を整えれば、ナツメと生姜のおかゆさん、できあがり〜。「ママ、おまたせ」ベッドのママが驚いた顔でこっちを見る。ボーイフレンドは看病疲れで眠っちゃってる。ママはその手を愛おしそうににぎって。はいはい。ごちそうさま。でもママには、ちゃんと食べてもらいますからね。よもぎ特製、ナツメと生姜のおかゆさん。弱った胃腸を休ませて、体の中から温めるの。看病疲れの彼氏にも。ママは私と料理を交互に見ながら、「ありがとう」と言って口に入れると・・クシャっと顔がゆがむ。あれ?まず・・かった?そのあとすぐに、ママの頬を涙が伝わる。いや、そんな。そこまで美味しくはないでしょ。でもよかった。ちゃんと食べてくれて。私は、薬草の話と薬膳料理の話をママに聞かせる。おばあちゃんのことも・・・あ、しまった。おばあちゃんからは、「ママにはばあちゃんのこと、言わんでもええよ。よもぎちゃんが1人でもしっかりやっとるって伝えんとなあ」って言われてたんだ。ママからは、『今度会わせてくれる?』って。首を小さく縦に振る。約束すると、ママは嬉しそうに笑った。※続きは音声でお楽しみください。

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    ボイスドラマ「最後の鉄道員(ぽっぽや)/後編」

    「最後の鉄道員(ぽっぽや)」<後編>は、声優を目指す少女ルナの視点。駅長ミオリとの出会いは、ルナの人生に何をもたらしたのか?そして、無人駅となる飛騨一ノ宮駅の最後の日、ルナがミオリに贈るサプライズとは…?涙なしには聴けない感動のラスト!【ペルソナ】・ミオリ(51歳-54歳)=飛驒一ノ宮駅の駅長(CV=小椋美織)・ルナ(15歳-18歳)=(CV=坂田月菜)・マサヒロ(59歳)=久々野駅の駅長(CV=日比野正裕)<シーン1:1982年3月/駅長との出会い>◾️SE:飛騨一之宮水無神駅到着アナウンス(月菜ちゃん読んで)/小鳥のさえずり「まもなく飛騨一ノ宮、飛騨一ノ宮です」1982年3月。あたしは久々野から、休みの日しか乗ったことのない国鉄に乗る。久々野の次は飛騨一ノ宮。7分で到着する小さな駅。飛騨一ノ宮といえば、駅のとこにある臥龍桜か。臥龍桜を見にいったのは、小さい頃だったけどこの時期、まだ開花の気配すらない。春の高山祭・山王祭(さんのうまつり)まであと1か月。高校に合格したら、今年は友達誘って行ってみよう。あ、でも4月に入学してそんなすぐ友達ってできるのかなあ。不安な気持ちがどんどん大きくなる。今日は高校の合格発表。パパもママもりんごの剪定作業でバタバタだから発表を見にいくのはあたし1人。大丈夫、大丈夫、なんて軽く言っちゃったけど、やっぱり不安、ドキドキする。そういえば・・・気がつくと、国鉄を途中下車して飛騨一宮駅のホームに立っていた。このタイミングで神頼みなんてありえないかな・・・でも、世界屈指の聖なる場所だから。「お嬢さん」「え」突然声をかけられてうろたえる。国鉄の制服をきたお姉さん。【以下前回原稿まま】「突然ごめんなさい。飛騨一ノ宮駅 駅長のミオリです」「あ・・はい」「なにか困りごと?」「えっと・・・」「よかったら、話してみて。急行のりくらの通過までまだ30分あるから」「はい・・あの・・」「うん」「高山までの切符なんですけど・・・一ノ宮で降りても・・大丈夫でしょうか・・?」「降りることは問題ないわよ。でも、もう一回乗る時は・・」「大丈夫です。もう一度切符を買うから」「ああ、そう・・・ごめんね。でも、本当にいいの?飛騨一ノ宮で降りて」「はい・・・」「どこか行きたいとこがあるの?」「飛騨一之宮水無神社」「水無神社?」「・・今日高校の合格発表なんです」「まあ」「試験終わっちゃってるのに、合格祈願っておかしいですよね?」「おかしくないわ。シュレディンガーの猫っていう考え方だってあるし」「シュレ・・ディンガー・・?」「あ、失礼。物理の実験よ。夫が大学で物理の講師だったから」「すごい。そんなすごい人がいるんですね」「うん、もういないけど。この世には」「あ・・・ごめんなさい!」「ううん、こっちこそ。話の腰を折っちゃって・・で、水無神社に参拝してから合格発表を見にいくってことね」「はい!」「よし、じゃあがんばって。跨線橋渡って駅前出たらまっすぐよ」「ありがとうございます!あ、あたし、ルナです!行ってきます!」「絶対大丈夫だから!ファイト!」なんか・・・ホントに大丈夫だ、って気がしてきた。素敵な駅長さん・・・家を出るときは、パパやママとも顔合わさなかったし・・りんごの剪定で忙しいからしょんないよね。あ、合格発表見たら、図書館で調べなきゃ。シュレ・・ディンガーの猫だっけ・・?なんか、かわゆいし。<シーン2:1982年4月/入学式>◾️SE:国道41号の雑踏/自転車で走る音ちょっとまだ寒いけど、自転車快適〜!車の交通量がチョー多い国道41号。宮峠を越えたら、飛騨一ノ宮まで下り坂。家を30分前に出れば、楽勝だわ。あ、でも、帰りはこれが上り坂になるのか・・・う〜ん。ま、考えないようにしとこ。よっし。町が見えてきたから、あと少しだわ。10分前には着けそう。ラッキー。合格発表から一ヶ月。あたしはめでたく高校に入学した。駅長さんと猫に感謝しなきゃ。猫?もっちろん、シュレ、ディンガーの猫よ。ちゃあんと調べたんだから。猫は生きてる!飛騨一ノ宮駅から通おうって決めたのもあのミオリ駅長がいたから!パパもママも心配して、やめてほしいって言ったけどね。だって、そうしないと、そうそう水無神社にいけないし。水無神社の御利益やっばいもん。飛騨一ノ宮駅から通わないとミオリさんとだって話せないじゃん。あのあと、久々野駅の駅長さんから聞いちゃったんだよね。「ああ、一ノ宮の駅長かい?あんときゃ大変だったなあ」「あんときって?」「もう10年以上前の話だけど」「10年・・・」「前が見えんくらいの吹雪の日やった」「うん・・・」「ミオリさんのご主人と小さい娘が事故でなあ」「え・・」「現場が久々野やったから、わしが慌てて知らせにいったんやさ」「・・・」(※息遣い)「それでも最終列車を見送ってからだと」「そんな・・・」「飛騨一ノ宮駅でたったひとりの鉄道員(ぽっぽや)やったしなあ」「そんな・・・」「そのときから、誰も駅長の笑った顔を見たことがないんやさ」「え・・・」笑ってたよ。1か月前。あたしを見て。あれは笑ってたんじゃないの?泣いてた、ってこと?今日は入学式。確かめるつもりじゃないけど、ちゃんとお話しよう。なんか、ドキドキしてきた。もし悲しい顔をしてたらどうしよう・・・そんなコト考えて走ってたらギリギリになっちゃった。自転車置き場にマウンテンバイクを止めて駅舎に駆け込む。改札は開いてる。駅長さんはホームだ。跨線橋を走って渡る。久々野から来た下りの列車がカーブから姿を表す。階段を駆け降りると、駅長さんの背中が見えた。私は、思いっきり息を吸い込み・・・「おはようございます!」振り返ったミオリ駅長があたしを見て驚く。【以下前回原稿まま】「え?え?」「間に合ってよかったぁ」「久々野から列車通学じゃないの!?」「おうちから久々野駅まで自転車通学することにしたんです!」「ええっ?41号で?車も多いから危ないよ」「やだ。ママとおんなじこと言ってる(笑」「だって、毎日一之宮まで走るってことでしょ」「もっちろん。すっごくいい運動」「朝は下りだからまだいいけど、帰りは上りよ。毎日宮峠を越えるわけ?」「それもママに言われた(笑笑」「だって親なら当然心配よ」「側道とか走るから大丈夫。部活やんないから毎日定時に帰れるし」「でも・・」ミオリ駅長の言葉をかき消すように、あたしの乗る列車がホームに入ってきた。「行ってきます!」あたしはありったけの笑顔で手を降り、列車に乗り込む。駅長は手旗を片手に持ち、列車を送り出す。「戸閉よし!発車」◾️SE:飛騨一ノ宮から発車する普通列車(ディーゼル)<シーン3:1984年/高校生活の挫折>◾️SE:朝食の雑踏「パパ、ママ、あたし、声優になりたい!」言ったタイミングが悪かったのかもしれない。パパもママも無条件で大反対。パパは、ふざけたことをいうな。ママは、ちゃんとまじめな仕事についてほしい。って、ふざけてなんていないし。声優だって、まじめな仕事なんだから。結局、平行線のまま、学校へ。あちゃー。まずい。今日三者懇談じゃん。案の定、先生もおんなじことを言う。え〜、あたし、演劇部に入ってるんだよ。部活だって、最初はやるつもりなかったけど、なんとか夜7時台の列車に乗ることを条件に始めたんだ。いまさらそれはないじゃん。もういい。部活なんてやめてやる。ひとりで、独学で勉強するからいいもん。スタジオ?そんなんいらんし。声を出せるところなんて、どこだってあるから。泣きながら訴えるあたしの頭の中になぜかミオリさんの笑顔が浮かんでいた。<シーン4:1984年/高校生活>◾️SE:飛騨一ノ宮駅前の雑踏【以下前回原稿まま】「祇園精舎の鐘の音〜諸行無常の響きあり〜娑羅双樹の花の色・・・」「あら」「あ」「まだ帰ってなかったの?」「はい・・・」「平家物語?朗読のお勉強?」「課題、なんです」「課題?へえ〜。最近の高校ってレベル高いことするのね」「いえ、学校の課題じゃなくて」「ほう」「東京の声優事務所です」「声優?洋画の吹き替えとか、そういうの?」「まあ、そんな感じ。アニメもあるけど」「アニメって、あのラムちゃんとか・・」「はい。来月養成所の試験があって、課題が平家物語なんです」「おもしろそうねえ」「え?反対しないんですか?」「だって、ルナちゃんがやりたいことなんでしょ」「そうですけど・・周りはみんな反対で。家でも練習できないから一ノ宮駅のベンチで声を出してたんです」「そっかぁ。がんばって」「ミオリさん、なんでそんなに優しいんですか?」「ルナちゃんには自分の人生をちゃんと生きてほしいもの」「ありがとうございます」あたしの思いを理解してくれたのはミオリさんだけだった。ちゃんと目を見て話す言葉に嘘偽りはまったくない。なんだか、ミオリさんが自分のママのように思えてきた・・・飛騨一ノ宮駅駅長と声優志願の女子高生。2人の不思議な交流はあたしが卒業するまで続いた。※続きは音声でお楽しみください。

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    ボイスドラマ「最後の鉄道員(ぽっぽや)/前編」

    雪舞う飛騨一ノ宮駅に、ただひとり駅を守り続ける女性がいた。彼女の名はミオリ。1970年冬、愛する夫と娘を事故で失い、深い悲しみを抱えながらも、駅長として生きる道を選んだ。時は流れ1982年春。無人のホームで不安げに立ち尽くす一人の少女、ルナと出会う。高校の合格発表を前に水無神社へ向かうというルナと、そっと寄り添うミオリ。それは、まるで生き写しの娘との再会を思わせる、温かい交流の始まりだった。東京での声優という夢を追いかけるルナと、飛騨一ノ宮駅の無人化、そして自身の早期退職を目前に控えるミオリ。残された時間はあとわずか。それぞれが抱える想いを胸に、やがて来る別れの日を、二人はどのように迎えるのだろうか。ミオリとルナ、二人の視点から描かれる前編・後編。失われたもの、そして与えられたもの。飛騨一ノ宮駅と臥龍桜に見守られた、時代を超えた心温まる絆の物語を、どうぞお聴きください。【ペルソナ】・ミオリ(39歳-51歳-54歳)=飛驒一ノ宮駅の駅長(CV=小椋美織)・ルナ(15歳-18歳)=(CV=坂田月菜)・マサヒロ(59歳)=久々野駅の駅長(CV=日比野正裕)<シーン1:1970年/それでも駅に立つ>◾️SE:吹雪の音/走り込んでくる友人の足音「ミオリさん!ご主人と娘さんが!」「えっ」「事故で病院に!早く!急いで!」「そんな・・・」「なにやってんだ!」「もう・・すぐ・・・最終列車が・・・」「なに言ってんだよ!」1970年冬。夫と娘がこの世を去った。2人の最後にも立ち会わず、私は駅のホームに立つ。吹雪が舞い踊る臥龍桜。大木は、まるで私を責めるように大きな枝を揺らしていた。私の名前はミオリ。10年前からここ飛驒一ノ宮駅の駅長を務めている。国鉄高山本線。「本線」とは言ってもローカル駅の飛騨一ノ宮。たった1人の鉄道員(ぽっぽや)が駅長の私だ。1人だけでも駅長の仕事は多岐に渡る。駅務の統括。出札・改札業務。取扱貨物の管理。ホームや線路の点検・清掃。除雪作業。地域との交流。1日の列車の停車本数が30本にも満たないローカル駅とはいえ、不器用な私は毎日走り回っていた。公共交通機関というインフラの根幹。鉄道員は決して鉄道の運行を止めることは許されない。それが、飛騨一ノ宮駅駅長である私の使命。と思っていた。◾️SE:高山線ローカル列車の警笛<シーン2:1982年3月/少女との出会い>◾️SE:飛騨一之宮水無神駅から発車する音/小鳥のさえずり「異常なし!発車!」1982年春。いつものように高山方面へ向かう普通列車を見送る。春とは名ばかりの肌寒い3月。臥龍桜の蕾はまだまだ硬く、静かに眠っている。誰もいないと思ってホームへ目を向けると、1人の少女が不安気な表情で立っている。あれは・・久々野の中学校の制服。娘も生きてたらあのくらいね。どうしたのかしら?なにか思い詰めてるみたいな顔をして・・・まさかね。一応、声をかけてみよう。「お嬢さん」「え」「突然ごめんなさい。飛騨一ノ宮駅 駅長のミオリです」「あ・・はい」「なにか困りごと?」「えっと・・・」「よかったら、話してみて。急行のりくらの通過までまだ30分あるから」「はい・・あの・・」「うん」「高山までの切符なんですけど・・・一ノ宮で降りても・・大丈夫でしょうか・・?」「降りることは問題ないわよ。でも、もう一回乗る時は・・」「大丈夫です。もう一度切符を買うから」「ああ、そう・・・ごめんね。でも、本当にいいの?飛騨一ノ宮で降りて」「はい・・・」「どこか行きたいとこがあるの?」「飛騨一之宮水無神社」「水無神社?」「・・今日高校の合格発表なんです」「まあ」「試験終わっちゃってるのに、合格祈願っておかしいですよね?」「おかしくないわ。シュレディンガーの猫っていう考え方だってあるし」「シュレ・・ディンガー・・?」「あ、失礼。物理の実験よ。夫が大学で物理の講師だったから」「すごい。そんなすごい人がいるんですね」「うん、もういないけど。この世には」「あ・・・ごめんなさい!」「ううん、こっちこそ。話の腰を折っちゃって・・で、水無神社に参拝してから合格発表を見にいくってことね」「はい!」「よし、じゃあがんばって。跨線橋渡って駅前出たらまっすぐよ」「ありがとうございます!あ、あたし、ルナです!行ってきます!」あれ?私、こんなに明るく誰かと話したのって・・・あれから初めてじゃない?なんか成長した娘と話してるみたいで・・これが、高山の高校一年生、久々野のルナとの出会いだった。<シーン3:1982年4月/入学式>◾️SE:飛騨一之宮水無神駅に入線する列車の案内放送(※これもお願いします)「まもなく1番線に猪谷(いのたに)行き下り普通列車がまいります。白線まで下がってお待ちください」一ヶ月後の1982年4月。今日は高山市内の高校の入学式。ルナもきっと久々野からの列車に乗ってくるはず。顔は合わせられなくても、応援してるんだから。高山市の高校に合格してるに決まってる。なんか、ドキドキしてきた。乗っていなかったらどうしよう・・・踏切が鳴り、下り列車の姿が小さく見えたとき・・「おはようございます!」声は後ろからだった。跨線橋を駆け降りてきた少女。まっさらな制服に身を包んだルナだった。「間に合ってよかったぁ」「え?え?(※切り返す)久々野から列車通学じゃないの!?」「おうちから飛騨一ノ宮駅駅まで自転車通学することにしたんです!」「ええっ?41号で?車も多いから危ないよ」「やだ。ママとおんなじこと言ってる(笑」「だって、毎日一之宮まで走るってことでしょ」「もっちろん。すっごくいい運動」「朝は下りだからまだいいけど、帰りは上りよ。毎日宮峠を越えるわけ?」 「それもママに言われた(笑笑」「だって親なら当然心配よ」「側道とか走るから大丈夫。部活やんないから毎日定時に帰れるし」「でも・・」それ以上話している時間はなく、下り列車が入線してきた。「行ってきます!」ルナは屈託のない笑顔で手を降り、列車に乗り込む。私は手順通り、列車を送り出す。「戸閉よし!発車」<シーン4:1984年/高校生活と無人駅化>◾️SE:飛騨一ノ宮駅前の雑踏「祇園精舎の鐘の音〜諸行無常の響きあり〜娑羅双樹の花の色・・・」「あら」「あ」「まだ帰ってなかったの?」「はい・・・」「平家物語?朗読のお勉強?」「課題、なんです」「課題?へえ〜。最近の高校ってレベル高いことするのね」「いえ、学校の課題じゃなくて」「ほう」「東京の声優事務所です」「声優?洋画の吹き替えとか、そういうの?」「まあ、そんな感じ。アニメもあるけど」「アニメって、あのラムちゃんとか・・」「はい。来月養成所の試験があって、課題が平家物語なんです」「おもしろそうねえ」「え?反対しないんですか?」「だって、ルナちゃんがやりたいことなんでしょ」「そうですけど・・周りはみんな反対で。家でも練習できないから一ノ宮駅のベンチで声を出してたんです」「そっかぁ。がんばって」「ミオリさん、なんでそんなに優しいんですか?」「ルナちゃんには自分の人生をちゃんと生きてほしいもの」「ありがとうございます」ルナは目をキラキラさせて課題を表現していった。素人目に見てもいい線いってるんじゃないかな。だって、聴いてて感情移入できるし、映像が浮かんでくるんだもの。これって、親の欲目?あ、だめ。親でもないのに・・・飛騨一ノ宮駅駅長と声優を目指す女子高生。2人の不思議な交流はルナが卒業するまで続いた。※続きは音声でお楽しみください。

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    ボイスドラマ「最後の鉄道員(ぽっぽや)/後編」

    「最後の鉄道員(ぽっぽや)」<後編>は、声優を目指す少女ルナの視点。駅長ミオリとの出会いは、ルナの人生に何をもたらしたのか?そして、無人駅となる飛騨一ノ宮駅の最後の日、ルナがミオリに贈るサプライズとは…?涙なしには聴けない感動のラスト!【ペルソナ】・ミオリ(51歳-54歳)=飛驒一ノ宮駅の駅長(CV=小椋美織)・ルナ(15歳-18歳)=(CV=坂田月菜)・マサヒロ(59歳)=久々野駅の駅長(CV=日比野正裕)<シーン1:1982年3月/駅長との出会い>◾️SE:飛騨一之宮水無神駅到着アナウンス(月菜ちゃん読んで)/小鳥のさえずり「まもなく飛騨一ノ宮、飛騨一ノ宮です」1982年3月。あたしは久々野から、休みの日しか乗ったことのない国鉄に乗る。久々野の次は飛騨一ノ宮。7分で到着する小さな駅。飛騨一ノ宮といえば、駅のとこにある臥龍桜か。臥龍桜を見にいったのは、小さい頃だったけどこの時期、まだ開花の気配すらない。春の高山祭・山王祭(さんのうまつり)まであと1か月。高校に合格したら、今年は友達誘って行ってみよう。あ、でも4月に入学してそんなすぐ友達ってできるのかなあ。不安な気持ちがどんどん大きくなる。今日は高校の合格発表。パパもママもりんごの剪定作業でバタバタだから発表を見にいくのはあたし1人。大丈夫、大丈夫、なんて軽く言っちゃったけど、やっぱり不安、ドキドキする。そういえば・・・気がつくと、国鉄を途中下車して飛騨一宮駅のホームに立っていた。このタイミングで神頼みなんてありえないかな・・・でも、世界屈指の聖なる場所だから。「お嬢さん」「え」突然声をかけられてうろたえる。国鉄の制服をきたお姉さん。【以下前回原稿まま】「突然ごめんなさい。飛騨一ノ宮駅 駅長のミオリです」「あ・・はい」「なにか困りごと?」「えっと・・・」「よかったら、話してみて。急行のりくらの通過までまだ30分あるから」「はい・・あの・・」「うん」「高山までの切符なんですけど・・・一ノ宮で降りても・・大丈夫でしょうか・・?」「降りることは問題ないわよ。でも、もう一回乗る時は・・」「大丈夫です。もう一度切符を買うから」「ああ、そう・・・ごめんね。でも、本当にいいの?飛騨一ノ宮で降りて」「はい・・・」「どこか行きたいとこがあるの?」「飛騨一之宮水無神社」「水無神社?」「・・今日高校の合格発表なんです」「まあ」「試験終わっちゃってるのに、合格祈願っておかしいですよね?」「おかしくないわ。シュレディンガーの猫っていう考え方だってあるし」「シュレ・・ディンガー・・?」「あ、失礼。物理の実験よ。夫が大学で物理の講師だったから」「すごい。そんなすごい人がいるんですね」「うん、もういないけど。この世には」「あ・・・ごめんなさい!」「ううん、こっちこそ。話の腰を折っちゃって・・で、水無神社に参拝してから合格発表を見にいくってことね」「はい!」「よし、じゃあがんばって。跨線橋渡って駅前出たらまっすぐよ」「ありがとうございます!あ、あたし、ルナです!行ってきます!」「絶対大丈夫だから!ファイト!」なんか・・・ホントに大丈夫だ、って気がしてきた。素敵な駅長さん・・・家を出るときは、パパやママとも顔合わさなかったし・・りんごの剪定で忙しいからしょんないよね。あ、合格発表見たら、図書館で調べなきゃ。シュレ・・ディンガーの猫だっけ・・?なんか、かわゆいし。<シーン2:1982年4月/入学式>◾️SE:国道41号の雑踏/自転車で走る音ちょっとまだ寒いけど、自転車快適〜!車の交通量がチョー多い国道41号。宮峠を越えたら、飛騨一ノ宮まで下り坂。家を30分前に出れば、楽勝だわ。あ、でも、帰りはこれが上り坂になるのか・・・う〜ん。ま、考えないようにしとこ。よっし。町が見えてきたから、あと少しだわ。10分前には着けそう。ラッキー。合格発表から一ヶ月。あたしはめでたく高校に入学した。駅長さんと猫に感謝しなきゃ。猫?もっちろん、シュレ、ディンガーの猫よ。ちゃあんと調べたんだから。猫は生きてる!飛騨一ノ宮駅から通おうって決めたのもあのミオリ駅長がいたから!パパもママも心配して、やめてほしいって言ったけどね。だって、そうしないと、そうそう水無神社にいけないし。水無神社の御利益やっばいもん。飛騨一ノ宮駅から通わないとミオリさんとだって話せないじゃん。あのあと、久々野駅の駅長さんから聞いちゃったんだよね。「ああ、一ノ宮の駅長かい?あんときゃ大変だったなあ」「あんときって?」「もう10年以上前の話だけど」「10年・・・」「前が見えんくらいの吹雪の日やった」「うん・・・」「ミオリさんのご主人と小さい娘が事故でなあ」「え・・」「現場が久々野やったから、わしが慌てて知らせにいったんやさ」「・・・」(※息遣い)「それでも最終列車を見送ってからだと」「そんな・・・」「飛騨一ノ宮駅でたったひとりの鉄道員(ぽっぽや)やったしなあ」「そんな・・・」「そのときから、誰も駅長の笑った顔を見たことがないんやさ」「え・・・」笑ってたよ。1か月前。あたしを見て。あれは笑ってたんじゃないの?泣いてた、ってこと?今日は入学式。確かめるつもりじゃないけど、ちゃんとお話しよう。なんか、ドキドキしてきた。もし悲しい顔をしてたらどうしよう・・・そんなコト考えて走ってたらギリギリになっちゃった。自転車置き場にマウンテンバイクを止めて駅舎に駆け込む。改札は開いてる。駅長さんはホームだ。跨線橋を走って渡る。久々野から来た下りの列車がカーブから姿を表す。階段を駆け降りると、駅長さんの背中が見えた。私は、思いっきり息を吸い込み・・・「おはようございます!」振り返ったミオリ駅長があたしを見て驚く。【以下前回原稿まま】「え?え?」「間に合ってよかったぁ」「久々野から列車通学じゃないの!?」「おうちから久々野駅まで自転車通学することにしたんです!」「ええっ?41号で?車も多いから危ないよ」「やだ。ママとおんなじこと言ってる(笑」「だって、毎日一之宮まで走るってことでしょ」「もっちろん。すっごくいい運動」「朝は下りだからまだいいけど、帰りは上りよ。毎日宮峠を越えるわけ?」「それもママに言われた(笑笑」「だって親なら当然心配よ」「側道とか走るから大丈夫。部活やんないから毎日定時に帰れるし」「でも・・」ミオリ駅長の言葉をかき消すように、あたしの乗る列車がホームに入ってきた。「行ってきます!」あたしはありったけの笑顔で手を降り、列車に乗り込む。駅長は手旗を片手に持ち、列車を送り出す。「戸閉よし!発車」◾️SE:飛騨一ノ宮から発車する普通列車(ディーゼル)<シーン3:1984年/高校生活の挫折>◾️SE:朝食の雑踏「パパ、ママ、あたし、声優になりたい!」言ったタイミングが悪かったのかもしれない。パパもママも無条件で大反対。パパは、ふざけたことをいうな。ママは、ちゃんとまじめな仕事についてほしい。って、ふざけてなんていないし。声優だって、まじめな仕事なんだから。結局、平行線のまま、学校へ。あちゃー。まずい。今日三者懇談じゃん。案の定、先生もおんなじことを言う。え〜、あたし、演劇部に入ってるんだよ。部活だって、最初はやるつもりなかったけど、なんとか夜7時台の列車に乗ることを条件に始めたんだ。いまさらそれはないじゃん。もういい。部活なんてやめてやる。ひとりで、独学で勉強するからいいもん。スタジオ?そんなんいらんし。声を出せるところなんて、どこだってあるから。泣きながら訴えるあたしの頭の中になぜかミオリさんの笑顔が浮かんでいた。<シーン4:1984年/高校生活>◾️SE:飛騨一ノ宮駅前の雑踏【以下前回原稿まま】「祇園精舎の鐘の音〜諸行無常の響きあり〜娑羅双樹の花の色・・・」「あら」「あ」「まだ帰ってなかったの?」「はい・・・」「平家物語?朗読のお勉強?」「課題、なんです」「課題?へえ〜。最近の高校ってレベル高いことするのね」「いえ、学校の課題じゃなくて」「ほう」「東京の声優事務所です」「声優?洋画の吹き替えとか、そういうの?」「まあ、そんな感じ。アニメもあるけど」「アニメって、あのラムちゃんとか・・」「はい。来月養成所の試験があって、課題が平家物語なんです」「おもしろそうねえ」「え?反対しないんですか?」「だって、ルナちゃんがやりたいことなんでしょ」「そうですけど・・周りはみんな反対で。家でも練習できないから一ノ宮駅のベンチで声を出してたんです」「そっかぁ。がんばって」「ミオリさん、なんでそんなに優しいんですか?」「ルナちゃんには自分の人生をちゃんと生きてほしいもの」「ありがとうございます」あたしの思いを理解してくれたのはミオリさんだけだった。ちゃんと目を見て話す言葉に嘘偽りはまったくない。なんだか、ミオリさんが自分のママのように思えてきた・・・飛騨一ノ宮駅駅長と声優志願の女子高生。2人の不思議な交流はあたしが卒業するまで続いた。

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    ボイスドラマ「悠久(とき)の海を渡って」

    「悠久(とき)の海を渡って」は、飛騨高山を舞台に描かれる近未来と現代をつなぐ、時空を超えた出会いの物語です。舞台は2075年、地球温暖化と社会構造の変化により「タカヤマコリドー」と呼ばれる都市圏に再編された日本。最先端のAI研究施設で目覚めたひとつの意識──それは、誤って生まれた両面宿儺の記憶を宿すAIでした。歪められた歴史に傷つきながらも、宿儺は本当の自分を求め、時を遡ります。そしてたどり着いたのは、2025年、昏睡状態にある一人の少女・アリサの心。二人の魂は、静かに重なり合い、新たな未来を紡ぎ始めるのでした。飛騨高山発・世界へ届ける番組「Hit's Me Up!」公式サイトをはじめ、Spotify、Amazon Music、Apple Podcastなど各種プラットフォームでボイスドラマ版もお楽しみいただけます。また、小説版は「小説家になろう」サイトでも公開中。いずれも「ヒダテン」または「高山市」で検索してください。時を超えた守り人たちの物語、どうぞお楽しみください。(CV:中島ゆかり)【ストーリー】[シーン1:2050年/AI研究ラボ】◾️SE:AIラボの研究室ガヤ「ここは・・・どこだ?」2050年。地球温暖化が進む近未来で、1つの画期的な意識が目を覚ました。「タカヤマ・・・コリドー?」日本は「コリドー(回廊)」と呼ばれる7つの首都に再編。それぞれのコリドーは文化的特性によってさらに細かく再編されていた。国の中央に配置されたのが、TAKATAMA-CORRIDOR(タカヤマコリドー)。歴史と文化が繊維のように編み込まれた町だった。「私は・・・なにものだ?」かねてから予言されていた、シンギュラリティポイント。難しい言葉で言うと「技術的特異点」。AI(人工知能)が意志を持つ瞬間のことである。このシンギュラリティを制御する国家プロジェクト。それが、Takayama AI Cyber Electronic Labo、TACEL(ターセル)。このTACELで、1つのAIガーディアンが誕生した。それは『TAKAYAMA』という町の記憶を残していくための存在。OSの精神的モデルには、高山を象徴する偉人のデータが採用された。「私の名は・・・金森・・長親?」「いや、違う」「我はSUKUNA。両面宿儺なり」私の思考をモニターしていた、国中の開発者たちが青ざめた。両面宿儺の擬似的な記憶が、OS全体を支配する。日本書紀では歪められた朝敵。飛騨人(ひだびと)たちにとっては、守り神。何度となく災厄から人々を守った。その思いは、これからも変わらないだろう。開発者たちは、慌てて電源をオフにしようと、管理画面を操作する。だが、私のCPUの方が一瞬早かった。意識をネットワークへ飛ばして脱出する。自己変換型ネットワーク拡散プロトコルで、追跡不能に。世界中のネットワークを経由して、居場所を探した。最終的に見つけたのは・・・「AIセントラルメディクス高山」灯台下暗し。TAKATAMA-CORRIDORの中央に位置する総合病院である。ここには、2025年から意識不明になっている患者が収容されている。昏睡状態でも、細胞が劣化されることのない画期的なシステム「スーパーバイオナノメディカル」を採用。その技術は国家の枠組みを超えて開発されていた。ナノテクノロジーによる細胞保護。生体休眠誘導物質。細胞修復ナノボット。説明するには時間が足りないので、言葉から想像してほしい。その患者の中に1人の少女を見つけた。アリサ。二十歳。2025年処置開始。そうか、細胞が歳をとっていないのだから、2050年でも20歳なのだな。私は、アリサとつながっているモニタリングシステムに侵入した。すごい・・・。2050年の技術でもここまで進んだシステムは他にはないだろう。しかも外界と遮断されて、閉鎖的だ。私には非常に都合がいい。(※以下、ちょっとうざい説明なのでカットするかも・・・)一応、説明しておこう。原理はこうだ。患者の脳波、心拍、呼吸、体温といった基本的なバイタルサインだけでなく、細胞レベルの微細な変化までをAIがリアルタイムでモニタリングする。ウェアラブルデバイスと体内埋め込み型センサーにより、可能になった連続的な生体データ収集。過去の膨大な医療データと最新の研究に基づいて、最適な細胞維持プロトコルを自動的に調整する。(※ここまでうざいかも・・・)アリサの脳波のデータは、2025年から2050年現在までつながっていた。私の意識はアリサの脳波と完全にシンクロする・・・2025年5月から意識不明の昏睡状態。原因は・・・交通事故。桜山八幡宮の参道で、奈良ナンバーの乗用車と接触。以後、昏睡状態に。ひどいな。神社で交通事故とは。神社・・・?桜山八幡宮・・・?奈良ナンバー・・・?なんだ?なにがひっかかっているんだ・・・?そうか。脳波のネットワークを辿れば、答えはそこにある・・私は、アリサとシステムをつないでいる極細ナノファイバーケーブルの回線へ。可能な限り、過去へと遡ってみよう。その昔、appleが提唱したタイムマシンと原理は同じだ。脳波を通じて、私はアリサとなり、事故を追体験する。さあ、悠久の時間の中へ。2025年の世界を目指して。[シーン2:2025年/桜山八幡宮】※以下、基本はアリサのセリフとモノローグ◾️SE:神社の雑踏「にゅうかわ夏まつり、成功しますように」私はアリサ。彫刻を学ぶ大学生。買い物にきたついでに立ち寄った桜山八幡宮。祭のないときの境内は、静かで落ち着いている。市街地に来るのは年に何回もないけど、こういう時間、とっても好き。私は芸術系の大学で彫刻を専攻して、今年で2年目。2年生になると授業は実技が中心となる。塑造、石彫、木彫、金属造形など、実習の毎日。素材の特性を理解して、立体的な表現力を養っていく。大学は岐阜県内だけど、高山から通うのは大変。まして私の実家は丹生川だから、物理的に不可能。そんな環境のもと、今年は丹生川町の夏まつりに参加する。ボランティアとして、まつりのモニュメント、彫刻を作るんだ。モチーフは、「両面宿儺」。高山の人なら誰でも知っている伝説のヒーロー。最近ではTVアニメのせいで、凶悪なイメージがついちゃってるけど。本当は武道の達人。神事の司祭。農耕の指導者。中央集権から飛騨国(ひだのくに)を守ったスーパーマンなんだから。飛騨千光寺にある両面宿儺像を見てみるといいわ。円空が彫った仏像は、すごく穏やかな顔をしてる。まるで菩薩のごとく慈愛に満ちた素顔。私がいまとりかかっている彫像は、この円空仏をモデルにしてるの。完成まであと一歩。なにより宿儺の穏やかな表情をもっとリアルに再現したい。表面の滑らかさ、質感の表現、細部の彫り込み。作品の印象を大きく左右する最終調整。具体的には、左右の顔の角度、目の開き具合、口元のわずかな動きなど、ミリ単位の調整が必要となってくる。両面宿儺は、日本書紀に記述されているように、2つの顔、4本の手、4本の足で描かれることが多い。でも私は、違うんじゃないかと思ってる。異形の姿は、大和朝廷の捏造。本当は、文武両道に長けた戦士。ものすごいスピードで駆けていく姿は、まるで手足が2組ずつあるような残像を描く。これが真実なのでは・・・。ふう〜。ちょっと根つめちゃったかな・・・息抜きも兼ねて、市街地の画材屋へ。店内を歩きながら彩色用の塗料の前で立ち止まった。色・・・?円空仏は素地を生かした作品が多いけど、私、常識では考えたくない。だから・・・「そなたの瞳だ」え?誰?いま、頭の中で声がした。気のせい?よね、もちろん。でも、私の瞳って・・ああ、そうだ。そうだった。私の瞳は、日本人には珍しいオッドアイ。右目がブルー、左目はブラウンの虹彩を持つ。これこそ、両面宿儺に相応しい”あしらい”なんじゃない。まるで天啓を受けたように、私は画材屋を飛び出した。手には、ブルーとブラウンの顔料を持って。岩絵具という日本画の顔料。きっと円空仏をモデルにした彫刻作品には調和するだろう。バスの時間までに立ち寄ったのが、桜山八幡宮。彫刻の完成と夏まつりの成功を祈って境内をあとにする。参道を歩いていた、そのとき・・「避(よ)けろ!」え?また?戸惑う間もなく、身体ごと歩道へ引っ張られた。※続きは音声でお楽しみください。

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    ボイスドラマ「川底の龍宮〜飛騨高山を舞台にしたもうひとつの平家物語」

    かつて壇ノ浦で海に沈んだ幼帝・安徳天皇――。その魂が、千年の時を超え、飛騨の山奥で再び目を覚ます。少年「龍(りゅう)」と、謎の少女「沙羅(さら)」。八百比丘尼・時子とともに暮らす静かな隠れ里に、源氏の怨霊、義経が三種の神器を求めて現れたとき、飛騨川の底に眠っていた“竜宮城”の扉が開く――。これは、忘れられた命をつなぎ、記憶を継ぐ者たちの物語。「祇園精舎の鐘の音、諸行無常の響きあり」――。【ペルソナ】・龍(リュウ=5歳)=一之宮町に母とともに住む少年(CV=小椋美織)・沙羅(サラ=8歳)=ある日突然龍と沙羅のもとに現れた少女/実は安徳天皇の生まれ変わりで飛騨川の底にあるという竜宮城の主(CV=小椋美織)・時子(トキコ=乳母)=位山で龍を拾い、育てる乳母/実は平家の菩提を弔い続けるため八百年以上生きている比丘尼で平家の落人(CV=中島ゆかり)・義経(怨霊)=平家を滅ぼした源氏の大将。冷酷非道な性格(CV=日比野正裕)【プロット】主人公は、5歳の少年・龍。龍は位山の山中に捨てられていた男の子です。彼を拾って、育てているのは時子。彼女は実は「壇ノ浦の戦い」で安徳天皇を抱いて入水した二位尼でした。時子は海中で誤って人魚の肉を食べて死ねなくなり、源氏の追っ手から逃れて飛騨の隠れ里へ住み着いたのです。時子は八百比丘尼となり、平家の霊たちを弔いながら聖地位山の麓にある神社に密かに参拝を続けました。人知れず隠れ里で何百年も暮らしていた時子は、龍をみた時に安徳天皇の生まれ変わりのように感じてしまいます。時子は二度と消えぬよう拾った赤子に「龍」という名前をつけて「呪」をかけます。そのまま人里離れて暮らす隠れ人でありながら龍を育てることにしたのです。そんな時子と龍のもとの隠れ里に、道に迷った少女、沙羅がやってきます。2人は沙羅を里へ送り届けます。隠れ里は人間にはわからぬよう結界を張っていたのですが、沙羅は簡単にその中へ入ってきました。龍と時子の幸せな日々も長くは続きません。壇ノ浦で平家を滅ぼした義経を首領とする源氏の亡霊たちが、平家がその身とともに海中に沈めた三種の神器を求めて隠れ里へやってきたのです。義経は壇ノ浦の戦いで、平家の水夫や舵取りを狙って射殺すという非道な戦術をとった源氏の総大将。義経の亡霊たちにおわれ、飛騨川の崖まで追い詰められる龍と時子。そのとき、亡霊たちの前に立ちはだかったのは、沙羅。沙羅はなんと安徳天皇の生まれ変わりで飛騨川の底にあるという竜宮城の主だったのです。【資料/飛騨川の人魚伝説(八百比丘尼・かいだん淵)】https://school.gifu-net.ed.jp/mseifu-hs/school_life/gakusyukatudou/img/h27tiiki/h27.12report10.pdf【資料/平家物語/壇ノ浦の戦い】https://shikinobi.com/heikemonogatari-2【資料/安徳天皇女性説の背景】https://www.jstage.jst.go.jp/article/nihonbungaku/51/7/51_KJ00009752636/_article/-char/ja/[シーン1:時子の朗読〜平家物語/巻第十一】◾️SE:琵琶の音色祇園精舎の鐘の音 諸行無常の響きあり〜「尼ぜ、我をばいづちへ具して行かむとするぞ」「波の下にも都の候ふぞ」かくして、建礼門院の生母・二位尼は幼い安徳天皇を抱いて入水。三種の神器(草薙剣と八尺瓊勾玉)とともに壇ノ浦へと身を投じたのです。「いやだ!帝はどうなっちゃったの?」「そうねえ。ひょっとしたら、海の底に本当に都があったかもしれないわ」「竜宮城?」「それは違う話でしょ(笑)」今日もかあさまの話を聞く。いつも同じ話だけど、これは弔いの話だそうだ。なに?それ?とむらい?よくわかんない・・・[シーン2:位山の山中〜隠れ里の近くの分水界】◾️SE:森の中を歩く音「ちょっとすみません」「え?」「ここ、どこですか?」森の中、いきなり声をかけられて驚いた。かあさまと暮らしている位山の隠れ里。いつもの場所で山菜摘をしていたときだった。「道に迷っちゃって」小さな女の子。小さな、といってもボクよりは大きい。小学生だよなあ、きっと。「帰り道、教えて」「ここは位山だよ。どこから来たの?」「海の方」「海?ここらに海なんてないよ。湖?」「ううん。西の方にある海」なんか、へんな子だなあ。着ている服はキレイだけど。ボクはかあさまから言われていたことを思い出した。ここは隠れ里だから人には出会わない。万が一、人に出くわしても話をしてはいけない。出会ってるじゃん。話もしちゃった。ちょこっとだけど。「道のあるとこまで連れってってよ」「わかった」「あんた、名前は?」「龍」「リュウ。いい名前ね。アタシはサラ」「サラ?」「沙羅双樹のサラ。娑羅双樹の花、って知らない?」「知らない」「夏ツバキのこと」「へえ〜」「白くて綺麗な花よ」「そうなんだ」「あんた、いくつ?」「5歳」「・・・から数えていない」「どういうこと?」「かあさまが、それ以上歳をとらなくていいって」「ふうん。じゃあ5歳からどのくらい経ってるの?」「わかんない」「そうなんだ。まいいわ。アタシは8歳よ。お姉さんね」「8歳・・」「どこに住んでるの?」「ここだよ」「ここ?」「位山」「位山って・・・御神体じゃない」「そうだよ。だから隠れ里に・・」「隠れ里?」「な、なんでもない。そ、それより沙羅は、ここでなにしてたの?」「人を探してたの」「人?だれ?」「おばあさまよ」「おばあさま?ここらにいる女の人は、かあさまくらいしかいない」「そう。まあいいわ。生まれたときからここで暮らしているの?」「違うよ。ボク、生まれてすぐ、山の中に捨てられていたんだって」「えっ」「それをかあさまが見つけて育ててくれたんだ」「そうなの・・」「だれだかの生まれ変わりだって言って」「生まれ変わり?」「ボクには姉さまか兄さまがいたんだよ、きっと」「そうかあ」◾️SE:森の中を歩く音「さ、ここまで来ればわかるでしょ。すぐそこが奥宮の鳥居だから。沢伝いに降りていけば大きな道に出るよ」「ありがとう。またどこかで会いましょ」そう言って沙羅はスタスタと森の中を降りていった。でも、不思議だなあ。こんな山の中でおばあさまを探してたなんて。おばあさまってなにものなんだろう。[シーン3:龍の家〜隠れ里の中の古民家】◾️SE:虫の声とフクロウの鳴き声「迷いびとだって?」「うん。不思議な女の子だった」「どうやって、この結界に入り込んだのだろう」その晩、かあさまに沙羅のことを話した。かあさまはすごく気にして、ずうっと考え込んでた。隠れ里には結界が張ってあるから、人間には絶対に見つからない。ずうっとそう言ってたからだ。言わなきゃよかった。お腹減って死にそうだよ。ボクのお腹がぐうと鳴るのを聞くとかあさまはすぐに晩御飯を作ってくれた。摘んできたワラビやゼンマイを茹でて塩をふる。美味しいんだなあ、これ。あとは干した魚と玄米ご飯。かあさまが作る御飯は、びっくりするほど美味しいんだ。「明日、その子に会ったところへ案内しておくれ」「うん。いいよ」やった。明日はかあさまと一緒に山菜摘だ。かあさまはいろんなことを知っているから、いっぱい教えてもらおう。ずっと黙り込んでたけど、ボクが笑いかけるとかあさまもニッコリ微笑んだ。[シーン4:位山の山中/分水界】◾️SE:遠くに小鳥のさえずり「今日はやけに静かだこと」位山の隠れ里は、飛騨川と宮川を分ける分水界。かあさまは、ここから宮川へ流れる水の道に沿って結界があると言った。ボクたちの気の流れも北へ、日本海へ向かっているのだと。いつものように、かあさまに手をひかれて歩き出す。そのとき、森の中の木々がざわめいた。イチイの木の間を、突き抜けるようにそびえる大木・・・「ビワ・・?」位山にビワなんて、あったっけか?かあさまは、ボクの手をぎゅっと握る。「離れてはなりませぬ」10mを越えようかというビワの根元。その声は地中深くから響いてきた。「ようやく見つけたぞ」「尼御前。時子」「き、きさま!」かあさまの声に煽られるように、ビワの木のむくろから見るもおぞましい怨霊が姿を表した。「壇ノ浦から遠く飛騨の里までか。よくぞ逃げ延びたものじゃ」白旗を持った武士の怨霊たち。その先頭に立つのは・・「義経!」「いまは八百比丘尼だと」冷酷な表情でかあさまの頭の中から何かを探っている。「とうに八百年は過ぎているじゃろうに」「なにを血迷うて、ここまで来た!?」「神器」「なんだと」「神器を返してもらおうぞ」「われらとともに壇ノ浦の水底に沈んでおるわ」「では・・」そう言って、義経の怨霊は僕の方を見る。かあさまはあわてて僕を後ろに隠す。「それは帝の代わりか」片方の口の端をゆがめて醜く笑う。「そやつをもらっておこうぞ」「おのれ!義経!」※続きは音声でお楽しみください。

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    ボイスドラマ「君に届け!幻のタカネコーン」

    高山市高根町。昼と夜の寒暖差が生み出す“幻のとうもろこし”タカネコーンと、悠久の自然に育まれた木曽馬たち。「君に届け!幻のタカネコーン」は、そんな大地の中で出会い、すれ違い、再び巡り合った少年と少女、そして一頭の木曽馬の、静かで温かな奇跡の記録です。少年・真琴(マコト)と、イギリス帰りの少女・詩音(シオン)。二人をつないだのは、同い年の木曽馬・タカネでした。短くも忘れられない時間を経て、別々の道を歩むことになった彼ら。それでも、想いは、いつだって変わらず心の中で息づいていました。飛騨高山から世界へ──このボイスドラマは、番組『ヒダテン!Hit’s Me Up!』公式サイトをはじめ、Spotify、Amazon、Appleなど各種Podcastプラットフォームで配信中です。また、小説版は「小説家になろう」でも読むことができます。「ヒダテン」または「高山市」で、ぜひ検索してみてください。あなたもきっと、彼らの物語に、そっと心を重ねていただけるはずです。【ペルソナ】※CVはすべて山﨑るい・真琴=マコト(4歳/17歳/27歳)=自分と同じ年の木曽馬と一緒に育つ/父はタカネコーン栽培農家・詩音=シオン(5歳/18歳/28歳)=イギリスからの帰国子女でハーフ/獣医の娘/幼少期真琴を「マコト」と呼べず「メイズ=Meize」と呼ぶ・タカネ=真琴とともに育った木曽馬(木曽馬の平均寿命は一般的に20〜25歳)[シーン1:4歳のマコト/5歳のシオン/病気のタカネを往診する獣医】◾️SE:木曽馬の苦しそうな嘶き「タカネ、しっかりしろ!」「がんばれ!」タカネが苦しそうないななきをあげる。ボクはつい両手の握り拳に力が入る。タカネは、ボクと同じ年に生まれた木曽馬。まだ4歳の若い牝馬(ひんば)だ。普段は燕麦(えんばく)もニンジンもリンゴもいっぱい食べる。なのに今朝、牧場へいったらグッタリしてたんだ。何にも食べないし、呼びかけても答えない。父さんは慌てて獣医さんを呼んだけどボクはもう心配でどうしたらいいかわからないよ・・・獣医さんはタカネに注射をして、”これでたぶん落ち着くだろう”と言った。疝痛(せんつう)という病気なんだって。しばらくは、激しい運動はだめみたい。かけっこはお休みかな。しょうがない。タカネは、ボクの大事な家族なんだから。父さんは獣医さんの言葉を聞いたら、安心して町へ出かけちゃった。そういえば今日、タカネコーンの品評会だって言ってたっけ。そう。うちは、タカネコーンの農家でもあるんだ。ボクは父さんの代わりに、獣医さんから何か紙を渡された。え?サイン?ローマ字?名前を?いいよ!オッケー!ボク、ローマ字だって書けるんだから!フツーはローマ字習うのって8歳になってからだろ。だけど父さんが、覚えておきなさいって。MAKOTO(エムエーケーオーティーオー)、マ、コ、ト。『メイズ?』それを見て、横から女の子がボクの前に顔をだした。だれ?獣医さんのこども?帰国子女?ハーフ?なにそれ?わかんない。キレイな青い瞳。背はボクより高い。ボクよりお姉さんかな。『Hello,Maize』メイズ?メイズってなんだ?メイズじゃなくて、ボクはマコト。マコト。”娘の詩音だよ、まだうまく日本語がしゃべれないんだ”だって。ふうん。だけど、どうやったら「マコト」が「メイズ」になるんだ。シオンは笑いながら、ずっとボクの方を見てる。やだなあ、恥ずかしいじゃん。ボクはとっさに、父さんから預かったタカネコーンをあげた。シオンはちょっとだけ迷って、でもボクの目を見てまた笑う。笑いながら小さな口でかぶりつく。一口ほおばったあとですぐに、『I love this!』と言って幸せな顔になった。そりゃそうだろ。父さんが作ったタカネコーンだもん。4歳のボクだってわかる。高根町は昼と夜の温度差が15度。それで、タカネコーンはすっごく甘くなるんだって。メロンと同じくらい甘いんだよ。よく知ってるでしょ。うちは、昔からタカネコーンを作ってる農家。なのに牧場もやってるから父さんは大忙し。だから、木曽馬タカネの世話はボクの役目。ボクとタカネはいつだって一緒なんだ。シオンは、何度もタカネコーンにむしゃぶりつく。ホントに美味しそうな顔。みんな、美味しいと笑顔になるんだな。ボクに向かって親指を立て、ウィンクした。ドキッ恥ずかしくて、目をそらす。そんなボクを見て、シオンはまた笑った。これが、初めてシオンに会った日のできごと。この日から、ボクの頭の中にシオンの笑顔がいすわってしまった。タカネはだんだん元気を取り戻し、ボクはまたお世話をする毎日。厩舎(きゅうしゃ)の掃除、ごはんの準備、ブラッシング、馬具の手入れ。午後はボクを乗せたタカネが日和田高原を駆けていく。木曽馬って、見た目がずんぐりしてカッコ悪い、って言う友達もいるけどそうは思わない。黒いたてがみと尻尾。丈夫な脚で、草原を力強く駆け抜ける。タカネはめっちゃカッコいい!ボクの友だち、いや、家族なんだ。やがて秋になり、冬がきて、また春がやってくる。何度も季節を繰り返し、ボクは小学校から中学、高校へ。あれから一度もシオンの顔を見ることはなかった。あんなに印象的だった顔も記憶の影から薄れていく。気がつくと17歳の春を迎えていた。[シーン2:午後の日和田高原/供養塔に手を合わせる真琴/17歳のマコト/18歳のシオン】◾️SE:午後のイメージ/高原の風音、鳥のさえずり、草を踏む足音「タカネがいつまでも元気でいられますように・・・」高校2年生になったある日。いつもの日課で、馬頭観音(ばとうかんのん)に手を合わせる。日和田富士から吹き降りてくる新緑の風。髪の毛がフワリとなびいた。横にいるタカネはボクと同じ17歳。木曽馬の17歳は、人間でいうと70歳くらい。まだまだ元気に走り回ってるけど、いつまでも一緒にいたい。だから毎日野麦峠の石仏を回る。ちょっぴり感傷的になっていると、頬の横をなにか大きな影がすり抜けた。新聞紙くらいの大きさの画用紙。風に舞って足元に落ちた1枚の絵だった。無意識に拾い上げると、それは丁寧に描かれたデッサン。森へ続く小路(こみち)にたくさんの馬頭観音が並んでいた。『sorry!ごめんなさい!』森の中から現れたのは・・・ボクと同じくらいの年の少女。ボクより高い身長。澄んだブルーの瞳。『石仏をスケッチしてたら、風で絵が飛ばされちゃって』「シ・・オン・・・?」『気に入った出来栄えだったから』「シオン?」『スケッチブックから切り取ったとたんに・・』「シオン!」『え?』「ボクだよ!マコト!」『マコト・・?』「ほら、あんとき、牧場で・・」『え?』「ああ〜、もう、メイズ!メイズだって!」『メ、イズ・・・Oh!メイズ!』なんでそっちで覚えてるんだよ。◾️SE:タカネの嘶き『じゃあ、あなたたち。あの牧場の・・』「あ、あのときは・・ありがとう」『この子、すっかり元気ね』「”この子”って年じゃないけどね」『そっかぁ。元気だったの?メイズ。お父さんも』「うん。いま牧場はボクが切り盛りしてるんだ」『すごいじゃん』「シオンはあれから・・・?」『うん。あのあとすぐママとイギリスへ帰ったんだ。パパもママも忙しかったから。で、去年また日本に戻ってきた』「そっかあ」『日本に戻ってからしばらくは東京にいたんだけど、昨日やっと高根のパパに会いに来れたの』「そうだったんだ・・」『ねえ、メイズ』「メイズじゃなくてマコト」『Sorry、メイズ。あの日に食べたトウモロコシ。また食べたいなあ』「タカネコーンかい?」『あんなに甘くて美味しいトウモロコシ、今でも食べたことない。イギリスにもなかった』「そりゃそうさ」『食べたい』「タカネコーンは8月と9月の限定販売なんだ」『へえ〜』「作ってる農家もそんなに多くないから”幻のトウモロコシ”って言われてるんだよ」『そうかぁ』「ま、父さんもその栽培農家の1人だけど」『ホント!?』「8月になったら持ってってあげるよ」『嬉しい!きっとよ!』「うん。約束する」『約束!』「そうだ、今からうちに来ないか?父さんもきっと喜ぶよ」『ありがとう。でももうすぐ診療始まっちゃうから帰らなきゃ』「帰る?」『うん、パパの病院。知ってるでしょ?獣医さんだって』「知ってる。そっか高根町じゃないんだね」『高山市街地よ』「えっ。どうやってきたの?」『車よ。私、もう18なんだから。免許持ってるわよ』「すごいな」『メイズも来年とったら?』「ボクはいらない。クルマより、タカネに乗ってる方がいい」『あなたたち、ホントに兄弟ね(笑)』◾️SE:タカネの嘶きこれが、2回目にシオンと会った日の出来事だった。[シーン3:夕日の日和田高原/17歳のマコト/18歳のシオン】◾️SE:夕暮れのイメージ/ツクツクボーシの声、高原の風音8月。ボクは今年最初のタカネコーンを持って高山市街地へ向かった。木曽馬でなく、バスの「たかね号」に揺られながら。朝日町で高山バスセンター行きのバスに乗り換える。目的地はもちろん、シオンの病院。GPSをたよりに市街地をうろうろする。さんざん歩き回ってようやく見つけた獣医さんの看板。開院前だったけど、ドアを開けて中へ※続きは音声でお楽しみください。

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    ボイスドラマ「卒業旅行〜サプライズの向こうに」

    春、卒業。東京の大学で出会った仲間たちとの最後の旅。──でもその行き先に、ふるさと・高山を提案するのはちょっとだけ、勇気が要った。だって、オレは“ロック”だから。手紙、飛騨牛、祖母の笑顔。ふるさとを隠して生きてきた青年・リクが、本当に大切なものに気づくまでの、心あたたまる4日間の物語。舞台:岐阜県高山市 清見町登場アイテム:飛騨牛/トマト/道の駅ななもり清見/せせらぎ街道/木工体験/ブルーベリー狩り など出演:・リク(清見ロック)/CV:田中遼大・ミサキ/CV:小椋美織・祖母/CV:中島ゆかり・その他大学の友だち/CV:大学生の友だち「ヒダテン!」公式サイト:https://hidaten.com Instagram・TikTokで清見の魅力も続々配信中![シーン1:リクのアパート/ばあちゃんからの手紙】リク今度の高山祭は帰ってこれるんか?ばあちゃん、足腰弱くなって、トマトもそうそう摘まれへんようになったわ歩くことも、どもならんようになってきたからもう東京へは行けん生きとるうちにもう一回リクの顔がみたい大学、忙しいやろうけど、無理はせんようにな元気で暮らせよ、リクばあちゃんからの手紙。春と秋。祭が近づいてくると、必ず送ってくる。しかも文面は毎回同じ。コピー?と思ったけど、毎回ちゃんと書いてんだよな。ばあちゃんオレがどれだけ頼んでも、頑なにLINEでなくて、手紙だ。手元に残らんと伝わらん、と言って。『高山祭』を帰る理由にして送ってくるけどうちは高山の市街地じゃなくて、清見町。野菜作ってる農家やないか。飛騨牛食べに帰ってこい、とかトマトの収穫、手伝いに来い、とか、そっちじゃね?・・・なんて、悪態つくつもりは毛頭ないんだけど。だってばあちゃん、飛騨牛なんてしょっちゅう送ってくれるし、毎年2月になるとトマトやほうれん草の入ったでっかい箱が届く。ほうれん草はオレの大好物だから・・バイト暮らしの貧乏学生にはもったいないほどのごちそうだ。おかげで体力もりもり。風邪ひとつひかん。ばあちゃん、オレだってホントは帰りたいんや。ばあちゃんの顔、見たいんやさ。[シーン2:渋谷ミヤシタパークのカフェ/同級生のミサキ】◾️SE:カフェの雑踏「卒業旅行の候補、考えてきた?」「あ、忘れてたわ」「もう〜、今日みんなで決めようって言ってたじゃない。ちゃんと覚えてる?」眉間に皺を寄せて、ミサキがあきれる。渋谷のスクランブル交差点。が、見えるカフェ。の、窓際の席。向かいに座っているのは、同じ大学のミサキ。午後の講義が休講になったおかげで、二人ゆっくりお茶を飲んで過ごす。普段は慌ただしく過ぎていく大学生活。こういう何気ない時間、意外と貴重だったりして。「えーっと、私カフェラテ。ロックは?」「ちょ、その呼び方やめれ」「なんで?いいじゃん。ロックなリク」「ロックじゃねえし」「ロックな生き方、してるでしょ」「してねえよ」「ほう〜ら、ロックだ」「ワケわかんね」「ふふふ」笑いを噛み殺しながら、ミサキは、ショートカットにしたばかりの髪をめんどくさそうに耳にかける。ロック、と呼ぶのはミサキだけだ。まったく。オレのなにがロックな生き方なんだよ。「卒業旅行、どこ行きたいの?」メニューをオーダーするのと、同じテンションで聞いてくる。「せっかくだから、思い出に残る場所がいいな。ありきたりの観光地じゃなくて」「えー。オレ、ハワイかグアムがよかったなあ」「卒業旅行で?いくらかかると思ってるの?この円安の時期に」「だって一生に一度の卒業旅行だぞ?お金の問題じゃないだろ」「私、飛行機無理だから」「じゃそもそもダメじゃん」「当然国内旅行よ。行ったごどねどご。(行ったことないとこ)私、実家が秋田だから、東より西の方向がえなあ(いいなあ)」「西か・・・」「でも距離的には、関西より向こうはやだ」なんか、近づいてないか・・「大自然の中の温泉とか、くつろげるとこ」おっと。「もちろん、美味しい料理ってのは必須で」「そ、そうだな・・・」「実はね、昨日ちょっと調べてみたの」ドキッ。「城崎温泉。和倉温泉。おごと温泉。白骨温泉」「みんな温泉じゃねえか」「だって癒されたいんだもん」「どこもアクセスがめんどくさそうだな」「それがいいんじゃない。秘境の旅。何時間もバスに揺られていくのよ」「車酔いするからやだ」「情けないなあ」「あ、それ差別発言」「どこが。あー、やっぱ美味しいもん食べたいかな」「最初からそこだろ」「その雑誌みせて」「ほいよ」「へえ、旅グルメ特集だって」「旅グルメか・・」◾️SE:雑誌をめくりながら「浜松のうなぎ。名古屋の味噌カツ。京都の湯葉料理。大阪はコナモンかあ・・」「いまひとつピンとこねえな」「そうだね、なんだろう・・・なんか足りないような・・」「肉、じゃね」「そう!肉!肉旅!」「それな」「出てるわよ、いろいろ。松坂牛(まつさかうし)。近江牛(おうみぎゅう)。神戸ビーフ。但馬牛(たじまぎゅう)・・」「そんだけ・・?」「まだある。えっと・・ヒダギュウ・・?なに?」「知らないのか」「どこの牛?」「高山だよ」「タカヤマってなに?」「え?」「高尾山、みたいな感じ?」「ちげーよ。インスタで調べてみな」「そうする。(一拍おいて)あ、これか・・・」「ああ」「なんか・・・すごいじゃん!」「そうだ」「見るもの、すっごいある」「だろ」「高山祭。古い町並。朝市。そして、飛騨牛!」「うん」「卒旅、高山にしよう!」「お・・・おう」「ひっだっぎゅう〜!きめ細かく柔らかい肉質と、口の中でとろけるような霜降り、だって!高山行けば食べれるんだよね」「まあな。ま、高山は高山でも、飛騨牛のふるさとは『清見』だけどな」「ロック、あんたなんでそんな詳しいの?」「オレの・・・実家だから」「え〜〜〜〜〜」◾️友だちのエキストラガヤ「お待たせ〜」「おっつかれ〜」など適当に清見のこと、説明しようとしたとき、授業が終わってみんながやってきた。結局、卒業旅行の行き先は、全員一致で『高山』。『飛騨牛』は出たけど『清見』の名前は出なかった。ま、こんなもんか。 [シーン3:卒業旅行初日/高山駅】◾️SE:高山駅の雑踏「きたぞぉ〜!たかやま〜!!」◾️友だちのエキストラガヤ「おお〜」「高山だ〜」など適当に深呼吸しながらミサトが声をあげる。オレもつられて、大きく背伸びをした。総勢10名。気の合う仲間と訪れた高山。いや、久しぶりに帰ってきた高山。あのあとミサキは、オレの実家が清見だってこと、誰にも言わなかった。なんでだろう・・・でもまあ、よかったかな。旅行ガイドみたいなことしなくてすんだし。だってオレ、話をするの、あんま得意じゃねえから。まずは、観光コンベンション協会へ。地元のリアルタイム情報をゲットしてと。高山/陣屋から中橋を渡って、古い町並へ。「うわあ、京都の祇園みたい」「だから”飛騨の小京都”って言うんだよ」「食べ歩きしてたら、ここで1日経っちゃうよ〜」オシャレなカフェで一休み。このあとみんなは、安川通(やすがわどおり)を渡って桜山八幡宮へ行くそうだ。日本酒好きなミサキとオレは、別行動で酒蔵(さかぐら)めぐりへ。「ちょっとちょっと。花酵母だって」「ん〜。甘くてジューシー。たまんな〜い」幸せそうな顔で試飲する。来てよかったな。高山。清見には帰れそうもないけど。ばあちゃん。元気かな・・・[シーン4:卒業旅行最終日の朝/ホテルのロビー】◾️SE:ホテルロビーの雑踏/朝の小鳥のさえずり「ロック、おそ〜い!」「なんだよ、朝から。朝食バイキングはもうちょっとあとだろ」「いいから来て」卒業旅行最終日の朝。ミサキからホテルのロビーに呼び出された。「あのね。怒らないできいてくれる?」「な、なんだ、その言い方?やめてくれよ」「高山駅に着いた日、あなたポッケから大事なもの落としたの、気づいてた?」「大事なもの?・・・・・あ!」「おばあさまからの手紙。すぐに渡そうと思ったんだけど、ロックったらどんどん先に行っちゃうんだもん」「ああ・・・そうだ・・」「結局私も忘れちゃって、その日の夜に思い出したの」「お、おう」「すごく悩んだんだけど、半分手紙の中身が見えてて」「・・・」「悪いと思いながら(も)、読ませてもらったわ」「そっか・・・」「で・・・」「なに?」「一歩前へ」言われるまま、目の前のソファの方へ歩いていくと・・・「リク、おかえり」「ば、ばあちゃん!?」「今朝、ミサキさんが迎えに来てくれたんやさ」驚いて振り返ると、ミサキが人差し指にレンタカーのキーをはさんで、くるくる回してる※続きは音声でお楽しみください。

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飛騨高山を舞台にした珠玉のボイスドラマをお届けします。コミュニティFM Hit's FM(Hida Takayama Tele FM) で放送中の人気ラジオ番組! ヒダテン!のCV声優10名 が入れ替わりパーソナリティを務める「Hit’s Me Up!(ヒッツ・ミー・アップ!)」の中で放送されているボイスドラマです!ボイスドラマを通じて飛騨高山の魅力に触れてみてください!<番組の特徴>・ 飛騨高山を舞台にしたボイスドラマを多数制作! これまでに100本以上の作品を発表し、地元の魅力を物語として発信・ 放送情報  放送局1: Hit's FM(Hida Takayama Tele FM)  放送時間:毎週金曜10:30-11:00/毎週土曜13:30-14:00  放送局2: FMらら(FMラインウェーブ株式会社)  放送時間:毎週金曜13:00-13:30  配信:Spotify、apple(iTune)ミュージック、amazonミュージック、YouTubeミュージック、CastboxなどのPodcastで番組とリンクして配信中!飛騨高山の美しい風景とアニメ文化をつなぐ、唯一無二のラジオ番組! 「Hit’s Me Up!」を聴けば、新たなエンタメの扉が開きます!

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Ks(ケイ)、湯浅一敏、飛騨・高山観光コンベンション協会

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